子猫ちゃんの異世界珍道中
第121話、交渉
「この隊で一番偉い人と話がしたいにゃ」
ミカちゃんは交渉の為に、穴の中に閉じ込めた捕虜達に声を掛けます。
ですが……。
「薄汚い獣人などに誰が教えるか!」
自分の立場が分っていませんね。
ミカちゃんを馬鹿にされて、僕の心はぽこぽこと沸騰しそうです。
「そなた達が偉そうに言えた立場か? この獣人の少女が手を抜かなければそなた達の隊どころか今頃、全滅している所だぞ」
フローゼ姫が捕虜達に立場を分らせようとすると――。
「お前は何故こんな獣人の味方をするのだ!」
大勢いる捕虜の中から、まだ若い少年が声を張り上げます。
「そんな事決っておろう。この少女が仲間だからだ」
「――はぁ?」
フローゼ姫が人種の壁など無いとでも言うように発言すると、少年は声を失ってしまいます。
僕達からすれば何故、似た容姿を持ち同じ言葉を話す獣人を差別し、貶めているのか理解に苦しみますよ。
ただその少年は生まれた時から、そう教えられて育ってきたのでしょう。
誤った知識、価値観を植えつけられ成長した子供は、当然獣人を偏見の目でみます。なんと哀れな事でしょう。
だからと言ってミカちゃんを馬鹿にするのは……許せませんけどね!
僕が掌に魔力を纏わせていると――。
「待つにゃ。子猫ちゃん」
当然、ミカちゃんに止められました。
「ミカちゃんを馬鹿にされて黙っていられませんよ。何、少しだけ体を軽くしてあげるだけです。片腕か、片脚か、いっそ四肢というのも……」
「ね、猫が喋った……」
僕が脅し1/4、本気50%、残り冗談を意思の疎通を使いその少年に伝えると、僕が喋った事にたいそう驚かれました。
無理もないですけどね。
少年が瞳を大きく見開き、僕を直視してきます。
そんな見つめられても、僕にはミカちゃんが居ますよ!
それに僕は男です!
「まぁ、まぁ、子猫ちゃんもここは穏便に……」
フローゼ姫からも窘められ、僕は引っ込みます。でも次にミカちゃんを馬鹿にしたら爪を飛ばしますよ。
「獣人は肉体的な能力は人より優れているにゃ。でも人ほど団結力も無ければ強い武器を作る事もしないにゃ。普通の獣人は人と同じく家族を守り、静かに生活しているだけにゃ。そんな獣人を何で差別するにゃ?」
ミカちゃんの口から、同属である獣人達の話は初めて聞きました。
産まれた時から孤児院で育ったミカちゃんは、同属をそんな風に見ていたんですね。
こんな良い子が何で孤児院に居たのか、謎ですが……。
この少年同様、ミカちゃんも孤児院で育ち、村長さんに育てられた事で良い子に育ったのかも知れませんね。少年はミカちゃんとは真逆ですが。
育った環境が人格を構築するなら、温かい人達の中で育った人は温和に、争いを好む人達の中で育てば似たような好戦的な人に育つのでしょう。
この少年はどちらでしょうね。
少年は、お父様が、お母様が、爺やが……とぼそぼそと口籠もっています。
周囲の意見を聞く事は大切ですが、ある程度物心が付いているなら自分で何が正しいのかを考える事は必要ですよね!
でも正しい知識を教えてくれる物、人が居なければ無理でしょうかね。
結局、誰もこの隊の責任者が誰なのか言いません。
団結力だけはあるのですかね……。
それとも後からの仕返しが怖くて言い出さないとか?
僕にしてみればどうでもいいですけどね!
大勢の捕虜を囲っている穴は、どれだけ時間が経過しても元に戻る事はありません。それは砂漠の国で実証済みです。このまま放置してさっさとこの国から脱出するのも手ですね。
僕達が雨宿りをしていたのが午後に入ってからでした。
戦闘はそれほど長くは行いませんでしたがそろそろ太陽が沈もうとしています。ここにこの人達を放置して、夜陰に乗じてなんとやらでもいいですね。
僕がそう考えていると――。
北東方向に向かって延びている街道から、1台の馬車がやってきます。
立派な馬車なのに護衛も伴わないで無用心です。
その馬車は僕達が集まっている場所へと真っ直ぐ進んできて、目の前で停車しました。馬車には執事服を着た少年が御者席に座っており、中から飛び出してきたのは白髪よぼよぼのお爺さんでした。
「これは一体何事ですかな? この様な所に王国軍を隔離するなど許されませんぞ!」
馬車から飛び出してくるなり、第一声がそれです。
お爺さん。隔離じゃなくて捕虜ですよ!
あれ?
僕達と引き離しているから隔離でもいいのかな……?
「そなた何者だ? この者達は我等に対し一方的に攻撃を仕掛けてきた故に、拘束させてもらったのだが?」
フローゼ姫が突然現れた、偉そうな物言いのお爺さんに誰何します。
するとフローゼ姫を認め、細い瞳を光らせたお爺さんが恭しく頭を下げて口を開きます。
「これはこれは、その身のこなし、言葉遣い、普通の貴族ではありませんな。あなた様こそどちら様で……?」
「――うぐっ」
お爺さん、誰何しているのはこちらですよ!
フローゼ姫が自分の立場を見破られそうになり、絶句しているじゃないですか!
この前も誰何を返されましたし、この地方の流行なんですかね。
それにしても驚きです。一見ガサツな女騎士にしか見えないフローゼ姫の身分を、一言会話を交わしただけで見抜きました。
見た目に騙される所でしたが、実はこのお爺さん強い人なんじゃ?
僕が警戒して掌に魔力を纏わせ始めていると、1歩前に踏み出しフローゼ姫に誰何していたお爺さんが突然――。
腰を押さえて這い蹲りました。
前言撤回しますね……ただの老いぼれたお爺さんでした。
ミカちゃんは交渉の為に、穴の中に閉じ込めた捕虜達に声を掛けます。
ですが……。
「薄汚い獣人などに誰が教えるか!」
自分の立場が分っていませんね。
ミカちゃんを馬鹿にされて、僕の心はぽこぽこと沸騰しそうです。
「そなた達が偉そうに言えた立場か? この獣人の少女が手を抜かなければそなた達の隊どころか今頃、全滅している所だぞ」
フローゼ姫が捕虜達に立場を分らせようとすると――。
「お前は何故こんな獣人の味方をするのだ!」
大勢いる捕虜の中から、まだ若い少年が声を張り上げます。
「そんな事決っておろう。この少女が仲間だからだ」
「――はぁ?」
フローゼ姫が人種の壁など無いとでも言うように発言すると、少年は声を失ってしまいます。
僕達からすれば何故、似た容姿を持ち同じ言葉を話す獣人を差別し、貶めているのか理解に苦しみますよ。
ただその少年は生まれた時から、そう教えられて育ってきたのでしょう。
誤った知識、価値観を植えつけられ成長した子供は、当然獣人を偏見の目でみます。なんと哀れな事でしょう。
だからと言ってミカちゃんを馬鹿にするのは……許せませんけどね!
僕が掌に魔力を纏わせていると――。
「待つにゃ。子猫ちゃん」
当然、ミカちゃんに止められました。
「ミカちゃんを馬鹿にされて黙っていられませんよ。何、少しだけ体を軽くしてあげるだけです。片腕か、片脚か、いっそ四肢というのも……」
「ね、猫が喋った……」
僕が脅し1/4、本気50%、残り冗談を意思の疎通を使いその少年に伝えると、僕が喋った事にたいそう驚かれました。
無理もないですけどね。
少年が瞳を大きく見開き、僕を直視してきます。
そんな見つめられても、僕にはミカちゃんが居ますよ!
それに僕は男です!
「まぁ、まぁ、子猫ちゃんもここは穏便に……」
フローゼ姫からも窘められ、僕は引っ込みます。でも次にミカちゃんを馬鹿にしたら爪を飛ばしますよ。
「獣人は肉体的な能力は人より優れているにゃ。でも人ほど団結力も無ければ強い武器を作る事もしないにゃ。普通の獣人は人と同じく家族を守り、静かに生活しているだけにゃ。そんな獣人を何で差別するにゃ?」
ミカちゃんの口から、同属である獣人達の話は初めて聞きました。
産まれた時から孤児院で育ったミカちゃんは、同属をそんな風に見ていたんですね。
こんな良い子が何で孤児院に居たのか、謎ですが……。
この少年同様、ミカちゃんも孤児院で育ち、村長さんに育てられた事で良い子に育ったのかも知れませんね。少年はミカちゃんとは真逆ですが。
育った環境が人格を構築するなら、温かい人達の中で育った人は温和に、争いを好む人達の中で育てば似たような好戦的な人に育つのでしょう。
この少年はどちらでしょうね。
少年は、お父様が、お母様が、爺やが……とぼそぼそと口籠もっています。
周囲の意見を聞く事は大切ですが、ある程度物心が付いているなら自分で何が正しいのかを考える事は必要ですよね!
でも正しい知識を教えてくれる物、人が居なければ無理でしょうかね。
結局、誰もこの隊の責任者が誰なのか言いません。
団結力だけはあるのですかね……。
それとも後からの仕返しが怖くて言い出さないとか?
僕にしてみればどうでもいいですけどね!
大勢の捕虜を囲っている穴は、どれだけ時間が経過しても元に戻る事はありません。それは砂漠の国で実証済みです。このまま放置してさっさとこの国から脱出するのも手ですね。
僕達が雨宿りをしていたのが午後に入ってからでした。
戦闘はそれほど長くは行いませんでしたがそろそろ太陽が沈もうとしています。ここにこの人達を放置して、夜陰に乗じてなんとやらでもいいですね。
僕がそう考えていると――。
北東方向に向かって延びている街道から、1台の馬車がやってきます。
立派な馬車なのに護衛も伴わないで無用心です。
その馬車は僕達が集まっている場所へと真っ直ぐ進んできて、目の前で停車しました。馬車には執事服を着た少年が御者席に座っており、中から飛び出してきたのは白髪よぼよぼのお爺さんでした。
「これは一体何事ですかな? この様な所に王国軍を隔離するなど許されませんぞ!」
馬車から飛び出してくるなり、第一声がそれです。
お爺さん。隔離じゃなくて捕虜ですよ!
あれ?
僕達と引き離しているから隔離でもいいのかな……?
「そなた何者だ? この者達は我等に対し一方的に攻撃を仕掛けてきた故に、拘束させてもらったのだが?」
フローゼ姫が突然現れた、偉そうな物言いのお爺さんに誰何します。
するとフローゼ姫を認め、細い瞳を光らせたお爺さんが恭しく頭を下げて口を開きます。
「これはこれは、その身のこなし、言葉遣い、普通の貴族ではありませんな。あなた様こそどちら様で……?」
「――うぐっ」
お爺さん、誰何しているのはこちらですよ!
フローゼ姫が自分の立場を見破られそうになり、絶句しているじゃないですか!
この前も誰何を返されましたし、この地方の流行なんですかね。
それにしても驚きです。一見ガサツな女騎士にしか見えないフローゼ姫の身分を、一言会話を交わしただけで見抜きました。
見た目に騙される所でしたが、実はこのお爺さん強い人なんじゃ?
僕が警戒して掌に魔力を纏わせ始めていると、1歩前に踏み出しフローゼ姫に誰何していたお爺さんが突然――。
腰を押さえて這い蹲りました。
前言撤回しますね……ただの老いぼれたお爺さんでした。
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