剣神勇者は女の子と魔王を倒します
第41話 和の島
「よし、飢饉も落ち着いたし、うちにおいで」
「うちっていうと・・・」
「うん、うちの国。王様に『そろそろ連れてこい』って言われたんだ」
和の島、だっけ。賢音の話によると、今の時期(四月)は桜がたくさん咲いていて、とても綺麗だとか。この国にも桜はあるが、一本とかで植わっている事が多い。賢音はそれを見ると
「寂しいね、これ」
と呟くのだった。
「よし、そうと決まったら船に乗って! きっと驚くよ」
「ちなみに、どれくらいかかるんだ?」
「うーん、一カ月かな」
「・・・。そうか」
一カ月ってことは、どんなに頑張っても往復二カ月掛かるらしい。
そんな簡単に行けるか! と思うが賢音も早くと使いの持ってくる手紙で急かされているらしいし、行く事にした。三日後に出発だけど。
「王様! 剣神様をお連れしました!」
「これはこれは、長旅御苦労」
王城に案内された俺たちは、な、なんだろう、茫然とした。イメージと全く違うからだ。
それを、賢音が一つ一つ説明してくれるが、正直聞き慣れない単語ばかりだ。『タタミ』とか、『フスマ』とか、『トコノマ』とか。『エンガワ』っていう外廊下みたいなのもある。これは城と呼べるのか?
それを見たうえで王様を見ると、やっぱり違う国だな、という感じがするというか。和服を着ている王様とか、初めて見た。
「あ、えっと、アルファズール大陸パクスから来た、剣神ユリエル・ルーズヴェルト、です」
「此方は剣神様の家族ですよ。このお方が我が国の王様、アルトリート様です」
名前は普通だった!
「昔はみんな漢字だったんですけれどね、いつの間にかこうなったんですよ」
「まあそうらしいな。我はお前ほど過去の事に詳しくはない」
「ですね。そりゃ、見たことあるの、俺くらいですもん」
ええと、これ、どうすればいいんだろ。賢音と王様の二人で喋ってる・・・。
困っていると、二人ははっとしたように俺の方に向き直し、本題へ。気づいてくれてよかった。
「ええと、あ、この度は、アルファズールを飢饉から救って頂き、ありがとうございます」
「いやいや、あれ、うちの国の噴火のせいだから」
「そうだったんですか?!」
「だから気にしないで、って女王様には言っておいて」
何処の火山灰だろう、とは思っていたけれど・・・。此処だったのか。
まあそれは良いとして。何で俺たちを此処に呼んだのだろう。
「まずは、剣神殿の力がどのくらいのものなのか見てみたくてな。賢音、テレンスを呼んでまいれ」
「承知ー」
軽いな、賢音。まあそれはともかく。テレンスという名前、聞き覚えがあるのだけれど、一体誰だろう? 和の島の人って、会った事無いはずなんだが・・・。
「テレンス・シャロットです。覚えていますか?」
「・・・、あー!」
「思い出してくれましたか、嬉しいです」
武術大会の決勝手戦った男の子だ。グレーの髪に茶色の目。そうか、あの時の・・・。
でも、どうして此処に? 船が出来たのはつい最近のはずだ。
「そうそう。でもね、彼は特別で、空を飛んで海を渡ったんだ」
「・・・。は?」
「妖術ですよ。人間なのに、珍しいんですけれどね」
そういうと、テレンスはふわりと宙に浮いた。
どうやら、飛べて、尚且つ強い人でないと途中、魔物に殺されてしまうらしい。飛びながらの攻撃は難しいらしく、テレンスしか成功しなかったとか。
という事で、テレンスはあの時、力を見る為に参加したから勝つつもりはなかったらしい。道理で力を抜かれた、と思ったわけだ。
「今日は本気で戦わせて貰おうと思いますけれどね。王様、よろしいのですよね?」
「ああ、その為に呼んだんだ。賢音、場所はいつもの所だ、案内してやってくれ」
「はーい。じゃ、みなさん、ついて来て下さい」
広い運動場だ。そこで、俺は真っ赤な剣を握ってテレンスと対峙する。
テレンスの使う剣は『カタナ』というらしい。なんだか変わった形をしている。和の島で使われているが、他の場所ではあまり流行しなかったらしい。
「じゃ、行かせて貰いますね」
「ああ、よろしくお願いしますッ!」
テレンスの動きは、とても鮮やかで、無駄な動きが無い。細い剣身なのに、俺のバスタードソードを受け止められる。どんな硬度なんだ・・・。テレンスはニヤリと笑う。
「どうしたんですか? まだまだですよ」
とはいえ、俺だって負けるわけにはいかないし、だいたい、剣神なのだ、どんな剣士にも負けるはずがない。そう言い聞かせる。心情は、動きにとても大きく関係する。絶対勝てる。負けるはずがない。
「? 動きが良くなった? っ! 痛い」
真っ赤な剣が、さらに赤く。一発当たった。これは大きい。なにせ、心情が動きに関係する、という事は。当たったという事は、当てられるのだ。その自信は相当大きい。
「はは・・・。ユリエルさん、強いですね」
「テレンスも、な。疲れた」
「また・・・。なんだ、勝てなかった。勝てたら、王様に褒めて貰おうと思ったのに」
テレンスは明らかにしょんぼりしている。どうしたのだろう、と思っていると、賢音が説明してくれた。
「テレンスは、これに懸けてたんですよ。勝てたら、王様に位を貰えた」
「あ・・・。そうだったのか」
「いや、でも、まだまだだって分かりました。ユリエルさん、ありがとうございました」
王城に戻ると、王様は笑ってテレンスを労った。軽く笑うと、一礼をし、部屋を出て行った。
「テレンスでも勝てないか。それは相当だな。ユリエル殿、魔王戦、頼むぞ」
「はい。任せて、とは言えないですが、出来る限り」
「まあ、まだ今すぐという訳でもないしな。賢音、明日、この辺りを案内してやってくれ。今日泊まるのは、来客用の部屋だ」
「じゃあ、案内してきます」
また、タタミの和室だ。ベッドではなく、布団を敷いて寝るらしい。
「じゃあ、夕食の準備が出来たら呼びます。ごゆっくりー」
「・・・。賢音のテンション、なんか変だよな」
「ま、まあ」
此処に来たのは俺たち家族とエレナ、そのホムンクルス。アナとクリスタも一緒だ。計十六人? で三部屋。大きさの違う部屋だ。一つに俺とエディ、メリー、リリィとティナ。もう一つにエレナ、梓桜、澪桜、奈桜、咲桜ちゃん。それよりちょっと大きい部屋にリーサ、エド、ルナ、エリー、アナとクリスタ。
「ね、ねえ! 今日は、みんなで、やってみない?」
「え・・・! は、恥ずかしいわ。みんなで、なんて」
「ボクは良いと思うけどなぁ。ね、リリィちゃん」
「い、いや、でも・・・。やっぱり・・・恥ずかしいです」
「二対二だけど、どうしよっか」
「・・・ああ、なるほど、俺の意見は通らないのか」
『! あ、いや、そういう訳じゃ・・・』
「たまにはいいと思うけどな」
「へえ、これがお米なのね・・・。初めてだわ」
「ん、美味しいよ、ユーリ様」
「何となく懐かしい気がします・・・」
初めての和食に興味津々。結構美味しい。妖孤は昔、和の島に住んでいたらしい。だからか、ティナは何となく懐かしい気がするそうだ。あと、エレナは相当気に入ったみたいだ。
風呂は露天。賢音が『妻と楽しく入ってらっしゃい!』と俺たちを混浴用の風呂に連れていくもんだから、一緒に入った。全員一緒なんて初めてに決まっている。本人には文句を言ったが、本当は凄く嬉しい。賢音、ありがとう!
ああ、夜、楽しかったぞ。たっぷり時間を掛けたから、寝不足なのはまあ仕方ない。物凄く疲れたが、まあ、幸せな物だ。
という事で次の日。賢音に案内して貰っている。
「ほら、これが桜」
『わああ! 凄い!』
桜は満開だった。そして、奥の方までずーっと、沢山植えられている。何て綺麗なんだろう。桜のトンネルが出来上がっている。
「向こうに行くと、ピクニックみたいにお花見出来るよ。行く?」
『行きたい!』
若葉の上にビニールシート敷いて。賢音がこっそり持って来ていたお弁当広げて。子供たちがはしゃいでいるのを見ながら桜も見・・・、普通逆か? 花見、だもんな。
まあそれは良いとして。すぐ其処には川がある。その反対側には桜。さっきは街路樹みたいだったが、此処はなんだか公園みたいだ。賢音が言うには、其処にある川が氾濫した時用の堤防の上に桜が植えられているらしい。
「お父様、桜、綺麗」
「ん、エリー。頭に花びら乗ってるぞ?」
「え・・・? あ」
エリーの手に乗せた花びらは、春風に寄って飛ばされてしまった。少し残念そうな顔のエリー。けれど、すぐに笑顔になる。その風に乗って、花びらが宙を舞っている事に気が付いたからだ。
ふと視線を動かすと、ホムンクルスたちが目に入った。黒髪のホムンクルス達は、ものすごく桜が似合う。名前にも桜があるし。
「ふふ、みんな可愛い。咲桜ちゃん、川に落っこちないようにねー!」
「分かってますよぉ! 大丈夫です!」
今日は王城で着物を借りてきたから、みんな着物。だから、余計に桜が似合う。ホムンクルス達は赤い着物を着ている。とても美しい。俺たちも良いけれど、やっぱり黒髪が一番似合うな。あ、ティナは別だ。どんな着物も美しく着こなせる。なんでかは知らん。
ちなみに、うちにも黒髪は居る。メリーとリーサだ。お揃いの、紫色の着物を着ている。
「良いな、リーサ姉とメリーさん。凄い、似合ってる。可愛い」
「ルナちゃん、ありがとう。でも、ルナちゃんも似合ってるよ、可愛いよ」
「そ、そう? あ、ありがとう」
あ、ルナ嬉しそう。俺に気が付いたメリーがウインクをうった。全く、可愛い奴め。
ピクニックなんて久しぶりだけれど、みんな楽しそうで良かった。此処を紹介してくれた賢音に感謝しないと。
「ね、来てよかったでしょう? みんな可愛いなぁ」
「俺の家族だ、手を出すなよ?」
「え? エレナちゃんなら良いんでしょ?」
「え?」
「え?」
エレナ? た、確かに一人身だけど・・・。
「結婚する気ないらしいぞ?」
「そう、じゃ、思い直させてあげなきゃ!」
ええと・・・。これ、何処まで本気なんだ?
「うちっていうと・・・」
「うん、うちの国。王様に『そろそろ連れてこい』って言われたんだ」
和の島、だっけ。賢音の話によると、今の時期(四月)は桜がたくさん咲いていて、とても綺麗だとか。この国にも桜はあるが、一本とかで植わっている事が多い。賢音はそれを見ると
「寂しいね、これ」
と呟くのだった。
「よし、そうと決まったら船に乗って! きっと驚くよ」
「ちなみに、どれくらいかかるんだ?」
「うーん、一カ月かな」
「・・・。そうか」
一カ月ってことは、どんなに頑張っても往復二カ月掛かるらしい。
そんな簡単に行けるか! と思うが賢音も早くと使いの持ってくる手紙で急かされているらしいし、行く事にした。三日後に出発だけど。
「王様! 剣神様をお連れしました!」
「これはこれは、長旅御苦労」
王城に案内された俺たちは、な、なんだろう、茫然とした。イメージと全く違うからだ。
それを、賢音が一つ一つ説明してくれるが、正直聞き慣れない単語ばかりだ。『タタミ』とか、『フスマ』とか、『トコノマ』とか。『エンガワ』っていう外廊下みたいなのもある。これは城と呼べるのか?
それを見たうえで王様を見ると、やっぱり違う国だな、という感じがするというか。和服を着ている王様とか、初めて見た。
「あ、えっと、アルファズール大陸パクスから来た、剣神ユリエル・ルーズヴェルト、です」
「此方は剣神様の家族ですよ。このお方が我が国の王様、アルトリート様です」
名前は普通だった!
「昔はみんな漢字だったんですけれどね、いつの間にかこうなったんですよ」
「まあそうらしいな。我はお前ほど過去の事に詳しくはない」
「ですね。そりゃ、見たことあるの、俺くらいですもん」
ええと、これ、どうすればいいんだろ。賢音と王様の二人で喋ってる・・・。
困っていると、二人ははっとしたように俺の方に向き直し、本題へ。気づいてくれてよかった。
「ええと、あ、この度は、アルファズールを飢饉から救って頂き、ありがとうございます」
「いやいや、あれ、うちの国の噴火のせいだから」
「そうだったんですか?!」
「だから気にしないで、って女王様には言っておいて」
何処の火山灰だろう、とは思っていたけれど・・・。此処だったのか。
まあそれは良いとして。何で俺たちを此処に呼んだのだろう。
「まずは、剣神殿の力がどのくらいのものなのか見てみたくてな。賢音、テレンスを呼んでまいれ」
「承知ー」
軽いな、賢音。まあそれはともかく。テレンスという名前、聞き覚えがあるのだけれど、一体誰だろう? 和の島の人って、会った事無いはずなんだが・・・。
「テレンス・シャロットです。覚えていますか?」
「・・・、あー!」
「思い出してくれましたか、嬉しいです」
武術大会の決勝手戦った男の子だ。グレーの髪に茶色の目。そうか、あの時の・・・。
でも、どうして此処に? 船が出来たのはつい最近のはずだ。
「そうそう。でもね、彼は特別で、空を飛んで海を渡ったんだ」
「・・・。は?」
「妖術ですよ。人間なのに、珍しいんですけれどね」
そういうと、テレンスはふわりと宙に浮いた。
どうやら、飛べて、尚且つ強い人でないと途中、魔物に殺されてしまうらしい。飛びながらの攻撃は難しいらしく、テレンスしか成功しなかったとか。
という事で、テレンスはあの時、力を見る為に参加したから勝つつもりはなかったらしい。道理で力を抜かれた、と思ったわけだ。
「今日は本気で戦わせて貰おうと思いますけれどね。王様、よろしいのですよね?」
「ああ、その為に呼んだんだ。賢音、場所はいつもの所だ、案内してやってくれ」
「はーい。じゃ、みなさん、ついて来て下さい」
広い運動場だ。そこで、俺は真っ赤な剣を握ってテレンスと対峙する。
テレンスの使う剣は『カタナ』というらしい。なんだか変わった形をしている。和の島で使われているが、他の場所ではあまり流行しなかったらしい。
「じゃ、行かせて貰いますね」
「ああ、よろしくお願いしますッ!」
テレンスの動きは、とても鮮やかで、無駄な動きが無い。細い剣身なのに、俺のバスタードソードを受け止められる。どんな硬度なんだ・・・。テレンスはニヤリと笑う。
「どうしたんですか? まだまだですよ」
とはいえ、俺だって負けるわけにはいかないし、だいたい、剣神なのだ、どんな剣士にも負けるはずがない。そう言い聞かせる。心情は、動きにとても大きく関係する。絶対勝てる。負けるはずがない。
「? 動きが良くなった? っ! 痛い」
真っ赤な剣が、さらに赤く。一発当たった。これは大きい。なにせ、心情が動きに関係する、という事は。当たったという事は、当てられるのだ。その自信は相当大きい。
「はは・・・。ユリエルさん、強いですね」
「テレンスも、な。疲れた」
「また・・・。なんだ、勝てなかった。勝てたら、王様に褒めて貰おうと思ったのに」
テレンスは明らかにしょんぼりしている。どうしたのだろう、と思っていると、賢音が説明してくれた。
「テレンスは、これに懸けてたんですよ。勝てたら、王様に位を貰えた」
「あ・・・。そうだったのか」
「いや、でも、まだまだだって分かりました。ユリエルさん、ありがとうございました」
王城に戻ると、王様は笑ってテレンスを労った。軽く笑うと、一礼をし、部屋を出て行った。
「テレンスでも勝てないか。それは相当だな。ユリエル殿、魔王戦、頼むぞ」
「はい。任せて、とは言えないですが、出来る限り」
「まあ、まだ今すぐという訳でもないしな。賢音、明日、この辺りを案内してやってくれ。今日泊まるのは、来客用の部屋だ」
「じゃあ、案内してきます」
また、タタミの和室だ。ベッドではなく、布団を敷いて寝るらしい。
「じゃあ、夕食の準備が出来たら呼びます。ごゆっくりー」
「・・・。賢音のテンション、なんか変だよな」
「ま、まあ」
此処に来たのは俺たち家族とエレナ、そのホムンクルス。アナとクリスタも一緒だ。計十六人? で三部屋。大きさの違う部屋だ。一つに俺とエディ、メリー、リリィとティナ。もう一つにエレナ、梓桜、澪桜、奈桜、咲桜ちゃん。それよりちょっと大きい部屋にリーサ、エド、ルナ、エリー、アナとクリスタ。
「ね、ねえ! 今日は、みんなで、やってみない?」
「え・・・! は、恥ずかしいわ。みんなで、なんて」
「ボクは良いと思うけどなぁ。ね、リリィちゃん」
「い、いや、でも・・・。やっぱり・・・恥ずかしいです」
「二対二だけど、どうしよっか」
「・・・ああ、なるほど、俺の意見は通らないのか」
『! あ、いや、そういう訳じゃ・・・』
「たまにはいいと思うけどな」
「へえ、これがお米なのね・・・。初めてだわ」
「ん、美味しいよ、ユーリ様」
「何となく懐かしい気がします・・・」
初めての和食に興味津々。結構美味しい。妖孤は昔、和の島に住んでいたらしい。だからか、ティナは何となく懐かしい気がするそうだ。あと、エレナは相当気に入ったみたいだ。
風呂は露天。賢音が『妻と楽しく入ってらっしゃい!』と俺たちを混浴用の風呂に連れていくもんだから、一緒に入った。全員一緒なんて初めてに決まっている。本人には文句を言ったが、本当は凄く嬉しい。賢音、ありがとう!
ああ、夜、楽しかったぞ。たっぷり時間を掛けたから、寝不足なのはまあ仕方ない。物凄く疲れたが、まあ、幸せな物だ。
という事で次の日。賢音に案内して貰っている。
「ほら、これが桜」
『わああ! 凄い!』
桜は満開だった。そして、奥の方までずーっと、沢山植えられている。何て綺麗なんだろう。桜のトンネルが出来上がっている。
「向こうに行くと、ピクニックみたいにお花見出来るよ。行く?」
『行きたい!』
若葉の上にビニールシート敷いて。賢音がこっそり持って来ていたお弁当広げて。子供たちがはしゃいでいるのを見ながら桜も見・・・、普通逆か? 花見、だもんな。
まあそれは良いとして。すぐ其処には川がある。その反対側には桜。さっきは街路樹みたいだったが、此処はなんだか公園みたいだ。賢音が言うには、其処にある川が氾濫した時用の堤防の上に桜が植えられているらしい。
「お父様、桜、綺麗」
「ん、エリー。頭に花びら乗ってるぞ?」
「え・・・? あ」
エリーの手に乗せた花びらは、春風に寄って飛ばされてしまった。少し残念そうな顔のエリー。けれど、すぐに笑顔になる。その風に乗って、花びらが宙を舞っている事に気が付いたからだ。
ふと視線を動かすと、ホムンクルスたちが目に入った。黒髪のホムンクルス達は、ものすごく桜が似合う。名前にも桜があるし。
「ふふ、みんな可愛い。咲桜ちゃん、川に落っこちないようにねー!」
「分かってますよぉ! 大丈夫です!」
今日は王城で着物を借りてきたから、みんな着物。だから、余計に桜が似合う。ホムンクルス達は赤い着物を着ている。とても美しい。俺たちも良いけれど、やっぱり黒髪が一番似合うな。あ、ティナは別だ。どんな着物も美しく着こなせる。なんでかは知らん。
ちなみに、うちにも黒髪は居る。メリーとリーサだ。お揃いの、紫色の着物を着ている。
「良いな、リーサ姉とメリーさん。凄い、似合ってる。可愛い」
「ルナちゃん、ありがとう。でも、ルナちゃんも似合ってるよ、可愛いよ」
「そ、そう? あ、ありがとう」
あ、ルナ嬉しそう。俺に気が付いたメリーがウインクをうった。全く、可愛い奴め。
ピクニックなんて久しぶりだけれど、みんな楽しそうで良かった。此処を紹介してくれた賢音に感謝しないと。
「ね、来てよかったでしょう? みんな可愛いなぁ」
「俺の家族だ、手を出すなよ?」
「え? エレナちゃんなら良いんでしょ?」
「え?」
「え?」
エレナ? た、確かに一人身だけど・・・。
「結婚する気ないらしいぞ?」
「そう、じゃ、思い直させてあげなきゃ!」
ええと・・・。これ、何処まで本気なんだ?
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