金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第六十一話  マリンは?!

「うわあああ! どうしよう、どうしよう……」
「ソフィア様……? どうなさったのです?」
「マリンが……マリンがいなくなっちゃった!!」


 どうしよう。あの子、まだ魔物と戦えないのに……。戦えても、そんなにたくさんは……。
 街を作っている途中、初めて来た時、あのボロボロの二人の様子を、生々しく思い出して、私は思わず身震いした。


「どこに行ったか、わかるんですか?」
「わかんないよ! ユリアナが、今日、気がついて、もう、どうしよう!」


 スカーレットは困惑した様子だった。でも、詳しく説明できる自信はない。


「う、うう……。まだ、戦えるほど、力はないはずなの……」
「! そういうことですか?! じゃあ、直ぐに探しましょう!」










 桃色魔法衣ピンクローブ緋色悪魔スカーレットデーモンで大捜索。とりあえず、近くは見たけど……。


「いない……。もう、遠くに……?」


 そんなこと考えたら、目眩がする。この近くはいいけれど、離れたら、魔物は……。
 いや、まて。マリンの行くような場所だ。考えろ……。
 あの村……? ちがくても、とりあえず、行ってみる!


「私、マリンのいた村に行くから、あとよろしく!」
「えぇ?! ちょ、ああ!」
 ごめんね、スカーレット。でも、信頼してるんだからね。










「来て、ない……?!」
「あぁ……。悪いな、力になれなくて」


 どうしよう……。もうわかんない。どうして、急に……。
 ともかく、門の記録では国を出ている。それは間違いない。でも、それ以外は……。


「ううぅ……。あの子、どうしよう……」
「心配だな……。ん、ミーシャ、聞いてたのか?」
「うん。ごめんなさい。マリンのこと話してたみたいだから」


 そうだよね、ミーシャも心配だよね。
 でも、もう……。私、もうわかんないよ。どうしよう、どうしよう……。


「ともかく、違うところも探します! ありがとうございました!」
 ここまでワープできたけど、距離が……。ちょっときつい。でも、仕方ない! 移動魔法で!










「スカーレット! どうしよう、いないよ。もう、宛はないよ」
「ソフィア様、あきらめないで。確かに、あの子は少し弱いですが、魔物くらいなら平気ですよ」
「この前、近くでドラゴンを見た」


 スカーレットは黙ってしまった。でも、ともかくそんなことを言っている場合ではない。
 探さないと。この一心で、私は走り出した。










「! きゃ、わぁ!」
 小さな石に躓いて、私は地面に転がった。にしても、まだ見つからないなんて……。もうすぐお昼だってのに……。


「おい、君、平気かい? 今日は多いな。ここで転がってる人。流行ってるのか? 二人目だ」
「? ……あ! もしかして、その子って、黒髪黒目の猫獣人ケットシーじゃない?!」
「連れか? にしちゃ、遅いか。ともかく、怪我してるみたいだな。うちに来いよ。その子いるからさ」


 エルフ、じゃ、ない……? 尖った耳はあるけれど、エルフにしちゃ小さい。背も……、あ、ホビットか。珍しいな、こんなところに。
 あ、そうだ。いつもいつも、名前を聞き忘れる。今度はきちんと聞かないと。


「名前聞いてもいい?」
「ニコ。わかってると思うけど、ホビット。ま、ここらじゃ滅多に見ないだろうけどね」
 うん、こんなところにホビットの村があるなんて聞いてないし……。










「お、お姉ちゃん?! どうして?!」
「どうしてじゃないわ! 心配、したのよ……?」


 ニコは私たちを見比べると、そっと出て行ってしまった。邪魔だと思ったのか、面倒事に巻き込まれる前に逃げたのかはわからない。


「ごめん。そうだよね。でも、私、どうしても……」
「何か、嫌なことある? 何かあった?」
「そうじゃ、ない。そうじゃないんだけど……」


 わからない。何があったって言うんだ? 私、覚えがないんだけど……。


「昨日ね、私、大天使アークエンジェルが入ってきたの、見てたよ」
「あぁ、結構綺麗だったね」
「敵なのに……。まあいいや。でも、私、何もできなかったから……」


 そ、それだけ? え、それで、国を飛び出していくって言うの?
 ん、ちょっと待って。今、言ったことをよく思い出して。
 『入ってきたのを見た』? それって、もしかして……。


「被害が大きかったの、私のせいだよ。さっさと連絡すればよかったんだ。でも、怖くて……」


 そっか……。そんなふうに思ってたんだ。
 確かに、そうすれば被害は小さかったかもしれないね。
 でも、そう思うのと、行動できるのは違うでしょう?
 それに、みんな治したしね。だって、マリンは、まだ……。ん?


「お姉ちゃん、わかってるの?! 私、もうすぐ30だよ!」


 え? ……あ! そらマリンうみは一個違い。ここに来た時、17で、今の年は13。
 ってことは、私が30で、マリンは29?!


「そうか。もう大人、か。獣人は若く見えるね……」
 子供だと思ってたのに……。うぅ、マジか……。


「でも、戻るよ。私、魔物とまともに戦えなかった。そのままじゃ嫌。学校、入れてよ」
「うん。……、ん?」


 ん……? 今、なんて?!

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