天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第2話 村の少女との出会い。



ーーーーーー

  俺は、制服姿のまま森を彷徨っている。

  何も考える事なく彷徨い続けている。

  目の前に広がる代わり映えもなく青々とした景色は、俺の心の中に似ていた。

  その、感情を押し殺した様な佇まいをした森の中を歩いていると、妙な心地良さすら感じた。


ーーもう、何時間歩いただろう。


  そんな考えを持った俺は、一度立ち止まり、ふと時計に目をやる。

  すると、もう既に『19:00』と表記されていた。

  既に歩き始めてから三時間が経過していたのだ。

  しかし、この森は明るい。

  どうやら、死後の世界は時差があるのかもしれない。

  そんな事を考えながら、俺は再び歩き続けた。


ーーーーーー

  数時間歩いていると、奥から光が見えた。

  それを頼りに俺は、足を運んだ。


ーーあの先には、一体何があるのだろうか......?


  ふと、そんな事を考えながら歩いた。

  そして、光の元へたどり着くと、目の前の視界が一気に開けたのだ。


ーーそこは、遥か彼方まで続く大草原が広がっていた。


  周りには、少しだが木々が生えていたり、大きな岩なんかがあったりもして、その更に奥には、家々が建ち並ぶ一角がある事が確認出来た。

  どうやら村があるのかもしれない。

  俺は、「死後の世界にも村があるのか......」そう考え、その村と思しき一帯に歩き始めようとした。


ーーその時だった......。


「珍しい格好をしている者だな。ここら辺では見かけた事がない。」

  俺は、一瞬だけ驚いた後で、背後から聞こえた声の方に顔を向けると、そこには、一人の少女がいた。

  その声の主は、桃色の髪のポニーテールに、真っ赤な瞳、青いベストを羽織り、その中には白いワンピースと形容できる服を着ていた。

  多分、俺と歳は近いのであろう。

  暫く人と話す事が無かった俺は、その場で何も返事をする事が出来ず、固まっていた。

  すると、その少女はもう一度俺の事を上から下までじーっとみた後で、

「まあいいや。旅で何処かから来たのでしょう。とりあえず私達の村に来れば、泊まる所くらいは確保出来る筈だよ。私について来て!」

そう言って、俺の手を取り村へと走って行った。


ーーーーーー

  村にたどり着くと、そこには、二十棟ほどの二階建ての家に、真ん中には風車があり、共同で使用されてると思われる井戸、その横には小さな川が流れていた。


ーー村人は誘導する少女以外、見当たらなかった。

  
  そんな中、俺は村の中へ入ると、途端に疲れもあったのか、体の力が抜けていくのがわかった。

  そして、意識が遠のいていく......。

  その傍で、

ーー「ねえ!大丈夫!?返事してよ!!!」

と、薄っすら聞こえた。


ーー多分、夢を見ていたのかもしれない。


ーー俺は、死んだのではなくて......。


  そして、目の前は真っ暗になったのだった......。


ーーーーーー


ーー目が覚めると、そこは、ベッドの上だった。


  そして、目の前には、椅子に腰掛けている、先程の少女がいる。

  それを見た時に、俺は、死後の世界に来たのだと理解する。


ーー何故ならば、普通は目が覚めた時、俺が本来いたはずの見慣れた風景が飛び込んでくるはずなのだから......。


「やっと目が覚めたんだね......。良かった! もう三日も寝ていたんだから......。さすがに心配したんだからね!」

  彼女は心配そうな顔をゆっくりと俺に近づけると、そんな事を口にした。

「俺は......、やはり死んでしまったのか......。」

  そんな少女から目を逸らした後で、俺はそう呟いた。


ーー余りにも短かった一七年。


ーー誰からも疎まれた一七年。


  そんな事を考えている内に、次第に哀しみにも似た笑い声が止まらなくなった。


ーーどうしようもない人生だったな......。


  すると、ケタケタと笑っている俺に対して、

「あなた、何を言っているの?あなたは死んでいないじゃない。ちゃんと生きている。そんな事言っちゃダメだよ!死後の世界じゃあるまいし......。」

と、少女は眉を少し上に上げて言った。

「だって......。元の世界との違いがあり過ぎる。俺は電車に乗っていて、その時に意識が遠のいて......。気がついたら森にいた。死んだ以外でそんな事あり得ないだろ!?」

  俺は、少々声を荒げた。

  こんな訳の分からない状況は、死んだと解釈する以外、道理が立たないからだ。

  むしろ俺は、どうせなら死んだ方が良いと思っていた。

  そんな願望を含めて......。


  俺はそう思うと、次第に自分の人生を憂いて俯いた。


ーーだが、そんな時、彼女は俺の右頬を、思い切り叩いたのであった。


ーー頬が熱い......。


  そして、呆然としている俺に向かって、

「あなたは生きている。だって、痛いでしょ?!だからもう、死んだとか、死ぬとか言うのはやめて!」

と、涙目になっていた。


ーー何故、この子はこんなに俺と真摯に向き合ってくれるのだろう......。


  そんな疑問が湧いた。

  すると、少女は、

「ごめんね。ちょっとだけあなたの寝言を聞いちゃっていたの。ずっと呻きながら苦しんでた。何があったかのかは分からないけど、もう心配する事ないよ。」

と、俺に、最高の笑顔を向けた。

  その時に、思い出していたーー


ーー「もう、お前とは友達では居られない。」

「いいよね、天才は。何もしなくてもいいから。」

「これ以上、人を傷つけないで!!」

「お前なんか死んじゃえばいいんだよ。」

「お前を見ていると、うちの家族は自信がなくなる。悪い事は言わないから、出て行ってくれ......。」ーー


ーー今までぶつけられて来た罵声と、家族からも見放されてしまった哀しみ......。


  俺は、励まされた事がない。

  それは、お世辞だとしてもだ。

  たとえこの子が口先だけで言っていたとしても、嬉しかった。

  そうすると、今まで押し殺して来た感情が、一気に流れた。

  涙が止まらない。


ーー俺の人生とは、一体、何だったのであろうか......?


  そんな疑問と共に、恥ずかしさをも凌駕して、俺は泣き続けた......。

  少女は、そんな様子を見ていると、俺の頭にそっと手を当てた。

「今まで、大変だったんだね......。私の名前は、キュアリス。いつでも、頼ってくれていいからね。」

  その、キュアリスの優しさに俺は、更に号泣した。


ーーこれまでの感情全てを込めて......。


ーーーーーー

  気がつけば、朝になっていた。

  昨晩と同じベッドの上で。

  俺は、傍で寝ているキュアリスを見た後で、静かにその場から去って行った。


ーーこの場所が何処かは分からない。


ーーでも、俺はここにいてはいけない人間。


ーー見ず知らずの人に手を差し伸べる様な優しい少女は、俺なんかと関わってはいけないんだ。


ーー俺みたいな男は、惨めに孤独に生きて行けばいいのだ......。


ーーどうせ、彼女だって俺に嫌気がさすのであろうから......。


  そして、村を出て行こうとした。

  すると、遠くから走って来る音が聞こえた。


ーーそこには、キュアリスがいた。


「あなた、何で逃げようとするの?!昨日の話は、本心からなんだよ?だから、もう少しゆっくりして、色々と話を聞かせてよ!」

  俺は、それを聞いた後で、

「もう、人と関わりたくないんだ。後、何日も看病してくれてありがとう。......本当に嬉しかった......。」

と、俯きながらも情けない笑顔でそう言った。

「わかった。じゃあ、後少しだけここにいて欲しい。村の外は、危険な事が多いから......。」

  キュアリスは俺を必死に引き止めた。

  俺は、そのあまりにも必死な形相に押されて思わず、

「迷惑を掛けることもあるかもしれないけど......。じゃあ、もう少しだけ、ゆっくりさせてもらうよ。」

と、困惑しながらも返事をした。

「良かった......。あなたの事は、どうしても放っておけなかったから......。じゃあ、あなたの名前を教えて!」

  キュアリスは、安堵の表情を浮かべた後で、俺の名前を聞いていた。

  昨日は、泣きすぎてそれどころでは無かったから、名乗り忘れていたのだ......。


  俺は、俯いていた顔をキュアリスに向けて、

「俺の名前は、佐山雄二だ......」

そう、消えそうな声で恐る恐る名乗ってみせた。

「佐山雄二だね。こちらこそ、宜しくお願いします。」

  キュアリスは、丁寧に挨拶をした。


ーーこうして、俺は、この村にもう少しだけ、お世話になる事になったのだ......。

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コメント

  • ノベルバユーザー354375

    初対面の人にビンタって、脳筋じゃん……

    0
  • 虎真

    設定凄すぎて…

    0
  • 白ノ宮

    初手ビンタwww

    1
  • ノベルバユーザー275451

    語尾が「だな。」
    だったからクール系かと思ったら普通の女の子じゃんw

    1
  • ノベルバユーザー252836

    面白い!でも異界転移した理由がほしかったなー。

    3
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