赤い記憶~リーナが魔王を倒して彼の隣を手に入れるまで~
第66話 戦争 リーナ
なんか、今日は凄く疲れた。でも、みんなすっきりしたような顔してて。じゃ、ま、いっか。
ラザールお兄様の熱も下がったし、アンジェラさんも、ベルさんも、ミレも、エティも、ユリアも。何か悩んでたみたいだけど、解決したっぽい。よかった。
「疲れた」
「あれ、リーナ、大丈夫?」
「もうね、使い魔に振り回されてばっかり。でも、大丈夫。楽しかったから」
「そう」
ユリアが妙に近いんだけど、なにがあった? よく分からないけれど、人間関係で悩んでたっぽいし、それ? なんか最近、みんなに冷たかったんだよね。ちょっとだけ、だけど。
「ミネルヴァ、今日の戦い、どうだったかしら?」
「良かったと思う!」
「! やった」
アンジェラさん、ミネルヴァさんに甘えてる様に見える。ちょっと無理してそうだったから、良かった。このパーティで唯一の大人。自分がしっかりしないと、と思ってたんだろう。
「今日の戦い、楽しかったなぁ!」
「あれ、ベルが楽しかったなんて、珍しいね」
「あぁ、ミレ達にはあまり言わないかな?」
ベルさんはずっと明るくなった気がする。いや、暗かった訳じゃないんだ。でも、なんか、戦いの後、いつもつまらなそうというか、なんというか、そんな感じだったんだ。
「今日はね、ミルヴィナと一緒に戦ったの!」
「へえ。どうだった?」
「凄く楽しかった! あのね、ベル、ミレね……」
ミレはいつも、人と関わる時、一線を越えない感じがあった。でも、何か近い気がする。このほうが良い。いつも気になってた。このパーティ、気に入らないのかなって。やっぱり、このほうがいいよね。
「ミルヴィナさん……。私、決まりを破ってしまいました」
「ああ、聞いた」
「でも、後悔、してませんから!」
エティは、随分自信が付いたんじゃない? 過少評価し過ぎてたから。でも、今は、自信ありげな喋り方してるし。輝いて見える。とても、良い事だ。
「なんか、みんな、今日一日で、変わった、ね」
「え? そう?」
「うん……。良くなったと思う」
「ふふ、リーナは本当によく人を見てるね」
人を見てる、か。本当に、それが良い事だと思う? 私は……。分からない。だって、考えても見て。私は……。みんなが悩んでても、見てるだけ。協力、出来なかった。知ってたのに、なにもしなかった。
なんてね……。でも、事実。私、どうしていいのか分からない。いつも、いつも。気付いてるのに、なにも出来ないの。私、行動力が足りないのかな。いや、それ以前か。
「リーナ、ねぇ、リーナ?」
「あ……。な、なに?」
「いや、難しい顔して、考え込んでるみたいだったから」
「ううん。何でもないよ。でも、一つ。私、これで、良いのかな?」
「……、ん?」
分からなかったか。でも、良いや。答えを望んでたわけじゃない。ただ、何となく口にしたかっただけで。だから、なんか、考えさせちゃってごめん。お詫びに後で一回ぎゅってしてあげるから。ね。
(ミア。お願いがあるんだけど)
「ん、なぁに?」
(あのね……。ユリア、呼んで来て欲しいの)
「へ? そんな事? 良いけど……」
そういうと、椅子から飛び降りて部屋を出て行った。一人になって、考える。ノーラに喋った事。なんで、他の人に喋らなかったのか、ようやく分かった。知ったら、絶対に……。『腫れもの扱い』が、嫌だった。もう充分受けた。今まで、大切に大切にされて来たもん。
でも、大丈夫。きっと、私の事、分かってくれるんじゃないかな。だから。
「リーナ、なぁに?」
「あ、ユリア」
(ねえ、ミア。上手く、通訳してくれない?)
「……。分かった」
私は、ミアに思いつくまま言葉を届ける。しばらく目を瞑っていたミアは、小さく頷くと、ユリアを見る。
ユリアは何も不思議に思っていないみたいで。綺麗な瞳をミアに向ける。
「ねえ。ユリアさま。ご主人さまがね……」
ユリア、泣きだしちゃった。やっぱり、違う人にすれば良かった。でも、もう遅い。
私はユリアを優しく抱き締める。よく、ユリアがしてくれたように。頬を伝う涙をそっと拭う。綺麗な涙……。
「リーナ、ごめん、ごめんね」
「ううん……」
ユリアに、喋ったの。村で苛められてた事。親が処刑された事。裏切られた事。全部、喋った。その結果、ユリアを泣かせてしまった……。
でもね。なんだか、ユリアが泣いてくれて、嬉しいって思う。ちゃんと聞いてくれたんだなって、思って。
ユリアが泣きやむの、ゆっくり待つ事にする。いつも、いつも、ユリアは、私の事、待っていてくれるから。今日は、私が。
暫く掛かった。でも、泣きやんだユリアは、そっと微笑んで私を見た。きっと、大丈夫。
「私、人が、信用、出来なかった。でも、みんなの御蔭で、此処まで、これた」
「うん」
「今度は、私が、恩返し、する」
「うん」
「でも、なにしていいのか、分からないの。……教えて」
ユリアは静かに頷く。そっと隣に座ると、私の肩に頭を乗せる。近い。吐息が耳に届く程に。頭を撫でると、小さく身じろぎした。吐息に混じって声が届く。
「あのね……。思うんだけど、リーナは、充分だと、思うよ」
「え?」
「居るだけで、その場を、楽しくしてくれた。それだけじゃない……」
ユリアの声は、囁きのようだった。なのに、やけに、しっかりと耳に届く。
「ラザールはね、リーナが来るまで、酷かったのよ。無理して、体壊して、治るなりまた無理する。狂ったようだったの……。リーナが来て、ラザール、戻ったの。リーナの御蔭だよ」
「アンジェラはね、ラザールがそんな状態だったから、何とかしようって、無茶して、何回も倒れてるの。でも、ラザールが戻ってからは、一度も無いわよね」
「ベルさんはね、もっと暗かったよ。なんでって、人が苦手だから。でも、リーナがルージュに入れてくれて、ずっと明るくなった」
「ミレはね、もっとわがまま言う人だった。でも、リーナちゃんが酷い状態だったでしょ? 彼女なりに、我慢を学んだ。ずっと、心が強くなってるのよね」
「エティはね、もっと自己主張の弱い子だった。全部、周りの言う通り。リーナが来てから、自分で、どうにかしたい、って思ったらしくて、考える様になったの」
「それで、私は……」
もう、いいよ、いいって。でも、ユリアは止めそうになかった。私、充分に分かったのに、だから、もう良いよ……!
「リーナの御蔭で、毎日楽しい。だからね、ありがとう」
止めて、止めてよ。止まらなくなる。これ以上は、駄目……。
「頑張り屋さん。たまに無理し過ぎちゃうけどね。みんなのことを誰よりも考えてる、優しい子。不器用なところあるけど、それでも頑張ってる」
「……」
「ルージュに必要な、大事な子。リーナがいなくちゃ、成立しない。一番重要で、みんなに好かれてる」
「そんなリーナが、大好き」
ユリアの、馬鹿。そんな事言われたら、泣いちゃうよ。ユリアにそっと体重を掛ける。と、優しく受け止めてくれた。私の髪をそっと弄ぶ。
温かい。ユリアの体温。じんわりと染み込んで来るような気がする。こんな風に思うなんて。私、変わったな。それは、みんな……。ユリアの御蔭。ラザールお兄様の御蔭。みんなの御蔭。
でも、私が変わった様に、みんなもまた、変わってたんだ。それが私の御蔭。ユリアは、そう言う。本当、かな。本当、なんだろうな。私、みんなの役に立ててるんだ。
そっか、凄く、嬉しい。
「ユリアの、馬鹿」
「ん?」
「どうして、いつも、いつも、泣かせるの?」
「……それはね、リーナが笑える様に。今泣けば、明日は笑えるでしょ?」
ユリアは、そういう事をすんなり言う子なの。だからいつも、泣かされる。分かってるのに、いつも泣いちゃう。ユリア、上手いから。
上手に私の気持ちを代弁してくれて。上手に慰めてくれて。上手に甘えさせてくれる。
「ユリア」
「なぁに?」
「ありがと」
「いいえ」
短い言葉のやり取りが心地いい。ユリアは私の背中に手を回し、そっと肩に手を置く。ユリアに目線を向けると、黙って抱き寄せられた。ユリアの香りが届く。頭を撫でられた。
とてもロマンチック。呼吸音だけが部屋に響く。お互い見つめる事もなく。ただ、そのままの格好でいた。
沈黙を破ったのは、ユリアの「ねぇ」という囁きだった。
「なに?」
「そろそろ、遅くなるし、もう部屋に帰りたいな?」
「え、やだ」
「え?」
私は素早く立ち上がってユリアをベッドに押し倒す。驚いたように口をぱくぱくと動かすユリア。そんな事は気にしない。上に乗るように抱きしめる。
「一緒に寝よ?」
「駄目よ、リーナ。私、イケナイ事しちゃうかもしれない」
「別に、いい」
「え……?」
ユリアは本当に驚いたようで、綺麗な顔から表情が消えた。困ったように笑い、それから、怒った様な表情に変わる。
「駄目よ。自分の身体、大切にしなさい」
「ユリア、だったら」
「……」
もう、分からない。ラザールお兄様の好きと、ユリアの好き。何が違うの? 一緒じゃないの? だって、ユリアの事、こんなに好きなのに。違うって言われても、分からない。
「リーナ……。そんな事、言わないで」
「ご、ごめん」
「んーん……。寢よっか」
「うん」
二人でベッドに入る。ユリアの体を抱きしめると、ユリアも優しく抱きしめてくれた。温かい。
特になにかあるわけじゃなかった。でも、私は、幸せだった。隣にユリアがいるって事だけで、良かったの。
ラザールお兄様の熱も下がったし、アンジェラさんも、ベルさんも、ミレも、エティも、ユリアも。何か悩んでたみたいだけど、解決したっぽい。よかった。
「疲れた」
「あれ、リーナ、大丈夫?」
「もうね、使い魔に振り回されてばっかり。でも、大丈夫。楽しかったから」
「そう」
ユリアが妙に近いんだけど、なにがあった? よく分からないけれど、人間関係で悩んでたっぽいし、それ? なんか最近、みんなに冷たかったんだよね。ちょっとだけ、だけど。
「ミネルヴァ、今日の戦い、どうだったかしら?」
「良かったと思う!」
「! やった」
アンジェラさん、ミネルヴァさんに甘えてる様に見える。ちょっと無理してそうだったから、良かった。このパーティで唯一の大人。自分がしっかりしないと、と思ってたんだろう。
「今日の戦い、楽しかったなぁ!」
「あれ、ベルが楽しかったなんて、珍しいね」
「あぁ、ミレ達にはあまり言わないかな?」
ベルさんはずっと明るくなった気がする。いや、暗かった訳じゃないんだ。でも、なんか、戦いの後、いつもつまらなそうというか、なんというか、そんな感じだったんだ。
「今日はね、ミルヴィナと一緒に戦ったの!」
「へえ。どうだった?」
「凄く楽しかった! あのね、ベル、ミレね……」
ミレはいつも、人と関わる時、一線を越えない感じがあった。でも、何か近い気がする。このほうが良い。いつも気になってた。このパーティ、気に入らないのかなって。やっぱり、このほうがいいよね。
「ミルヴィナさん……。私、決まりを破ってしまいました」
「ああ、聞いた」
「でも、後悔、してませんから!」
エティは、随分自信が付いたんじゃない? 過少評価し過ぎてたから。でも、今は、自信ありげな喋り方してるし。輝いて見える。とても、良い事だ。
「なんか、みんな、今日一日で、変わった、ね」
「え? そう?」
「うん……。良くなったと思う」
「ふふ、リーナは本当によく人を見てるね」
人を見てる、か。本当に、それが良い事だと思う? 私は……。分からない。だって、考えても見て。私は……。みんなが悩んでても、見てるだけ。協力、出来なかった。知ってたのに、なにもしなかった。
なんてね……。でも、事実。私、どうしていいのか分からない。いつも、いつも。気付いてるのに、なにも出来ないの。私、行動力が足りないのかな。いや、それ以前か。
「リーナ、ねぇ、リーナ?」
「あ……。な、なに?」
「いや、難しい顔して、考え込んでるみたいだったから」
「ううん。何でもないよ。でも、一つ。私、これで、良いのかな?」
「……、ん?」
分からなかったか。でも、良いや。答えを望んでたわけじゃない。ただ、何となく口にしたかっただけで。だから、なんか、考えさせちゃってごめん。お詫びに後で一回ぎゅってしてあげるから。ね。
(ミア。お願いがあるんだけど)
「ん、なぁに?」
(あのね……。ユリア、呼んで来て欲しいの)
「へ? そんな事? 良いけど……」
そういうと、椅子から飛び降りて部屋を出て行った。一人になって、考える。ノーラに喋った事。なんで、他の人に喋らなかったのか、ようやく分かった。知ったら、絶対に……。『腫れもの扱い』が、嫌だった。もう充分受けた。今まで、大切に大切にされて来たもん。
でも、大丈夫。きっと、私の事、分かってくれるんじゃないかな。だから。
「リーナ、なぁに?」
「あ、ユリア」
(ねえ、ミア。上手く、通訳してくれない?)
「……。分かった」
私は、ミアに思いつくまま言葉を届ける。しばらく目を瞑っていたミアは、小さく頷くと、ユリアを見る。
ユリアは何も不思議に思っていないみたいで。綺麗な瞳をミアに向ける。
「ねえ。ユリアさま。ご主人さまがね……」
ユリア、泣きだしちゃった。やっぱり、違う人にすれば良かった。でも、もう遅い。
私はユリアを優しく抱き締める。よく、ユリアがしてくれたように。頬を伝う涙をそっと拭う。綺麗な涙……。
「リーナ、ごめん、ごめんね」
「ううん……」
ユリアに、喋ったの。村で苛められてた事。親が処刑された事。裏切られた事。全部、喋った。その結果、ユリアを泣かせてしまった……。
でもね。なんだか、ユリアが泣いてくれて、嬉しいって思う。ちゃんと聞いてくれたんだなって、思って。
ユリアが泣きやむの、ゆっくり待つ事にする。いつも、いつも、ユリアは、私の事、待っていてくれるから。今日は、私が。
暫く掛かった。でも、泣きやんだユリアは、そっと微笑んで私を見た。きっと、大丈夫。
「私、人が、信用、出来なかった。でも、みんなの御蔭で、此処まで、これた」
「うん」
「今度は、私が、恩返し、する」
「うん」
「でも、なにしていいのか、分からないの。……教えて」
ユリアは静かに頷く。そっと隣に座ると、私の肩に頭を乗せる。近い。吐息が耳に届く程に。頭を撫でると、小さく身じろぎした。吐息に混じって声が届く。
「あのね……。思うんだけど、リーナは、充分だと、思うよ」
「え?」
「居るだけで、その場を、楽しくしてくれた。それだけじゃない……」
ユリアの声は、囁きのようだった。なのに、やけに、しっかりと耳に届く。
「ラザールはね、リーナが来るまで、酷かったのよ。無理して、体壊して、治るなりまた無理する。狂ったようだったの……。リーナが来て、ラザール、戻ったの。リーナの御蔭だよ」
「アンジェラはね、ラザールがそんな状態だったから、何とかしようって、無茶して、何回も倒れてるの。でも、ラザールが戻ってからは、一度も無いわよね」
「ベルさんはね、もっと暗かったよ。なんでって、人が苦手だから。でも、リーナがルージュに入れてくれて、ずっと明るくなった」
「ミレはね、もっとわがまま言う人だった。でも、リーナちゃんが酷い状態だったでしょ? 彼女なりに、我慢を学んだ。ずっと、心が強くなってるのよね」
「エティはね、もっと自己主張の弱い子だった。全部、周りの言う通り。リーナが来てから、自分で、どうにかしたい、って思ったらしくて、考える様になったの」
「それで、私は……」
もう、いいよ、いいって。でも、ユリアは止めそうになかった。私、充分に分かったのに、だから、もう良いよ……!
「リーナの御蔭で、毎日楽しい。だからね、ありがとう」
止めて、止めてよ。止まらなくなる。これ以上は、駄目……。
「頑張り屋さん。たまに無理し過ぎちゃうけどね。みんなのことを誰よりも考えてる、優しい子。不器用なところあるけど、それでも頑張ってる」
「……」
「ルージュに必要な、大事な子。リーナがいなくちゃ、成立しない。一番重要で、みんなに好かれてる」
「そんなリーナが、大好き」
ユリアの、馬鹿。そんな事言われたら、泣いちゃうよ。ユリアにそっと体重を掛ける。と、優しく受け止めてくれた。私の髪をそっと弄ぶ。
温かい。ユリアの体温。じんわりと染み込んで来るような気がする。こんな風に思うなんて。私、変わったな。それは、みんな……。ユリアの御蔭。ラザールお兄様の御蔭。みんなの御蔭。
でも、私が変わった様に、みんなもまた、変わってたんだ。それが私の御蔭。ユリアは、そう言う。本当、かな。本当、なんだろうな。私、みんなの役に立ててるんだ。
そっか、凄く、嬉しい。
「ユリアの、馬鹿」
「ん?」
「どうして、いつも、いつも、泣かせるの?」
「……それはね、リーナが笑える様に。今泣けば、明日は笑えるでしょ?」
ユリアは、そういう事をすんなり言う子なの。だからいつも、泣かされる。分かってるのに、いつも泣いちゃう。ユリア、上手いから。
上手に私の気持ちを代弁してくれて。上手に慰めてくれて。上手に甘えさせてくれる。
「ユリア」
「なぁに?」
「ありがと」
「いいえ」
短い言葉のやり取りが心地いい。ユリアは私の背中に手を回し、そっと肩に手を置く。ユリアに目線を向けると、黙って抱き寄せられた。ユリアの香りが届く。頭を撫でられた。
とてもロマンチック。呼吸音だけが部屋に響く。お互い見つめる事もなく。ただ、そのままの格好でいた。
沈黙を破ったのは、ユリアの「ねぇ」という囁きだった。
「なに?」
「そろそろ、遅くなるし、もう部屋に帰りたいな?」
「え、やだ」
「え?」
私は素早く立ち上がってユリアをベッドに押し倒す。驚いたように口をぱくぱくと動かすユリア。そんな事は気にしない。上に乗るように抱きしめる。
「一緒に寝よ?」
「駄目よ、リーナ。私、イケナイ事しちゃうかもしれない」
「別に、いい」
「え……?」
ユリアは本当に驚いたようで、綺麗な顔から表情が消えた。困ったように笑い、それから、怒った様な表情に変わる。
「駄目よ。自分の身体、大切にしなさい」
「ユリア、だったら」
「……」
もう、分からない。ラザールお兄様の好きと、ユリアの好き。何が違うの? 一緒じゃないの? だって、ユリアの事、こんなに好きなのに。違うって言われても、分からない。
「リーナ……。そんな事、言わないで」
「ご、ごめん」
「んーん……。寢よっか」
「うん」
二人でベッドに入る。ユリアの体を抱きしめると、ユリアも優しく抱きしめてくれた。温かい。
特になにかあるわけじゃなかった。でも、私は、幸せだった。隣にユリアがいるって事だけで、良かったの。
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