剣神勇者は女の子と魔王を倒します

鏡田りりか

第16話  楽しいコト

 俺たちの目的地は当然ラブホテル。電車に乗って、すぐに着いた。メリッサの案内だ。ちゃんと調べて会ったという事か。
 さっき貰った表彰状には、俺たちの誕生日が書かれている。年齢確認には十分だ。


 ちなみに、従業員は魔法で動くロボット。人間そっくりだが、ロボットである事を表す為か言葉のアクセントがおかしい。
 なんて思っていたら、メリッサは、「一番良い部屋をお願いします」と言った。それから、俺にウインクをうって「私の支払いだから」と言った。


「え、いいのか?!」
「大丈夫。相当持ってるんだから」
「なんか悪いな・・・」
「気にしないで。私、これ目的に大会行ったんだからね」


 部屋に入る。さっきまで戦っていたんだ。シャワーだな。メリッサは俺に先に入る様に言った。からまあ、それに従う。で、メリッサが入っている間に照明やら何やらの確認をしておく。あとで慌てたら格好悪い。一気にやる気が失せるだろうこと間違いなしだからな。


 さて、メリッサもシャワーを浴び終えたようだ。って、バスローブ姿のメリッサがあまりに可愛すぎるんだが、これってさっきの媚薬のせいか?
 メリッサはにこっと笑って俺に寄り掛かった。つけなおしたのか、唇は鮮やかな赤色をしている。
「もう一回・・・。ね?」
 その後、メリッサはペロッと舌でグロスを舐める。俺たちはそのままベッドへ。


「一応聞くけど、やった事は?」
「無いよ。一人ならあるけど。でも、上手くイケない。イかせて?」
「・・・。了解だ!」




 朝起きて、すぐ隣にメリッサの寝顔がある事に驚いた。が、昨日の事を思い出した。ああ、全部な。
『なあ、メリッサ』
『ん、なあに?』
『結婚、しような』
『・・・。はい』
 って。撤回する気は全くない。


「んん~。ユリエル、おはよぉ」
「ああ、メリッサ、おはよう」


 おはようと言いつつも、メリッサは俺に抱きついて目を閉じる。とはいえもう九時だし、そろそろ起きた方が良いよな。


「メリッサ。ほら、起きて?」
「ふわぁ・・・。ねぇ、私たち、今日、どうすればいいんだろ?」


 そう、そうなのだ。帰るに帰れない状況になっている。リリィにもエディナにも会う勇気が無い。そして、接触したからには、戦争も覚悟しなきゃいけないという事で、出来る事なら駆け落ちしたいくらいの気分だ。
 とりあえず身支度を整えチェックアウトする。大通りに出て、ちょっと遅いが朝ご飯を食べようとファミレスに入る。今なら、まだギリギリモーニングメニューに間に合う。


「いらっしゃいませ、二名様ですね」
「はい」
「こちらへどうぞ」


 そう言えば、二人で来る事って、滅多にないな。リリィと二人の時くらいか。あまり聞きなれない。
 朝食メニューからスクランブルエッグとソーセージのセットを選ぶと、メリッサと同じものだった。何となく嬉しかった。


 厚いトーストを齧りながら、メリッサは急に思い出したように「あ」と呟いた。
「どうしたんだ?」
「私の従姉が、この辺に住んでるんだけどね。こういう事があったら助けてあげるって言ってた」
「こういう事って、具体的に?」
「家に帰れなくなった時、かな」


 大丈夫だろうか。俺がルーズヴェルトだって分かった途端豹変したりしないよな。顔に出ていたのか、メリッサは俺を安心させるように笑う。俺はそれに頷いて答えた。




「どちら様ですかー?」
「私、メリッサ」
「メリッサ! 一体どうしたの?」


 すぐに扉が開いて、黒髪に紫の目をした人が出てきた。俺たちより四つくらい大きいだろう。メリッサにとてもよく似ている。違うところ言えば、この人は眼鏡をしている。


「お友達?」
「うん、ちょっと色々あって・・・」
「ふふ、わかったよぉ。任せてね。私、アリッサって言うの。なんて呼んでくれても良いよ」
「あ、俺、ユリエルです」
「ユリエルくんね。とりあえず入って」


 にしても、随分大きな家だな。扉を開けた先にはフロントの様な大きな玄関。左右に長そうな廊下がある。正面には扉。この先はリビングだろうか? で、その隣に二つの階段。両方上に向かっている。


「大きいと思った? キングストンはお金持ちだからね。ちなみに、ユリエルくんの家は?」
「・・・。えっと・・・」
「ん? どうかしたの?」
「あ、いや。ユリエル・ルーズヴェルト、です」


 アリッサは驚いたように目を見開いた。それから、チラッとメリッサを見て、こくりと頷く。


「なるほどねぇ。それで家に帰れなくなっちゃったわけだ。良いよ。暫く泊まって。新しい家でも買うまでね」
「良いんですか?」
「うん。私も戦争は望んでないから。ふふ、昨日は楽しかった?」


 アリッサさんは、そう言って歩き出した。右側の廊下を進む。なんだか変わった香りがする。これが、ユーナの言っていた魅惑的な香り? 例えるなら・・・。黒薔薇? 何故だかゾクゾクする。


「さて。この部屋をあげる。中で何をしても良いよ。バスルームはすぐ其処だから。食事の時だけ呼ぶ為にノックしてから入るから。入っちゃだめなら、ノックの時点で全力で拒否して」
「あ、はい・・・」
「キングストンとルーズヴェルト・・・。そろそろ、仲直りして貰いたいものだけれど・・・」
「・・・」


 何で、キングストンとルーズヴェルトはこんなに仲が悪いんだろう。余計に魔王が憎らしい。メリッサに会えたとはいえ、魔王を許すわけにはいかない。キングストンとルーズヴェルトの中の悪さは、魔王のせいなのだから。絶対に倒してやる。


「とにかく、私は戻るね。仕事中だから」
「あ、ごめんなさい」
「気にしないで。じゃ」


 アリッサさんは部屋を出ていった。一つの部屋に、メリッサと二人きり。いや、昨日もだったんだけれどね。
 あまり狭い部屋ではない。逆に相当広い。天蓋付きの大きなベッドがある位だ。俺とメリッサは顔を見合わせる。


「結構、遅くまでやってたもんね・・・」
「ああ。もう、流石に、な」
「な、なにする?」
「え、ええと・・・」


 特にやる事が無いと、お互いを意識してしまって・・・。顔が熱くなってくる。
「じゃあ・・・。とりあえず、私は寝たい」
「そ、そうか。お休み」
「いや、ユリエルも一緒に、だから」


 このベッドで寝ろってか? お姫様が使うようなこのフリフリので? とはいえ、メリッサに引っ張って連れて来られてしまったから、これで逃げるのも変だよな。大人しく寝ていよう。昨日はほとんど寝ていないし。昨日? 今日、か。もうどうでもいいや。




「ユリエルくん、メリッサ。お昼ご飯で来たよ、おいで」
「あ、すみません!」
「大丈夫だよ。気にしないで」


 メリッサを起こし、髪を整え、部屋を出る。アリッサさんの後について行くと、さっき見た、あの玄関の正面にある扉の前に来た。やはりここがリビング&ダイニングだったらしい。
 中に入ると、メイドさんが一礼した。え、メイドが居るのか。そりゃすごいな。


「ほら、入って。・・・にしても、まさかメリッサがね」
「なんで? 私だって女の子だもん」
「まあそうなんだけど。黒魔族なのに、興味なさそうだなって思ってたから。ちなみに、どうやって落したの?」
「えへへ・・・。媚薬使っちゃった」


 メリッサは舌を出して笑う。その表情が可愛くて、抱きしめてしまいそうだった。
 アリッサさんは楽しそうに微笑んで、椅子に座る。俺たちもそれを見て座ってみる。
 美味しそうな料理を見ていると、アリッサさんが「食べて」と一言。・・・凄い美味しかった。


 粗方食べ終わった時、チャイムの音がした。アリッサさんが席を立ち、玄関に向かう。
 俺とメリッサが耳を澄ませていると、俺にとって、よく知っている声が聞こえてきたから驚いた。メリッサを立たせて玄関に向かう。


「父さん!」
「ユリエル・・・。やっぱり此処にいたのか」
「ちょ・・・っ! なんで出てきちゃったの・・・。もぅ」


 何で、父さんが・・・。俺は状況が理解できない。どうしてこの街に? 仕事は? 大体、どうやってこの家を見つけたんだ? 答えは出ない。もはや頭は考える事を放棄していた。


「まず・・・。メリッサ、だな。ユリエルと何をした?」
「えっ・・・?! なにって、その・・・」
「まあ知っているからいい。そうだな。ユリエルとはいつ知り合った?」
「六歳の時。魔物に襲われていた私を、助けてくれて。その時から・・・。ずっと、好き」


 父さんは驚いたような表情をする。まさか、そんな昔から知っていたとは思っていなかったのだろう。
 一度眼を瞑り、今度は俺に目線を向ける。俺はその目をしっかりと見る。


「エディナが狂った。ユリエルとメリッサが、二人で走っていくのを見たらしい。声を掛けても、振り向いてくれなかった、と。此処に連れてこれるような状況ではなかった為、此処には居ない」
「エディナが? やはり、彼女は俺の事を愛していたわけですね」
「・・・。次。リリィが引きこもり状態だ。ユルシュルと同じような感じと言えば分かるだろう。リリィもエディナと同じく、見ていたそうだ。無論、連れてこれる状態ではなかった」
「でしょうね。リリィも俺を愛していた。知っています」


 父さんは少し驚いているようだった。全て知っているのに、何故? そう言いたいのだろうか。
 俺はメリッサをちらっと見る。知らない、だが、女の子の名前ばかり出て来て、どう思っているだろう。・・・特に心配はいらないらしい。


「家に帰るつもりはないのか」
「帰れるはずないじゃないですか。俺は、メリッサを離すつもりはありませんから」
「その言葉を聞いて安心した」
「・・・え?」


 父さんは後ろをちらを見た。其処には、メリッサと同じ、黒髪に紫色の目をした女性。父さんは、彼女がメリッサの母であると俺に言った。
 父さんは、メリッサの母とアリッサさんと三人で話をすると言って俺たちを部屋に追いやった。何が起こっているのか理解できていないメリッサを連れ、部屋に戻る。


「ねえ、どういう事?」
「つまり、俺を愛している人は何人かいた。だから問題発生中。でも、絶対に離さないからな」
「うーん・・・。でも、その子たちも、ユリエルの事、好きなんだよね・・・」
「ん?」
「ううん、何でもないよ。気にしないで」




 あり得ない。そんなはずが無いじゃないか。俺は車を降りて唖然とした。
 父さんは、俺たちに荷物をまとめるように言い、車に乗せた。そのまま走らせ、降りろと言われたのは、知らない大きな家の前。


「えっと、これ、どういう事ですか?」
「これは・・・。俺が、買ったは良いがほとんど使った事のない建物だ。場所はだいたい分かっているか?」
「ええ。おそらく、俺の家のすぐ傍ですよね。二、三キロ離れている位でしょうか」


 なんでこんなところに? 父さんは「喧嘩して」と呟いた。どうやら、母さんと喧嘩してそのまま購入したらしい。
「え、喧嘩で家?」
「『あなたの顔なんて見たくありません!』っていうから、つい。すぐ仲直りしたが、俺の所有物となったままだった」


 って、あれ? どういう事って聞いた、その答えが返って来ていない。俺はなんでここに連れて来たのかを聞いたんだが・・・。
 その趣旨をもう一度伝える。父さんはメリッサを見てから言う。


「お前にやろう。どうせ持ち主がいなかったんだ。ただし、掃除、頑張れよ」
「ええええ?! い、いや、それは流石に・・・」
「お前が人の家に居るのは俺が困る。それよりは此処にいて貰った方が何倍も良い。メリッサも、良いな?」
「え?! あ、はい・・・」


 え・・・。本当に?!

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