金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百二十一話  意志の矢

「勇者様でいらっしゃいますか?」
「は? はい……?」
「お待ちしておりました。お城までお送りします」


 いったい何を言ってるの……?


 さて、お城に向かおう、といって、小屋を崩して準備を整えた時。急に魔法の手下を名乗る人が来て、そんな事を言うんだ。
 戸惑っていると、その人は強制的に魔法を唱える。
 急にゴウッと強い風が吹き、私は右手を前に出して目をキュッとつぶる。


 風がやみ、目を開けた時には、もうそこからはお城が見える、そんな距離まで来ていた。
 強制的な移動魔法……。しかもこの多人数? そんなの、出来る人がいるの?
 人間ではないな。ってことは……。


「悪魔?」
「コンチータ様みたいに、羽を隠していたんじゃないですか?」


 移動魔法は悪魔の得意分野。もしかしたら、そうかもしれないな。
 とにかく、今のまま突っ込んで言っても危ないだろうし、作戦を考えないといけないよね?
 ということで、ルアンナに習った強力な隠蔽魔法で姿を消す。


「で、どうするべきだろうな」
「まずは……。私がアイリスと一緒に飛んで、気絶させるくらいですべての魔法オール・マジック撃とうか」
「では、私が残りを操ろう」
「じゃあ、私は隠れてた人とか襲えばいいのねぇ?」
「私は怪我したらすぐ治すから。本気で突っ込んで言っても構わないよ」


 自分のできる事は先に言っておくべきか? そう言う事で、私たちは勇者魔法の撃てる回数を言ってみる。
 まあ、さんざん一緒に居て、だいたいは分かってるけどさ。いちおうね。


「私は……。そうだなぁ。全ての魔法オールマジックは、強さにもよるけど、5発が限度かな」
「私の召喚魔法も、3回が限度だと思うぞ」
「私の矢は……。多分、500本位しかないと思うわぁ」
蘇生回復リヴァイヴァルヒールは、3回が限度だね」


 そう言えば、リリアーナも勇者の技『意志のウィルボウ』を使えるようになっている。
 えっと、リリアーナは……。










「なんだか、私だけ遅れちゃったみたいねぇ」
「まだ時間はあるし、ゆっくり行こうよ」
「そうねぇ……」


 みんなで……、たしか、獣人の国を冒険をしていた時、ぽつりとリリアーナが呟いた。
 私たちは気にしていなかったけれど、やっぱり本人は気にしていたみたいだった。
 と、話しながら歩いていると、私の杖が何かに奪われた。


「きゃっ?!」
「あ、杖が!」
「ソフィ?! 大丈夫?!」


 みんなが驚いていると、猿のような生き物がぴょんぴょんと跳ねながらこちらを見ていた。手には、私の杖が握られている。
 リリアーナは弓を手にとって猿に狙いを定める。けど、すばしこくて当たらない。


「ああ、もう! 絶対に仕留める!」
「り、リリ……?!」


 リリアーナは猿をギラッと睨むと、力強く弓を引く。ひゅん、と音がして、高速で矢が飛んでいく。今まで見た、どの時のよりも、早かった。
 でも、問題はそこじゃない。
 その矢は、真っ直ぐではなく、猿に向かって飛んでいたのだ。


 私たちはその矢を呆気にとられて眺めていた。リリアーナは意識していなかったらしい。普通に、その矢の行く先を見ていた。
 矢があたると、リリアーナはそこまで歩いて行って、杖を取ると、私の方に投げてきた。
 ぽすっと手の中におさまる。すると、リリアーナがふいに我にかえったような反応を示す。


「あれぇ? 今、私、何を……?」
「おぼえてないの……?」
「うーん……。だけどぉ、なんだか、矢を思い通りに動かす術を覚えたみたいだわぁ」










 本当に唐突に現れるんだ、これ。
 リリアーナの勇者の技は、敵に向かって飛んでいく、そんな矢を射る射り方。でも、本人は急に使えるようになってたって言う。
 そんなわけで、リリアーナは連射するだけで敵に当たる、という変わった技を覚えた。ちなみに、魔法で作り出す矢でも可能らしく、いつもポンポン魔法で矢を生み出しては、連射してる。


「ジェイドはどうする?」
「えっと……。ソフィア様の近くに居たいですけど、無理そうですね」
「そうだね。アルラウネと一緒に、兵士を『戦闘不能』にして」
「それはどのくらいの事でしょう?」


 まあ、動けなくしてくれればいいよ……。くれぐれも殺さないで欲しい。
 今のジェイドなら、大丈夫なはず。アルラウネもいるし、殺しそうになったらとめてくれるだろう。


「さて、ゆきちゃん。ある程度道が出来たら、このまま突っ切って扉に体当たり」
「にゃーん!」
「分かったね? そしたら、すぐに安全なところまで避けて」


 ゆきちゃんは、戦う事も出来るけど、魔法にそこまで対応できない。魔族と戦うには不利だろう。
 だから、扉を開けるという役目を任せた。仮にも豹だし、速さは抜群。その勢いで体当たり出来れば、破れると思う。無理だったら、私たちが援護する予定だ。


「じゃあ、みんな……。必ず、生きて帰るよ!」
『おー!』


 そう、必ず生きて帰る。そのためには……。


 魔王を、倒さなくてはならない。

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