紅く染まったお前の手

電光石火隊

第一章「紅い手」

皆々様初めまして
私は、この話の語り部に御座います

語り部と言いましても、時々登場人物の説明などする程に御座いますが...
お見知り置きを

さて今は、一人の“女の子”が登場しておりますね

彼女の名前はメーア
ドイツ語で海と言う意味に御座います

何の変哲も無い村に生まれ
不自由が無いと言えば嘘になってしまいますが、楽しく暮らしております

〔今は〕

あー言い忘れておりましたが...
この世界は、異世界に御座います

魔物も魔神も神族、魔族、人間などなど多種多様な種族が住んでおります

おっと話し過ぎてしまいましたね

それでは、語りの続きを致しましょう

赤く...紅く...
その身体が...燃え尽きてしまうような.....
お話しを...



[空はもう夕暮れの顔
赤く紅く染まってる

さぁさぁそろそろ帰らねば
あいつが奴がやって来る

大きな大きな“怪物”が

紅く染まった夕焼けを背に
紅く染まった大きな手を

振りかざしにやって来る]

私は詩を歌っていた
お母さんから聞いたその詩を

すると友人が
「何その歌?」と聞いてきた
「お母さんから聞いた詩よ」

今は街からの帰り道
荷馬車に乗り、揺られてる

「変な歌ね。夜なると危ないから早く帰りなさいってことかなぁ?」
友人はそう言った

私も昔はそう思っていた
でも今は違う
この詩はそういう意味じゃないと分かる
感覚的な事だけど

そして村に着いた時
森の方から視線を感じけど
そちらを見たけれど何も居なかった

「どうしたの?」
「何でもない、早く帰ろ」

二人が離れて行く
そして、それを見送る視線

夜が更けてゆく

ふと、外から聞こえる物音で目が覚める
鈍く重々しい足音だった

(何だろ、動物?)

気になったので外に出ると、“それ”が森の川に向かって行くのが見えた

私は“それ”を追いかけた

でも、川に着き周りを見渡しても何も居なかった

「何処に行ったんだろう...」

辺りを歩いて探していると
川沿いに出た
向こう岸に何かが見えた

見なければよかった...



私は腰を抜かしてしまい、その場に座り込んでしまった

月明かりが何かを照らす

それは...高さはゆうに5mはあるであろう巨大な“魔物”だった


本来、魔物というのは人里近くに出没する事はない
特に大型のものはありえないのである

理由として、彼等には大量の魔獨〈まどく〉と呼ばれる“霧”が必要であり、これは魔獣の森でしか発生しないものだからだ

そして身体が大きければ大きいほど魔獨が大量に必要になる

それに、人が住む場所は魔獨がほぼ無に等しい為
仮に魔物が居たとしても、小型のものぐらいの筈なのだが...

(確か...おばあちゃんが言ってた。
昔、村を襲った大きな魔物がいたって
その時に、沢山の人を喰べたって

魔物が...人を捕食する理由は

   人の体内から魔獨を取る為だって)

そして魔物と目が合う

ゆっくり...ゆっくりと近付いてくる

私も逃げようとしたが
もう、間に合わない

魔物の瞳には、怯えた私が写っていた

「嫌だ...嫌だ!誰か、誰か助けて!
 死にたくない!死にたくなんてない!」

叫んでも誰も助けになど来ない
そして、魔物は私の片足を潰した
「....!ぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
余りの傷みに私は叫んだ

私の片足は
まるで、岩の下敷きになったかの様に
肉が飛び散り、砕けた骨が赤白く肉から出ている

「くぅっ!はぁはぁはぁ...ぐっ!」

傷みが身体を支配する

ふと魔物の顔が見えた時

魔物の目元は、笑っていた

言葉が分かる訳では無い
だがそれは、弱者を弄ぶ強者の眼だ

もう助からない....
血が流れてる.....意識が...うス、レテ....

薄れ行く意識の中、何かが通った

私はそれを...見た

バギィバギッパキンバギ
ブヂィィッグチャグチャクチャ、ガヂボリッグチャ

“それ”は魔物のを喰べていた

魔物より小さい身体で、喰らい付き
殴り、砕き、噛みちぎり、貪る

頭からは眼玉が飛び出て、血と臓物は散らばり、脳を嚙り、心臓を丸呑みした

眼が霞んでいるからか、異様に腕が太く見えた

「がぁぁぁあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁ!!」

それは、黒より暗く、尾全体に鱗があり、人の形に似ているが、根本的に何かが違う
頭から背中にかけてまで伸びている髪、魔族なのだろうか、はたまた別の種族なのだろうか、分からない

でも、これだけは言える...

あの足音は、アイツのだって...

あれは...詩にいた怪物だって....

だって、見たもの...

紅く染まったアイツの手を......














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