金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第五話  魔法学校に行こう

「うわぁ、人がいっぱい……」


 私は早くも人の多さに驚いていた。だって、人だらけなんだよ?
 高校生だったときは都会も結構行ってたんだけど、四人の生活ばかりだったからか、やけに多く感じられる。


 三月のある日。私たちは試験待ちだった。試験というのは、つまり入試だ。
 だって、いくらなんでも、喋れない子が入ってきたら、困るでしょ? それに、クラス分けの学力調査でもあるって。


 そう、入試があるってことは、つまりね。
 さっき聞いたんだけど、六歳から、『入る事が出来る』んだそうだ。義務じゃなかった。


 三人で一部屋に入って、一人ずつやるそう。で、私は三人目だ。
 とはいえ、それって一人目不利でしょ? でも、一人ずつだと効率が悪い。だから、やることの紙が配られる。


 その一 名前を言う
 その二 誕生日を言う
 その三 絵を見て名前を言う
  この先はできる人だけ
 その四 計算をする
 その五 文字を読む
 その六 出来る中で一番強い魔法を撃つ


 といった感じだ。こんなもんなら楽にできる。
 おっと、もう一人目が始まるようだ。よく観察しておくことにしよう。


「アルネ=ハリアンです。たんじょーびは、しちがつのじゅうさんにちです」


 ……、ひどく遅くて聞きにくい。ん? もしかして、みんなそのレベルなの? え?
「これは?」
「ねこさんです」
「これは?」
「おうまさんです」


 あ、そうか。六歳といっても、成長が遅いんだった。
 単純に計算するだけなら、エルフの成人は三十歳。20÷30で、大体0.6か。6×0.6で、3.6歳。つまり、幼稚園性くらい。そんなもんか。
 その子は計算、読み、魔法をすべてパス。そんなもんかもしれない。




「では、次の方」
「はい」


 私の番だ。よく考えてみて欲しい。三歳児に紛れて二十すぎの大人がいたら? 恥ずかしいと思わない? そう思った途端に、恥ずかしくなってしまった。


「あら? どうしたの?」
「いっ、いえ! なんでもありません。名前でしたね。ソフィア=レルフです。誕生日は、一月の二十日です」


 ローブの端を少し持って、優雅に一礼。顔を戻して、笑顔にする。
「!! え、ええ。次に行きましょう。これは?」


 その絵は、人に猫の耳と尻尾がついた絵だった。
「え?! ケットシー? それとも、獣人ですか?」
「ん、そうなんだけど……。一応猫なんだけど……」
「猫?! これ見て猫って答える人がどこにいるんです?!」


 私は驚いて叫んだ。だって、どうしたらケットシーの絵を見て猫って答えられる?
「うん、まあ、そうね。じゃあ、これは?」
「人狼? でも、さっきの流れからすると……」
「一応、犬で」
「だから、なんで?!」


 なんて会話をしながら、ようやく第三段階を終えることができた。
「計算は?」
「できます」
「2+3は?」
「馬鹿にしてます? 5ですけど」
「30-7」
「23」


 そんな計算、簡単すぎて話にならん! 余計恥ずかしいじゃないか。二十すぎの大人がにぃたすさんは、ごです。だぁ?!
 ほら、ふざけてるとしか思えないじゃん!


「むぅ、300÷6」
「50」
「70×6」
「420」


 すると、その人は驚いたように目を見開いていた。
「どうかされました?」
「ううん、いいの。すごいね。誰に教わったの?」
「!! えっと、その……。母、です」


 焦った。誰に教わったの? 転生前の先生です。なんて言えるもんか。


「文字は?」
「いけます」


 こればっかりは仕方がなかったが、やってみたところ、日本語に似ている。簡単だった。
 そんなわけで、そこまで終えた。


 さっきやっていた子の親が驚いてこちらを眺めている。私の母だけだ。すっごく落ち着いてるの。
「ふふ。すごいわね。いきなり六年生でもできそう。それじゃ、最後。魔法は?」
「できますよ? もちろんです」


 これはパフォーマンスの時間。自分の魔法をできる限りうまくアピールするんだ。


 まずは、土魔法で少しローブを汚した。そのあと、掃除魔法でキレイに浄化。
 次に、瓶(もどき)で切ってから母にきっちりと教わった回復魔法だ。
 歯で指を少し切って、回復魔法で直してみせる。


「ねえ、ちょっと待って。無詠唱でできるの?」
「できないのですか?」
「いや、あんまり多くはないね。さすがはレルフの血だわ」


 そんなことで、ちょっと早いが、攻撃魔法を見せることになった。
 私の得意なのは水魔法。水で矢を形作る。勢いをつけて……。
「『水矢ウォーターアロウ』」


 放つ。これが一番得意な魔法だと思う。威力は少ないけど、連発も可能。何より使いやすい。だって、火とか雷で火事になったら大変でしょ? 水だったら、乾かせばいいだけの話。
 とは言っても、水球ウォーターボールじゃ華がない。矢の方が優雅じゃない? ともかく、終わったら乾せばいい。


 まあ、そのはずだったんだけどさ。
 矢は壁をぶち抜いて、それでも進んで、三つの壁を破壊して止まった。


「ああああ! 失敗したぁ!」
 私は叫んでしゃがみ込んだ。あんなに手加減する練習をしたのに。先生の挑発に乗って、つい……。


「ソフィアさん、分かりました。いいですよ。直せます?」
「その、初級魔法しかできなくて」
 先生はにっこり笑って壁をすべて修復した。
「合格です。入学後が楽しみですよ」
 先生はにっこり笑っていった。


「あ、ありがとうございます!」
 私はローブの端を持って一礼してから、くるりと体を半回転させると、母のもとに駆け寄った。


「合格だって。」
「よかったわね。今日はケーキを焼きましょう。」
 母は笑って頭を撫でてくれた。って、またそれか。どれだけケーキ焼くんだ?


 まあ、当然かもしれないのだけれど、隣の親は放心状態で、子供に「ママ、大丈夫?」などと言われていた。

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