金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第三十三話  怪我人さん

 スカーレットが呼んでくれたシナモンに「ご褒美あげる」というと。
「本当ですか! でも、私に欲しいものなど……」
 少し悲しそうに私を見た。好意を受け取れないことが悲しいようだ。


「えっと、じゃあ、立場、かな。青磁色槍騎兵セラドンランチャーの犬の指揮。つまりはリーダーよ」
「リーダー! 私などには務まりません」


 私は彼の頭をそっと撫でてから目を見る。彼も目をそらさなかった。
「レオンが傷ついて休んでいる間。しっかり指揮してくれたでしょ? あなたなら大丈夫」
「わ、わかりました。必ずソフィア様の思っている通りの働きをいたしましょう」
「いい子。あ、レオンどうしてる?」
「今、そちらで覗いてますよ?」


 バッと振り返ると、ビクッとして逃げ出そうとするレオンがいた。
「こらこら。逃げないで。怪我は平気?」
 レオンはそっと私に左腕を見せた。包帯できつく巻かれていた。でも、その包帯は血が染み出ていた。


「多少は、痛いです。でも、大丈夫。気にしなければ……」
「馬鹿。そんなこと言ってちゃダメだよ。さあ、早く包帯とって」
 少しためらってから、レオンは包帯を取り除いた。私はだいぶ復活した魔力を使って上回復アドヴァンストヒールをかける。
「ほら、これでよし。もう、ちゃんと治さなきゃダメだから」


 ふとレオンの顔を見ると、その顔は濡れていた。私の視線に気がつくと、ギュッと目をつぶって唇をかんだ。
 でも、まだまだ流れてくるそれを、困ったようにレオンは笑った。


「ソフィア嬢。私はあなたの配下のつもりでした。でも、私、やっぱり……」
「レオン、ダメよ。抜け駆けはよくないわ。みんなも同じでしょうし、それに……」


 私は言うのを躊躇った。だって、レオンの前では言ってはいけないことだと思ったのだ。
「それに、なんです?」
「うぅ……。私、決めらんないもん。まだ、ダメ。十二歳なのだから……」


 結局、言うことはできなかった。私は多分、レオンが一番じゃないと思うから……。ごめんなさい。わかってるん、だけどね……。










「ねぇ、ねぇジェイド。ジェイドの倒した人って、だぁれ?」
「え? 名前なんか聞きませんでしたが」
 まぁ、そうでしょうね。ジェイドにとって、おもちゃでしかなかったのだろう。


「もう。じゃあ、主将含めて将軍全員連れて来なさい?」
「わかりました。ここでいいですか?」
 私はそれでいいと返事をしてジェイドを見送った。


「なんの話ししてたんですか、ソフィア嬢?」
 瑠璃色の魔力がじわじわと私のそばに寄ってきた。うん、見ないでもわかる。サウルだ。
「将軍呼んでって。それだけよ」
「ホントですか? 変なこと話してないですか? あんな声出して……」
 ああ、いけないいけない。もうちょっとで殴っちゃうとこだったよ?


「あのね、サウル。ジェイドは私の使い魔なの。人でもないのよ?」
「でも、種族は違っても……。そう、ですよね?」
 サウルの顔は、何かあるような顔だった。これ以上なにか言えない。


「ソフィアお嬢様、連れて来、ま、し、た?」
 ジェイドが困った顔でこちらを見ている。私はサウルをどけてそちらを見た。
「おはようございます! 私がソフィアです。えぇと……。みなさんは、ここでいいんですか……?」
「お願いだ! 俺の妻と子供、もう何日もまともな食事してないんだ」
「俺の家も……。お願いします!」


 ああ、こういう状況なんだ。だから、攻めてきた。私は彼らが可哀想で、何も言えなかった。
 けどさ。別の方法あったよね? 入れてくれっていえば、拒否はしなかったのに。まあいいや。特訓になったと考えよう。痛かったけど!


「では、そちらの街は、どこにあるのですか?」
「海の向こうの小さな島だ。森以外の唯一のエルフの街なんだ」
「なるほど。では、ワープは私が行います。今すぐにでも始めることはできます。料理も足して、でも?」


 彼らが泣いて喜ぶものだから、私は偉い人にでもなったようだった。もちろん、周りから見たら、ということ。私自身、どうでもよかった。










 そのあと、ジェイドも手伝ってくれて、住民約十万人をこちらに呼び寄せた。
 この戦いには五万人くらいでていたそうだ。ということは、一人平均5,60人は倒したのか? 素晴らしい。
 でも、実際はサウルが一万人くらい倒してたりする。


 私たちはみんなで料理の準備をし、全員で宴を楽しんだ。
「あ、で、問題がありまして。部屋の数が足りないと思うんですよね。今、四万人くらいなら住めると思うんですが。暫くさっきの場所でもいいです?」
「問題はない。住ませてもらえれば……」


 なら良かった。あと二軒、作り上げなくては。みんなで作れば、多分すぐ終わるとは思う。当然ポイントもある。あ、その前にカードを作らないと。
 忙しいなぁ……。抜け出しちゃ、ダメだろうか? 本当はこんなに目立ちたいわけじゃないんだよね……。


「ジェイド、私いない理由は適当に付けといて。じゃ、よろしくー」
「え、ちょ、待っ!」
 何も聞こえない。何にも聞こえない。私は今すぐカードを作らなくてはいけないのだ。


「あ、ソフィ! おめでと。カードは私たちからプレゼント。」
「嘘! あ、ありがと……。リリ。マリ。リナ。」
 いきなりドレスを着たリリアーナ、マリア、エベリナが声をかけてきた。大量のカードとともに。


「ソフィアお嬢様! って、リリアーナ様、マリア様、エベリナ様」
「あはは、カードは作ったから、ソフィは引っ張ってでも連れてって」
「やあああ! 普通に行くから! 絶対やめて!」


 そう言うと、みんながどっと笑った。レルフ家令嬢だというのに、からかうとか、どうなってるのよぅ。

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