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Heat haze -影炎-

石の森は近所です

第04話、クラスとレベル

「か、か、簡単に案内はしましたが、ショッピングセンターや、他の施設に関しては追々、覚えていってくれればいいので……寮の食堂はありませんから、夕飯は学園内の食堂で食べて下さいね。利用時間は、朝はゼロロクマルマル時からゼロハチマルマル時。昼は12イチニイマルマル時から12:45イチニイヨンゴー時。夜は18イチハチマルマル時から20ニイゼロマルマル時までです。何か困った事があったら、室内の内線で00を押せば、誰かしらかの、教官の部屋に繋がります」


 聞き慣れない時刻の呼び方で食堂の利用時間を説明した後、かえで先生は教官室へ戻っていった。


  取り敢えず、部屋の中に2人で入りリビングに置いてある椅子に座った。
 部屋は思ったよりも涼しい。大元から空調用の配管を通って全部屋に付いているダクトへ冷気を送っているようであった。




「それにしても……驚いたわねぇ。あたしお姉ちゃんに聞いていたけれど、これは予想外だったわよ」


 水楢も僕と同様に思ったらしく半ば呆れ口調で語りだした。


「本当にな――まさか担当教官があんな幼女だとは」


 僕は思った事を思わず口走るが……。


「雪くん、何を言っているのかしら。あたしは、この男女同室の話をしているのだけれど――」


 水楢から素の表情でこの同棲に近い生活環境に対する不満を告げられた。水楢もこの男女同室という情報は得ていなかったらしい。


「あぁ、そっちの話か。本当に驚きだよね。まさか僕も、こんなに綺麗な女性と2人きりの部屋で、これから生活する事になるとは――夢みたいだよ」


「ちょっと、雪くん、あたしに変な事しないでよ。何かしたら――わかっているわよね」


  女性に免疫の無い僕が、水楢みずならの様に綺麗な女性と同棲する事に、動揺していた僕は思わず本音を漏らしてしまった。のだが、あっさりと振られたのであった。


  夕方の、食堂の利用時間までは、まだ時間がある。のだが、この部屋には2人だけ、そう意識すると何を話していいのか分らなくなっていた。
  だが、水楢の方から話題を振ってくれた。


「そういえば、雪くんのヒートヘイズは、あのグリフォンだけなの」


 さも今思い出した風に問いかけられたが、個人差によって発現出来るヒートヘイズが違うという事で最初から気になっていた部分もあったのだろう。


「僕は、あの時が初めてヒートヘイズだっけ、それが勝手に出たから分らないんだけど、そもそも何体も出せるようなモノなのか」


偶然発現させた僕がわかる筈も無く、逆に問いかけると……。


「勝手にとは言うけれど……雪くん。自分の意思で無かったら、あの時、暴走させたって事になるのだけれど」


 真顔で食いつかれた。しかも暴走とか、まるで昔放送されていた使徒を殲滅するアニメの中ではあまりいい印象を受けない表現で語られた。


「僕が出したと言うよりは、ヒートヘイズの方から手助けしようか、みたいに言われて――僕も困惑していたし、逃げ出したかったから了承しただけなんだけど」


 暴走がどんなものか知らないけれど、あの時の状況を説明してみれば、


「そんな馬鹿な話、ある訳が無いじゃない。ヒートヘイズは話したりしないもの」


 何故か、むきになって反論されてしまった。


「でも、僕のヒートヘイズは確かに話しかけてきたよ。昨晩も、今朝だって、旨そうな朝食だな、我にも食わせろ。みたいに――」


 尚も朝からの話をありのまま僕は説明するが、


「何、それ」


 水楢の場合と僕のそれは違った様で、如何にも好奇心旺盛な女子高生らしく根掘り葉掘り質問攻めにあう事になった。


「僕に言われても――分る筈が無いじゃないか」
「それもそうよね。今、出せる。雪くんのヒートヘイズ」
「どうだろう。出し方とか知らないから分らないんだけど」
「そこからか……」
「そもそも、何で水楢は3体出せるんだ」
「私は、意識しているから出せるだけだけど――パンが覚醒した人は、最低で1つ。今までで最高が6体のヒートヘイズを出せた人がいると聞いているわ。クラスと呼ばれていて1つ出せる人はモノクラス。2つがジクラス。3つがトリクラス。4つがテトラクラス。5がペンタクラス。6つがヘキサクラス。と呼ばれているわね」


 事前に知識を吸収していた水楢からクラスについて説明を受けるが、水楢から3体のヒートヘイズが飛び出した理由がこれでわかった。


 「じゃぁ、水楢はトリクラスって事か」


単純に水楢はあの時3体発現させたので、再確認の意味で聞いてみたが、


 「さぁ、どうなんでしょうね。もっと出せちゃうかもよ。ただ数多くヒートヘイズを出せるという事は、それだけの半獣神を体内に宿しているという事だから、一度に多く出せば、出すほど、自分の精神が侵される――。最悪は暴走して、さっき楓先生の話に出てきた博士の様に、事故で死ぬ可能性が増すのよ」


 もったいぶった言い草で、多くを発現する事の脅威を説明された。


 「それって、かなり危ない事なんじゃ」
 「そうね。でもお姉ちゃんも複数体を宿して、それを制御出来ているから……結局は、本人の気持次第なのじゃないかしらね」


 僕が発現の恐ろしさを聞くと、水楢の姉も複数のヒートヘイズを発現出来ると聞かされ、ヒートヘイズの制御が難しい事を理解し、思わず呟いていた。


 「それじゃ、俺を押さえ込む為に、無理をしたって事なのか……」


  僕は、そんな大事おおごとだとは思わなかった。あの時、僕のヒートヘイズが、水楢をそこまで追い詰めていた様には見えなかったのだから。


 「僕のヒートヘイズは、1体だけだった訳だけど、そもそも、何で水楢は3体も出したんだ」


 この際だから聞ける情報は聞いておこうと考え、あの状況で何故、無理をして水楢が3体発現させたのか問いかけると――。


 「それは、雪くんの出したグリフォンが半獣神のレベルのAランクだったからよ。これが難しい所なのだけれど、操れるヒートヘイズが多ければ強い訳じゃないわ。私が出した蛇はレベルE、虎はレベルC、龍はレベルB。それに対して雪くんのグリフォンがレベルA。ここまではいいかしら」


 「あぁ。続けて」


 「レベルを数値で表すと、Eは2。Dは3。Cが4。Bは5。でもAは7なの。更に上はSなのだけれど、Sになると10を越えていると言われていて、今までの数値は参考に出来ないらしいわ。それは置いておいて、雪くんのグリフォンの7を押さえ込むには、最低でも同数、虎と龍は不可欠だったの。運良く雪くんのグリフォンが飛び立とうとした所に、あたしの龍の攻撃が当り、落下した所を虎により一撃で押さえ込めたけれど――あれでもギリギリだったわ」


 「それじゃ、グリフォンの7に対して、虎が4、龍が5の9で対処したって事なのかな」
 「それで合っているわね。だから数だけ多くても、レベルが低かったら負ける事が多いわ」
 「じゃぁ、僕のグリフォンが、もしレベルDを3体相手にしたらどうなるんだ」
 「状況にも寄るけれど……まずDランクではAは倒せないわね」


  僕の中に宿った半獣神が、そんなに強いとは思えないけれど、水楢の話ではそうでは無い様であった。真剣な表情で僕に説明してくれている水楢を眺めながら、レベルだとか、ランクだとかまるでゲームの様だ。と少し思った。




  陽が海面に近づき、寮の窓を赤く染め上げている。水楢とこの部屋へ入った時には既に赤い陽射しが差し込んできていたが、慣れない女性との会話だ。顔が熱いのは陽射しのせいだけでは無いだろう。今は、夕日に感謝したい。


「そろそろ食堂が開く時間ね。他の生徒達で混む前に先に食べちゃいましょう」


 夕食を前に水楢から笑顔で誘われ、その表情に見惚れながらも水楢の少し後ろを歩き食堂へと向かう。
 水楢のお姉さんが、ここの卒業生である事から、初めてここへ来た水楢だが色々と詳しいそうだ。何も知らない仲間よりは、知っている人が一緒だと言うのは本当に助かる。食券は、今日の分は楓先生から貰ってあったので、3種類の中から好きなメニューを選んで、給食を作ってくれている業者のおばさんによそって貰った。ご飯は、何故か丼に大盛りであった。


「このボリュームで無料は嬉しいでしょう」


  水楢にそう言われるが、僕は大食漢では無い。ただ、朝からまともに食べていなかったから大盛りでも苦も無く食べきる事は出来た。


  丁度、食べ終わる頃に、ぞろぞろと在校生が食堂に入ってくる。真っ先に食堂へ来たと思っていたらしく、先客がいた事に奇異の視線を向けられた。

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