幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
110話目 偶然
基本的には強い生き物の方が強い気配を放っている。また、魔法を併用すれば別であるが弱い生物があまりにも密集していると具体的にどれだけの数がそこに潜んでいるのかというのは非常にわかりにくくなる。そういう訳で今回この洞窟がヤツらの拠点であることは分かっていたのだがちゃんとした数は数えていなかったのである。
何が言いたいのかというとそろそろいい加減に打ち止めにしてくれということだ。かれこれ十分はゴブリンを屠り続けているのだが、未だにそれが尽きる気配はない。たかが十分と侮ることなかれ、外に出てきた分だけで既に五百は超えており、まだまだ洞窟内には気配が残っている。そして出てきた瞬間に倒すのでその大半は待ち時間になってしまっているので、一言でいえば非常にかったるいのである。
お前らはどうやってこの洞窟の中で生活していたんだと聞きたくなったが、多分聞いても返ってくるのはギャーギャーという鳴き声だけなのでその謎が解明されることは無いだろう。なので俺の傍で構えが甘くなってきている人に問うことにした。
「なあ、あの数で洞窟の中に住むのって無理じゃないか?」
もしかしたらこの洞窟が常識外れに広いのかもしれないが、それだと数えることが出来ない程密集する理由も無いだろう。ライザも何故これ程に大量のゴブリンが潜んでいたのか考えていたらしく、少し思案すると彼女は推測を語った。
「もしかしたら巣別れかもしれないな」
彼女によると洞窟の中でこの数が生息することはおろか、この近辺でこれだけの数に増える事すら考えにくい事らしい。ゴブリンはかなりの悪食で食べれそうなものは何でも食べるので、仮にこの数までこの辺りで増えていたならばこの森一帯は雑草一つ残らないはずなのに、洞窟の周辺が荒れている程度で済んでいるのが根拠だそうだ。
「村の畑を荒らしていたのも、巣に適した場所を探していたからかもしれないな」
「うわ、それかなり不味かったんじゃないの」
「ああ、対処するのがもう少し遅れていたらあの村が滅んでいた可能性もあるね」
斥候の役目を負ったゴブリンを各地に放ち、生活に適した場所の捜索を行う。襲われ始めてからしばらく経っている事を考えると、あの村が標的になっていた可能性はかなり高い。この洞窟の中に居たのも、これから襲い掛かるための準備をするためだったのかもしれない。もしもこれだけの数のゴブリンが一斉にあの村に襲い掛かっていたならば、村人はまず間違いなく皆殺しにされていたはずだ。
「この数を相手にするのはあたしでも骨が折れるよ。他の駆け出しじゃなくてあんたらが依頼を受けた偶然に感謝しなきゃね」
一級冒険者でも手こずるとか、どう考えても金貨一枚で済む依頼ではない。俺達以外の低級冒険者が一人でここに来たとしてもゴブリンの餌になるのがオチだったはずだ。そして当然こんなしょぼい報酬の依頼を上級冒険者が受けるはずもない。あれ? もしかしてこの村地味に詰んでたんじゃね?
更に言えば被害はあの村だけに留まらず、その周辺の村にも出ていたに違いない。そして獣人の国への侵攻にその影響が出ることは容易に想像できるので、これまた地味に帝国の危機でもあったというわけだ。だがその全てはリーディアが利益度外視でこの依頼を受けたことにより未然に防がれたので、リーディアは人知れず帝国の危機を救ったことになる。ワオ、ほんとに偶然って恐ろしい。
そんな風にしみじみと偶然の恐ろしさを味わっていると一際大きな爆発音が鳴り響く。完全に不意を突かれたため何事かと驚いていると『ごめんなさーい!』とシャルが遠くからこちらに向けて謝罪をしてきた。多分ストレスが溜まったせいで思わず高火力の爆発魔法を放ってしまったのだろう。あの子、割と俺と同類だからね。
気にするな、とばかりに大きく手を振っていると洞窟内の気配が数を判別できる程度には減っている事に気付く。その数は凡そ二百。単純計算であと四分程頑張れば殲滅が可能だ。長年の訓練によりシャルもある程度気配を読めるが、その精度は俺程ではないのでまだそのことを把握していないはずだ。
「二人ともー! あと二百匹くらいだから頑張れー!」
「わかったー!」
「了解した!」
いつまで続くのか分からないという状態から抜け出したことにより二人が目に見えて元気になる。それによりゴブリンは更に素早く葬られるのだが、ゴブリンが洞窟から出てくるまでの遅さがボトルネックになっているので全体としての効率は変わっていない。えーい、もどかしい。
見ているこっちの方がイライラとしてしまうが、それでもたかが四分程度のこと、着々とゴブリンはその数を減らしていき、ついに終わりが見えたその時異変が生じた。
「ん?」
遠くから凄まじい速さでこちらへと向かってくる生物がいる。そいつの強さはゴブリンなどとは比較にならない程であり、恐らくこの森で一番の強者なのではないだろうか。無論その気配自体はとっくに察知していたのだが、こちらへ向かってくる様子は無かったので特に気にしていなかった。それなのに何故急に……、ああ、さっきのシャルの魔法が原因か。もしくはゴブリンの血の匂いに惹かれたかのどちらかだろう。
この森で一番の強者とはいえ、もちろん俺達であれば問題にはならない。しかしライザが勝てるかどうかはかなり怪しいため、直接対峙することなく遠くから魔法で処理するのが無難だろう。
そして俺は強化した視力でそいつの姿を確認し……。
「ッ!!」
全身の毛が逆立ち、目を見開いて硬直する。強い弱いではない。駄目だ。アレは駄目だ。死が頭を過り、心臓を鷲掴みにされたような心地になる。誰かに呼びかけられているような気がするが、耳に入らない。
俺は魔法を発動する事すら忘れ、そしてそれは驚異的な速度で近づき、そして俺達の目の前に飛び出してきた。
何が言いたいのかというとそろそろいい加減に打ち止めにしてくれということだ。かれこれ十分はゴブリンを屠り続けているのだが、未だにそれが尽きる気配はない。たかが十分と侮ることなかれ、外に出てきた分だけで既に五百は超えており、まだまだ洞窟内には気配が残っている。そして出てきた瞬間に倒すのでその大半は待ち時間になってしまっているので、一言でいえば非常にかったるいのである。
お前らはどうやってこの洞窟の中で生活していたんだと聞きたくなったが、多分聞いても返ってくるのはギャーギャーという鳴き声だけなのでその謎が解明されることは無いだろう。なので俺の傍で構えが甘くなってきている人に問うことにした。
「なあ、あの数で洞窟の中に住むのって無理じゃないか?」
もしかしたらこの洞窟が常識外れに広いのかもしれないが、それだと数えることが出来ない程密集する理由も無いだろう。ライザも何故これ程に大量のゴブリンが潜んでいたのか考えていたらしく、少し思案すると彼女は推測を語った。
「もしかしたら巣別れかもしれないな」
彼女によると洞窟の中でこの数が生息することはおろか、この近辺でこれだけの数に増える事すら考えにくい事らしい。ゴブリンはかなりの悪食で食べれそうなものは何でも食べるので、仮にこの数までこの辺りで増えていたならばこの森一帯は雑草一つ残らないはずなのに、洞窟の周辺が荒れている程度で済んでいるのが根拠だそうだ。
「村の畑を荒らしていたのも、巣に適した場所を探していたからかもしれないな」
「うわ、それかなり不味かったんじゃないの」
「ああ、対処するのがもう少し遅れていたらあの村が滅んでいた可能性もあるね」
斥候の役目を負ったゴブリンを各地に放ち、生活に適した場所の捜索を行う。襲われ始めてからしばらく経っている事を考えると、あの村が標的になっていた可能性はかなり高い。この洞窟の中に居たのも、これから襲い掛かるための準備をするためだったのかもしれない。もしもこれだけの数のゴブリンが一斉にあの村に襲い掛かっていたならば、村人はまず間違いなく皆殺しにされていたはずだ。
「この数を相手にするのはあたしでも骨が折れるよ。他の駆け出しじゃなくてあんたらが依頼を受けた偶然に感謝しなきゃね」
一級冒険者でも手こずるとか、どう考えても金貨一枚で済む依頼ではない。俺達以外の低級冒険者が一人でここに来たとしてもゴブリンの餌になるのがオチだったはずだ。そして当然こんなしょぼい報酬の依頼を上級冒険者が受けるはずもない。あれ? もしかしてこの村地味に詰んでたんじゃね?
更に言えば被害はあの村だけに留まらず、その周辺の村にも出ていたに違いない。そして獣人の国への侵攻にその影響が出ることは容易に想像できるので、これまた地味に帝国の危機でもあったというわけだ。だがその全てはリーディアが利益度外視でこの依頼を受けたことにより未然に防がれたので、リーディアは人知れず帝国の危機を救ったことになる。ワオ、ほんとに偶然って恐ろしい。
そんな風にしみじみと偶然の恐ろしさを味わっていると一際大きな爆発音が鳴り響く。完全に不意を突かれたため何事かと驚いていると『ごめんなさーい!』とシャルが遠くからこちらに向けて謝罪をしてきた。多分ストレスが溜まったせいで思わず高火力の爆発魔法を放ってしまったのだろう。あの子、割と俺と同類だからね。
気にするな、とばかりに大きく手を振っていると洞窟内の気配が数を判別できる程度には減っている事に気付く。その数は凡そ二百。単純計算であと四分程頑張れば殲滅が可能だ。長年の訓練によりシャルもある程度気配を読めるが、その精度は俺程ではないのでまだそのことを把握していないはずだ。
「二人ともー! あと二百匹くらいだから頑張れー!」
「わかったー!」
「了解した!」
いつまで続くのか分からないという状態から抜け出したことにより二人が目に見えて元気になる。それによりゴブリンは更に素早く葬られるのだが、ゴブリンが洞窟から出てくるまでの遅さがボトルネックになっているので全体としての効率は変わっていない。えーい、もどかしい。
見ているこっちの方がイライラとしてしまうが、それでもたかが四分程度のこと、着々とゴブリンはその数を減らしていき、ついに終わりが見えたその時異変が生じた。
「ん?」
遠くから凄まじい速さでこちらへと向かってくる生物がいる。そいつの強さはゴブリンなどとは比較にならない程であり、恐らくこの森で一番の強者なのではないだろうか。無論その気配自体はとっくに察知していたのだが、こちらへ向かってくる様子は無かったので特に気にしていなかった。それなのに何故急に……、ああ、さっきのシャルの魔法が原因か。もしくはゴブリンの血の匂いに惹かれたかのどちらかだろう。
この森で一番の強者とはいえ、もちろん俺達であれば問題にはならない。しかしライザが勝てるかどうかはかなり怪しいため、直接対峙することなく遠くから魔法で処理するのが無難だろう。
そして俺は強化した視力でそいつの姿を確認し……。
「ッ!!」
全身の毛が逆立ち、目を見開いて硬直する。強い弱いではない。駄目だ。アレは駄目だ。死が頭を過り、心臓を鷲掴みにされたような心地になる。誰かに呼びかけられているような気がするが、耳に入らない。
俺は魔法を発動する事すら忘れ、そしてそれは驚異的な速度で近づき、そして俺達の目の前に飛び出してきた。
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