異世界に行ったら、女になったり男になったりで大混乱!? 〜普通じゃない美少女達とドタバタ異世界ライフ!〜

プチパン

三話

「ふわぁああ〜⋯⋯やっと夢が覚め⋯⋯てないのかよ」


 目が覚め、そう呟いたレイの眼前にはどこか見知らぬ一室の天井が広がっていた。
 あの心臓に悪い夢の続きなのだろうか、レイは大浴場でのことを振り返りながら部屋を見渡してみる。
 大浴場と同じで白を基調とした壁の至る所に細かな金の装飾が施され、これが一般的な場所でない事は一目瞭然、レイの知る現実の自室には⋯⋯まぁ様々なものが散乱し説明するのもめんどくさい。


(夢がまだ覚めてないとしたら⋯⋯俺のヒロインはいずこに?)


 そしてそこで一つの疑問が浮かんできた。


(俺はどうして今普通に起床を完了しているのだろうか、と⋯⋯。確かあの時、予習完璧の優等生である俺が凡ミスをして、確かにバレた⋯⋯よな?)


 うーんと首をひねり、浴場での事を思い起こす。


(確か⋯⋯俺があの美少女の⋯⋯てかあの子めちゃくちゃ可愛かったな、可憐で可愛らしさもあって理想って感じで! て違う違う、うんとねー⋯⋯あー確か胸を触ってしまったのか聞いたんだ、だけど触ってないって、それでなんで平然としてられるのかって──)


 そこで不意に左手の方にあった扉のドアからコンコンと音がし、一人の少女が入ってきた。
 その少女は黒を基調とした生地に至る所に白いフリル、胸元には大きな白リボン、頭にはそれを確定付ける純白のヘッドドレスを身につけていた。
 そういわゆるメイド服である。


「ごっつ可愛ええやん⋯⋯」
「え⋯⋯⋯⋯?」


 レイはすべての思考を停止し、そう呟いていた。
 顔を朱色に染め、丸い銀色のトレイで口元を隠すメイド美少女の仕草にレイの胸ははちきれそうになる。


(これが俺の夢! これが理想郷! これが美少女ハーレムパラダイス!!)


 内心でガッツポーズをとり、巨大な勝ち組の刺繍が施された旗を振り回すレイ。


「あの⋯⋯シェーラ様から伺っておりましたが、本当に面白い方なのですね」
「え?」


 ニコッと微笑むその純粋無垢な笑顔に自分の腐りきった心が痛む。


「あっ⋯⋯すみませんすみません! ただのメイドである私なんかがシェーラ様のお客様に失礼な事を! 本当にすみませんすみません」


 その反応をどう受け取ったのだろうか、突然あわあわと手を揺らし一生懸命に頭を下げ始める少女、そんな少女にレイは天使の存在を確証してしまう。


「いや違う違うからもうやめて! 眩しすぎて見てられないから! 俺が悪かっ⋯⋯⋯⋯て、へ??」


 レイは違和感に気づき途中で言葉を止め、そしてメイドの天使を見る。


「ねぇ、俺って今どんな声してる?」
「すみませんすみませんって⋯⋯ふぇ? どんな声、と言われましても⋯⋯シェーラ様の様に透き通るようで綺麗な声音⋯⋯でしょうか?」


 素っ頓狂な声をあげた少女は、瞳の端に涙を浮かべながらびくびくとトレイで顔を更に隠し、そう呟いた。


「はぁ、思い出したよ。まじか⋯⋯身体も完全に女、だよな」


 腕を伸ばすとありえないぐらいに白くすべすべな肌は照明の柔らかな光さえも反射させ違和感が凄い。
 どうやら本当にこの夢では女設定らしい、なんて迷惑な設定なのだろうか。


「すみませんすみません、私の評価なんて満足できませんよね⋯⋯」


 至極申し訳なさそうな少女、そんなに不機嫌に見えるのだろうか? ただ夢のクオリティの状況の異常さについて行けてないだけなのだが。
 少しでも誤解が解ける様にと不慣れな笑顔を向ける、すると顔を赤らめ突然トレイで顔を隠してしまった。


「あ、ごめんごめん。それと鏡、とか無いかな?」
「はい、て、手鏡でよろしければ持っておりますが」
「うん、それ少し貸してくれないか?」
「分かりました!」


 そう言ってちょこちょこと近寄って来て手鏡を差し出してくる。
 不意に触れる手と手にすら顔を赤らめてしまうが仕方ない事だろう、何故なら現実で触れる事のあった手なんて妹ぐらいなものだ。
 不意に少女の藍色の滑らかな髪がなびく。
(いい匂いや⋯⋯流石俺の夢、素晴らしい!)


 そして渡された手鏡で自分の顔を見て、盛大にため息をついた。
(まじで何故に女やねん⋯⋯これじゃ俺の求めるハーレム無理やん! めちゃくちゃ好みの可愛い子居るのに! 無駄になんか俺、可愛いし⋯⋯)


 鏡には綺麗にまとまった黒髪に、ぱっちりと開いたルビー色の瞳、色気のある桃色の唇、それら全てが自分が可愛らしい少女である事を証明していた。


「まぁこれも夢だしな! うんうん、それでさっきから言ってるシェーラ様って言うのは第一王女様のこと?」
「夢⋯⋯? あ、はいそうです! 時期にこの国アドルラティオを治められるであろう、凄い方なんです!」


 少女はそれなりに大きく見える胸を更に大きく張って今日一番に堂々と言い放った。



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