金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第七十八話  ブランシュ

「ブランシュですか? 少々お待ちください」
 茶髪の女性は中に入っていった。メイド服を着ているから、村長の侍女のようだ。


「ねぇ、ブランシュちゃん、何歳なの?」
「250くらいの、まだ若いけどね」


 1000で大人なんだっけ。そりゃ若いな。


「すみません、今、出かけているようで」
「え?」


 いつくらい帰ってくるんだろう? どうしようかな、そこまで考えてなかったよ。
 すると、侍女の後ろから豪華絢爛なドレスを身にまとい、ティアラをつけた女性が出てきた。


「む、どなたじゃ?」
「コンチータ様! ブランシュに会いに来たそうなのですが」
「ああ、石鹸を買いに行っておるのじゃ。別に今でなくていいと言ったのにのぅ」


 それを聞くと、インディゴが眉をひそめた。


「ブランシュのやつ、逃げやがった」
「え? どうしてぇ?」
「俺に会いたくないんだろ。理由まで付けて行きやがって。完璧主義なんだよ」


 私はどうしようか迷い、なんとなく後ろを振り向いた。
 すると、あからさまに嫌そうな顔をした少女が、此方を見ていた。


「あれ、あなたは……?」
「父様。なぜここに来たんです」
「む? ブランシュの父だったのか? なら、入れ! もてなさなくてはいけないのぅ!」
 この子が、ブランシュ……?










 薄い水色の長い髪、髪と同じ色の目、モデルのような完璧な体型の女性。で、羽が生えてる。


「父様。私には、まだ、あなたには勝つことができません。まだ会えません」
「馬鹿。俺にお前なんかが勝てるもんか。俺に勝てるとすれば、多分ソフィア様くらいだしな」
「ソフィ……? 様って、父様の主人?」


 ブランシュは随分驚いたようだ。ぐるっと振り返り、私のことを品定めするように鋭く見た。


「エルフのくせに、魔力もそんなにあるように見えないわ。本当に強いの?」
「こら、ブランシュ。客にそんな口を利くではないぞ? 失礼じゃ」
「コ、コンチータ様、いらしたのです?」
「そんなに気になるなら、食べたあと、戦ってみれば良いだろう?」


 ブランシュの目はきらりと光った。


「食べる前にしましょう。どうせ、そんなに時間はかからないはずよ」
 さすがに私もキレた。こんな小娘に馬鹿にされるなど、許せるか!
「ええ。いいでしょう。ジェイド、インディゴ、スカーレット! 見ていてもらうよ」


 ブランシュは驚いたように目を見開いて叫んだ。


「あなたが、付けたの?! 私の家族なのに!」
「そんなこと、知らなかったのだし、仕方ないでしょう? 戦うなら早くなさい」


 ぴしゃりと言い捨てると、ブランシュは泣きそうな顔をし、しかし鋭く睨む。はぁ。諦めてくれれば楽なのに。










 こんな小娘、私が負けるはずない。っていうか、スカーレットより弱いくらいだし、一瞬だ。
 ちょっと手加減してやったけど、神級を2発くらい撃ってやったら終わったな。


「うっ、どうして。魔力も多くないじゃない。なのに、勝てないわ……」
「だから言ったでしょう、あなたが私に勝てるはずない」
「なんでって、言ってるの! どうして?!」
「ああ! もういいでしょ。動いたし、お腹すいた。行きましょう」










「今更で悪いな。わらわがコンチータじゃ。お主らは、まあ、見ればわかるが、エルフの国の勇者の血筋だな?」
「わかるんだ、すごい……。エルフの森の中なら、まだしも……」


 エベリナが驚いたように言う。コンチータの機嫌は良くなった。そりゃ、もうすごく。わかり易すぎてちょっと困る。


「勇者の、子孫……? どうりで勝てないわけだわ……」
「ブランシュ、ちと強気すぎないか? わらわはそなたをそんなふうに育てた覚えはないのじゃ」
「す、すみません!」


 ブランシュは泣きそうな顔をしていた。ちょうど私の隣なのだが。どうしよ……。
 とりあえず、なんとかいい感じに向けなくては!


「気にしないでください。私、戦うの嫌いじゃないんです。こう向かってきてくれる人も久しぶりですし」
「そうだろうな。立ち向かっていくような奴は、まずいないだろうしのぅ」


 くすりと笑ってコンチータはフォークとナイフを動かした。


「ごめんなさい、ソフィアさん。私、知らなかったの。父様、奪っちゃったのかと……」
「あはは、奪ったって言えば、それはそうだろうし、私も悪かったね。冷静じゃなかったし」
「本当に、強かった。私だって、真面目に練習したのに。父様も、こんな人に使えられるのなら、幸せでしょうね」


 ブランシュはちらりとインディゴを見た。インディゴもそれに気がついてこちらを不思議そうに見ている。
 実際、インディゴは割と綺麗な料理に夢中になっているわけで。話など聞いているはずもない。


「インディゴ、でしたっけ」
「そう。彼の髪の色、藍色って意味。スカーレットは緋色、ジェイドは翡翠色」
「似合いますね。いい名前。……私、父様たちに憧れて、必死に練習したのに」


 一緒だな。私も、あったばかりの時はジェイドに勝てるように頑張った。最初では、絶対に勝てなかったから。
 でも、今じゃ私の方が強いかな。同じくらいだったらどうしょ? 流石にないと思うけど。


「本気で戦ってみたい。もっと強い人と会いたい」


 ぽつりと呟いていた。すると、向こうから楽しそうな声が聞こえてくる。


「わらわと戦ってみるか? そこそこやりあえると思うのじゃがのぅ」


 それはいい。本気で戦えるの、ジェイドとかリリアーナたち何人か相手だから、『一対一』で本気で戦ってみたいなって思ってた。


「って、それはいいんですが、さっきのソフィアさん、本気じゃなかったんですか?」
「え? 当然だよ。インディゴの娘に傷なんかつけたら、寝てる間にでも殺されるからね」


 ブランシュは苦笑いして言った。


「それは怖い。でも、それじゃ、父様、過保護すぎますね」

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