ワルフラーン ~廃れし神話
内通者
王女の危機だが、それこそ魔人達の思うつぼ、という事で、軍隊長は動いてはくれなかった。魔人は狡猾だ。王女を攫うという事自体が陽動で、皆が助けに向かっている間に国を攻めてくる可能性もありうる。守護の任についている以上、その辺りの危惧をするのは当然であり、そこまで冷静で居られる彼を評価すべきだろう。軍隊長なだけはある、と言った所か。
現在はアルフと一緒に港の方に走っている。正直な事を言えば、転移魔術を使いたいのだが、生憎どちらも使えない故に、走っていく他は無い。それ以外に行く手段自体はあるだろうが、走るという行為が最も正しく、且つ早いのだ。犲の魔人は身体能力に重きを置いた地上戦最強の魔人。もたもたしていれば王女様が殺されるないしは浚われる恐れがある……
待て。そもそもどうして魔人は王女たちを襲ったのだろうか。国を襲う理由は分かる。下等生物が国なんぞ作っているんじゃねえという思いから、破壊して自分達のモノにしようとしているからだ。だが……王女を狙う理由は? 魔人達は実力主義な上に、自身の強さに圧倒的な自信を持っている。王女を人質に国を―――なんて策略を使う筈はない筈で、だからこそどうして襲ったのか。それが分からない。港町を襲ったらたまたま王女様が居たとも考えられるが、港町何ていつでも襲えるし、いつでも襲えるからこそ、その為の対策を騎士団がしていない筈が無い。
だというのに、襲っている? 自分の力を自負しているとは言え、魔人も馬鹿では無い筈だ。何か目的があったとしても、馬鹿正直にそんな所を狙うとは―――
アルドが足を止めると、目の前を走っていた人物も直ぐに気づき、足を止めた。その体は異常な程に揺れている事から、相当焦っているのだろう。
「一体何なんだッ。早くしないと王女様が消えてしまうぜ?」
「……思い違いをしているかもしれない」
「ああん?」
出てきた情報を解析して、出てくる答。それがきっと真実だ。王女へとつながる唯一の道だ。
『侵攻大隊も編成できないくらい切羽詰まっているというのも』
『魔人は人間の数倍の力』
『港で群がっていた兵士』
……
「なあ。お前は侵攻大隊も編成できない位切羽詰まっていると言っていたな。あれは単に魔人が強いからなんて理由では無い筈だ。それに幾ら上空ががら空きだからって、あそこまで民が乱れるとは……今になって考えるとおかしい。まるでお前達騎士団をまるで信用していないみたいだったぞ。なあ……もしかして」
アルドの不安は的中してしまった。
「……実は一度侵攻大隊を編成して、魔人の拠点を潰そうとしたんだが、まあ個々の実力差が違うから、流石にある程度の死者は予想していたよ。だが―――大隊は全滅。誰一人として、この国の門を跨ぐ奴は居なかった」
人間が唯一魔人を上回れる点は、連携が取れると言う事。弱者の兵法とも言われているが、言わせておくがいいだろう。個々が強すぎるあまりに連携の取れない魔人を圧倒するには、もうこれしかないのだから。
そしてその連携を以てすれば……そう。千人も居れば、魔人数百人には引けを取らないだろう。そして戦いに来る魔人もそう多い訳じゃない。何故ならば、大陸の殆どを侵略しているのは魔人で、人間はそんな魔人一色の大陸にある僅かな空白のようなもの。そんな空白を消し去る事に、魔人が全力を出す訳がないのだから。
一番土地を奪還しているとされるフルシュガイドでさえ、人間の割合は4割が精々。魔人が如何に強いかは、これで分かるだろう。
侵攻大隊とは、文字通り多数精鋭で組まれる人間部隊。その連携と力を以てすれば、魔人になんて遅れは取らないと言われるほどで、勿論口だけでは無い。
帰還時は当然死者が出ていて、半分ほどの兵が消えているが、やむを得ない犠牲だろう。ともかく、人間は団結し、犠牲を出しつつも、それでも魔人に対抗する策を見つけた。
それが侵攻大隊による火力攻撃―――所謂、数の暴力なのである。数に任せた火力攻撃。当然死者は出るのは述べたとおりだが―――全滅何ていう事態は発生しない。
そう、内通者さえ居なければ。
擬態出来る魔人か、或いは魔人に操られた人間か……考えたくも無いが、魔人側についた人間側に居るか。ともかく、内通者が居るならば話は別だ。その時に備えて魔人を集めておくことも出来るし、場合によっては逆に奇襲する事も出来る。
アルフの言う、全滅は、内通者がいるという事を暗に示していた。
「さっきの通信をした奴は信用できるのか?」
「ああ。あいつは俺の友達だ。裏切る筈が―――」
「命の危機に晒されていたとしても、か?」
アルフは言葉を詰まらせるとともに、眉を顰めた。
「そもそも。俺達は先入観にとらわれていた。王女に群がっていた奴等とは、確かに今の通信の奴らなのだろう。通信をした奴が死んだことも確かだろう。だが、今も港に居るとは考えにくいとは思わないか? 港が壊れていない所を見ると、お前達は何らかの対策を施しているだろうし、魔人もそれを知っている筈だ。だから港で狙う筈が無い……まあ対策を破ったという可能性も無くは無いが、続きを聞け」
「……」
「現在と言った時点で、俺達はまず外に立っている軍隊の目が届かない所、即ち、港かその周辺だと思った。今港に向かっているのが良い証拠だ。だが港だと可笑しい点がある。これが何よりの証拠何だが……お前、俺にも聞こえるように音声を広げただろう。違和感を感じたんだよ―――港なら、もう少し騒がしくてもよくないか?」
そう。周りの音声が一切入っていない事が、妙に引っ掛かったのだ。まるでどこか静かな場所にいるかのような……そんな。
「……思考であれば、音は聞こえない。別に不自然ではないと思うが」
「思考で『やまい……グ』なんて発言する奴が、いるか? それに最後の言葉はやけに血にまみれていたし、肉声なのは間違いないだろう。だから周りの音が混じらないなんて、そんな筈が無いんだよ」
「―――待て! 転信石は言葉を魔力に変換し、伝える石だ。発動者以外の言葉が伝わる筈なんて―――」
「それは違うな。転信石は音を魔力に変換して、伝える石だ、思考を伝えるなんてのは、全ての人間が等しく魔力を纏って生活している事から発想した応用みたいなモノだから……つまり、周りの音が聞こえないのはあまりにもおかしい。廃れている港でもない限り、或いはそもそも状況が違う限りは」
「状、況。だと? まさか―――」
アルフもようやく気付いたようだ。そう。もしかしなくてもその可能性が高いのだ。
「王女様たちは既に拉致されていて、通信兵は利用された可能性が高い。だが最後に一矢報いてやるとでも思ったのだろう。種族を告げようとして―――殺された」
「ま、待て待て。何で王女を拉致したのに、通信兵を利用なんて、そんな事をするんだ! まさか、陽動だとでも言うつもりか?」
時間はあまり残っていないだろうが、取り敢えずアルフだけでも状況の理解者にはさせておくべきか。
「陽動だろうよ、私達以外にも転信石の言葉を受信した奴は居るのだろう? だからそいつらを港に集中させるのが目的だろうさ―――」
聞き忘れていたが、そう言えば何故にあの女子を王女としようと、アジェンタの王族は企んだのか 王族何て幾らでもいるだろうに、それの顏と性格の是非は置いといて、代わりが必要な程数が少ないなんて無い筈だ。
情報が少ない……情報を集めなければ。
「なあ、この大陸での婚姻はどうするんだ?」
「……そいつの子供を孕んだら、もうそれで夫婦だ。離婚なんてものは許されんが、それがどうかしたか」
架空の席があるにしろ、いずれはその中身を埋める彼女。王女の扱いを受ける以上、王女である事に変わりはない……そこから魔人拉致との間に見える真相。陽動の効かない騎士団との関係性―――
「アルフ! 港からも首都からも離れている所に迷宮はあるかッ!」
突然の発言に戸惑いつつも、素早くアルフは地図を展開。中心から少しずれた場所を指さした。幽鈴迷宮という場所らしい。今は機能していない迷宮の印があるが、だからこそ隠れ家には最適だ。
「十中八九。そこに王女様がいる。一刻も早く、その迷宮に向かうぞ。手遅れになったら……断言させてもらおう。お前達の国は崩壊する」
―――港に向かったものの王女が居なくて、戸惑う騎士達をよそに。そんな騎士達の報告を聞いて焦る王族をよそに。
内通者は王女を連れて帰り、国に帰るのだ。そうすれば内通者は英雄として祭り上げられ、王族からの評価も上がる。
だがこれだけでは足りない。
国に帰るまでに、王女と(強引に)性行為をした結果、王女は子を孕む。故に、王女はこの内通者と夫婦になる……そう、内通者も王族になるという事だ。反発は無いだろう。単身魔人から王女をとりもどした英雄扱いなのだから。
そして王族になって権力を得てから、有能な騎士を理不尽に処刑したり、追放したり、或いは姑息な手段でも、理不尽に呼び出したりすればいい―――
外側からの働きかけで動かないならば、内側からの働きかけで動かせばいい。そして、そこで動いたことで穴の開いた鉄壁を―――魔人達が崩す.
内通者の計画はきっとこういう手はずだ。どうしてそんな事をするかは知らないが、魔人が国を支配した暁には側近になるとか。或いは国そのものに強い恨みを持っていて、魔人の力を借りてでも滅ぼしたいとか。色々考えられる。
とにかく、王女が危険だ。時間を掛ければおそらく内通者好みに開発されて、調教されて……ああ、個人としての尊厳が危うい。
体は命じるより早く動いた。立ち止まって何か、居られるモノか。
現在はアルフと一緒に港の方に走っている。正直な事を言えば、転移魔術を使いたいのだが、生憎どちらも使えない故に、走っていく他は無い。それ以外に行く手段自体はあるだろうが、走るという行為が最も正しく、且つ早いのだ。犲の魔人は身体能力に重きを置いた地上戦最強の魔人。もたもたしていれば王女様が殺されるないしは浚われる恐れがある……
待て。そもそもどうして魔人は王女たちを襲ったのだろうか。国を襲う理由は分かる。下等生物が国なんぞ作っているんじゃねえという思いから、破壊して自分達のモノにしようとしているからだ。だが……王女を狙う理由は? 魔人達は実力主義な上に、自身の強さに圧倒的な自信を持っている。王女を人質に国を―――なんて策略を使う筈はない筈で、だからこそどうして襲ったのか。それが分からない。港町を襲ったらたまたま王女様が居たとも考えられるが、港町何ていつでも襲えるし、いつでも襲えるからこそ、その為の対策を騎士団がしていない筈が無い。
だというのに、襲っている? 自分の力を自負しているとは言え、魔人も馬鹿では無い筈だ。何か目的があったとしても、馬鹿正直にそんな所を狙うとは―――
アルドが足を止めると、目の前を走っていた人物も直ぐに気づき、足を止めた。その体は異常な程に揺れている事から、相当焦っているのだろう。
「一体何なんだッ。早くしないと王女様が消えてしまうぜ?」
「……思い違いをしているかもしれない」
「ああん?」
出てきた情報を解析して、出てくる答。それがきっと真実だ。王女へとつながる唯一の道だ。
『侵攻大隊も編成できないくらい切羽詰まっているというのも』
『魔人は人間の数倍の力』
『港で群がっていた兵士』
……
「なあ。お前は侵攻大隊も編成できない位切羽詰まっていると言っていたな。あれは単に魔人が強いからなんて理由では無い筈だ。それに幾ら上空ががら空きだからって、あそこまで民が乱れるとは……今になって考えるとおかしい。まるでお前達騎士団をまるで信用していないみたいだったぞ。なあ……もしかして」
アルドの不安は的中してしまった。
「……実は一度侵攻大隊を編成して、魔人の拠点を潰そうとしたんだが、まあ個々の実力差が違うから、流石にある程度の死者は予想していたよ。だが―――大隊は全滅。誰一人として、この国の門を跨ぐ奴は居なかった」
人間が唯一魔人を上回れる点は、連携が取れると言う事。弱者の兵法とも言われているが、言わせておくがいいだろう。個々が強すぎるあまりに連携の取れない魔人を圧倒するには、もうこれしかないのだから。
そしてその連携を以てすれば……そう。千人も居れば、魔人数百人には引けを取らないだろう。そして戦いに来る魔人もそう多い訳じゃない。何故ならば、大陸の殆どを侵略しているのは魔人で、人間はそんな魔人一色の大陸にある僅かな空白のようなもの。そんな空白を消し去る事に、魔人が全力を出す訳がないのだから。
一番土地を奪還しているとされるフルシュガイドでさえ、人間の割合は4割が精々。魔人が如何に強いかは、これで分かるだろう。
侵攻大隊とは、文字通り多数精鋭で組まれる人間部隊。その連携と力を以てすれば、魔人になんて遅れは取らないと言われるほどで、勿論口だけでは無い。
帰還時は当然死者が出ていて、半分ほどの兵が消えているが、やむを得ない犠牲だろう。ともかく、人間は団結し、犠牲を出しつつも、それでも魔人に対抗する策を見つけた。
それが侵攻大隊による火力攻撃―――所謂、数の暴力なのである。数に任せた火力攻撃。当然死者は出るのは述べたとおりだが―――全滅何ていう事態は発生しない。
そう、内通者さえ居なければ。
擬態出来る魔人か、或いは魔人に操られた人間か……考えたくも無いが、魔人側についた人間側に居るか。ともかく、内通者が居るならば話は別だ。その時に備えて魔人を集めておくことも出来るし、場合によっては逆に奇襲する事も出来る。
アルフの言う、全滅は、内通者がいるという事を暗に示していた。
「さっきの通信をした奴は信用できるのか?」
「ああ。あいつは俺の友達だ。裏切る筈が―――」
「命の危機に晒されていたとしても、か?」
アルフは言葉を詰まらせるとともに、眉を顰めた。
「そもそも。俺達は先入観にとらわれていた。王女に群がっていた奴等とは、確かに今の通信の奴らなのだろう。通信をした奴が死んだことも確かだろう。だが、今も港に居るとは考えにくいとは思わないか? 港が壊れていない所を見ると、お前達は何らかの対策を施しているだろうし、魔人もそれを知っている筈だ。だから港で狙う筈が無い……まあ対策を破ったという可能性も無くは無いが、続きを聞け」
「……」
「現在と言った時点で、俺達はまず外に立っている軍隊の目が届かない所、即ち、港かその周辺だと思った。今港に向かっているのが良い証拠だ。だが港だと可笑しい点がある。これが何よりの証拠何だが……お前、俺にも聞こえるように音声を広げただろう。違和感を感じたんだよ―――港なら、もう少し騒がしくてもよくないか?」
そう。周りの音声が一切入っていない事が、妙に引っ掛かったのだ。まるでどこか静かな場所にいるかのような……そんな。
「……思考であれば、音は聞こえない。別に不自然ではないと思うが」
「思考で『やまい……グ』なんて発言する奴が、いるか? それに最後の言葉はやけに血にまみれていたし、肉声なのは間違いないだろう。だから周りの音が混じらないなんて、そんな筈が無いんだよ」
「―――待て! 転信石は言葉を魔力に変換し、伝える石だ。発動者以外の言葉が伝わる筈なんて―――」
「それは違うな。転信石は音を魔力に変換して、伝える石だ、思考を伝えるなんてのは、全ての人間が等しく魔力を纏って生活している事から発想した応用みたいなモノだから……つまり、周りの音が聞こえないのはあまりにもおかしい。廃れている港でもない限り、或いはそもそも状況が違う限りは」
「状、況。だと? まさか―――」
アルフもようやく気付いたようだ。そう。もしかしなくてもその可能性が高いのだ。
「王女様たちは既に拉致されていて、通信兵は利用された可能性が高い。だが最後に一矢報いてやるとでも思ったのだろう。種族を告げようとして―――殺された」
「ま、待て待て。何で王女を拉致したのに、通信兵を利用なんて、そんな事をするんだ! まさか、陽動だとでも言うつもりか?」
時間はあまり残っていないだろうが、取り敢えずアルフだけでも状況の理解者にはさせておくべきか。
「陽動だろうよ、私達以外にも転信石の言葉を受信した奴は居るのだろう? だからそいつらを港に集中させるのが目的だろうさ―――」
聞き忘れていたが、そう言えば何故にあの女子を王女としようと、アジェンタの王族は企んだのか 王族何て幾らでもいるだろうに、それの顏と性格の是非は置いといて、代わりが必要な程数が少ないなんて無い筈だ。
情報が少ない……情報を集めなければ。
「なあ、この大陸での婚姻はどうするんだ?」
「……そいつの子供を孕んだら、もうそれで夫婦だ。離婚なんてものは許されんが、それがどうかしたか」
架空の席があるにしろ、いずれはその中身を埋める彼女。王女の扱いを受ける以上、王女である事に変わりはない……そこから魔人拉致との間に見える真相。陽動の効かない騎士団との関係性―――
「アルフ! 港からも首都からも離れている所に迷宮はあるかッ!」
突然の発言に戸惑いつつも、素早くアルフは地図を展開。中心から少しずれた場所を指さした。幽鈴迷宮という場所らしい。今は機能していない迷宮の印があるが、だからこそ隠れ家には最適だ。
「十中八九。そこに王女様がいる。一刻も早く、その迷宮に向かうぞ。手遅れになったら……断言させてもらおう。お前達の国は崩壊する」
―――港に向かったものの王女が居なくて、戸惑う騎士達をよそに。そんな騎士達の報告を聞いて焦る王族をよそに。
内通者は王女を連れて帰り、国に帰るのだ。そうすれば内通者は英雄として祭り上げられ、王族からの評価も上がる。
だがこれだけでは足りない。
国に帰るまでに、王女と(強引に)性行為をした結果、王女は子を孕む。故に、王女はこの内通者と夫婦になる……そう、内通者も王族になるという事だ。反発は無いだろう。単身魔人から王女をとりもどした英雄扱いなのだから。
そして王族になって権力を得てから、有能な騎士を理不尽に処刑したり、追放したり、或いは姑息な手段でも、理不尽に呼び出したりすればいい―――
外側からの働きかけで動かないならば、内側からの働きかけで動かせばいい。そして、そこで動いたことで穴の開いた鉄壁を―――魔人達が崩す.
内通者の計画はきっとこういう手はずだ。どうしてそんな事をするかは知らないが、魔人が国を支配した暁には側近になるとか。或いは国そのものに強い恨みを持っていて、魔人の力を借りてでも滅ぼしたいとか。色々考えられる。
とにかく、王女が危険だ。時間を掛ければおそらく内通者好みに開発されて、調教されて……ああ、個人としての尊厳が危うい。
体は命じるより早く動いた。立ち止まって何か、居られるモノか。
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