は、魔王?そんなのうちのブラコン妹の方が100倍危ないんだが

プチパン

プロローグ1 お前何やってんだよ!!

 〜〜〜♪〜〜♪


 静かな部屋に突然変な歌が流れ始める。
 目覚ましのアラーム音の様だ。


「なんだ? このやばい歌は」


 内容は妹の事が好きで好きでどうしようもない兄の思いを歌にした物だった。
 八神ヤガミ白夜ハクヤは、この日もいつも通り騒がしく覚醒した。
 ハクヤはカーテンの隙間から漏れる太陽光が眩しく、目を擦ろうと⋯⋯


「て、あれ? 手が動かないんですけど⋯⋯」


 手を動かそうとするも金属の擦れる音が虚しく響くだけで全く動かない。
 布団の下に隠れていて分からないのだが、どうやら拘束されているらしかった。
 ハクヤにはこれらの犯人は分かっていた。
 犯人は妹である八神ヤガミ紅麗亜クレアだ。
 今のハクヤの状態はと言うと両手両足を少し動かせる程度にカセで繋がれており、ベットに仰向けで拘束されていた。


 ──ガチャッと、ドアの開く音がする。


「ダーリン起きたぁ?」
「誰がダーリンだよ!」


 ハクヤが声のする方にできる限り顔を向けると、笑いながら近づく少女の姿が目に入る。


「もうまたまた照れちゃってぇ」


 ハクヤの2歳年下であるクレアは16歳で高校一年。
 容姿はというと、特徴的なのは炎ように真っ赤な紅色でツインテールに結んだ綺麗な髪と、同じくルビーのような目、それに対し透き通るように白い肌は紅色の髪と目とのコントラストを作っていて美しい。


 まるで人形のように可愛い見た目の、素晴らしい妹のはずなのだが重度のブラコンという病を抱えている。


 いつからそうなってしまったのだろうか⋯⋯ハクヤはそんな疑問を頭に浮かべ、普段通りのクレアの様子にため息を一つこぼす。


 ちなみにハクヤは身長は平均的、顔はそこそこ(自意識過剰の可能性あり)特徴的なのは銀髪のショートに青い目をしているぐらいの普通の高校三年生だ。


「で、どうして俺はこんな状態なんだ?」


 クレアは笑顔のはずなのにどうしてか殺気の様なものがハクヤには感じ取れた。


「うーんそれはねぇ、お兄ちゃんがいけないことをしてしまったからだよぉ」


 クレアが一歩ハクヤに近づき、それに対応するように凄まじいプレッシャーが更に強さを増す、必死に思考するのだが心当たりが全くと言っていいほどなくハクヤは眉根を寄せる他なかった⋯⋯。


「俺、何かしたか ⋯⋯⋯⋯?」
「お兄ちゃんはこの私を傷つけてしまったんだよ」


 クレアは笑顔のそう言うとまた一歩ハクヤのベットに向かって足を進めてきた。


「は?」


 さらに重々しいオーラが部屋中を満たしていく。


 これはやばい⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
 ハクヤの直感がそう叫んでいた。
 クレアは本当に機嫌を悪くした時、何をするか分かった物ではないからだ。
 でもハクヤにはこれっぽっちも心当たりがなかった。


 昨日までは普通にいつも通りだったはずなのだ。
 少なくとも寝る前までは⋯⋯。


 するとクレアは一枚のDVDを取り出した。


「──なんだそれ?」


 それはハクヤには身に覚えのない、エッチなポーズの女の人が描かれているDVDだった。


「ふーんとぼけるつもり?」


 クレアはこめかみをピクピクさせ笑顔を引きつらせて聞いてくるが、ハクヤは身に覚えのないものを見せられたことにより、ぽかーんと口をただ開けるしかなかった。


「いやいや本当に知らないんだけど」
「あらぁ、自分のバックの前ポケットに大事に袋に入れてわざわざ違うケースに入れていたこのぶつはお兄ちゃんのじゃないんだぁ」


「は?」


 ──そしてハクヤは昨日の出来事を思い出す。


(あ、昨日学校で友達に貸していたドラマのDVD返してもらったんだ⋯⋯)


 どうやら友達が中身を間違えて入れてしまったのだとハクヤは理解してしまった。


「ねぇお兄ちゃんは、こうゆう人が趣味なんだ」


 妹のオーラがより重々しいものに変わり、それに伴いハクヤからは汗がにじみ出てくる。


 DVDのタイトルは「巨乳大図鑑」というものだった。


 (あいつなんてもんを入れてんだよ!)


 ハクヤは心の中で叫けばずにはいられなかった。
 これはあまりにもむごすぎる、英樹ひできは俺に恨みでもあるのだろうか。
 クレアの胸は決して小さくは無い、だが相手が悪すぎる、なんせそれは選りすぐりの巨乳達を集めた図鑑なのだから⋯⋯!


「巨乳かぁそうかそうか私みたいな胸じゃ満足できないのかぁ」


 クレアの手にはいつの間にかハリセンがあった。


「おい、誤解だって誤解!」


「私胸そこまで大きくないからなぁ⋯⋯」


 クレアはそう言って、自分の胸をフニフニと触って確認をしているのだが、ハクヤからすればクレアの胸は高1にしては充分に大きな物に感じられるわけだ。
 だが実の妹にそんな事を言えるはずがなかった。


 そんなハクヤの気持ちを知らずか、クレアは片手にハリセンを持って少しずつ近づいてくる。


「ちょ、ま、待って! あれは──」
「言い訳なんて聞いてあげない!」


 次の瞬間、大きく振りかぶられたハリセンは一直線にハクヤの頭に向かって振り下ろされた。


 パッチーーン!


 (少しは話聞いてくれよ⋯⋯⋯⋯)


 ハクヤは目が覚めてわずか2分で再び意識を途切れさせられるのであった。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、早く起きてよぉ⋯⋯」


「ふわぁぁっ」


 ハクヤは眠い目をこすろうとするが、擦れない。
 これが正夢という奴なのか、なんて事を思いながら顔だけを動かすと妹の姿が目に入った。


「あ、やっと起きた! もう少し早く起きてよ! 休みの日だからっていつまでも寝ていたらだめなんだよ!」


 クレアは可愛らしい満点の笑顔でそう言ってくる。
 さっきのは夢だった⋯⋯の⋯⋯⋯⋯っ! 
 ハクヤはそう思いながら、自分の部屋を可能な限り見渡す。 
 すると、──ドアの隣に大きなハリセンが立て掛けてあるのが目に入った。


「現実かよ! ま、まあそれより、外してくれないか?」


 冷や汗を流しつつ、ハクヤと対照的に大変ご機嫌なクレアにそう問う。


「えーせっかく拘束したのにー? まだ何もしてないんだけど」


 クレアは幸せそうな顔をして、何かを考えながら言って来るのだがハクヤはその仕草を見て一抹の不安が募る。


「いや何もしなくていいから早く外してよ」


 ハクヤがそう言うとクレアは少し考えるそぶりをして、 ──肩を小さく跳ねさせばっと顔を上げる、その顔はこれ以上ないぐらいに、にこぉっとした笑顔をしており、そこら辺の男なら一発KO物だろう。
 だがハクヤは知っている、長年の直感で分かってしまうのだ、これはやばい笑顔だと。


「うーんしょうがないなぁ、 ならぁキスしたら外してあげる!」


 クレアはハクヤに向かって可愛らしく投げキッスをしてきた。


「は? 何言っちゃってんの? ワタシタチ キョウダイ オーケー?」


「拒否権はなーい!」


 クレアはそう言って手の指をくねくねと不規則に動かしながら近づいてきた。
 ハクヤはというと本能と頭は逃げろと叫び命令を体に出しているのだが、ガッチリと固定されているせいで全く動けない。


「おい、やめろ! クレア!」


 苦し紛れの言葉にクレアが聞いてくれるはずもなく、クレアは馬乗りをしてくる。
 クレアの口からは甘い吐息が出ており、高一とは思えないほどの色気を醸し出していた。
 自分の大切な何かが失われそうな感覚に背中が濡れるほどに冷や汗が浮かんできているのが分かる。
 てか、なんかエロi──。


 「て、それどころじゃねーよ!」


 ハクヤは余計な感情を飛ばし再びこの状況を打破するための方法を模索する。
 このままでは自分の初めてが妹とかいう黒歴史が爆誕してしまうのだ。
 冗談だと思うかもしれないが、なんの冗談でも無くクレアはやるだろう、そういう奴なのだ。
 ハクヤは彼女いない歴=年齢の生粋きっすいの非リアだ。
 よってそんな簡単にこんな場合の適切な対処法なんて思いつくはずもない。


(あぁ、一度ぐらい付き合ってみたい⋯⋯)


 ハクヤはそんな事を考えてる場合ではない、現にクレアが近づく事に自分の初キスが実の妹という黒歴史の誕生という恐怖が近づいてきて頭のなかを真っ白にしていく。


「お兄ちゃんだいしゅきだよぉ」


 クレアがそう言って顔を近づけて来るのに、ハクヤの思考はショート寸前、誰かこの事態を打破してくれないか、皆無である確率を祈る事しかできなかった。


 父親は単身赴任で、現在ハクヤ達兄妹は二人暮らし、父親が帰ってくるのはそれぞれの誕生日や年末などにしか無く、稀である。
 母親は、クレアを産んで身体を壊しながらも一緒に暮らしていたのだが、ハクヤが4歳クレアが2歳の時に亡くなってしまった、らしい⋯⋯。
 あくまで父にそう教えられたのだ、どうしてなのか母の死が余程ショックだったのかクレアはともかく、四歳だったハクヤにも母親との思い出がないのだ。
 実際には残っていた写真に写る母親の姿しか分からない。 


  親戚のおばさんが時々様子を見に来てくれるのだが、見られたら見られたで既にアウトな状況に陥っていた。


(まぁ、どこからどう見ても美少女な訳だし⋯⋯)
(元々周りからは、付き合ってる疑惑すら浮かんでいるのだからいいんじゃ無いのか?)


 ハクヤはそんな言い訳を自分に言い聞かせ、抵抗するのを諦め目を閉じた。


 ガチャッと音がしてドアが開く音が聞こえる──次の瞬間。


「あなた達何をしてるの?」


『あ⋯⋯⋯⋯⋯⋯』


 二人は、揃って固まってしまった。
 ドアを開けたのはお父さんがいない為に、時々僕達を見に行く様に頼まれている親戚のおばさんだった。


 おばさんは気持ちの悪いものを見るようにしてハクヤとクレアを見る。
 それはそうだろう、側から見たら今ハクヤとクレアは拘束プレイ中+キスをする直前にしか見えないのだから。
 ハクヤは頭をフル回転させて必死に言葉を紡ぎ出す。


「あっ⋯⋯ち、違います! 勘違いしないでください! そうゆうわけじゃ無いんです!」


「しょ、そうそう。ぜんぜぇんそんな感じじゃ、にゃいんです。私とお兄ちゃんは兄妹にゃんですよ、そんな事するわけないじゃなゃい⋯⋯」


 クレアはテンパり、猫の様な言葉が混ざり始めていて場違いにもハクヤは可愛いと思ってしまっていた。


「いえ、言い訳は要りません。流石にこれは報告しなくちゃいけませんね」


 そう言うとおばさんは気味の悪い物を見るような顔をして部屋から出て行った。

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