幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
14話目 自分で出来ること
あまりにも予想外な言葉が飛び出してきたため俺の脳はその言葉を理解することを拒否しようとする。ただ、このような大事な場面で聞き間違えるようなことはしないし、あんな言葉は二度も言わせるものでもないので聞き返すような真似はしない。
「あー、とりあえずこっちに座りなさい」
その言葉を真っ向から拒否してシャルの意思を抑え込むわけにも、かといってそのまま受け取るわけにもいかないので、眉間に寄っている皺を解しつつ、自分の隣を指さして着席を促す。
シャルは依然として思いつめた顔のまま俺の隣に座るとじっと俺の顔を見つめた。
「シャル、『体を使う』の意味は分かってるのか?」
多分わかってないんだろうなあと思いながらそう尋ねると案の定シャルは首を横に振った。『それならそんな言葉を使っちゃいけない』と俺が言う前にシャルが口を開く。
「私を捕まえた人たちはいつも『あいつの体を使わせろ』って言ってました」
マジであいつら教育に悪いなオイ。見た目8歳ぐらいの女の子に向かって『体使いたい』とか、あまつさえそんな言葉を憶えさせてしまうなんて人間性が疑われるってレベルじゃねーぞ。ああ、冒険者なんて元々そんなもんだったな……。
シャルの言葉を聞いて、頭痛がするわけでもないのに頭を抱えたくなる。二の句が継げずにいる俺に構わずシャルは更に言葉を続ける。
「私はリョウ様に恩返しがしたいんです。『私の体を使う』のは私にしか出来ないことのはずです。だからリョウ様、私の体を使ってください!」
「恩返しならもうしてるじゃないか。洗濯だってしてもらってるし料理も……」
「出来てない!!」
『シャルに手伝ってもらっている』と言おうとした俺の言葉をさえぎってシャルが叫ぶ。
「私は邪魔してる! 本当だったらリョウ様一人でなんでもできるのに! 私はリョウ様に教えてもらってばかりで! 魔法だってリョウ様の役に立つようなのは使えない! 私は…………、私はリョウ様の邪魔なの!」
シャルはポロポロと目から涙を零しながら、それでも俺の顔から眼を離さずにそういった。
「リョウ様に助けてもらってばかりで……、邪魔してばかりで……、お料理も出来なくて……、全然役に立ててないもん……、恩なんて返せてないもん……」
シャルは壊れたおもちゃのように『自分は役に立てていない』『自分は邪魔だ』と繰り返す。
はあー、これが落ち込んでた原因か。『シャルに仕事をあげよう』と考えて気を回したのが逆に悪かったのか。『何でもするから助けて』と俺に言ったのにまるで役に立てていない、そのことで自分自身をどんどんと追い込んでいった結果、早く役に立つ魔法を使えるようとして昼間は暴走してしまった、と。
確かにシャルはそう言ったけどさあ……。
「この馬鹿」
昼間口にした言葉を再度口にしながら、シャルを優しく抱きしめる。
「あのな、子供は年上に頼るのが当たり前なの。そのことを子供が気にするもんじゃありません」
「でも……」
「『でも』じゃない。そういうもんなんだよ。シャルはお父さんやお母さんに『恩を返さなきゃ』って思ったことあるか?」
俺の問いに対してシャルは『ううん……』と言いながら首を横に振る。
「俺にもそれでいいんだよ。『恩を返さなきゃ』とか難しいことは大人になってから考えりゃいいんだ」
「でも、リョウ様は家族じゃないのに私のこと助けてくれて……」
それでも尚食い下がるシャルに対して内心ため息をつく。この子ってば割と頑固なのねえ。そんな思いをおくびにも出さずに極力優しく語り掛ける。
「わかったわかった。じゃあ、あれだ、俺はお前の師匠だ。師匠だったら弟子を育てるのは当たり前だ」
「リョウ様の弟子……」
「そう、弟子だ。それから俺の事は『リョウ様』じゃなくて『師匠』と呼ぶように」
「……うん、リ、師匠」
今また『リョウ様』って呼ぼうとしただろ。地味にむずかゆい呼び方だったから割とやめてほしいんだよね。
「ほれ、今日は一緒に寝ちまおう」
不安だったり自己嫌悪だったり、色々な感情が混ざってるんだろう。一人で寝させるとまたごちゃごちゃといらないことを考えそうだから、今日は俺のベッドで寝させる。決して疚しい思いから提案したわけじゃないぞ!
「うん……」
一応の納得はしたおかげか、俺の提案にシャルは素直に頷く。毛布を一緒に被り、余計なことを考えさせないように向かい合って抱きしめながら寝る。いや、だから疚しい思いは無いよ?
「じゃあ、お休み、シャル」
「うん、師匠、おやすみなさい……」
普段は敬語だったり、たまに素の喋りが出たり、まーだ壁があるからそれもなんとかして取り除けないかねえ。それに、性教育もされてない……、ああ、話からすると6歳ぐらいで浚われたらしいから当たり前か。はあ、俺がしなきゃならんのか……。
問題は割と沢山あるが、投げ出したいようなものでもない。少しずつでも解決出来ればいいんだがねえ。
「あー、とりあえずこっちに座りなさい」
その言葉を真っ向から拒否してシャルの意思を抑え込むわけにも、かといってそのまま受け取るわけにもいかないので、眉間に寄っている皺を解しつつ、自分の隣を指さして着席を促す。
シャルは依然として思いつめた顔のまま俺の隣に座るとじっと俺の顔を見つめた。
「シャル、『体を使う』の意味は分かってるのか?」
多分わかってないんだろうなあと思いながらそう尋ねると案の定シャルは首を横に振った。『それならそんな言葉を使っちゃいけない』と俺が言う前にシャルが口を開く。
「私を捕まえた人たちはいつも『あいつの体を使わせろ』って言ってました」
マジであいつら教育に悪いなオイ。見た目8歳ぐらいの女の子に向かって『体使いたい』とか、あまつさえそんな言葉を憶えさせてしまうなんて人間性が疑われるってレベルじゃねーぞ。ああ、冒険者なんて元々そんなもんだったな……。
シャルの言葉を聞いて、頭痛がするわけでもないのに頭を抱えたくなる。二の句が継げずにいる俺に構わずシャルは更に言葉を続ける。
「私はリョウ様に恩返しがしたいんです。『私の体を使う』のは私にしか出来ないことのはずです。だからリョウ様、私の体を使ってください!」
「恩返しならもうしてるじゃないか。洗濯だってしてもらってるし料理も……」
「出来てない!!」
『シャルに手伝ってもらっている』と言おうとした俺の言葉をさえぎってシャルが叫ぶ。
「私は邪魔してる! 本当だったらリョウ様一人でなんでもできるのに! 私はリョウ様に教えてもらってばかりで! 魔法だってリョウ様の役に立つようなのは使えない! 私は…………、私はリョウ様の邪魔なの!」
シャルはポロポロと目から涙を零しながら、それでも俺の顔から眼を離さずにそういった。
「リョウ様に助けてもらってばかりで……、邪魔してばかりで……、お料理も出来なくて……、全然役に立ててないもん……、恩なんて返せてないもん……」
シャルは壊れたおもちゃのように『自分は役に立てていない』『自分は邪魔だ』と繰り返す。
はあー、これが落ち込んでた原因か。『シャルに仕事をあげよう』と考えて気を回したのが逆に悪かったのか。『何でもするから助けて』と俺に言ったのにまるで役に立てていない、そのことで自分自身をどんどんと追い込んでいった結果、早く役に立つ魔法を使えるようとして昼間は暴走してしまった、と。
確かにシャルはそう言ったけどさあ……。
「この馬鹿」
昼間口にした言葉を再度口にしながら、シャルを優しく抱きしめる。
「あのな、子供は年上に頼るのが当たり前なの。そのことを子供が気にするもんじゃありません」
「でも……」
「『でも』じゃない。そういうもんなんだよ。シャルはお父さんやお母さんに『恩を返さなきゃ』って思ったことあるか?」
俺の問いに対してシャルは『ううん……』と言いながら首を横に振る。
「俺にもそれでいいんだよ。『恩を返さなきゃ』とか難しいことは大人になってから考えりゃいいんだ」
「でも、リョウ様は家族じゃないのに私のこと助けてくれて……」
それでも尚食い下がるシャルに対して内心ため息をつく。この子ってば割と頑固なのねえ。そんな思いをおくびにも出さずに極力優しく語り掛ける。
「わかったわかった。じゃあ、あれだ、俺はお前の師匠だ。師匠だったら弟子を育てるのは当たり前だ」
「リョウ様の弟子……」
「そう、弟子だ。それから俺の事は『リョウ様』じゃなくて『師匠』と呼ぶように」
「……うん、リ、師匠」
今また『リョウ様』って呼ぼうとしただろ。地味にむずかゆい呼び方だったから割とやめてほしいんだよね。
「ほれ、今日は一緒に寝ちまおう」
不安だったり自己嫌悪だったり、色々な感情が混ざってるんだろう。一人で寝させるとまたごちゃごちゃといらないことを考えそうだから、今日は俺のベッドで寝させる。決して疚しい思いから提案したわけじゃないぞ!
「うん……」
一応の納得はしたおかげか、俺の提案にシャルは素直に頷く。毛布を一緒に被り、余計なことを考えさせないように向かい合って抱きしめながら寝る。いや、だから疚しい思いは無いよ?
「じゃあ、お休み、シャル」
「うん、師匠、おやすみなさい……」
普段は敬語だったり、たまに素の喋りが出たり、まーだ壁があるからそれもなんとかして取り除けないかねえ。それに、性教育もされてない……、ああ、話からすると6歳ぐらいで浚われたらしいから当たり前か。はあ、俺がしなきゃならんのか……。
問題は割と沢山あるが、投げ出したいようなものでもない。少しずつでも解決出来ればいいんだがねえ。
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