幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

154話目 またなんk(ry

「うわっ!」
「わわっ!」

 しばらくして、変化は如実に現れた。ただの立方体の箱だった物体がモーター音――いや、多分歯車の音か――と共に変形し、頭部、脚部、腕部が出来上がり、最後には多量の水蒸気を吐き出しながらその胸部に穴が開いた。

「それで、アタシがここに入り込むって寸法よ」

 その言葉と共にアンはするりとに入り込むと、パタパタと器用に着込んでしまい、何がどうなったのやら、ガチャリ、と胸部を閉じて綺麗さっぱり装備し終えてしまった。

「コイツがアタシの秘密兵器、っつっても、試作品だから名前も無いんだけどね」

 鎧の中からすこしくぐもった声を出し、彼女は調子を確かめるように軽く腕や足を動かした。その度にどこかしらから水蒸気が噴き出す。少々離れた場所にも関わらず、当たればタダでは済まないほどの熱気を持っており、正直中身が心配になるレベルだ。

「な、なあ、暑くないのか?」
「ん? ああ、そりゃあねえ。でもこのぐらいドワーフからすりゃなんてことないよ。夏の仕事場の方がよっぽどさ」
「へ、へぇ~」

 ドワーフというのは鍛冶に長けている影響か、熱気にも強いようだ。少なくとも、俺としては遠慮したくなる程度に中身は蒸し焼きになっているだろう。その他にも、元が小さいからか結局は高さ1メートル少々の鎧になっていたり、その割には背中に大荷物を背負う形になっていたりと、最初のインパクトにこそ驚かされたが、見れば見るほど『秘密兵器』と威張るほどのモノには思えない。

「なあ、こんな鎧で化け物共の攻撃を防げんのか?」
「『こんな』とは失礼だねぇ。アダマンタイト製の鎧に防げない攻撃なんて存在しないよ」
「うわ~お、豪勢なことで……」

 アンの親父さんがやってる武器屋に行ってから知った事だが、この世界には元の世界では架空の鉱物として扱われていた『アダマンタイト』『ミスリル』『オリハルコン』が実在する。それぞれ、『超硬いがクッソ重い』『軽いが鉄よりも硬い』『ミスリル並みに軽く、アダマンタイト並みに硬い』という特徴がある。また、ミスリルとオリハルコンは魔法との親和性が良いようで、魔道具の素材としても優秀だが、魔法知識が浅いため全く知られていない。まあそういった架空の鉱物すら凌駕する、創造魔法製の謎金属さんは一体何者なんですかねぇ……。
 ちゅーか『アダマンタイト製の鎧』ってことは一部じゃなくて、これ全部アダマンタイトってこと? バカじゃないの?! これ全部で何トンあんだよ!

「でもそんな凄い鎧があるんだったら、もっと前にたどり着いててもいいと思うんだけど。なんか後ろに一杯余ってるみたいだし、材料が足りないってことはないんでしょ?」
「後ろのヤツは余りじゃないよ! むしろ、後ろのヤツがなけりゃ一歩も動くことすら出来やしないよ。平たく言えば、その中で魔物の石を使って水を沸かして水蒸気を作って、それで歯車を回して鎧を動かすのを補助してるのさ」

!?

「へぇ~、なんか大変だね。師匠の魔道具ならそんなことしなくても簡単に守れるのに。それに、師匠が作った『ろぼっと』の真似にしか見えないよ。ああ、『ろぼっと』っていうのは鉄の巨人の名前だよ」
「うぐっ! いやまあ、確かに色々と難がある代物だし、その『ろぼっと』ってヤツを目指して作った出来そこないってのは認めるけど、それでも十分役に立つんだって! あの猿共の攻撃にも傷一つ付かなかったし!」
「それ、鎧が凄いんじゃなくて、アダマンタイトが凄いんだよね? 師匠、ここまで来たのは凄いけど、作ったのはそんなに大したものじゃ……、師匠?」

 何故かいつもより攻撃的なシャルがアンをなじっているが、正直それどころの話じゃない。ここまでたどり着いたことよりも、やべえ事実がそこにはあった。

 俺は顔面を蒼白にして呟いた。

「蒸気機関とパワードスーツを一度に開発した……だと……?」

 と。

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