赤い記憶~リーナが魔王を倒して彼の隣を手に入れるまで~
第15話 勉強会
結局、あの時は何とか逃げ切る事が出来た。
でもまあ、油断すると危ない目に会うっていうのはよくよく分かった。
さて、もう十月だ。
「うああぁ、もうすぐテストじゃない……」
「そんなに嫌?」
「別にいいじゃないか」
「む……。リーナとノーラは、頭良いからそう言えるのよ……」
ユリアは机に突っ伏して文句を言っている。
まあ、大変な事は大変。勉強ばっかだし。でも、それはそれで良い。別に、勉強は苦痛じゃない。楽しいほう。お母さん達、思い出しちゃうけど、まあ……。
ともかく、私はそんなに嫌じゃない。だから、こうやって嫌がっているユリアを見るのはちょっと変な感じがする。
「……リーナ、頭、良いのか?」
「や、別に……」
「違う、謙遜よ! リーナは頭良いわよ。だって、戦闘のレベル結構低かったし……」
「ユリア、傷つく」
「あっ、ごめん! まあともかく、Bに居るってことは、結構頭良いはずよ」
そう、かなぁ……。なんか、ラザールお兄様とかと一緒に居るから、よく分かんなくなっちゃった。ミネルヴァさんはもちろん、アンジェラさんも頭良いし、ミルヴィナさんだって結構頭良い。
だからかな、なんか普通の感覚が良く分からないっていうか? 何処が普通だろ。
「あと何日?」
「一週間だな。何処まで分かるんだ?」
「それも分かんない」
「全く……。家庭教師はどうしたんだ」
「一週間だから、ほら、もう詰め込みに入る」
「毎日勉強しろよ!」
「嫌なのよ。勉強なんて好きになれないわ」
こんな風に、ユリアとノーラは仲が良い。仲が……、良い……? 普段は良いよ。
ユリアと仲良くなってから、ノーラともちょっとずつ仲良くなっていって、今はちゃんと友達って呼べるレベル。
「リーナはどうやって勉強を?」
「あっ、一人でか、あと、家庭教師も居るけど……。一人の方が多い、かな」
「ほら。一人でも勉強してるって」
「うぅ……。良いじゃない、私は戦闘で何とかなってるのよぅ」
まあ、こんな感じに、結構二人といると楽しい。たの、しい……? 普段は楽しいよ。
なんか、本当に二人は仲が良いんだなって思う。私、やっぱり、上手く入り込めない時がある。
「まあ、頑張ろうな」
「うん! ノーラと同じクラスに居るの!」
「ああ、そうだな。よし、じゃ、帰るか。また明日、リーナ」
「うん。じゃあね、リーナ」
「じゃあね、ユリア、ノーラ」
「テスト勉強、面倒」
「何言ってるんだ、ラザール。お前何回目のテストだよ」
「数えきれないよ」
「こんなこと言ったの、今回が初めてだが。一体どうした」
ミルヴィナさんとラザールお兄様の会話は結構聞いてて楽しい。
と言うのも、他の使用人と違うから。こんな風に敬語使わないで喋ってるの聞くのって、やっぱ新鮮。
え、で、テスト勉強が面倒?
「だって……。今までは暇だったけど、リーナちゃんがいるんだもん」
「それ、本人の前で言っていいのか?」
「……。んん? ああああっ!」
えっと……。何でしょう。
「まあまあまあまあ! 早く勉強しましょうよ。てか、なんでミルヴィナがいるの?」
「なんで居ちゃいけないんだ? 姉が教えてる勉強、見てみたいんだが、駄目か?」
「ま、まあいいけど? さ、始めましょうか!」
ミネルヴァさん……。遊ばれてるの、気付いて……。
まあ、ともかく。今から勉強するのに、いきなり随分時間使ったよ。早く始めよう。
でも、この感じは楽しい。何時までも見てたい。
やっぱり。此処が、私の、居場所なんだ。
「やだやだやだやだ!」
「ユ、ユリア? どうしたの?」
「ああ、リーナ。今からユリアを私の家に連行だ!」
「やーだー! 勉強漬けなんていやー!」
「あ、そうだ、リーナも来るか?」
その瞬間、ユリアが動きを止めた。ノーラは、ユリアの好みを知ってる。ついでに、私とのことも知ってる。ユリアとノーラはずっと仲が良いから、私がいると嫌なはずなのに、ノーラはいつも一緒に居させてくれる。それに、ユリアも、二人に同じように接してるし……。なんか、良いな、こういうの。
「え、来るの?」
「え、っと……。ラザールおに……、アンジェラさんに訊かないと」
「あー、ラザールとのこと、知ってるぞ。だから、隠さないでも」
「! じゃあ、ラザールお兄様に訊いてきます」
友達の家なんて、始めてだ。
だから、どうしていいのか分からず、きょろきょろしてたら、二人に笑われた。そ、そんなに笑わなくったっていいじゃん……。
「いや、予想はしてたが、予想以上だった」
「こんな面白いなんて、あはははっ!」
酷い……。もう知らないよ?
「ごめんごめん、勉強しよう」
「侍女の所ちょっと顔出してくる、先に初めてて」
「はーい」
ノーラが出て行ってしまうと、ユリアはその場から立ち上がり、机を漁り始めた。
流石に驚いて立ち上がると、ユリアは「座って」と合図をしてくる。仕方ないから、参考書を広げる。
「あーっ! ったく、またやってるのか」
「あら、早かったわね」
「またやってると思ってな。……リーナを巻き込まない辺り、ユリアらしい」
「えへへ~。みっけたよ、ノーラの秘蔵写真!」
「そんなの見つけて何になるんだ」
ユリアは私に見せてくる。ノーラの小さい時の写真の様だ。か、可愛い……。
どうも、こういう、ちょっと他の人が恥ずかしいと思うような何かを毎回探してはノーラに見せるらしい。けど、どれも効かないって。つまんない、なんていいながら写真を机に放った。
「ドロシアが来てくれる事になったぞ」
「えー。ドロシー厳しいからやだー」
「何言ってんだ、何しに来たんだよ」
「……勉強です」
コンコン、というノックの音。入って来たのは、侍女。グレーの髪をツインテールにした侍女。彼女がドロシアさんらしい。
私を見ると、ちょっと驚いたように目を大きくして、それから小さく笑う。
「ノーラお譲様がユリアお譲以外を連れてくるなんて、初めてじゃないですか……」
「わ、私にも、少しくらいは友達、居るんだからな」
「わたくし、ノーラお譲様の専属メイド、ドロシアと申します」
「あ、わ、私、リーナ、リーナ…………、グリフィン、です」
ノーリッシュにするか、グリフィンにするか、いつもいつも迷う。でも、今は良いよね?
私だって、別に、ラザールお兄様と兄妹だって、隠したいわけじゃない。でも、何か言われるんじゃないかって、いつも隠しちゃうんだよね。
「あら、ラザール様に妹が出来たという噂は本当だったのですね。リーナ様、よろしくお願い致します」
恭しく頭を下げると、ユリアの隣に座り、笑顔を浮かべる。
「さて、何処から始めましょうか?」
「いやあああああああっ!」
館中に悲鳴が響き渡る。
と言うのも、ユリアはどうしても勉強が嫌らしくて、逃げ出そうとしては捕まってを繰り返しているのだけれど、そろそろドロシアさんもお怒りの様です。
笑顔なのが余計に怖いですよ……。ミネルヴァさん、優しくてよかった。
「いいんですか? このまま成績が落ちていけば、本当に、ノーラお譲様と同じクラスに、なれないかもしれないですよ?」
「でも、でも……」
「わたくし、心配なんです。ノーラお譲様も、ユリアお譲も、友達作るの、苦手でしょう? だから、分かれちゃったら……」
そう言って、小さく溜息を吐く。そっか、そういう事なんだ。それで、ドロシアさんはこんなに勉強を……。
ユリアはしばらく俯いていたけれど、「やるわ」と言ってペンを取る。根は良い子なの。凄く凄くいい子なの。
ちなみに、私は結構勉強進んだよ。家でやると、ほら、結構気が散ったりするけど、それも無いし。
「そろそろ暗くなりますね」
「そうだな。私もそろそろ疲れてきた」
「……明日は、土曜日よね?」
「ん、ユリア、泊まってくか?」
「うん……。流石に私も危機感を覚えた」
「そうか、それはよかった。泊まっていけ」
そう言ったあと、みんなは私に目を向けた。えっと……。
「どうすれば、良いでしょう……?」
「泊まりましょう」「泊まりなさい」「泊まってけ」
みんな一気に言わなくても……。分かるんだけど……?
ともかく、連絡しないといけないね。どうしようかな……。
「では、侍女に行かせます、心配しないでください」
「あ、ありがとうございます」
「よし、じゃあユリア。もうひと頑張りしようか」
「うん!」
「リーナも、な」
「はっ、はいっ!」
なんか、凄く楽しい。みんなで勉強も、結構いいなぁ。
明日は、私がユリアに勉強教えても良いかもしれない。
でもまあ、油断すると危ない目に会うっていうのはよくよく分かった。
さて、もう十月だ。
「うああぁ、もうすぐテストじゃない……」
「そんなに嫌?」
「別にいいじゃないか」
「む……。リーナとノーラは、頭良いからそう言えるのよ……」
ユリアは机に突っ伏して文句を言っている。
まあ、大変な事は大変。勉強ばっかだし。でも、それはそれで良い。別に、勉強は苦痛じゃない。楽しいほう。お母さん達、思い出しちゃうけど、まあ……。
ともかく、私はそんなに嫌じゃない。だから、こうやって嫌がっているユリアを見るのはちょっと変な感じがする。
「……リーナ、頭、良いのか?」
「や、別に……」
「違う、謙遜よ! リーナは頭良いわよ。だって、戦闘のレベル結構低かったし……」
「ユリア、傷つく」
「あっ、ごめん! まあともかく、Bに居るってことは、結構頭良いはずよ」
そう、かなぁ……。なんか、ラザールお兄様とかと一緒に居るから、よく分かんなくなっちゃった。ミネルヴァさんはもちろん、アンジェラさんも頭良いし、ミルヴィナさんだって結構頭良い。
だからかな、なんか普通の感覚が良く分からないっていうか? 何処が普通だろ。
「あと何日?」
「一週間だな。何処まで分かるんだ?」
「それも分かんない」
「全く……。家庭教師はどうしたんだ」
「一週間だから、ほら、もう詰め込みに入る」
「毎日勉強しろよ!」
「嫌なのよ。勉強なんて好きになれないわ」
こんな風に、ユリアとノーラは仲が良い。仲が……、良い……? 普段は良いよ。
ユリアと仲良くなってから、ノーラともちょっとずつ仲良くなっていって、今はちゃんと友達って呼べるレベル。
「リーナはどうやって勉強を?」
「あっ、一人でか、あと、家庭教師も居るけど……。一人の方が多い、かな」
「ほら。一人でも勉強してるって」
「うぅ……。良いじゃない、私は戦闘で何とかなってるのよぅ」
まあ、こんな感じに、結構二人といると楽しい。たの、しい……? 普段は楽しいよ。
なんか、本当に二人は仲が良いんだなって思う。私、やっぱり、上手く入り込めない時がある。
「まあ、頑張ろうな」
「うん! ノーラと同じクラスに居るの!」
「ああ、そうだな。よし、じゃ、帰るか。また明日、リーナ」
「うん。じゃあね、リーナ」
「じゃあね、ユリア、ノーラ」
「テスト勉強、面倒」
「何言ってるんだ、ラザール。お前何回目のテストだよ」
「数えきれないよ」
「こんなこと言ったの、今回が初めてだが。一体どうした」
ミルヴィナさんとラザールお兄様の会話は結構聞いてて楽しい。
と言うのも、他の使用人と違うから。こんな風に敬語使わないで喋ってるの聞くのって、やっぱ新鮮。
え、で、テスト勉強が面倒?
「だって……。今までは暇だったけど、リーナちゃんがいるんだもん」
「それ、本人の前で言っていいのか?」
「……。んん? ああああっ!」
えっと……。何でしょう。
「まあまあまあまあ! 早く勉強しましょうよ。てか、なんでミルヴィナがいるの?」
「なんで居ちゃいけないんだ? 姉が教えてる勉強、見てみたいんだが、駄目か?」
「ま、まあいいけど? さ、始めましょうか!」
ミネルヴァさん……。遊ばれてるの、気付いて……。
まあ、ともかく。今から勉強するのに、いきなり随分時間使ったよ。早く始めよう。
でも、この感じは楽しい。何時までも見てたい。
やっぱり。此処が、私の、居場所なんだ。
「やだやだやだやだ!」
「ユ、ユリア? どうしたの?」
「ああ、リーナ。今からユリアを私の家に連行だ!」
「やーだー! 勉強漬けなんていやー!」
「あ、そうだ、リーナも来るか?」
その瞬間、ユリアが動きを止めた。ノーラは、ユリアの好みを知ってる。ついでに、私とのことも知ってる。ユリアとノーラはずっと仲が良いから、私がいると嫌なはずなのに、ノーラはいつも一緒に居させてくれる。それに、ユリアも、二人に同じように接してるし……。なんか、良いな、こういうの。
「え、来るの?」
「え、っと……。ラザールおに……、アンジェラさんに訊かないと」
「あー、ラザールとのこと、知ってるぞ。だから、隠さないでも」
「! じゃあ、ラザールお兄様に訊いてきます」
友達の家なんて、始めてだ。
だから、どうしていいのか分からず、きょろきょろしてたら、二人に笑われた。そ、そんなに笑わなくったっていいじゃん……。
「いや、予想はしてたが、予想以上だった」
「こんな面白いなんて、あはははっ!」
酷い……。もう知らないよ?
「ごめんごめん、勉強しよう」
「侍女の所ちょっと顔出してくる、先に初めてて」
「はーい」
ノーラが出て行ってしまうと、ユリアはその場から立ち上がり、机を漁り始めた。
流石に驚いて立ち上がると、ユリアは「座って」と合図をしてくる。仕方ないから、参考書を広げる。
「あーっ! ったく、またやってるのか」
「あら、早かったわね」
「またやってると思ってな。……リーナを巻き込まない辺り、ユリアらしい」
「えへへ~。みっけたよ、ノーラの秘蔵写真!」
「そんなの見つけて何になるんだ」
ユリアは私に見せてくる。ノーラの小さい時の写真の様だ。か、可愛い……。
どうも、こういう、ちょっと他の人が恥ずかしいと思うような何かを毎回探してはノーラに見せるらしい。けど、どれも効かないって。つまんない、なんていいながら写真を机に放った。
「ドロシアが来てくれる事になったぞ」
「えー。ドロシー厳しいからやだー」
「何言ってんだ、何しに来たんだよ」
「……勉強です」
コンコン、というノックの音。入って来たのは、侍女。グレーの髪をツインテールにした侍女。彼女がドロシアさんらしい。
私を見ると、ちょっと驚いたように目を大きくして、それから小さく笑う。
「ノーラお譲様がユリアお譲以外を連れてくるなんて、初めてじゃないですか……」
「わ、私にも、少しくらいは友達、居るんだからな」
「わたくし、ノーラお譲様の専属メイド、ドロシアと申します」
「あ、わ、私、リーナ、リーナ…………、グリフィン、です」
ノーリッシュにするか、グリフィンにするか、いつもいつも迷う。でも、今は良いよね?
私だって、別に、ラザールお兄様と兄妹だって、隠したいわけじゃない。でも、何か言われるんじゃないかって、いつも隠しちゃうんだよね。
「あら、ラザール様に妹が出来たという噂は本当だったのですね。リーナ様、よろしくお願い致します」
恭しく頭を下げると、ユリアの隣に座り、笑顔を浮かべる。
「さて、何処から始めましょうか?」
「いやあああああああっ!」
館中に悲鳴が響き渡る。
と言うのも、ユリアはどうしても勉強が嫌らしくて、逃げ出そうとしては捕まってを繰り返しているのだけれど、そろそろドロシアさんもお怒りの様です。
笑顔なのが余計に怖いですよ……。ミネルヴァさん、優しくてよかった。
「いいんですか? このまま成績が落ちていけば、本当に、ノーラお譲様と同じクラスに、なれないかもしれないですよ?」
「でも、でも……」
「わたくし、心配なんです。ノーラお譲様も、ユリアお譲も、友達作るの、苦手でしょう? だから、分かれちゃったら……」
そう言って、小さく溜息を吐く。そっか、そういう事なんだ。それで、ドロシアさんはこんなに勉強を……。
ユリアはしばらく俯いていたけれど、「やるわ」と言ってペンを取る。根は良い子なの。凄く凄くいい子なの。
ちなみに、私は結構勉強進んだよ。家でやると、ほら、結構気が散ったりするけど、それも無いし。
「そろそろ暗くなりますね」
「そうだな。私もそろそろ疲れてきた」
「……明日は、土曜日よね?」
「ん、ユリア、泊まってくか?」
「うん……。流石に私も危機感を覚えた」
「そうか、それはよかった。泊まっていけ」
そう言ったあと、みんなは私に目を向けた。えっと……。
「どうすれば、良いでしょう……?」
「泊まりましょう」「泊まりなさい」「泊まってけ」
みんな一気に言わなくても……。分かるんだけど……?
ともかく、連絡しないといけないね。どうしようかな……。
「では、侍女に行かせます、心配しないでください」
「あ、ありがとうございます」
「よし、じゃあユリア。もうひと頑張りしようか」
「うん!」
「リーナも、な」
「はっ、はいっ!」
なんか、凄く楽しい。みんなで勉強も、結構いいなぁ。
明日は、私がユリアに勉強教えても良いかもしれない。
コメント