竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

64.王城陥落

「コータさん。こっちは準備できただに!」
「こっちもいつでもいけますよ」
「一息で、王城を殲滅してご覧に入れます!」
「わらわは兄様を見学してるんだぞ!」
「では、コータ行ってまいる!」


クロは、小型サイズに変形し、ポチとホロウを乗せたまま飛んでいった。
こっちは、フロストさんに跨って、俺とアルテッザで向う。
しかし、フロストさん良く乗せてくれたな!


「とってもいい子ですよ!」


そうなんだ?こいつれz……げふんげふん。


そんな事で、飛ばすフロストさんは馬車の時よりもっと早い。


「ひゃぁ!早い、早いから」
「きゃぁぁぁー」


そんな悲鳴をあげながら、俺とアルテッザの共同作業はスタートした。
最初の目的地。街壁は高さ3m幅500mはありそうな大きな壁だ。まず四つ角の丁度角でフロストさんを止めて、射線を壁に水平になるように確保。中腰になり気を溜め込む要領で魔素を溜め込む。剣の先が光り始めたら一気に開放だ!


「いっけーシャイニングブラスターぁぁぁー!」
『どばぁぁぁーん!』


一瞬、辺りが昼間の様に明るくなり、眩い光はそのまま街の壁に掠る様に走っていく。深く削りとられた壁はあっけなく崩落していった。


「さてもう一回!」


今度は、左側の壁に垂直になるように射線を合わせ、中腰になりまた気を溜め込む。


「シャイニングブラスター!」
『どばぁぁぁーん!』


今度も、壁を真っ直ぐに削り削られた場所が、上方の重みに耐え切れず崩落していった。


街の住人も、門の守衛も、何が起きたのか分らずに、ただ呆然としていた。
取り敢えず、2箇所も壊せば獣人が入り込みやすいでしょ!そのままフロストさんに再度乗り込み王城の城壁へ向う。


流石に、ドラゴンライダーに人が跨って、路面を爆走してれば嫌でも人の目に止まる。


人に指を差すんじゃねぇ!ってヘメラが言っていたぞ!


住民はまだ見てるだけだったが、兵士や騎士が駆けつけ大混乱になる、俺はフロストさんの上から、槍の石突で足を狙って攻撃をする。アルテッザも以前から練習していたカマイタチを発動。襲い掛かる兵の足に魔力の風の刃が当り、切断していった。


数が多く、対処しきれなくなってきた頃にフロストさんが前方にブリザードなのか?冷たい吹雪のブレスを吐き出した。このブレスで地面に貼り付けられた兵の上を跳び越し、一気に視界の開いた王城へと向う。


すげーフロストさんこんな事も出来んのかぁ!
俺が褒めると、うふん当然よ!とばかりに自慢げにこちらを振り返る。
いや、ちゃんと前見てね。ぶつかると痛いから!


そして、城壁に近づいた時に――それは起こった。
王城の尖塔が光ったと思ったら、一気に蒸気を噴出し爆ぜた。2本あるうちの右側の尖塔が消失し残りは1つ、上を向くと黒い影だけが見えた。これなら何が起こったのか気づくまい。


尖塔が消失した事で、城内が一気に騒がしくなる。


兵士が城門から出てくる前に、俺も城壁を、さっきと同じ要領で壊しにかかる。


「シャイニングブラスター!」
『どばぁぁぁーん!』


外側にあたった光線が壁を貫き、その先の壁をも貫いた。
支えを失った石の壁は脆い。あっけなく崩壊する。
再度反対側にも、角度を調節しながら中腰に構えた所でアルテッザの声が聞こえた。


「コータさん!上です!」


もうこっちは射線をあわせ気を練っている最中だ。さっさと済まそうと剣を真っ直ぐに向けた所で、体中に何かが当っては『キィーン、ガシ、コーン』と鳴って弾かれていった。


「シャイニングブラスター!」
『どばぁぁぁーん!』


本日4度目の、シャイニングブラスターで、流石に疲れが見え始める。
だが、その甲斐あって壁の表面は綺麗に崩れ去り、もう城壁はあっても無いようなものになる。














「もう一箇所いくぞ!」


クロの掛け声で、準備を始めた2人は一斉に魔法を発動した。


「炎獄!」
「氷結だに!」


一瞬で熱せられた尖塔に、冷たい氷結が生まれ――その後、その時に発生した水蒸気が一気に爆発する。
――眩い光が辺りを包み。


『ドボォォン!』


蒸気と共に煙が立ち込めるが、火は出ていない。王城のシンボル尖塔はあっけなく消失した。


「さて我等の仕事は終わった。馬車に戻るぞ!」
「「はい!」だに!」


















「なんだ!この音は!」


ヘンリー王はイラついていた。
いくら探しても、コータ達一行は見つからない。だと言うのに、深夜のこの時間に大音響である。睡眠を妨害されイラつくのも無理は無い。違うか!


「わかりません!今兵に確認させます!」


王は、寝室前に配置している護衛に怒鳴りながら王は外を眺める。すると――遠くで砂煙が上がっているのが確認出来た。


「何がおk」


全て言い切る前に、今度は反対側の壁が光に包まれ……。


『どばぁぁぁーん!』


またしても大音響の爆発音がして、光が収まると目の前から見える街壁が消し去っていた。


「敵襲じゃ!」
「何をぼさっとしておる!これは敵襲だ!全部隊総動員させろ!」


次の瞬間、今度は間近で爆発音がした。


『ドボォォン!』


振動で、思わずしゃがみこむ王と護衛騎士。


「一体、今度は何が……」


次の瞬間、確認を指示しにいった護衛が急ぎ戻ってきたが息が切れていて良く聞き取れない。
「た。たい、へ・、です。せ、せんと、うが」
「何を言っておるのか分らん。ちゃんと報告せよ!」


ぜいぜい言いながらも、今度はしっかり報告できた。


「尖塔が爆発、跡形も無く消失致しました」


何を馬鹿な、そんな大魔法ありえん!
そう思っていた王だったが次の瞬間――。


『どばぁぁぁーん!』


耳を劈く爆音がし、気づくと王城を取り囲む壁の一部が崩落していた。
兵達が騒がしくあそこだ!と犯人を見つけたようだ。これで収まるだろうと思った瞬間またしても――。


『どばぁぁぁーん!』


今度は、目の前の壁が光ったと思ったら、轟音と共に崩落しだした。


「これは一体なんなのだ!」


最早、王の威厳も何もあったものじゃない。不安にかられ怯えた声を漏らす。


次の瞬間、見える位置にあった尖塔が光ったと思ったら――。


『ドボォォン!』


轟音と共に爆発。あたり一面が砂埃で真っ白に染まった。
















シャイニングブラスターを打ち終わり、脱力感に苛まれながら次の尖塔の爆発も確認し、アルテッザに声をかけた。


「さて、アルテッザ戻ろう!」


え?アルテッザが固まっている。どうしたんだろう……矢でも当った?そう思ったが外傷は無いようだ。


「アルテッザ?」
「ひゃあい!」


ん?どうしたんだろ!


「どうかしたの?」
「いいえ、矢がコータさんに当ったと思ったんですが、気のせいだったみたいです」


ん?俺が自分の体をよく見ると、服が所々破れている。




「あれ、何時の間に……そう言えば、さっき何か当っていたね!テヘペロ」
「やっぱり、見間違いじゃなかったんですね!」
「うん、これがクロの加護の力だよ。俺にはどんな攻撃も通じない。だから死なない。だからアルテッザも、俺の心配はいいから自分の身の無事だけを考えて!」
「なんだか釈然としませんが分りました」
「じゃぁ、一度戻るよ!」
「はい!」




そのまま深夜だというのに、人で溢れた大通りをフロストさんに乗った二人は、悪戯の成功した子供の様にはしゃぎながら馬車のある丘へと帰って行った。


あ、14歳の子供でした。

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