初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!

石の森は近所です

14話、ヤマト皇国

 秋人はアオイ王女に促され馬車へと乗り込んだ。
秋人の正面に座る仕草が凛としていて育ちの良さが良くわかった。
当然だよね。
だって王女様だもん。


 「まずはあんたん名前を聞きまひょか?」
「はい。アキト・タカヤマです」
 「うちん自己紹介もまやどしたね。アオイ・ヤマトどす」
 「日本人ん方とお見受けしまっけど……」
「はい。日本人です」
 「ほして日本ん方がなんで、あないなトコに?」
「はい、あの国に学校全体が召還されまして」
 「学校全体ってなん人いやはったん?」
「450人は居たと思います」
 「そないに?」
「はい、ただ召還されて直ぐにオークの大群が校舎内に湧いて……生き残ったのは恐らく20人も居ないかと……」
 「そないに大量に人を召還したちゅうのどすか?」
「はい。召還後、すぐに皆殺されていきました」
 「なんて事を……」
「俺はクラスの子を助けた後、逃げ出して……その時にあの国の仕業だったと知ったのです」
 「ほなぁ、森においやしたおとこ達も?」
「はい。召還された学校の先輩です。アヴューレ王女の命令で捕まえに来たと言っていました」
 「ああーあの王女はんね」


ご存知でと聞いたら、周辺各国の会議に王では無くその子が出席するらしく、その時に会った事があるらしい。


 「やて困ったんやね。そないに大勢ん勇者が召還されたとなると、各国が揺れへん」
「それがばれない様に。俺を捕らえるか抹殺の支持が出ていた様です」
 「隠し通す事なんて出来ーひんに」
「そういえば。この国は日本みたいですね」
 「そらそないでっしゃろ。日本を懐かしく思った先祖が建てさせたんどすから」
 「余計なお世話やけど、お米もお味噌も醤油もありますよ」


米、味噌、醤油……3種の神器と言ってもいい食べ物がある!
それを聞いて、秋人は嬉しくなった。


しばらく馬車が走ると一軒の宿の前で止まった。


 「今日はこん宿に泊まっていかはったら、いいでっしゃろ。あす迎えにこさせまっしゃろから」


「有難う御座います」


アオイ王女はそう言うと城へと戻っていった。


 俺はと言うと……仲居さんに案内されて、10畳のリビングと4畳の寝室の付いた部屋に案内された。
寝室には既に布団も敷かれていた。
最初に、風呂を勧められたので大浴場へ向う。
秋人の服が汚れていた為に気を使ってくれたのだろう。
大浴場は、檜の様な材質の木で作られており木の香りが漂っていた。
シルバーと二人でゆっくりと漬かる。


「やっぱり風呂はこうじゃなくちゃな!」
「クウゥーン!」


昨晩、シルバーも風呂は体験していたので嬉しそうだ。


長湯にならない様に、程ほどであがると脱衣所に浴衣が用意されていた。
秋人の制服は洗ってくれるみたいだ。


 風呂から部屋へ戻るとテーブルの上には、
ご飯、味噌汁、焼き魚、煮込んだ肉。野菜の御浸し。芋の煮付けなど……。
日本の旅館でも出て来そうな料理が並んでいた。
日本食に舌鼓を打つ。
シルバーも気に入った様だ。
食後には緑茶も出てきた。
昔の勇者様に感謝する。


お腹が満腹になると流石に眠くなってくる。
シルバーと二人で早々に布団へ入り就寝した。


4日、5日ぶり。の布団は気持ちよかった……。














 カロンの町に着いた環が最初に向ったのは冒険者ギルド。
別に冒険者に憧れていたわけでは無く……。
情報が欲しいから。
まず、荒野の学校がどうなったのか?
秋人は何処に逃げているのか?
先輩2名の勇者の行方など、露骨に成らない様に探っていた。
しかし欲しかった情報は何も見つからない。


 諦めて宿を探そうと露天を見ると味噌田楽が売っていた。
環は頭がいい。
運動も出来る。
見た目も美人だ。
あ、ここでは美人は関係なかったか……。
環は味噌田楽を買って食べて見た。


「んぅ~うまい!」


露天のおじさんも環の反応に満足げだ。
環はおじさんに聞いて見た。


「おじさん、この味噌はどこで作られているの?」


大体、答えの予想は出来ていたのだが……。


「そりゃーお隣、ヤマト皇国に決っているだろ!あそこの特産なんだから」


 やっぱり。
過去の勇者が広めたのは確かだ。
きっと秋人君もそっちに逃げたに違いない。
だって……日本人だから。
こっちの食事が合う訳が無い。
そう決め付けて。
今後の行く先が決定した。


 宿を探していると前から。見た事がある……。
先輩2名が歩いてきていた。
ここで見つかってはお終りだ。
環は隣接していた小屋の物置に隠れた。
物音を立てない様に、ジッとしていると……。


 「しかしあの女、何者だ!もう少しでアキトを殺せたものを……」
「確か隣の国ってヤマトだったよな?」
「まさかあれが勇者なのか?あっちの!」
「多分、そうとしか考えられないね」
「だよな……二人掛かりで手に負えないんだから」


 アキト、殺せなかった? ヤマトの勇者
それを聞いて環の予想が確実なものになった。
秋人君を先輩達が殺しに行った……なんで?アヴューレ王女の差し金で。
秋人君の行方は……ヤマト皇国
先輩の姿が見えなくなった後、環はこっそり物置から出た。


ヤマト皇国行きの馬車を探さないと……。


 環は必死にヤマト行きの馬車を探した訳では無く、案外簡単にそれは見つかる。
ヤマトから調味料を調達する商隊が頻繁に行ったり来たりしていたからだ。
当初は宿に宿泊する予定だったが、予定を変更してヤマト皇国の王都へ荷物を運ぶ馬車に乗せてもらえる手筈を整え、その日の内に出発した。
周りは赤茶けた大地と左手には森が見える。
所々、湯気が立っていて……森林火災でもあったのだろうか?


 実際には先輩の起した火災をアオイ王女が消した痕跡なのだが。
それは環の知らない事であった。
カロンの町からヤマトの街まで半日程度で行ける距離らしく、
夕方にはヤマトの街に着いた。
街の入り口に入る時から目の前の光景には思う事があったが。
実際に入ってみたら。


「ここは日本だ」


日本の古い家屋がぎっしり並んで建っているのであった。
その遠くにはこれ白鷺城?と見紛う立派な城が確認出来た――。


 何故、環が城の名前を知っていたのか?
彼女が弓道を始めたのは戦国時代物のTVが好きだったからであった。
さて、秋人君探しと今晩の宿を探さないとね!


 道の両側は日本家屋、その真ん中の道を歩く環の後ろ姿は妙に溶け込んでいた。
少し歩くと、縦長の宿の看板が目印になっている宿があった。
扉を開けて中を覗く。
すると正面にカウンターの様な席があり、
そこには着物姿の女性が腰を下ろしていて。
環が顔を出すとこちらに歩いてきて、
三つ指着いて『おこしやす』と京言葉で挨拶された。
なんだか懐かしく感じて環は笑顔になった。
その後に、客室へと案内され。久しぶりの和食に舌鼓を打ち、お茶を飲んでいた。
それにしても……ここまで日本を再現するなんて。
凄いわ!
と、独り言を呟いていた。


 少しして仲居の案内で小浴場へと案内された。
日替わりで大浴場と小浴場が男女で入れ替わるシステムらしい。
小浴場の隣が洗濯室になっており、
一応仕切りで中が見えない様に気配りがされていたのだが、
たまたま、仲居が入った後で暖簾がめくれていた。
環がそれに気づいたのは本当に偶然か?
はたまた運命か?
洗濯待ちの、服の一番上に……我が校の制服が混ざっているのに気づいた。
浴室から飛び出し洗濯場に駆け込んで、
仲居に断わりもせずに服を掴み見る。
見つけた!


「見つけた!」


いきなり大声を上げられ驚く仲居さん。


その仲居さんに尋ねた。


「この服の人は何処に泊まっていますか!」




















 私の名前はレミエルです。
この度、神様より1万年もの長い間、地上に使わされた天使なのです。
私はちゃんと仕事をしたと言うのに……。
酷いと思いませんか?
だいたい人間は家畜と同じなのです。
複数の男女が入り混じろうがそれが家畜の営なみ。
あの岬と言う少女がどの男と致そうがどうでも良い事ではないでしょうか?
皆さんもそっちの方が萌えるでしょ?
 私も男×女よりも
男×男の方が萌えるのです。
私の気持を分って下さると思います。
凸凹をあわせれば綺麗にはまります。
では凸凸では?これも綺麗にはまります。
では凹凹では?これは嵌りません。
と言う事はです。
凸凸こそが最善ではないでしょうか?


 おっと……いけない。仕事をしないと10万年地上とか言われかねません。
あの少女は何処に?
繭が置いてあった花壇の近くに降り立って見れば……。
繭は何処にもありません。
いったい何処に行ったのでしょう?
天空からモニターしていた時にはちゃんとここにあったのに。
これは……私、レミエル。一生の不覚です。
適当に覗きがてら探そうと思います。
半透明になり。
浮遊して窓と言う窓から中を覗きます。
すると……後宮の一室にいました。
あの糞王子です
懲りずに、今度は女官に手をだしてやがるです。
また、嫌がらせしたいと思います。
前回と違って今回は、女の方も乗り気の様です。
ですが、私に掛かれば……女の服を脱がせ、凹を指で触っていやがるです。
やるならここですね。
空間魔法で凹を硬いギロチンへと変化。
刃を落としましょう。
『ザッ』という音と共に糞王子の指が千切れ飛びました。
ざまーみやがれです!


さて少し気分もすっきりしたので、あの少女を探しに戻りましょうか。



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