赤い記憶~リーナが魔王を倒して彼の隣を手に入れるまで~

鏡田りりか

第53話  ガールズトーク

 そう言えば、確認したい事があって、私はみんなに聞いてみた。覚醒した時、視界が赤くなったか。私、二回くらい赤くなって、凄い魔法が使えた事があったから。でも。


「いや、そんなことはないかな」
「視界自体は、普通だったと思うわ」
「自分では、瞳が赤くなった事に気づけませんでしたから」


 そ、っか……。じゃあ、あれは何なんだろう。魔法が使えない私が、唯一偶に使える魔法。本当に気になる。でも、分からない。分かりそうにない。
 ともかく、私、何の能力が制限されてる? それが分からないと、覚醒したのか分からない。もともと使えてて、使えなくなったもの? そんなもの、存在しないけど……。






 それから、私達は白魔族ヴァイスに戻った。私の話を聞いて、魔王と戦う可能性があると知り、みんな鍛えた方が良いのでは? と、冒険に行く頻度を増やした。
 ついでに、パーティの名前も変えた。赤、という意味の『ルージュ』。とても、私達に似合う名前だと思う。


「リーナ様ぁ! 紅茶をお持ちしました!」
「アリス、ありがとう」
「えへへ……。ご主人さま、お優しいので、大好きです!」
「そうかな? あと、やることあるの?」
「いえ。もう全部終わりました」
「じゃあ……。これ」


 私は机の一番小さい引き出しから鍵を取り出して、鍵付きの引き出しを開ける。
 この中に入っているのは、私だけが存在を知っている物。日記帳。と言っても、見て分かる通り毎日つけてるわけじゃなくて、何か大きなことがあった時くらいだけど。何カ月も間が空いてる時もあるし。


「これね。私に何かあったら、読んで。いい? 何かあったら、だからね、勝手に読んじゃ駄目だよ」
「っ! わかり、ました……」


 賢いアリスの事だ。多分、私の意図する事が、分かっちゃったんだろう。――近いうちに、死ぬような事があると。
 青い顔をして立っているアリスを見て、思わず笑ってしまった。頭を撫でると、はっとしたように顔を上げる。


「大丈夫、まだあとの事だと思うよ。でも、一応、ね?」
「あ、はい、なら良かったです」
「じゃ、紅茶……、冷めちゃったかな? まあ良いや。一緒に飲もうか」
「はい!」


 水色の侍女メイド服が良く似合ってる。白いふわっふわの髪が心地よくて、可愛い。
 私の侍女メイドさんが居るって、本当に良い。何かあった時も、アリスの顔見ると、なんか元気出る。それくらい、この子は可愛い。
 恋愛感情じゃなく愛おしいって、こういう事なんだ。思わずぎゅっと抱きしめたくなるような、守ってあげたくなるような、そんな感じ。ミア達は、どちらかと言えば一緒にいて楽、って感じだ。気を使わなくて良いから。でも、そうじゃない。言い表しにくいけど……。そう、なんか、妹みたいな感じ?


「ねえ」
「? はい、なんでしょう」
「アリスは、私の事、どう、思ってる……?」


 アリスはそれを聞くと、キョトンとした。ちょっと首を傾げて、ニコッと笑う。


「とってもいいご主人様、なんですけれど、お姉ちゃんみたいに、思う事も、あります。侍女メイドとして、どうかと思うのですが……」
「ありがと」
「えっ?」


 そっか、お姉ちゃんみたいに、思ってくれてるんだ。それなら、安心した。居なくなっても困らないただの主人じゃない。
 それだけで、私は頑張れる。大丈夫、一人じゃないもの。






「ユリア」
「っ?! リーナじゃん、どうしたの、家に来るなんて珍しいね」
「ねえ、ユリア、暇?」
「え? ほぼ毎日暇だけど……」
「じゃあ、お願い! 付き合って!」
「…………え?」


 ごめん、足りなかった。






「ああ、そう言う事か。戦いに行きたいのね」
「でも、一人じゃ……」
「分かった、良いよ。一緒に行ってあげる」
「ありがとう!」


 もしかしたら、あれがなんなのか分かるかもしれないし。でも、みんな忙しいから、毎日パーティ活動をするわけじゃない。其処で、ユリアの事を思い出した。というのも、いつだったか、最近ずっと暇、と言っていたから。
 という訳で、時間を決めておく。今日は急だから行かない。明日から、二人で冒険に行く。私、頑張るから。






「もう、頭痛いよ、ほんとに、ねぇ?」
「ご、ごめんにゃさい……」
「……悪いのは、私じゃない」


 エリュとイノの仲が悪い。まあ、火と水だからね、なんとなく分かってたけど。とっても元気で活発なエリュと、大人しくっていつもつまらなそうなイノ。まあ、正反対なんだよね。
 喧嘩しちゃって、収集つけるの大変だった。もう、ほんと止めて欲しいよ……。


「リーナ、大丈夫?」
「うん、平気。エリュはちゃんと謝れていい子だね」
「うん! 次は気を付けるにゃ」
「……ほんとかしらね」
「にゃにを~~っ!」
「こらっ、エリュ、イノ!」


 もう……。これじゃ、どうしていのか分からないよ。一回、仲良くなれるようにみんなで遊びにでも行こうか。
 まあ二人は帰し。ユリアと二人で買い物に出掛ける事にした。ずっと戦ってても疲れるだけだし。気分転換。


「リーナ、焦ってるね」
「ん……。色々」
「えっ? 色々? どういう事?」
「この事もそうだけど……。ラザールお兄様ことも、ね」


 焦ってる。時間がない。だから、ユリアと話せる機会が欲しい、って言うのもあって。だから、わざわざ家に向かってユリアに頼んだんだよね。
 私がそう言うと、ユリアは楽しそうに口元を歪ませる。ちょっと、そんな顔しないでよ。私、本気なんだけど。


「ふぅん、そう言う事。誰かに盗られれちゃう前に何とかしたいのね」
「だって……。王女様は気を利かせて手を引いてくれたけど、ラザールお兄様をみんなが放っておいてくれるとは思えない」
「へぇ。で?」
「それからね、勇者になったりしたら、余計、人気になっちゃうかなって。そしたら、手の届かない所に行っちゃう気がして」
「だから焦ってる。はあ、なるほど」


 ストローから口を離す。ユリアは頬杖をついて私を見ると、さっきみたいに楽しそうな表情を浮かべながら言う。


「ってことは、ようやく自覚したんだねぇ。いやぁ、よかったよかった」
「違う……。分かってたけど、分からない様にしてたの」
「言ってる事おかしくない?」
「おかしくない……。だからね、信じたくなかったの。それで、私の中では気付いてない事にしてた」
「んー……。やっぱさぁ、リーナは真面目過ぎるんだよね。良いじゃん、気持ちに素直になっても」


 そういう訳には、いかなかった。全部壊してまで幸せを手に入れようとは、思わないから。周りの人みんな不幸にするんだったら、私は我慢する。それで良いって、思ってたの。
 でも、駄目だった。私は、ラザールお兄様じゃなきゃ駄目だ。一緒に居たいって、思うから。何よりも強く、心を締め付けるから。


「まあ、なんでもいいや。リーナなりの考えがあるんでしょ?」
「うん」
「で、だ。どうしたいの?」
「わからない」
「は?」
「それを、分かりたいの。話、聞いて」


 ユリアはソファの背凭れに身を預けると、パチッと一つウインク打つ。


「分かった。ちゃんと聞いてあげるから、全部話しな?」
「うん!」






「あははっ! なるほど、じゃあねぇ、ちょっと待った方が良い」
「え?」
「つまりは雰囲気が必要ってこと。そうだね、アドバイスなら、いっぱいあげるよ」
「ありがとう」


 そういうと、ユリアは立ちあがる、ちょっと長居し過ぎた。外は暗くなり始めてる。


「あっ、お礼は要らないよ、リーナの幸せな顔が見たいから」
「ユ、ユリア……」
「あ、でも、さっきのカフェオレ奢ってよ」
「うぇっ? ちょ、今の……」
「嘘だよ! もう、可愛い反応してくれるんだから!」


 ちょっと、ユリア、私で遊ばないでよ。でも……。なんで、こんなに楽しそうなんだろう。
 女の子っていうのは恋愛大好きな子が多いけどさ、でも、ユリアは私の事、好きだったよね? なのに……? これで、いいの、かな。


「あー、いいのいいの。一緒に居て、思った。リーナはね、私の妹みたいなものなの」
「……?」
「だから、恋愛対象って感じじゃない。ノーラみたいな感じなんだよね」
「ノーラ」
「うん、大好きなんだけど、友達として、なの。リーナは妹。可愛いなって思う、それだけ」


 じゃあ、ラザールお兄様は? 同じように、思ってるのかな?


「いやぁ? そんな風には見えないよ?」
「そう……?」
「うん、大丈夫じゃないかな。だから、心配しないで大丈夫だよ!」


 そ、っか。なら、よかった。いっつも安心させてくれるの。だからね。
 大好き、ユリア。


「……カフェオレ、奢るよ」
「え、嘘、やった!」

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