金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百四話  お忍びの会話です

 軽く流してしまったけれど、魔王から直々の呼び出しって……。
 行きたくないけど、そんなわけにもいかないし、準備を整えるべきだろう。


 っていうか、呼び出しかけといて、まだ軍が戦闘しに来るんだけど、それはどういうことかな? 手紙を受け取って一週間たつけど、毎日のように軍が来る。
 仕方ないので、アルラウネたちを手配する。すごい楽しそうに出て行った。


 今、この私の部屋に居るのは私とジェイドの二人。
 なにせ、隙あらばジェイドは女の人に連れて行かれるから、仕方なく匿ってやったわけで。まあ、何というか、お忍びで会ってます、みたいになってるけど、そういうわけじゃ……。
 考えてて思い出したんだけど、ジェイドに手紙を見せ損ねてました。という事で。


「ジェイド、これ」
「ん……? な、なんで早く見せてくれなかったんですか?! おおごとじゃないですか!」


 えぇ……。そういえば、スカーレットたちには見せたのに、ジェイドには忘れてた。
 今さらだよね、ごめんなさい。


「で、どうするんですか?」
「リリとマリの勇者魔法を開放。これが最優先」
「ああ……。そうでしたね」
「あと、私の魔力の底上げ。多分、このままだと勇者魔法一発しか打てない」


 そう、膨大な量の魔力を持つはずの私が、一発くらいしか打てないおそれのあるこの魔法。もしかしたら何発も打てるかもしれないけど、そこまではわからない。怖くてまだ撃ってないし、それ以前に戦いに出してもらえない。


「仕方ないですね。魔力の底上げ、重要ですから、戦い、行っても良いですよ」
「ありがとう。リリたちはどうしてる?」
「まだ彼にお熱ですよ」
「ったく……。とんだ所に目を着けたよね……」


 この前、フェリはやっと気が付いたようで、大慌てで私の部屋に駆け込んできた。
『ちょっと?! リリアーナ様、俺の事つけまわしてないか?!』
『なに、今? ずっとじゃん』
『えぇぇぇ?! なんでぇぇぇ?!』


 うん、まあ、見てる分には面白い! まあ、浮かれ過ぎは良くないけど。
 ちなみに、フェリは軽く逃げてるけど、リリアーナを振り切るすべなどあるわけもない。勇者の行動力はなめてはいけない。その気になったら、マジで指名手配がかかるかも?!
 というのは冗談で。


「で? 人の事は良いけど、ジェイドは振り切れたわけ?」
「そうなんですよ、何とかして下さい! まともに動けないんですけど?!」
「知らないよ。自力で頑張れ」
「他人事な! ソフィア様だって、知りませんよ!」


 あ、そういえば、私にもいたな、困った奴ら。っていうか、あいつらそろそろ私に挑みに来るんじゃないか? 本当にやめて欲しいんだけど。勝てるか分からない。
 仕方ないなぁ……。


「ジェイド、今すぐ彼女でも作りなさい、ぱったり途絶えるわよ」
「意味ないでしょう?! だいたい、私、ソフィア様の悪魔です!」
「なんだ、やっと私から離れると思ってたのに」
「なんで?! 酷いじゃないですか。呼び出して置いて……」


 あ、そうだった。ジェイドを呼び出したのは私……、でも、ジェイドが来ると思って呼んだわけじゃないし、むしろ呼ばれてきたのはジェイドじゃん。面倒な奴を呼んでしまった……。本当に、今さらだけどさ。


「じゃあ、宣言すれば? 堂々と。絶対受けないって」
「多分変わりません。フィアンセでも出さない限り」
「ああ、面倒! いっそのこと恋愛禁止にしたいくらいだよ! しないけど!」


 余計面倒な事になりそうだし。にしても、こんな時期に……。まさか、ここまで盛り上がるとは。バレンタインやら、クリスマスやらの近くならまだしも。
 っていうか、本当になんで? なんで今?
 いつ死んじゃうかわかんないし、今! ってさぁ、多分死なないと思うよ、私たちがいる限りは。ほとんどの人前出してないし。って、あ! 死ぬって、私たちのこと?!


「ああ……。あ、そろそろ帰ってくるかも」
「アルラウネたちですか? そうですね。って、どうやって入れるんです?」


 鍵は完全に施錠。窓も防弾ガラスで、きっちり閉まってる。移動魔法対策の魔法もかかっている。
 ま、普通は入れないよね。そりゃあ、普通ならの話でしょ?


「ただいまー、ごしゅじんさま!」
「はい、おかえり」
「?! どういうことですか?!」


 この移動魔法を禁止した魔法、アルラウネの魔法だけを除いている。アルラウネだけは入れる。
 魔法の練習がてら、やってみた。意外と簡単にできたんだけどさ。


「はぁ……。そうですね。ソフィア様はすごいです」
「あれ? 今知ったの? アルラウネの魔法は効くの……」
「え?! 気が付くものですか?!」


 多分。アルラウネは知っていて入って来たんだと思うけど。
 1人に顔を向けると、こくりと首を縦に振る。多分、分かってたよ、だと思う。
 もう一人向けてみると、その子は知ってたよ、と言った。


「な……?! 昔から、魔法探知だけは苦手なんですよね」
「あ、そう。ジェイドは、私以外の主人、いなかったの?」


 何となく聞いてみた。昔から苦手、と言ったのが、何となく、前の主人の時もそうだったな、といった感じに聞こえたからだ。


「! そ、そうですね。いました。けど、それは、また今度で」
 凄く、慌てた表情をした。どう言う事かな……。でも、まあ。
「……? わかった。じゃあ、気にしないでおくね」


 な、何なんだろう。何かが、おかしい。ジェイドの前の主人って……?

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