金髪、青目の美人エルフに転生!
第四十三話 ソフィアと蒼空
そんなことをしながら、私たちは一週間森をさまよった。
あの時のペリュトンとズメイを除けば、大した魔物にも会わなかった。
「多分、私たちの能力に気づいたのだろう。弱い者は気づくことすらできないから、寄ってきてしまう」
あのズメイを手に入れたあと、マリアの周りの魔力は急に強くなった。それもあるだろう。
「っと、魔物だ。珍しいな。……、オルトロスか?」
オルトロスって、二つの首の犬だよね。三つだったらケルベロス。
「あ、あのさ。ずっと気になってたんだけど、どうしてそんなに細かくわかるの?」
「え、ああ。魔力探知に能力探知も組み合わせて、だ。見えなくてもわかる」
「へえ、じゃあ、このメガネは劣等版ね」
「そういうことだな」
といった感じに、マリアと話しながら私は杖を構えた。
オルトロスがここまで来るまでの間、少しまとめてみようか。
今、マリアは左目に眼帯をしているから、魔眼は使えないはずだ。でも、彼女は正しく魔物の情報を言う。
おそらくは、普通の視覚ではなく、別のものが写っているのではないかと思う。
例えば、右目を開けていれば目の前のものが見え、閉じれば、別のものが見える、といった感じ?
これは、マリアがときどき目を閉じるからだ。もしかしたら、レーダーのように見えているのかもしれないし、一番近い魔物が見えるのかもしれないし、そこはわからない。
おっと、私にも見えた。あれだね。黒くて頭が二本ある犬。
「で、あれってどう倒すの?」
「私に任せてくれ。魔法が効くのかわからない」
すると、マリアはなにかの呪文を唱え始めた。足元に魔法陣が浮かび上がる。召喚魔法だ。
次に見たとき、マリアは大きな斧を持っていた。それこそ、マリアの身長か、それ以上の。だいたい百五十センチくらいか。毒々しい、紫色だ。
彼女は、どんな重さだかもわからないそれを軽々と振り回した。それから、オルトロスの後ろに飛んだ。思い切り振り上げる。
ざっくりと刺さり、私は目を逸らした。赤黒い液が噴き出したから。
どうしても直視できなかったけど、マリアが斧を取り落とすのだけは気がついた。音がしたし。
それと、マリアが倒れるのを、私は見逃さなかった。慌ててマリアを抱き止め、様子を見る。魔力か?
マリア=クリスティション
体力 600/3000 魔力 3000/3500 ダメージ 5%
攻撃力 600 魔法攻撃力 1000
体力か。3000ってことは、450が15%か。危険だな。魔力は減ってないのに。
「武器召喚は、体力を使うんだ。思ってたより、使ったな」
「マリ……。もう、ダメじゃん。もっと頼ってよ。マリだけそんな目に遭うとか、耐えられない」
マリアはちょっと意外そうな顔をしたが、「とりあえず休ませてくれ」と言って目を閉じた。
「ちょっと休みたいってさ。どうする?」
「うーん、今日はもう動かないほうがいいかもねぇ。リナはぁ?」
「私もそう思うよ。仮住居作る?」
結局作ることに決まり、私がサクッと終わらせた。
なんか、マリアがこんな無防備なとこって、初めて見た? いつも一番に気配に気づいてたし。
「マリねぇ。強がりだよねぇ。そのくせ、怖がりで臆病だよねぇ」
「そうだね。それをバレてないと思ってるのが可愛いや」
いつも強気でかっこいいマリアだけど、今は幼い少女の寝顔、まさに天使のようだと思う。
やっぱり、こんな状態で普通でいられるわけないんだ。いきなりこの少女が哀れに思えてくる。
日本人……、なのかな? だったらいいな、と思った。話も合うかもしれないし、久しぶりに昔の話でもしたいな。
そういえば、ちょっと前に気がついた事(まあ、なんとなくは感じてたけどね……)なんだけど、私の中に二つの人格……、人格とは言えないかもしれないけれど、ともかく、それらしきものがあることがわかった。
一つ目は、この風間蒼空の人格。これは普通に私、今の私だ。常に前にいて、私とも言える。
そして。もう一つは、おそらくだけど、ソフィアの人格だ。
というのも、別に、精神年齢で考えて三十くらいの私が、両親がそんなに恋しいはずがないというところから始まったものだ。
こちらの面倒なところは、私の意思で取り出すことができない上、現れても気づかないことだ。ただし、こちらは年相応のため、そういった感情は大きく現れる。
つまり、あの、宴のあとのアレは、ソフィアのせいということだろう。
「ソフィ? どうしたの? ジェイドさんが困ってるよ」
「え? あ、ごめん。ちょっと考え事しちゃった」
私がジェイドに笑顔を向けると、ジェイドはあからさまに困った顔をした。
「疲れてるか、それとも大きな悩みでもあります? そんな顔してますよ?」
え……? すごくドキっとした。よく見てるものだ。気をつけないとね。
心配させてしまうのは私のポリシーに合わないんだもん。
あの時のペリュトンとズメイを除けば、大した魔物にも会わなかった。
「多分、私たちの能力に気づいたのだろう。弱い者は気づくことすらできないから、寄ってきてしまう」
あのズメイを手に入れたあと、マリアの周りの魔力は急に強くなった。それもあるだろう。
「っと、魔物だ。珍しいな。……、オルトロスか?」
オルトロスって、二つの首の犬だよね。三つだったらケルベロス。
「あ、あのさ。ずっと気になってたんだけど、どうしてそんなに細かくわかるの?」
「え、ああ。魔力探知に能力探知も組み合わせて、だ。見えなくてもわかる」
「へえ、じゃあ、このメガネは劣等版ね」
「そういうことだな」
といった感じに、マリアと話しながら私は杖を構えた。
オルトロスがここまで来るまでの間、少しまとめてみようか。
今、マリアは左目に眼帯をしているから、魔眼は使えないはずだ。でも、彼女は正しく魔物の情報を言う。
おそらくは、普通の視覚ではなく、別のものが写っているのではないかと思う。
例えば、右目を開けていれば目の前のものが見え、閉じれば、別のものが見える、といった感じ?
これは、マリアがときどき目を閉じるからだ。もしかしたら、レーダーのように見えているのかもしれないし、一番近い魔物が見えるのかもしれないし、そこはわからない。
おっと、私にも見えた。あれだね。黒くて頭が二本ある犬。
「で、あれってどう倒すの?」
「私に任せてくれ。魔法が効くのかわからない」
すると、マリアはなにかの呪文を唱え始めた。足元に魔法陣が浮かび上がる。召喚魔法だ。
次に見たとき、マリアは大きな斧を持っていた。それこそ、マリアの身長か、それ以上の。だいたい百五十センチくらいか。毒々しい、紫色だ。
彼女は、どんな重さだかもわからないそれを軽々と振り回した。それから、オルトロスの後ろに飛んだ。思い切り振り上げる。
ざっくりと刺さり、私は目を逸らした。赤黒い液が噴き出したから。
どうしても直視できなかったけど、マリアが斧を取り落とすのだけは気がついた。音がしたし。
それと、マリアが倒れるのを、私は見逃さなかった。慌ててマリアを抱き止め、様子を見る。魔力か?
マリア=クリスティション
体力 600/3000 魔力 3000/3500 ダメージ 5%
攻撃力 600 魔法攻撃力 1000
体力か。3000ってことは、450が15%か。危険だな。魔力は減ってないのに。
「武器召喚は、体力を使うんだ。思ってたより、使ったな」
「マリ……。もう、ダメじゃん。もっと頼ってよ。マリだけそんな目に遭うとか、耐えられない」
マリアはちょっと意外そうな顔をしたが、「とりあえず休ませてくれ」と言って目を閉じた。
「ちょっと休みたいってさ。どうする?」
「うーん、今日はもう動かないほうがいいかもねぇ。リナはぁ?」
「私もそう思うよ。仮住居作る?」
結局作ることに決まり、私がサクッと終わらせた。
なんか、マリアがこんな無防備なとこって、初めて見た? いつも一番に気配に気づいてたし。
「マリねぇ。強がりだよねぇ。そのくせ、怖がりで臆病だよねぇ」
「そうだね。それをバレてないと思ってるのが可愛いや」
いつも強気でかっこいいマリアだけど、今は幼い少女の寝顔、まさに天使のようだと思う。
やっぱり、こんな状態で普通でいられるわけないんだ。いきなりこの少女が哀れに思えてくる。
日本人……、なのかな? だったらいいな、と思った。話も合うかもしれないし、久しぶりに昔の話でもしたいな。
そういえば、ちょっと前に気がついた事(まあ、なんとなくは感じてたけどね……)なんだけど、私の中に二つの人格……、人格とは言えないかもしれないけれど、ともかく、それらしきものがあることがわかった。
一つ目は、この風間蒼空の人格。これは普通に私、今の私だ。常に前にいて、私とも言える。
そして。もう一つは、おそらくだけど、ソフィアの人格だ。
というのも、別に、精神年齢で考えて三十くらいの私が、両親がそんなに恋しいはずがないというところから始まったものだ。
こちらの面倒なところは、私の意思で取り出すことができない上、現れても気づかないことだ。ただし、こちらは年相応のため、そういった感情は大きく現れる。
つまり、あの、宴のあとのアレは、ソフィアのせいということだろう。
「ソフィ? どうしたの? ジェイドさんが困ってるよ」
「え? あ、ごめん。ちょっと考え事しちゃった」
私がジェイドに笑顔を向けると、ジェイドはあからさまに困った顔をした。
「疲れてるか、それとも大きな悩みでもあります? そんな顔してますよ?」
え……? すごくドキっとした。よく見てるものだ。気をつけないとね。
心配させてしまうのは私のポリシーに合わないんだもん。
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