赤い記憶~リーナが魔王を倒して彼の隣を手に入れるまで~

鏡田りりか

第77話  VS魔王 ミレ

 ミレの相手はキャサリンだね。あの、髪にいろんな飾り付けてる子。一緒に居るのはミルヴィナ。今、一番幸せな時だったはずなのに、この戦争のせいで……。もし、死んじゃったら、ミレ、どうすればいいの? ジェラルドさんに、謝っても、謝りきれない。


「なあ、ミレ。余計な事は、考えるなよ」
「え? あぁ、うん」
「私が死ぬようだったら……。そういう運命だったってことだ、だから、本気で。な?」
「へぇ? わかったよ」


 本人がそういうなら。分かったよ。ミレは、ミルヴィナの事、気にしないからね?
 ん、あれ、誰だろ、こっちに来る。あの真っ白な髪……。アルだ! リーナの使い魔、アルシエル。一緒に戦ってくれるんだ。ちょっと心強いかも。
 キャサリンを前にして、二本の剣を鞘から引き抜く。ずっと愛用してるもの。古くなったら、その時はもと使っていた剣をベースに作って貰う。そういう風にして、もう、ずっと一緒にいる。
 ミルヴィナは黙って杖を取り出す。基本、死霊魔術と治癒魔術しか使わないからみんな知らないけど、ミルヴィナは他の攻撃魔法だってとても強い。本当に強いんだよ?


 ミレが剣を持って走りだすと、後ろから大きな魔法を撃ってきた。どんな、っていうと、真っ赤な大爆発を起こす魔法。ちょっとびっくりする。けど、ミルヴィナは私に当てない様に魔法を撃ってる。凄い。
 まだまだ爆発は続く。キャサリンは爆発に気を取られてる……、と思いきや、意外にそうでもなかった。ミレの剣を魔力を纏わせた杖で受け止める。思ってたより強いんだね、この子。見た目が弱そうなんだもん。ちょっと甘く見てたかな?
 剣を構えのして、深呼吸。落ちついて。大丈夫、負けはしない!


 と、唐突にアルが動く。さっきまで微動だにしなかったのに。背中から生えた大きな翼を広げ、縦に飛び、ちょっと横にずれて、また縦に。アルが飛ぶすぐ下には、白いつぼみが出来ていく。
 その間にも、ミレとキャサリンは剣を杖を交える。後ろからミルヴィナの魔法も飛んでくる。さっきまでよりもっと規模の大きい爆発の魔法みたい。ついでに、後ろから沢山小さなボールみたいな魔法が飛んでくる。
 そんな戦闘の中、アルの作ったつぼみは此処に存在していないいかのように、踏んでも、爆発に巻き込まれても、ただただ其処にあった。
 いつの間にか、アルは横向きに飛んでいた。つぼみが格子状になっている。違和感を感じて、その場から離れる。


「白い花、開花」


 つぼみが一斉に花開く。と、中から強い光が現れる。とても強い魔力が感じられるから、当たったらただじゃ済まないだろう。光は天に向かって一直線に伸びる。上から見たら破線で出来た格子が見えるだろう。
 しかも、光は移動した。そのままの形ではなく、形を崩しながら。凄く避けにくそう。
 暫くして、光はパッと霧散する。と。キャサリンは、傷一つ負わずに立っていた。口元には微笑。嫌な奴……。


 と、反撃の時間になったようだ。キャサリンは杖を構えると、宙に浮かびあがり、ニヤリと微笑んだまま魔法を乱射する。星の形をした魔法が沢山。地面に付くと大爆発を起こす。
 ミレ達は暫く慌てて逃げ惑っていたけれど、ミルヴィナが急に立ち止まり、キャサリンを見る。え、ちょっと待って、なにをするの?!


 ミルヴィナは両手をキャサリンに向ける。と、掌から光線が。真っ赤な光線。星型の魔法を打ち消していく。全ての魔法を打ち消すと、強い光を放って消える。ミルヴィナ、凄い。こんな魔法も使えるんだ……。
 魔法を打ち消す魔法。まあ、ミアみたいにバリア魔法なら分かるよ? でも、こういう、普通の魔法で魔法を打ち消すのって、結構高度だってユリアが言ってた。
 それを、すんなりやってしまうんだから。ミルヴィナの一番得意な魔法が死霊魔術とか、嘘でしょ。


 と、キャサリンの次なる魔法が。やっぱり星なんだけど、さっきと軌道がだいぶ違う。さっきは一直線に向かって来たのに、今度は蛇行。避け辛い。
 ただ、一度覚えてしまえば楽勝! ミレも、ミルヴィナも、アルも、すんなり魔法を避けていく。キャサリンが動くと位置も変わるけど、それはちゃんと見れてれば対応できる!
 ミルヴィナが適当なところで地面を蹴ると、素早く後ろを振り向き、右手をキャサリンに向ける。大きな、周りが白い光に包まれた赤いボールが沢山飛んで行く。
 キャサリンはそれを見ると、星の魔法をミルヴィナの魔法にぶつかる様に撃ち始めた。相殺されて、キャサリンには当たらない。でも、キャサリンの魔法も此処まで届かない。隙が生まれた!


 私は剣を構えて走る。星を避け、走る。タイミングを見計らって高く飛ぶと、獣の姿になったアルが。上手く背中に着地出来た。
 円を描きながら高度を上げていく。キャサリンの近くまで行くと、ミレはアルから飛び降りる。二本の剣を大きく振る。
 避けられた。でも。私の落下点にはアルが居るから、其処まで落ちる事はない。またタイミングを見て攻撃を仕掛けるだけ。
 キャサリンの意識は此方に向いた。それを見て、ミルヴィナがニヤッと笑う。ゆっくりと魔法を準備する時間が出来た。アルもそれを分かってるから、キャサリンがミルヴィナの方を向かない様に飛んでいる。


 ミルヴィナが魔法を撃つ。さっきよりも、ずっと激しい爆発の魔法。アルは全てを掻い潜る。強い風が心地いい。キャサリンだって、全ての魔法を避けていた。
 まあ、そうだと思ってたけどね。けど、バランスを崩した。ミレはもう一度、アルから飛び降りる。両手をクロスされ、キャサリンよりちょっと低い位置に来て、開く。
 やっと、一撃入れられた! 赤い血が舞う。アルの純白の羽が少し赤く染まる。そんなこと、全く気にしていないみたいだけど。
 アルのスピードが、さっきより速い。乗ってきたみたい。良い感じ。ミレも慣れて来て、アルの上で立てる様になった。これなら両手が開く。攻撃出来る!


 キャサリンが次に撃つのは光線。ミレはアルの上でしゃがむ。丁度、ミレの頭のあったところを光線が通り抜けて行った。なんて命中力。避けてなかったら確実に死んでた。と、アルが大きく回り、ミレは危うく落ちるところだった。まあ、アルの事だし、なにがなんでも落とさなかっただろうけれど。
 ぐるりと旋回した理由は、二本目の光線が飛んで来ていたからだ。アルは速い速度での飛行を続ける。その姿を追い掛けて、光線が何本も飛んでくる。でも、アルは当たらない。キャサリンだって速さから計算して、いるであろう位置に光線を放つのに、速さを上手く変えて当たらない様にしているのだ。


 キャサリンの魔法が変わる。小さな星がぐるぐると旋回しながら雨のように降ってくる。っていうと簡単に避けられそうだけれど、数が多いのと、何より速い。わずかな隙間を縫ってアルは上手く避けていく。凄くひやひやする……。
 けれど、アルは、確実に、確実にキャサリンに近づいている。アルを見ると、僅かに首を振る。分かったよ。
 深呼吸。目を瞑る。息を整え、剣を一度鞘に仕舞う。しっかりと持ち直し、勢いよく引き抜く。いつものようにクロスして構えて!


「双剣秘術・華ノ舞!」


 その名の通り、舞う。これは、みんながミレの剣捌きを舞のよう、と例えたところから。素早い剣捌きと、地面に付いてからの飛躍、空中での攻撃。これらが、ミレの攻撃を舞のように見せている。
 そして、これを一番美しく仕立て上げるのは。赤い、真っ赤な血飛沫なの。
 花びらが散るように。赤い血が舞い散る。アルの背中に着地したミレは、ミルヴィナに手を振る。嬉しそうに笑ってたから、ミレも釣られた笑った。


「やったな、ミレ」
「えへへ……。ありがと、ミルヴィナ。どうだった?」
「ああ、かっこよかったぞ。ちょっと遠かったが、ミレの舞、しっかり見届けた」
「ありがと、ミルヴィナ大好き!」


 その言葉に、ミルヴィナはちょっとだけ顔を染めた。言われ慣れてないみたい。なんか、かっこいいミルヴィナの方が目立つけれど、ミルヴィナだって女の子だし、可愛いところもあるんだよね。
 照れ隠しなのか、ちょっと乱暴にミレの頭を撫でる。素直じゃないなぁ。


「さて、じゃあ、そろそろリーナちゃんのところに行こうかな」
「ああ、そうだな。行って来い」
「うん。ミルヴィナ、心配しないで。絶対に、倒してくるよ!」
「もちろん、信じてるからな!」


 リーナちゃん、どんな感じかな。本人は気付いてないけど、ルージュの中で一番強いリーナちゃん。もしかしたらお話とかしててまだ戦い始めたばかりだったりして?! それはないか。
 きっと、魔王と互角にやりあえるのはリーナちゃんだけ。ミレ、参加できるかな?


 いや、リーナちゃんの事だ、きっと、みんなの事、待ってるんじゃないかな。

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