竜神の加護を持つ少年
56.西の国からの使者
ホロウの襲撃事件から一夜明け、俺達はアイテールの街を視察していた。
オワルスターによって増税をされ、活気が無くなっていた街も、オワルスター家の御取り潰し以降は、普通の税率まで引き戻され――少しは活気を取り戻しては来ているが、引越ししてしまった商人や住人は早々簡単には戻らない。
「こうやって見て回ると、やっぱり賑わってはいないよな?」
「それは仕方ありませんわ。前の城主があれでしたもの」
「そうだな。特産の蚕も、結局ポチたちの村が廃村になったお陰で。現在はアイテールの西南にある、カナンの村で細々と養殖されているだけみたいだしね」
ちなみに、今回、王から貰った金貨の5000枚は――街の運営、改修、城の改修資金として代官のデメストリーに預けてある。
「他に何か、特産に出来るものでもあればいいんだけどね」
俺なんて自慢じゃないけど……図鑑の知識はあっても、料理はしない。洗濯もした事が無い。
ましてや農業も、働いた事すら無いもんね!
もうね、街の管理なんて出来ない訳よ!
代官に、全てお任せです!
それでも、全ての街にはある様な露天は、細々とだが出展しており、俺達は露天で、肉の串焼きを買って食べながら移動していた。
最も、箱入りお嬢様のメテオラだけは――私、そんなはしたない事できませんわぁ。とか言って、断っていたが。
その内に慣れるでしょ。
俺が、建築魔法とか覚えれば、治水とか改修とか、捗るんだろうけどね。
流石に、簡単にポイポイ覚えられる程、楽ではない。
アルテッザが瀕死の時は、それだけ必死だったから――回復魔法を覚えられただけみたいだ。
そもそも、俺自信のステータスが未だに見られないから、俺の得意魔法が何なのか?
さっぱりだしね。
そんな事で、街を歩いていると……熊の獣人のおばさんとすれ違った。
ほぇ、熊って、どっしりしていて……そのまんま、日本の中年のおばさ――。
げふんげふん。
熊のおばさんが、俺達とすれ違う時に、深々とお辞儀をした。
珍しいな、とは思ったけど、俺が新城主だと知っている人なのだと俺は、その時解釈していた。
さて、次は何処に旅に行こうか?
やっぱり、アルステッド王国とは同盟国の、西のブリッシュ王国か?
それとも、当初の予定通りに、北北東方面にレベル上げしながら行って、そのままガルラード帝国か?
でも何かさ、帝国ってやばい感じがしない?
侵略国家っぽいと言うか……帝国の逆襲とか!
皆に聞いてみたら――珍しくクロが、
「我は、東の方がいいと思うぞ!」
とか言い出すし。
何で、と聞いても、最初の予定は守らねばな!としか言わないし、西に何かあるのか?
皆にも聞いてみたら……。
西のブリッシュ王国は、人類至上主義で、獣人は奴隷しか存在しないらしく、ポチ、タマちゃん、ホロウにとっては、あまり良い環境とは言え無いらしい。
そんな事で、西は止めて、東の帝国へ行く事に決った。
珍しくクロも反対していたしね!
そうして、数日はのんびり過ごし――いよいよ明日、出立するという時分に突然の来訪者はやって来た。
「私、隣のブリッシュ王国で大使を任ぜられております。オベンリーと申します。この度の辺境伯就任、誠におめでとう御座います。我が国と貴国は昔から同盟関係を結んでおりまして、国を接する城主が変わる度に、こうしてご挨拶をさせて頂いております。もっとも旧オワレスのオワルスター家が、この地にやってきたのが130年前ですので――私共も、文献より調べ、こうしてお邪魔致した次第では御座いますが、それで慣例に基づいて、我が国の国王陛下が、謁見をせよ!と言っておりまして……是非、アイテール辺境伯様を、お迎え致し度、まかり越しました」
へ?
何それ!すげぇ、面倒なんだけど!
大体、何で他国の王が、隣接している領地の統治者を呼び出す訳?
意味がわからん。
「私にも、理由は分りませんが、古来よりのしきたりで御座いますれば……」
俺が渋っていると、そんな事を言われた。
過去と現在は違うんじゃ?
そもそも、国同士が同盟関係だから仲良くしましょうね!
と言う、話なのだろうけど、呼び出されるとか、良い気がしないよね!
それでも俺が渋っていると……オベンリー大使は、これも慣例なのですが、我が国は、前のオワルスター辺境伯の時にも、盛大にお祝いをさせて頂いております。
何卒お願いしますと、地面に頭が着く位お辞儀をされた。
そんなに体が柔らかく無さそうだけど、言いえて妙な言い回しだよね!
さて、どうしますか……何か、断る口実は……。
「そう言えば、貴国は獣人を差別し浄化しているとか、そんな所に、私の側近の獣人を連れて行くのは、些か気が引けるんですが!」
言ってやったよ!
ケモ耳モフモフを、浄化して亡き者にしようなんて、俺としては気に入らないんだよね!
それを言うと、大使は……我が国に接しております、獣人の国の者で無ければその様な事は御座いません。だと!
何、そのご都合主義は!
しかし、ここで新しい国の名前が出てきたな。
獣人の国は、ブレビ王国だってさ!
何でも、ブリッシュ王国の、北北東にある、深い森に囲まれた所にある小さな国らしい。
北北東って事は、オルゴナーラ山脈の遥か北って事か……。
遠いな、クロに乗ればあっという間だけどね!
オベンリー大使が、あまりにも必死なので、俺はしぶしぶ承諾した。
両国間の火種を、俺がつける訳にもいか無いからね。
同盟とか、平和なのは良いけど……こうした関係って、相手に気を使わないといけないから疲れるよね!
どうせ疲れるなら、ベッドの中で疲れたい!
まだ、一度も無いけど――。
ついでに、色々情報収集をしてみた。
ブリッシュ王国は、この大陸でも古い歴史のある国で、現在のヘンリー・ギルバート王で8代目になるらしい。
この王の妃はエリス、第一王子がハッキネン、第二王子がミケロン、第一王女がクリスティー、第二王女がアマンダ、第三王女がアロマというらしい。
最も、第一王子と、第二王女以外は、妾腹で王妃の子では無いらしいが。
何か、人名多くて、覚えられないんですが!
貴族になったから、一々こんなの覚えないといけ無いんだろうか?
メテオラに聞いてみたら、
「そんなのあたり前ですの!頑張って覚えて下さいませ!」
だそうです。俺、中学でも成績は中の中。いたって普通なんですが?
ブリッシュ王国の、更に西は、ドワーフの住まう山々があり、鉄、金、銀はそこから輸入しているそうだ。
特産品は、小麦と畜産がメインらしい。
ふぅーん。ただの田舎って事ね。
てっきり、歴史あるとか格調あるみたいな事言っているから、イギリスみたいな国を想像したが……想像は裏切られた。
と思ったら、軍馬の育成に力を入れている、騎馬隊なるものが、一般兵にも行き渡っているらしい。
今まで良くアルステッド国に侵略して来なかったな。
聞いてみたら、同盟国なのに、そんな事はありませんし、アルステッド国にはピクシードラゴンの加護がおありですから。とか思っている様だった。
そんな加護は無いって、クロに聞いているんだけどね!
態々波風を立てる事もあるまい。
黙っておこう!
ちなみに、ブリッシュ王国に行くには――ポチ達が住んでいた村から続く街道を、ひたすら西に行けば、国境が見えて来るらしい。
ちなみにこの時代の国境は、余程険悪な関係の国同士でもない限りは、関所も区切られてもいないらしい。
日本では飛鳥時代に、関塞という、関所らしきものが置かれていたと言われているが、何分、過去の事で本当かは分かっていないらしい。
そんな感じで、クロは渋っているが、西の国ブリッシュ王国へと向う事になった。
オワルスターによって増税をされ、活気が無くなっていた街も、オワルスター家の御取り潰し以降は、普通の税率まで引き戻され――少しは活気を取り戻しては来ているが、引越ししてしまった商人や住人は早々簡単には戻らない。
「こうやって見て回ると、やっぱり賑わってはいないよな?」
「それは仕方ありませんわ。前の城主があれでしたもの」
「そうだな。特産の蚕も、結局ポチたちの村が廃村になったお陰で。現在はアイテールの西南にある、カナンの村で細々と養殖されているだけみたいだしね」
ちなみに、今回、王から貰った金貨の5000枚は――街の運営、改修、城の改修資金として代官のデメストリーに預けてある。
「他に何か、特産に出来るものでもあればいいんだけどね」
俺なんて自慢じゃないけど……図鑑の知識はあっても、料理はしない。洗濯もした事が無い。
ましてや農業も、働いた事すら無いもんね!
もうね、街の管理なんて出来ない訳よ!
代官に、全てお任せです!
それでも、全ての街にはある様な露天は、細々とだが出展しており、俺達は露天で、肉の串焼きを買って食べながら移動していた。
最も、箱入りお嬢様のメテオラだけは――私、そんなはしたない事できませんわぁ。とか言って、断っていたが。
その内に慣れるでしょ。
俺が、建築魔法とか覚えれば、治水とか改修とか、捗るんだろうけどね。
流石に、簡単にポイポイ覚えられる程、楽ではない。
アルテッザが瀕死の時は、それだけ必死だったから――回復魔法を覚えられただけみたいだ。
そもそも、俺自信のステータスが未だに見られないから、俺の得意魔法が何なのか?
さっぱりだしね。
そんな事で、街を歩いていると……熊の獣人のおばさんとすれ違った。
ほぇ、熊って、どっしりしていて……そのまんま、日本の中年のおばさ――。
げふんげふん。
熊のおばさんが、俺達とすれ違う時に、深々とお辞儀をした。
珍しいな、とは思ったけど、俺が新城主だと知っている人なのだと俺は、その時解釈していた。
さて、次は何処に旅に行こうか?
やっぱり、アルステッド王国とは同盟国の、西のブリッシュ王国か?
それとも、当初の予定通りに、北北東方面にレベル上げしながら行って、そのままガルラード帝国か?
でも何かさ、帝国ってやばい感じがしない?
侵略国家っぽいと言うか……帝国の逆襲とか!
皆に聞いてみたら――珍しくクロが、
「我は、東の方がいいと思うぞ!」
とか言い出すし。
何で、と聞いても、最初の予定は守らねばな!としか言わないし、西に何かあるのか?
皆にも聞いてみたら……。
西のブリッシュ王国は、人類至上主義で、獣人は奴隷しか存在しないらしく、ポチ、タマちゃん、ホロウにとっては、あまり良い環境とは言え無いらしい。
そんな事で、西は止めて、東の帝国へ行く事に決った。
珍しくクロも反対していたしね!
そうして、数日はのんびり過ごし――いよいよ明日、出立するという時分に突然の来訪者はやって来た。
「私、隣のブリッシュ王国で大使を任ぜられております。オベンリーと申します。この度の辺境伯就任、誠におめでとう御座います。我が国と貴国は昔から同盟関係を結んでおりまして、国を接する城主が変わる度に、こうしてご挨拶をさせて頂いております。もっとも旧オワレスのオワルスター家が、この地にやってきたのが130年前ですので――私共も、文献より調べ、こうしてお邪魔致した次第では御座いますが、それで慣例に基づいて、我が国の国王陛下が、謁見をせよ!と言っておりまして……是非、アイテール辺境伯様を、お迎え致し度、まかり越しました」
へ?
何それ!すげぇ、面倒なんだけど!
大体、何で他国の王が、隣接している領地の統治者を呼び出す訳?
意味がわからん。
「私にも、理由は分りませんが、古来よりのしきたりで御座いますれば……」
俺が渋っていると、そんな事を言われた。
過去と現在は違うんじゃ?
そもそも、国同士が同盟関係だから仲良くしましょうね!
と言う、話なのだろうけど、呼び出されるとか、良い気がしないよね!
それでも俺が渋っていると……オベンリー大使は、これも慣例なのですが、我が国は、前のオワルスター辺境伯の時にも、盛大にお祝いをさせて頂いております。
何卒お願いしますと、地面に頭が着く位お辞儀をされた。
そんなに体が柔らかく無さそうだけど、言いえて妙な言い回しだよね!
さて、どうしますか……何か、断る口実は……。
「そう言えば、貴国は獣人を差別し浄化しているとか、そんな所に、私の側近の獣人を連れて行くのは、些か気が引けるんですが!」
言ってやったよ!
ケモ耳モフモフを、浄化して亡き者にしようなんて、俺としては気に入らないんだよね!
それを言うと、大使は……我が国に接しております、獣人の国の者で無ければその様な事は御座いません。だと!
何、そのご都合主義は!
しかし、ここで新しい国の名前が出てきたな。
獣人の国は、ブレビ王国だってさ!
何でも、ブリッシュ王国の、北北東にある、深い森に囲まれた所にある小さな国らしい。
北北東って事は、オルゴナーラ山脈の遥か北って事か……。
遠いな、クロに乗ればあっという間だけどね!
オベンリー大使が、あまりにも必死なので、俺はしぶしぶ承諾した。
両国間の火種を、俺がつける訳にもいか無いからね。
同盟とか、平和なのは良いけど……こうした関係って、相手に気を使わないといけないから疲れるよね!
どうせ疲れるなら、ベッドの中で疲れたい!
まだ、一度も無いけど――。
ついでに、色々情報収集をしてみた。
ブリッシュ王国は、この大陸でも古い歴史のある国で、現在のヘンリー・ギルバート王で8代目になるらしい。
この王の妃はエリス、第一王子がハッキネン、第二王子がミケロン、第一王女がクリスティー、第二王女がアマンダ、第三王女がアロマというらしい。
最も、第一王子と、第二王女以外は、妾腹で王妃の子では無いらしいが。
何か、人名多くて、覚えられないんですが!
貴族になったから、一々こんなの覚えないといけ無いんだろうか?
メテオラに聞いてみたら、
「そんなのあたり前ですの!頑張って覚えて下さいませ!」
だそうです。俺、中学でも成績は中の中。いたって普通なんですが?
ブリッシュ王国の、更に西は、ドワーフの住まう山々があり、鉄、金、銀はそこから輸入しているそうだ。
特産品は、小麦と畜産がメインらしい。
ふぅーん。ただの田舎って事ね。
てっきり、歴史あるとか格調あるみたいな事言っているから、イギリスみたいな国を想像したが……想像は裏切られた。
と思ったら、軍馬の育成に力を入れている、騎馬隊なるものが、一般兵にも行き渡っているらしい。
今まで良くアルステッド国に侵略して来なかったな。
聞いてみたら、同盟国なのに、そんな事はありませんし、アルステッド国にはピクシードラゴンの加護がおありですから。とか思っている様だった。
そんな加護は無いって、クロに聞いているんだけどね!
態々波風を立てる事もあるまい。
黙っておこう!
ちなみに、ブリッシュ王国に行くには――ポチ達が住んでいた村から続く街道を、ひたすら西に行けば、国境が見えて来るらしい。
ちなみにこの時代の国境は、余程険悪な関係の国同士でもない限りは、関所も区切られてもいないらしい。
日本では飛鳥時代に、関塞という、関所らしきものが置かれていたと言われているが、何分、過去の事で本当かは分かっていないらしい。
そんな感じで、クロは渋っているが、西の国ブリッシュ王国へと向う事になった。
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