幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

155話目 爆弾処理

 やべえってこの娘、天才なんてもんじゃないよ。つーか蒸気機関でパワードスーツ作成とかどんだけ年代すっ飛ばしてるというか温故知新というか、お前の技術で宇宙がヤバい。

 と、思考にノイズを走らせることで何とか冷静さを取り戻す。いやまあ冷静になってもヤバさに変わりは無いんですけどね。てか、この娘、俺必要? 放っておけば勝手にグングン育つ植物系女子じゃないかな? むしろ俺が変な影響与えちゃいけないような気もするんだが。

 『うーむ』とさっきとは違う意味合いで唸っていると、恐る恐る、といった具合でアンが話しかけてきた。

「それで、その、弟子入りは……」

 今まさにそれで悩んでいるんだけどね。しゃあない、分らんことは聞いてみるか。

「けどよお、そんなもん作れるんだったら、別に俺の弟子にならなくてもいいんじゃねえか? 正直、モノ作りで教えられることなんて無さそうだし、俺のとこに居たら悪い影響を与えそうで怖いんだけど」

 嘘偽りなき俺の本音である。知識魔法のお陰で蒸気機関の理屈だとか設計だとかは分るし、その気になればその他の技術も伝えることはできる。できる、が、それは弟子入りとかとは違う気がする。シャルとリーディアに教えている魔法、剣術と違い、俺自身にモノ作りの経験や知識は無いに等しい。せいぜいが料理と魔道具の製作くらいだろうか。
 俺の質問に対して、彼女自身も整理しきれていないのか、しどろもどろになりながら答えた。

「いや、なんつーか、試行錯誤もドン詰まってるっていうか、正直、実物を見ないともうどうしようもねーっつーか。それに、『森の魔法使い』がアンタだったってーのが意外……、いや、意外でもなんでもねーな。うん。とにかく、アンタに鍛冶の経験が無いのは分ってるけど、教えを乞う以上は弟子になるのが筋ってモンだろ? なあ、頼むよ……。アレだ、あんたのためだけの、最高の剣を作ってやるからさ……」
「ぬ……」

 『最高の剣』というワードに心がときめいてしまう。だってアレだぞ? 馬車だ剣だ戦争だ侵略だ、って千年やってる中、ノーヒントでアダマンタイト製パワードスーツバイ蒸気機関とかやっちゃう超天才が言う『最高の剣』だぞ? 残像剣や振る度にフォンフォン言っちゃうヤバい剣、はたまた俺では想像も出来ないようなヤバい剣を作ってくれるやもしれん。

「……」

 そして、気になるのは先ほどから黙っているシャルである。俺の決定に口を挟む気は無いようではあるものの、目は口ほどに物を言うが、弟子入りを断ってほしいという考えが視線だけでありありと伝わってくる。

 どうして彼女がそこまで攻撃的なのかは分らんが彼女の意思を優先したいと思う反面、これだけの技術が俺の手元以外で知らないままに発展する危険性を放置するのも…………。

 ……………………。

「よし、弟子入りを認めよう」
「ほ、本当か?! よっしゃあああああ!!」

 およそ女の子らしくない雄たけびをあげて歓喜するアンとは対照的に、『はぁ』と息を吐いて明らかに意気消沈しているシャル。今この場では難しいかもしれんが何らかのフォローは必要だろうな……。

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