金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百二十話  活殺自在召喚魔法

「着いた……」
「なんか、何にもないのねぇー」


 数日後。着いたのは、村でも町でも何でもないただの海岸。何故か。当然だよ、町なんかに降りたら即殺されるって。
 お城までは距離あるし、何日かは野宿ってことになりそうだ。


「ソフィ、平気?」
「ここの魔力……。魔族の魔力と、同じ……」
「ああー。ほんとだ。これやだね」


 アルラウネたちも嫌そうで。だって、魔族の魔力と同じって、ストレスになるんだもん。ただでさえピリピリしてるのにさ。
 ジェイドだけは、目を見開いて辺りを見ていた。


「どうかしたの?」
「ここ……。ダイアモンド様と、初めてあった場所……」
「え?!」


 ぽつりと呟くと、ジェイドはふわっと羽を広げて地面を軽くトンと蹴る。
 私たちはその様子を黙って見ている事しかできない。
 ジェイドは降りてくると、悲しそうに微笑んで「ただいま」と呟いた。


 リリアーナやエベリナは何が起こっているのか分からないようで、マリアは察したよう。
 ゆきちゃんはジェイドの顔を見て、足にすり寄る。もしかしたら、いつもと違うのを感じたのかもしれない。


「ああ、すみません。もう夜になりますかね?」
「そうだろう。船は……。もう壊れたか。では、ソフィ」
「ああ、魔力でできてるんだもんね、この船。じゃあ、土壁アースウォール


 私はいつもやっているように土の小屋を作る。今日はここに泊まる事になるわけだ。
 なにせ、船の目的は『魔族の国に行く事』。それが済むと、魔力に戻ってしまう作りになっているのだ。もう消えている。だから、中で過ごすことは不可能。
 あと、問題になるのは見張りだけだけど……。


「分かっている。この辺りの魔物に頼めばいいな?」
「よろしく、マリ」


「生物の神々よ、ここに集いたまえ。我に力を貸したまえ。今、力を解き放ち、敵を我に従わせたまえ」
『活殺自在召喚魔法』


 マリアは金色の目を解き放つ。カッと辺りが光り、たくさんの魔物が集まってくる。
 マリアも、勇者の魔法は覚えている。この魔法は、全ての生き物を自在に操れる魔法だ。
 これを使って、見張りを頼もうと言うわけだ。すごいメンバーだよ? ドラゴンとかのレベルがいっぱい。


 あ、いつこの魔法を覚えたかというと……。










 みんなでエルフの森を冒険していた時の事だ。
 ドラゴンと戦っているとき、マリアのユニがドラゴンに吹き飛ばされた。大怪我を負い、助かるか分からないような、そんな状態だった。


「な……?! 私のユニに、なんてことを……!」


 他のみんなと同じ、怒りに染まった、鋭い目。もはや、普段のマリアとは違う。何かに操られたように、眼帯を外し、目を閉じて呪文を唱える。


「生物の神々よ、ここに集いたまえ。我に力を貸したまえ。今、力を解き放ち、敵を我に従わせたまえ」
『活殺自在召喚魔法』


 ドラゴンとユニが同時に金色に光る。見れば、マリアの金色の目がキラキラと輝いていた。
 ユニの傷が癒え、ドラゴンはマリアに忠誠を誓う。
 マリアの命令は絶対。抗う事は許されない。それが、たとえ人間だったとしても……。










 とはいえ、魔力も多く使うし、あまり使いたくはない魔法だ。
 ただ、こうやって『敵意を持っていない魔物』を使う時は、そこまで魔力を使うわけでもないらしい。
 だから、敵の魔族を操ろうと思ったら、相当な魔力を使うはずだ。其処は、あまり期待はできないだろう。


「見張りを頼む」


 マリがそう言うと、魔物たちは四方八方に散っていった。ちゃんと見張ってくれているんだろう。
 私たちはそれを見てから、今さっき作った小屋に入る。
 食べるものは、今日の分くらいは異空間に入ってる分で何とかなるだろう。という事で、私の異空間からいくつかの食べ物を取り出す。


「ところで、ソフィ、今日は寝れる?」
「わ、わかんない。この魔力の中じゃ……」
「そっかぁ。じゃあ、アルラウネちゃんたちの出番ねぇ」


 私たちはそんな会話をしつつ、スカーレットに作って貰ったサンドウィッチを食べ終える。異空間にいれておけば、長く保存が可能だし。物は何だっていいのさ。
 ゆきちゃんは何でも食べるし問題ない。アルラウネもなんでも構わない。


 では、今日は早めに休もうか。明日は早くからお城に向かうんだ。
 リリアーナとかマリアはあっという間に寝ちゃうんだけど、私とエベリナはいっつも寝れない。特に、自分の部屋なら問題ないけど、そうでない時。魔力の違いで、どうしても寝られない。
 だから、アルラウネが仲間になってとっても助かった。この子たちの催眠魔法は超強力なので。


 あ、あと、寒いときとかもあまり寝れない。たまに、アルラウネの催眠魔法があってもダメなときあるし。って言うか、だんだん耐性が付いてきちゃった気がするよ……。
 そういうときは……。あんまりよくないと思うけどさ。誰かの添い寝が一番いい。
 昔はシナモンがいたからよかったんだけどさ。そうじゃないと、誰かにやって貰う事になっちゃうじゃん。ゆきちゃんは一緒に寝てくれないし。丸くなって寝ちゃうから。


「えっと……」
「し、仕方ないでしょう?」
「ま、まあそうだね。みんな寝ちゃったか」


 だからといって、どうしてジェイドなのさ?


 ……余計に寝れないよ。

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