子猫ちゃんの異世界珍道中
第218話、フローゼ姫の最大攻撃魔法
ミカちゃんが咄嗟に忠告しますが、既に消滅魔法は像へ向け放たれました。
竜が吐き出すブレスの様に轟音と共に放出された魔力は像に当たると、像は漆黒の霧に包まれ、数秒後にはその霧は口が彫ってある部分から吸い込まれていきました。
「遅かったにゃ――」
僕のブレスを吸い込み力を蓄えた像は一際輝きを増し、足元の魔方陣の輝きも紫から真っ赤な赤に変わりました。
「いったい何が……」
僕が言葉を漏らすと――。
隣のミカちゃんでは無く、像の背後から声がしました。
「いやぁ~流石、皇帝陛下っすね。こうなると予想していたとは。驚きっす!」
像の背後から現れた人物にはみんな見覚えがあります。
渚さんからアッキーと呼ばれていた――魔族です。
「魔族!」
「出ましたわね」
「今回は負けないにゃ!」
僕は咄嗟にミカちゃんを始め、仲間達に結界の魔法を掛けていきます。
アッキーはそんな僕達を目の前にしても笑みを絶やさず、唇に下を這わせるとイヤらしく舐めまわしました。
「お前達はここで死ぬっす。皇帝陛下の邪魔をする者は生かしては置けないっすから」
何を偉そうに語っているんでしょうね。
渚さんの姿を僕は探しますがこの場にはいません。
となれば、アッキーの戦闘力はたかが知れています。
「随分偉そうな物言いですね。渚さんの援護が無いお前なんて僕達の敵じゃない!」
僕は再度掌に魔力を纏うと、重力圧縮の魔法をアッキーに向けて放ちます。
アッキーの目の前に黒い霧の塊が出来上がると、アッキーから声があがります。
「ぐふっ……やられたぁぁぁぁ。なんてね――お師匠様の口癖っす」
惚けた口調で言葉を漏らした瞬間、先程のブレスと同様、漆黒の玉は像の口へと吸い込まれ消えていきました。
「子猫ちゃん、これ以上魔法を使っちゃダメにゃ」
ミカちゃんが言葉を言い終えた瞬間――床に書かれた魔方陣の輝きが増し魔方陣から炎が噴き出す様に、縦に赤い炎の帯が立ち昇りました
「あひゃひゃひゃ、弱者を甚振るのは楽しいっすね。止められないっす」
尚もアッキーは魔法を放つまでもなく、ただ像の隣で大口をあけ大笑いを続けています。
「くそっ」
僕が放った魔法が全てあの像に吸い込まれ、養分と化して敵に有利に働いているのは魔方陣を見ればわかります。いらだちから尻尾を床に叩きつけ言葉を吐き出します。
「子猫ちゃん、落ち着くにゃ」
「魔族があの場所から移動しないのはしないのでは無く、移動出来ない訳があるのでは無いか?」
ミカちゃんが僕を宥め、フローゼ姫が冷静にアッキーと僕のやり取りから分かった事を分析し説明します。
「移動出来ないとは限りませんよ、あの少女は僕の魔力を奪うのを楽しんで――楽しんで? あれ?」
僕が最初に魔法を放った時、アッキーは何と言いましたっけ?
確か、流石皇帝陛下?
いやいや、こうなる事を予想していた?
僕が魔法を放つ事を予想されて像を仕掛けた?
僕達が戦闘力では互角と予想していた相手です。
何故、互角の相手にこんな罠を――。
もしかして――僕は小さな声でアッキーに悟られない様にフローゼ姫に告げます。
フローゼ姫に貫通魔法を掛けた状態で最大の攻撃魔法を放つ様にと。
彼女は小さく分かったと頷くと自身に貫通のバフを掛けます。
「何をこそこそやっているんっすか? 猫の魔法は何をやっても通用しないっすよ」
「僕の魔法は――ね。でも他のメンバーの魔法ならどうでしょうね? フローゼ姫やってください」
「ああ、シャイニングブラスター!」
フローゼ姫は自身の持つ剣先を石造に向けると彼女の最大の魔法を放ちます。
威力は僕の消滅魔法と互角。
ただし、彼女の魔法の属性は光。
闇属性の僕の魔法とは相いれない属性。
全ての物質を消滅させるのが消滅魔法であるなら、シャイニングブラスターは悪を消滅させる善のブレス。
轟音と共に剣先から眩い輝きのブレスが噴出しアッキーの隣にある像へ一直線に突き進み、像に当たるとその全身を真っ白な光が包み込みます。
そして――。
その光は勢いを止めず像を貫くと教会の壁を素通りし消えました。
「あぢっ、あぢぃーっす! いでぇーっす。腕が――腕がぁぁぁぁぁぁ」
像の隣にいたアッキーにもその余波が掛かり、右腕を消し飛ばしていました。
光が収束した時に像は脆くも崩れ落ち、その形は失われました。
像へ魔力を供給していた魔方陣も供給先が消滅した事で輝きは消えただの床に戻っていました。
「覚えてろっす!」
一言恨み言を吐き出すとアッキーの姿はその場から消え失せ、教会の中は魔力と生命力を吸い取られ苦悶の表情を浮かべ嗚咽を漏らす大衆の姿だけがありました。
「ミカちゃん!」
「分かっているにゃ! 聖なる癒し!」
ミカちゃんの放った魔法は暗くなった教会の中に青い光を降り注がせ、その粒子はすべての人々に降り注ぎます。
苦しそうにしていた人々の呼吸は穏やかになり、皆例外なく意識を失いました。
少女も母親に駆け寄ります。
床の魔方陣が消えている事で今度はミカちゃんに止められる事も無く、母親のいる場所に辿り着き、母親に抱き着くと声をあげて泣き出しました。
少女の母親は、衰弱はしていますが生きています。
辺りを見渡せば亡くなった多くの子供、老人の姿が目につきます。
未だに生きていられるのは生命力が多かった子供以上老人未満の人達だけです。
その光景を見れば少女の母親との再会を喜ぶ気持ちも半減してしまいます。
いつもなら助けようと蘇生魔法を行いそうなミカちゃんも、亡くなっている人の数を数えた段階で諦めた様で、暗い表情で俯いてしまいました。
それにしてもここで大衆から魔力と生命力を吸い取って何をしていたんでしょうね。
そんな疑問は外で待機していた王子達の呼ぶ声で判明します。
「おい! あれを見ろ!」
王子に呼ばれ何様! と思いながらも外に出た僕達が見たものは――。
漆黒の霧が薄れその姿を露わにしたエルストラン皇国の巨大な城の姿でした。
竜が吐き出すブレスの様に轟音と共に放出された魔力は像に当たると、像は漆黒の霧に包まれ、数秒後にはその霧は口が彫ってある部分から吸い込まれていきました。
「遅かったにゃ――」
僕のブレスを吸い込み力を蓄えた像は一際輝きを増し、足元の魔方陣の輝きも紫から真っ赤な赤に変わりました。
「いったい何が……」
僕が言葉を漏らすと――。
隣のミカちゃんでは無く、像の背後から声がしました。
「いやぁ~流石、皇帝陛下っすね。こうなると予想していたとは。驚きっす!」
像の背後から現れた人物にはみんな見覚えがあります。
渚さんからアッキーと呼ばれていた――魔族です。
「魔族!」
「出ましたわね」
「今回は負けないにゃ!」
僕は咄嗟にミカちゃんを始め、仲間達に結界の魔法を掛けていきます。
アッキーはそんな僕達を目の前にしても笑みを絶やさず、唇に下を這わせるとイヤらしく舐めまわしました。
「お前達はここで死ぬっす。皇帝陛下の邪魔をする者は生かしては置けないっすから」
何を偉そうに語っているんでしょうね。
渚さんの姿を僕は探しますがこの場にはいません。
となれば、アッキーの戦闘力はたかが知れています。
「随分偉そうな物言いですね。渚さんの援護が無いお前なんて僕達の敵じゃない!」
僕は再度掌に魔力を纏うと、重力圧縮の魔法をアッキーに向けて放ちます。
アッキーの目の前に黒い霧の塊が出来上がると、アッキーから声があがります。
「ぐふっ……やられたぁぁぁぁ。なんてね――お師匠様の口癖っす」
惚けた口調で言葉を漏らした瞬間、先程のブレスと同様、漆黒の玉は像の口へと吸い込まれ消えていきました。
「子猫ちゃん、これ以上魔法を使っちゃダメにゃ」
ミカちゃんが言葉を言い終えた瞬間――床に書かれた魔方陣の輝きが増し魔方陣から炎が噴き出す様に、縦に赤い炎の帯が立ち昇りました
「あひゃひゃひゃ、弱者を甚振るのは楽しいっすね。止められないっす」
尚もアッキーは魔法を放つまでもなく、ただ像の隣で大口をあけ大笑いを続けています。
「くそっ」
僕が放った魔法が全てあの像に吸い込まれ、養分と化して敵に有利に働いているのは魔方陣を見ればわかります。いらだちから尻尾を床に叩きつけ言葉を吐き出します。
「子猫ちゃん、落ち着くにゃ」
「魔族があの場所から移動しないのはしないのでは無く、移動出来ない訳があるのでは無いか?」
ミカちゃんが僕を宥め、フローゼ姫が冷静にアッキーと僕のやり取りから分かった事を分析し説明します。
「移動出来ないとは限りませんよ、あの少女は僕の魔力を奪うのを楽しんで――楽しんで? あれ?」
僕が最初に魔法を放った時、アッキーは何と言いましたっけ?
確か、流石皇帝陛下?
いやいや、こうなる事を予想していた?
僕が魔法を放つ事を予想されて像を仕掛けた?
僕達が戦闘力では互角と予想していた相手です。
何故、互角の相手にこんな罠を――。
もしかして――僕は小さな声でアッキーに悟られない様にフローゼ姫に告げます。
フローゼ姫に貫通魔法を掛けた状態で最大の攻撃魔法を放つ様にと。
彼女は小さく分かったと頷くと自身に貫通のバフを掛けます。
「何をこそこそやっているんっすか? 猫の魔法は何をやっても通用しないっすよ」
「僕の魔法は――ね。でも他のメンバーの魔法ならどうでしょうね? フローゼ姫やってください」
「ああ、シャイニングブラスター!」
フローゼ姫は自身の持つ剣先を石造に向けると彼女の最大の魔法を放ちます。
威力は僕の消滅魔法と互角。
ただし、彼女の魔法の属性は光。
闇属性の僕の魔法とは相いれない属性。
全ての物質を消滅させるのが消滅魔法であるなら、シャイニングブラスターは悪を消滅させる善のブレス。
轟音と共に剣先から眩い輝きのブレスが噴出しアッキーの隣にある像へ一直線に突き進み、像に当たるとその全身を真っ白な光が包み込みます。
そして――。
その光は勢いを止めず像を貫くと教会の壁を素通りし消えました。
「あぢっ、あぢぃーっす! いでぇーっす。腕が――腕がぁぁぁぁぁぁ」
像の隣にいたアッキーにもその余波が掛かり、右腕を消し飛ばしていました。
光が収束した時に像は脆くも崩れ落ち、その形は失われました。
像へ魔力を供給していた魔方陣も供給先が消滅した事で輝きは消えただの床に戻っていました。
「覚えてろっす!」
一言恨み言を吐き出すとアッキーの姿はその場から消え失せ、教会の中は魔力と生命力を吸い取られ苦悶の表情を浮かべ嗚咽を漏らす大衆の姿だけがありました。
「ミカちゃん!」
「分かっているにゃ! 聖なる癒し!」
ミカちゃんの放った魔法は暗くなった教会の中に青い光を降り注がせ、その粒子はすべての人々に降り注ぎます。
苦しそうにしていた人々の呼吸は穏やかになり、皆例外なく意識を失いました。
少女も母親に駆け寄ります。
床の魔方陣が消えている事で今度はミカちゃんに止められる事も無く、母親のいる場所に辿り着き、母親に抱き着くと声をあげて泣き出しました。
少女の母親は、衰弱はしていますが生きています。
辺りを見渡せば亡くなった多くの子供、老人の姿が目につきます。
未だに生きていられるのは生命力が多かった子供以上老人未満の人達だけです。
その光景を見れば少女の母親との再会を喜ぶ気持ちも半減してしまいます。
いつもなら助けようと蘇生魔法を行いそうなミカちゃんも、亡くなっている人の数を数えた段階で諦めた様で、暗い表情で俯いてしまいました。
それにしてもここで大衆から魔力と生命力を吸い取って何をしていたんでしょうね。
そんな疑問は外で待機していた王子達の呼ぶ声で判明します。
「おい! あれを見ろ!」
王子に呼ばれ何様! と思いながらも外に出た僕達が見たものは――。
漆黒の霧が薄れその姿を露わにしたエルストラン皇国の巨大な城の姿でした。
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