金髪、青目の美人エルフに転生!
第十七話 宴の時2
さて、邪魔なジェイドを退けたことだし美味しいものでも食べようか。
結構減っていたけれど、残しておいてくれたみたい。主にシナモンが頑張ったようで。
ところで、ジェイド、どうしたろう? まさか泣いては……、いないな。絶対ないだろう。
ガシャーン、と。大きな音が響く。
『作りたての窓ガラスが割れた音』だと気付き、見ると、綺麗な白髪のダークエルフがいた。何で、今、此処に……!
「おやおや、だいぶいるねぇ?」
彼女は、コツコツと規則正しい足音で歩いてきた。辺りを見渡し、楽しそうに微笑む。
「君がソフィア?」
「み、見張りはどうした?」
「見張り?」
今日は、ハナが見張りを買って出てくれた。入口は一つしかないし、それ以外には結界を張っておいた。入ろうと思ったら、花をどうにかするしかない。まさか……。
「ちょっと悪いことしちゃったよ。彼女、未来から来てるみたいだからね。邪魔だし」
「ハナに……何をしたの!」
私は今まで制御して体中に回していた魔力をすべて外に開放した。辺りが濃いピンク色で覆われ、テーブルがなぎ倒され、窓ガラスが割れた。
人々は私の姿を見て、怯えたようにしていた。それもつかの間で、すぐに強い魔力でやられてしまったよう。ぐったりとその場に座り込んでいた。
「あの子、ただの見張りでしょ? 見張りがああなるのなんてよくあることさ」
「違う……! ハナは、ただの見張りじゃないの!」
リリアーナ、エベリナ、マリアが私を止めようと近づいて、魔力に押されて少し飛ばされる。
「ソフィア! 抑えて! このままじゃ……」
リリアーナが何か叫んだようだが、魔力に妨害されて聞こえない。もしくは、私がシャットアウトしてしまったのかもしれない。
いつもの杖を手に握り締め、出来るだけ冷静に、魔法を出す。
「蔓」
できるだけ被害が出ないように。もう遅いけれど。私は素早く彼女を縛り上げた。きつく、きつく巻いていく。
「白石弾」
頭をめがけて飛ばす。狂いはない。だが。
「遅いな。勇者も、その程度か」
いつの間にか背後に回られている。そのまま私の体をがっちりと押さえ込んだ。
抜けだした? いや、そんなはずはない。これって、まさか……。
「分身?」
「よくわかったな」
いつかシナモンがやっていた技だ。私たちも練習したけれど、盗賊のルアンナしかできなかったもの。
背中にコツっと杖が当てられる。まずい。逃げられない。
「落雷!」
うわ、よりによって雷……。痛そうだなぁ。こんな風に死ぬなんて、嫌……。
って、ん? 今のは、男の人の声。これって……。
「ジェイド!」
助けに来てくれたの?!
「ソフィアお嬢様! あは、ごめんなさい!」
……、へ?
「いったあ?!」
あの雷は、あの子を伝って私に流れた。どうやら、さっきの仕返しのようで。
「ふふふ。私に逆らったら、どうなるか……」
「うるさい。あー、いったいなあ……」
完璧な登場しといて、何やってくれるんだよ。すぐにエベリナが治癒してくれなかったら、どうなっていたか。
まあ、流石に手加減してたんだろうけどね。でも雷は嫌。凄く痛い。
「ああ、もう、ジェイド。さっきのは本当に悪かったって。それで、終わったの?」
「終わって暇になったらソフィアお嬢様に杖が突きつけられていたもので」
終わったんだ。素晴らしい! 凄く短い時間だったのに。
「じゃあ、配ってきて。ジェイドも一枚貰いな。私はちょっとしたらいくよ」
さっき魔力を解放したせいで、ものすごく体力を奪われてしまった。少し休まないと動けなさそう。
「あ、そうそう。ハナ様は無事でした。というか、死にかけてはいましたけれど。すぐに治癒師が向かったので」
「そう」
「……お礼のひとつくらいないんですか?」
と、いうことは。ハナを治療したのは、ジェイドかもしれないな。
「あ、ありがとう……?」
なんで使い魔にこんなことしているんだろうか。誘導が上手いからか? やな奴だ。なんでこんなの召喚したんだ?
「ふふふ。それじゃ、足りませんねぇ」
「馬鹿野郎」
  私は思い切り頭を殴ってやった。ゴン、と鈍い音がして、私の手も痛くなる。この悪魔、凄く固い。
「まったく。せっかく助けてあげたのに。まぁ、いいでしょう。カード、配ってきますね」
あっさりと出ていき、ポツリ、一人残された。なんとなく、違和感がある。
「そうか、一人になんて、なったこと、ない」
家では、母か、ハナか、シナモンがずっとそばにいた。こちらの私の家でも、シナモンがいるし、外に出れば、もっとたくさんの人がいる。こうやって、ひとり部屋に取り残されたみたいなことは、初めてなのかもしれない。
おかしいな、前世では、なんともなかったのに。
「みんなと一緒にいるのが、普通になったの……?」
いいんだか、悪いんだか。ともかく、変わったのは、すごくわかる。
それにしても。ジェイドはあの顔を最大限に活かしてるから、ちょっと困る。あんなに近くに寄ってこられると、って!
あいつは悪魔だし。もっと言えば私の召使いみたいなもんだし。
でも、悪魔だなんて思えないほどかっこいいし、人間っぽい。悪魔だから、かっこいいのか? そのへん、どうなんだろ。呼び出す悪魔、みんなああなんだろうか? それは、色々な意味で困るぞ……。
「お姉ちゃん、入っていい?」
「しーちゃん? いいよ」
そぉっとマリンが入ってきた。淡い水色の綺麗なワンピースを着ている。
「お姉ちゃん、さっきの魔力、すごいねー。でも、ローブじゃなかったけど、平気なの?」
「あー、あれ。別に、たいしたことないよ。今日ゆっくり休めば、明日には元通り」
「そっか、良かった。みんな、魔力でやられてたけどね」
あれは反省してる。あんなに強い魔力を一気に開放したら、いきなり地上から富士山の上にワープするくらい空気が変わる。え、わかりにくい?
私もよくわかんないんだから、しょうがないじゃん。私は感じないんだからさ。
「ともかく、もうみんな大丈夫だって。ただ、あの緑髪の男の人に抱かれて連れてかれる様子が、ちょっと……」
噂になるな。悪魔だもんな。使い魔だもんな。
「とりあえず、私は平気だと伝えておいて」
というか、自分の使い魔に倒されるとか……。『私の街』なんて大丈夫か?
結構減っていたけれど、残しておいてくれたみたい。主にシナモンが頑張ったようで。
ところで、ジェイド、どうしたろう? まさか泣いては……、いないな。絶対ないだろう。
ガシャーン、と。大きな音が響く。
『作りたての窓ガラスが割れた音』だと気付き、見ると、綺麗な白髪のダークエルフがいた。何で、今、此処に……!
「おやおや、だいぶいるねぇ?」
彼女は、コツコツと規則正しい足音で歩いてきた。辺りを見渡し、楽しそうに微笑む。
「君がソフィア?」
「み、見張りはどうした?」
「見張り?」
今日は、ハナが見張りを買って出てくれた。入口は一つしかないし、それ以外には結界を張っておいた。入ろうと思ったら、花をどうにかするしかない。まさか……。
「ちょっと悪いことしちゃったよ。彼女、未来から来てるみたいだからね。邪魔だし」
「ハナに……何をしたの!」
私は今まで制御して体中に回していた魔力をすべて外に開放した。辺りが濃いピンク色で覆われ、テーブルがなぎ倒され、窓ガラスが割れた。
人々は私の姿を見て、怯えたようにしていた。それもつかの間で、すぐに強い魔力でやられてしまったよう。ぐったりとその場に座り込んでいた。
「あの子、ただの見張りでしょ? 見張りがああなるのなんてよくあることさ」
「違う……! ハナは、ただの見張りじゃないの!」
リリアーナ、エベリナ、マリアが私を止めようと近づいて、魔力に押されて少し飛ばされる。
「ソフィア! 抑えて! このままじゃ……」
リリアーナが何か叫んだようだが、魔力に妨害されて聞こえない。もしくは、私がシャットアウトしてしまったのかもしれない。
いつもの杖を手に握り締め、出来るだけ冷静に、魔法を出す。
「蔓」
できるだけ被害が出ないように。もう遅いけれど。私は素早く彼女を縛り上げた。きつく、きつく巻いていく。
「白石弾」
頭をめがけて飛ばす。狂いはない。だが。
「遅いな。勇者も、その程度か」
いつの間にか背後に回られている。そのまま私の体をがっちりと押さえ込んだ。
抜けだした? いや、そんなはずはない。これって、まさか……。
「分身?」
「よくわかったな」
いつかシナモンがやっていた技だ。私たちも練習したけれど、盗賊のルアンナしかできなかったもの。
背中にコツっと杖が当てられる。まずい。逃げられない。
「落雷!」
うわ、よりによって雷……。痛そうだなぁ。こんな風に死ぬなんて、嫌……。
って、ん? 今のは、男の人の声。これって……。
「ジェイド!」
助けに来てくれたの?!
「ソフィアお嬢様! あは、ごめんなさい!」
……、へ?
「いったあ?!」
あの雷は、あの子を伝って私に流れた。どうやら、さっきの仕返しのようで。
「ふふふ。私に逆らったら、どうなるか……」
「うるさい。あー、いったいなあ……」
完璧な登場しといて、何やってくれるんだよ。すぐにエベリナが治癒してくれなかったら、どうなっていたか。
まあ、流石に手加減してたんだろうけどね。でも雷は嫌。凄く痛い。
「ああ、もう、ジェイド。さっきのは本当に悪かったって。それで、終わったの?」
「終わって暇になったらソフィアお嬢様に杖が突きつけられていたもので」
終わったんだ。素晴らしい! 凄く短い時間だったのに。
「じゃあ、配ってきて。ジェイドも一枚貰いな。私はちょっとしたらいくよ」
さっき魔力を解放したせいで、ものすごく体力を奪われてしまった。少し休まないと動けなさそう。
「あ、そうそう。ハナ様は無事でした。というか、死にかけてはいましたけれど。すぐに治癒師が向かったので」
「そう」
「……お礼のひとつくらいないんですか?」
と、いうことは。ハナを治療したのは、ジェイドかもしれないな。
「あ、ありがとう……?」
なんで使い魔にこんなことしているんだろうか。誘導が上手いからか? やな奴だ。なんでこんなの召喚したんだ?
「ふふふ。それじゃ、足りませんねぇ」
「馬鹿野郎」
  私は思い切り頭を殴ってやった。ゴン、と鈍い音がして、私の手も痛くなる。この悪魔、凄く固い。
「まったく。せっかく助けてあげたのに。まぁ、いいでしょう。カード、配ってきますね」
あっさりと出ていき、ポツリ、一人残された。なんとなく、違和感がある。
「そうか、一人になんて、なったこと、ない」
家では、母か、ハナか、シナモンがずっとそばにいた。こちらの私の家でも、シナモンがいるし、外に出れば、もっとたくさんの人がいる。こうやって、ひとり部屋に取り残されたみたいなことは、初めてなのかもしれない。
おかしいな、前世では、なんともなかったのに。
「みんなと一緒にいるのが、普通になったの……?」
いいんだか、悪いんだか。ともかく、変わったのは、すごくわかる。
それにしても。ジェイドはあの顔を最大限に活かしてるから、ちょっと困る。あんなに近くに寄ってこられると、って!
あいつは悪魔だし。もっと言えば私の召使いみたいなもんだし。
でも、悪魔だなんて思えないほどかっこいいし、人間っぽい。悪魔だから、かっこいいのか? そのへん、どうなんだろ。呼び出す悪魔、みんなああなんだろうか? それは、色々な意味で困るぞ……。
「お姉ちゃん、入っていい?」
「しーちゃん? いいよ」
そぉっとマリンが入ってきた。淡い水色の綺麗なワンピースを着ている。
「お姉ちゃん、さっきの魔力、すごいねー。でも、ローブじゃなかったけど、平気なの?」
「あー、あれ。別に、たいしたことないよ。今日ゆっくり休めば、明日には元通り」
「そっか、良かった。みんな、魔力でやられてたけどね」
あれは反省してる。あんなに強い魔力を一気に開放したら、いきなり地上から富士山の上にワープするくらい空気が変わる。え、わかりにくい?
私もよくわかんないんだから、しょうがないじゃん。私は感じないんだからさ。
「ともかく、もうみんな大丈夫だって。ただ、あの緑髪の男の人に抱かれて連れてかれる様子が、ちょっと……」
噂になるな。悪魔だもんな。使い魔だもんな。
「とりあえず、私は平気だと伝えておいて」
というか、自分の使い魔に倒されるとか……。『私の街』なんて大丈夫か?
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