竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

31.謁見!

「こんなに人が多いのは初めてだに!」
「お父さんに連れられて、前に一度来たけどやっぱり王都は一味違うわね」
「わたしも村から出た事は無かったんで王都は初めてですが、狼の獣人がさっきいましたよ!」
「おうとにゃ!」
「さっきの屋台で、何か辛そうないい匂いの食べ物が売っていましたよ!」
「かえってきた……」
「みんな元気かな?」


アルテッザは、門の紋章知っていたから初めてじゃないしね!
ホロウ、別に獣人差別がある訳じゃないからそりゃいるでしょ?
それとも本当に珍しい種族なのか?
やっぱりタマちゃんは゛にゃ゛って喋るんだね!
アニメで、にゃ、言葉を聞き慣れているから馴染むな。
イアンは食い気ですか……声だけは可愛いのに残念美人?


養子の話も、断ち切れていたから連れ帰ってきた幼女ふたりも嬉しそうだ。


 俺もこんなに人が多いのは――。
仙台の七夕祭りの方が人は多かったな。
ジャズフェスティバルと同じ位か……。
久しぶりに人に酔いそうだ。


「先に孤児院に寄ってからでいいかな?俺達につき合わせるのもなんだし」


 御者席の、俺の両脇で座っている幼女に聞きながら馬車を進ませる。
孤児院はさっきの大手門から、左程離れていないらしい。
やっぱり貧しい人が住む場所は目立たない所ってお決り?なんだね。


 人が少なくなった道を進める事しばし――。
目の前に、屋根に鐘が取り付けられている建物が見えてきた。
どうやらそこが孤児院みたいだ。


 馬車を孤児院の目の前に止めると――何事か!と、
ドアが開いて中から、妙齢の耳が尖った女性と子供達が続々と出てきた。
へぇこんな若い人がここの管理を任されているのか。
というか、あれエルフじゃない?


「あら?二人ともいったいどうしたの?伯爵様の養女になったんじゃ……?」


 王子が代表して説明し始める。
話を聞き終わると女性は、目に涙を滲ませ無事でよかった……。
そう言って二人を抱き締めた。


女性は俺達に深々と頭を下げ、


「この子達を助けて下さり本当に有難う御座いました。王都でお困りの事があればいつでもご相談ください。申し遅れましたが、私ここの院長を務めております――フレイと申します」


 エルフって事は、やっぱ見た目通りの年齢じゃ無いのかな?
聞いてみたいけど流石に聞けない……。
流石に女性に歳を聞くのは――ね!


 しかもフレイっておしい!
フレイアならこの孤児院にぴったりだったのに!
豊穣かよ……。


こちらの用事が詰まっているんで早々にお暇する。


「次は宿だっけ?両脇の幼女達が居なくなって、御車席が寂しいのだけれど……」
「御車席に行ったら、危ないっておねえちゃんに言われているにゃ!」


ちょ!何教えてくれちゃっているんですか!
さすがに本気じゃ無いと思っていたんだけど気のせいかよ!


「みんな中のソファーの方がいいって――私が代表して言いますね!」


だからぁ可愛いアニメ声でそんな辛辣な事を言うの……。
止めてくれませんかね!マジ凹むから。


「コータ殿、宿の必要は無いですよ?」
「王子様それはどういう……」
「王都滞在中の、皆さんの寝食は王家で用意させて頂きますね!」


ニコニコ顔の、金髪ドリルの姫がそんな事を言ってきた。
王女様、あなたクロとイチャイチャしたいだけでしょうに!


「セバス、御車席でコータ殿に案内をしてやってくれ」
「はい!畏まりました」


おいおい……俺の隣には老人かよ!
可愛い、わっち女性との楽しい御車席はどこにいった!


 馬車の中は王子のハーレムと化し……。
俺の隣には、銀髪オールバックでモノクルメガネを付けたおじいちゃん。
ちょっとあんま近寄らないでよ!
頭の油の匂いが臭いんだから!
俺、父ちゃんにだってこんな匂い嗅がされた事無いんだからね!


そんなこんなで、隣のセバスさんの匂いが気になって、街をちゃんと観察する余裕すらなかった――残念!


「コータ殿、その角を曲がって左へお願いします」


庶民の町から、一際立派な貴族街を通り案内されたのは迎賓館!


うは、なんか一流の格式があるホテルみたいだなって……。
――迎賓館なら当然なのか。


入り口の前で馬車を止め、皆を降ろす。
俺も降りようとしたらセバスさんから……。


「コータ殿、厩舎はこちらになっております!こちらへ移動お願いします」


 ちょっ!普通は、ホテルマンみたいな人が来て、厩舎に運んでくれるんじゃないんですか!
えっ、という感じで思っていたら……。
表情から察したのかセバスさんが、


「流石に、そのドラゴンライダーは他人では扱いきれないでしょう。ですのでお手数ですがお願いします」


お前のせいか!フロスト!
俺の視線に気がついたフロストが冷気を発して来た。
……解せん。


 馬車を厩舎に持って行って、フロストから継ぎ手の金具を外し厩へと移動してもらい目の前に餌を用意してもらった。
やっぱ馬と違って草じゃないんだな。
一緒に旅をしていたから判っていたけどさ……。
肉を出してもらってご満悦だ……。


俺が迎賓館の中に入ると、みんな1階フロアロビーで紅茶を嗜んでいた。


「コータさんお疲れ様です」
「おつかれだに!」


 アルテッザは優しいね!
やっぱ成人したらって話は、本当気なのかな?
ポチは……ポチもありがとう。


他の皆は、出されたお菓子に夢中で声すら掛けてくれないし――。
俺いじけていいよね!


「さて、コータ殿も来た事だし、今後の予定を説明するね」


えっ……王子様……俺達の予定全て管理されちゃっている訳?


そんな堅苦しいのは、俺嫌なのだけど……。


 「まず今日は旅の疲れを取ってもらって、実際には明日からなのだけど――明日は王城で大臣達から褒美の授与があって、それが終わったら、場所を王族のプライベート談話室に移動して、そこで今後の打ち合わせ。その後がささやかな晩餐会だね」


 褒美はいいけど……。
今後の打ち合わせって何さ!
貰うもの受け取ったら、帰っていいのでは?
しかも晩餐会って……。
あれでしょ?
色んな貴族が集まって立食形式で会話する……。
あれは舞踏会だっけ?
なんだか面倒くさそうだ……。


「明後日が、王都の観光と、近隣諸国の説明会」


というか、観光まで管理されているのですか!
しかも……近隣諸国の説明会って何?


「我が、この世界の状況を知る為に、王子に説明を頼んだのだ!」


さいですかぁー。
クロも、かなり長く留守にしていた様だから知らない事が多いみたいだ。


「まぁ一応、今決っているのはそんな所だね。何か要望があったら言ってくれていいから」


要望なんて言ったって、どうせ管理されるんでしょ?
言う訳ないじゃん!


「無い様なら僕等は、これで失礼するよ。これでもまだオワレスの件でやらなくちゃいけない事が多くてね……」


そう苦笑いしながら、王子と王女と執事と護衛の5人は去っていった。




「ふぅ、やっと行ったか……」
「コータさん、なんか疲れていますね。大丈夫ですか?」


アルテッザ君が女神に見えるよ!
是非甘えたい!


 その後、迎賓館の豪華な中庭や絵画、飾りつけられた壁画や壺?
などを観察しながら、探検した俺達は個々に浴槽に入り、
その後で、豪勢な食事を頂き寝室に移動した。


 えっ?女性陣と一緒の寝室じゃないのかって?
そんな関係じゃないのに無理でしょ!
誰も、一緒に寝ようなんて言って来なかったよ!
ハーレム展開が無い物語ってどうなのよ!
作者に意義を申し立てたいね!


 そんな事で朝。暖かなベッドに差す陽射しはやはり眩しい。
また寝過ごした様だ……。
だって、俺だけ働き詰めで疲れてたんだもん!
仕方無いじゃん!
今度知り合うなら、御者を変わってくれる人がいいな。


 顔を洗ってみんなの集まっているロビーに行くと、
みんなは、当然もう起きていて優雅なお茶会を開いていた。
何故か?王女も王女付の、俺達ともそう年の変わらない、執事見習い?
を――連れてきており、クロと楽しそうにおしゃべりしていた。


「あら?コータ様、おはようございます。昨晩はゆっくりお休みになられた様で……」


その……が気になるのだけど。
何が言いたいの?
この寝坊すけが!ですか?


「おはようございます、ローラ王女いらしてたんですね」


俺も、ちょっと嫌味言っちゃおっと。
こんなんだからモテ無いのか?


「ええ、クロ様ともっとお話がしたくて――昨晩から楽しみで早くに目が覚めてしまいましたの」


 すげーな……クロ。
俺も、クロの爪の垢でも飲めばモテルかな?
でも竜の爪の垢って、不潔そうだよね!
クロがニヤっと笑った後に――睨まれた……。
げふんげふん。


「王女様も、楽しまれている様で、何よりです」


その後、軽い軽食を食べいよいよ王城へ。


 そうそう……。
朝食に、スライスしたチーズと真っ白でふかふかの発酵させたパンが出た。
やっぱりこの時代にもパンはあったんだね!
そりゃ、麦畑があるんだから当然か……。


 俺の馬車じゃなく……。
王城から迎えに来た馬車に、皆で乗り込み王城へ。
迎賓館から王城へは、通りを2つ跨いだだけで結構近い。


 直ぐに小さな橋が見えてきて、橋の手前には守衛所が設けられており、守衛さんが3人外に整列して迎えてくれた。
さすがに王女様も一緒だから、停められる事もなく素通りだ。


 この橋、有事の時には、やっぱり上げ下げ出来るようになっている様で、
うちの馬車にも使われている魔素で鍛え上げられた、鉄のワイヤーで繋がれていた。
橋を渡りきり、開いていた鉄の門をくぐると……目の前には森林。
それを迂回する形で、王城の目の前に到着する。


 玄関口には、執事服を着た人や騎士の格好をした兵士。
更には、メイド服を着た沢山のメイド達がずらりと並び出迎えてくれた。
おおぉー始めてみたよ!
本物のメイドさん!


 何とかメッセとかのイベントの、写真でしか見た事無かったけど……。
写真みたいに、膝上20cmとかのコスプレじゃ無く。
ロングスカートだよ!
しかも、ちゃんと折り目正しくビシッとしている!
いやぁ、何かこっちの方が萌えるね!


 一歩前に出てきた執事が、コータ様御一行のお越し快くお迎えいたします。とかなんとか言って整列していた皆で腰を折る。
なんか、偉くなった気がしてきちゃうね!
俺まだ14歳なのだけど!


 そのまま、案内役の執事と騎士を先頭に謁見の間へ。
大きな扉の横には、王家の紋章のピクシードラゴンをあしらった金の刺繍が施された、大きな旗が両側に二つ掲げられており――これから威厳のある場所に入るのだと否が応にも気付かされる。


「コータ様御一行のお越しです!」


 騎士の声によって、先を促され扉の中に入ると――。
最初は、両側に少数の騎士達。
その奥にはビッシっとした正装を着込んだ貴族?多分ね!
――が、並んでおり。
次に、老齢の威厳のある感じの男が二人並んでいた。
この二人が、恐らく大臣なのだろう。


 赤い絨毯の――切れ目まで歩いていき。皆その場で腰を折る。
最初、肩膝じゃないの?って思ったら。
家臣でも無いので、これでいいと言われた。


 正面には第一王子のアレフ。
続いて、第一王女?
初めて見たが、綺麗な金髪は王子と同じだが――瞳の色はブルーでローラ王女が、元気なおてんば王女だとすれば、病弱でお淑やかな感じを受ける。


 第一王女の隣に、いつの間にか俺達と別れていた第二王女のローラが並ぶ。
アレフ王子の真横に、少し遅れて入ってきたのが恐らく……。
王様の妃の、イザベラ王妃であろう。
御歳30代半ばの、日本でいえばまだまだ現役の綺麗な女性である。
髪は子供たちと同じく金髪で、腰に掛かりそうな位長く――。
ソバージュっぽいが、まったく雑な感じは受けない。
瞳の色はエメラルドグリーン。
身長はローラ王女より、少しだけ高い位か?同じ位であろう。
ただし、ローラ王女の方が、髪を上げている為に背は高く見えるが……。


「王妃様から、お言葉を賜れる。しかと聞くように!」


大臣の注意?の後に、
少し間をおいて、綺麗な透き通った声で王妃が語りだす。


 「古竜のクロ様、並びにその庇護者コータ殿、そのお仲間の皆様方。ようこそ御出で下さいました。本来であれば、私の夫アーノルド王が謁見するのが筋なのですが――生憎と闘病中で療養の為、その妻の私、イザベラが代役を務めさせて頂きます」


褒美をこれに……小声で大臣に指示を出す王妃。


正面に、お盆?を持った大臣が歩いてくる。
何やら、その上には紙が乗っているようだ。


 俺、紙とか立場とか要らないよ?
そんなの貰っても嬉しくないし!
そう勘違いしていたら――目録だった。
王妃が、目録を読み上げる。


 「この度の、オワルスター元伯爵の悪行を未然に防いで頂いたお礼に――金1000枚。並びに国内のどの街へも無税で入れる通行手形。宝物庫より魔道具を一つ進呈いたします」


 へぇー、これからは一々街の入場料払わなくていいのか。
しかも、貴族様と同じに並ばなくてもいいらしい。
金貨は使い道が無いから……。
何とも言えないが、貰える物は貰っておこう。
後は、魔道具か……!
ロマンだねぇ。でもどんなのがあるかによるよね!


「ありがたく頂戴いたします。誠に恐悦至極でございます」


 一度この恐悦至極って、使ってみたかったんだよね!
時代劇でよくやっているじゃん!
そこに痺れる、憧れちゃう!


 退場を促され次は……なんだっけ?
あっ、そうそう。談話室だかで話だっけ?
もう帰っていい?
貰うものを受け取ってからか……。
だから目録だけなのか!


なんか良く考えられているよね!
さっさと渡したら、帰られるから後に渡すというの?


そんな事で、俺達は長い廊下を執事に案内されながら進むのであった。


クロ?勿論――姿を晒して肩の上に乗っているよ!



コメント

  • ノベルバユーザー299285

    面白いけど主人公の性格?が一々ウザい

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品