子猫ちゃんの異世界珍道中
第114話、伝令兵
墜落したワイバーンの側まで馬車を走らせ、止めると同時にミカちゃんと2人で駆け出します。
まさか人が乗っていたとは思っていませんでした。
まだ息があるなら回復魔法を――そう思いワイバーンに急ぎました。
僕達が到着する頃には砂煙も収まり視界も良好ですが、上空500mから墜落したワイバーンと兵士らしき人を一目見て、掌に集めた魔力を霧散させます。
人も、ワイバーンも既に息絶えていたからです。
近くにはこの兵士の遺品らしきものと、ワイバーンの血が飛び散っており、その衝突の激しさがよくわかります。
今回は完全に僕の過失なので、ミカちゃんも口煩く言いませんが、その瞳は悲しそうです。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
僕は俯き加減でそう謝ります。
まさか人が魔物に乗って空を飛んでいるとは――僕の知識不足が露呈した形ですね。
「亡くなった人の遺族に渡せる物があるかも知れ無いにゃ。探すにゃ」
落下の衝撃で周囲に散乱している物を、集めていると――。
エリッサちゃん達も集まってきました。
「こりゃ~凄まじいな」
「あまり直視したいものではありませんわね」
何度か戦闘を経験した2人が見ても、悲惨な状態らしく瞳を逸らしながらそう言葉に出しています。
「これで全部かにゃ?」
皆で集めた遺品を並べて、身元が確認出来るものを探していると――。
「これは――」
フローゼ姫がなにやら巻物を発見した様です。それは羊皮紙で裏側に血が付いていますが、表側は汚れてはおらず書いてある内容はちゃんと読めます。
僕は文字が読めないので無理ですが……。
「何が書いてあるにゃ?」
ミカちゃんがこれで身元がわかればいいにゃ、と良いながら尋ねます。
ですが内容を把握したフローゼ姫の表情は険しいままです。
何が書いてあったんでしょうか?
皆がフローゼ姫からの報告を待ちます。
すると――。
「うむ。この兵の身元がわかる物ではあるのだが、書いたのはマクベイラー侯爵、宛先はガンバラ王国のリゲルスキー・ガンバラ国王陛下とある」
「それでは使者を殺してしまったと言う事ですの?」
何か大変な事をしてしまった雰囲気が周囲を包み込みます。
「使者というか……この者は伝令だな。伝令の内容にはこうある。犯罪者である獣人の娘を拘束しようとした所、その仲間達によってマクベイラー城は甚大な被害が出た。侯爵軍が立ち向かった所、その賊が王都方面へ逃走を謀った為、王国軍の支援を要請する。とある」
「なっ、なんですの! それは――」
「怖い人達もいたものにゃ」
「ミカちゃん、これ多分……僕達の事ですよ?」
フローゼ姫は難しい面持ちのまま羊皮紙を離しません。持つ手が微妙に震えている事をみると余程、腸が煮えくり返る思いなのでしょう。
国をあげて獣人差別が酷いのは砂漠の国、アルフヘイムで聞いていました。
でも何の害も無い旅人ならば問題は起こりえないと考えていた、皆の判断が甘かった事を認識させられる事態がおき、こうして証拠まで入手したのですから当然ですね。
ミカちゃんは女神様のような善人です。犯罪者扱いされている事にピンと来なかったようです。
「これは不味い事になったかも知れぬ。普通伝令は敵に察知され見つけられる事を踏まえ数人に同じ内容の文を持たせ走らせる」
「といいますと?」
「ワイバーンの伝令はこの1人では無いのかにゃ?」
本当に厄介な事になりましたね。せっかく侯爵城に攻め込まず穏便に済ませたつもりが仇となりました。
「うむ。恐らく最低でも2名ないし3名が王城に文を運んだと見るべきだ」
「それでは――」
「あぁ、妾達が向かう先には、王国軍が立ちはだかるだろう」
騎士や兵隊が何人集まろうが僕には問題はありません。でも、1国の王女であるフローゼ姫やエリッサちゃんが国との戦闘に参戦するのは問題があるようです。
皆がこの先どうするか話し合いをすると言うので、僕はワイバーンから魔石を取り出し爪で食べ易いように細かく砕き、おやつを食べるようにポリポリ食べます。
そんな僕の光景が、深刻な話をしている皆には可笑しかった様で――。
「にゃ、子猫ちゃん。そんなにワイバーンの魔石は美味しいのかにゃ?」
いや、いや、魔石に味なんて無いのは皆も良く知っているでしょうに。
場を和ませる為か、ミカちゃんが冗談を飛ばします。
僕が最後の欠片を食べ終わると――体が光って何か魔法を覚えました。
「また子猫ちゃんが強くなったのか!」
「何か覚えたにゃ!」
「今度はどんな魔法ですの?」
「アーン。アーン」
皆、興味は王国軍より僕の新魔法に引き寄せられた様です。
子狐さんは僕も、僕もと魔石を催促していますが……。
僕は空を飛べる魔法を期待しました。
蛇だって空を飛べるんですから!
子猫が飛べても可笑しくはないですよね?
でも僕の脳内に届いた情報は飛行魔法のそれではありません。
あれ?
これ使っていい魔法なんでしょうか?
まさか人が乗っていたとは思っていませんでした。
まだ息があるなら回復魔法を――そう思いワイバーンに急ぎました。
僕達が到着する頃には砂煙も収まり視界も良好ですが、上空500mから墜落したワイバーンと兵士らしき人を一目見て、掌に集めた魔力を霧散させます。
人も、ワイバーンも既に息絶えていたからです。
近くにはこの兵士の遺品らしきものと、ワイバーンの血が飛び散っており、その衝突の激しさがよくわかります。
今回は完全に僕の過失なので、ミカちゃんも口煩く言いませんが、その瞳は悲しそうです。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
僕は俯き加減でそう謝ります。
まさか人が魔物に乗って空を飛んでいるとは――僕の知識不足が露呈した形ですね。
「亡くなった人の遺族に渡せる物があるかも知れ無いにゃ。探すにゃ」
落下の衝撃で周囲に散乱している物を、集めていると――。
エリッサちゃん達も集まってきました。
「こりゃ~凄まじいな」
「あまり直視したいものではありませんわね」
何度か戦闘を経験した2人が見ても、悲惨な状態らしく瞳を逸らしながらそう言葉に出しています。
「これで全部かにゃ?」
皆で集めた遺品を並べて、身元が確認出来るものを探していると――。
「これは――」
フローゼ姫がなにやら巻物を発見した様です。それは羊皮紙で裏側に血が付いていますが、表側は汚れてはおらず書いてある内容はちゃんと読めます。
僕は文字が読めないので無理ですが……。
「何が書いてあるにゃ?」
ミカちゃんがこれで身元がわかればいいにゃ、と良いながら尋ねます。
ですが内容を把握したフローゼ姫の表情は険しいままです。
何が書いてあったんでしょうか?
皆がフローゼ姫からの報告を待ちます。
すると――。
「うむ。この兵の身元がわかる物ではあるのだが、書いたのはマクベイラー侯爵、宛先はガンバラ王国のリゲルスキー・ガンバラ国王陛下とある」
「それでは使者を殺してしまったと言う事ですの?」
何か大変な事をしてしまった雰囲気が周囲を包み込みます。
「使者というか……この者は伝令だな。伝令の内容にはこうある。犯罪者である獣人の娘を拘束しようとした所、その仲間達によってマクベイラー城は甚大な被害が出た。侯爵軍が立ち向かった所、その賊が王都方面へ逃走を謀った為、王国軍の支援を要請する。とある」
「なっ、なんですの! それは――」
「怖い人達もいたものにゃ」
「ミカちゃん、これ多分……僕達の事ですよ?」
フローゼ姫は難しい面持ちのまま羊皮紙を離しません。持つ手が微妙に震えている事をみると余程、腸が煮えくり返る思いなのでしょう。
国をあげて獣人差別が酷いのは砂漠の国、アルフヘイムで聞いていました。
でも何の害も無い旅人ならば問題は起こりえないと考えていた、皆の判断が甘かった事を認識させられる事態がおき、こうして証拠まで入手したのですから当然ですね。
ミカちゃんは女神様のような善人です。犯罪者扱いされている事にピンと来なかったようです。
「これは不味い事になったかも知れぬ。普通伝令は敵に察知され見つけられる事を踏まえ数人に同じ内容の文を持たせ走らせる」
「といいますと?」
「ワイバーンの伝令はこの1人では無いのかにゃ?」
本当に厄介な事になりましたね。せっかく侯爵城に攻め込まず穏便に済ませたつもりが仇となりました。
「うむ。恐らく最低でも2名ないし3名が王城に文を運んだと見るべきだ」
「それでは――」
「あぁ、妾達が向かう先には、王国軍が立ちはだかるだろう」
騎士や兵隊が何人集まろうが僕には問題はありません。でも、1国の王女であるフローゼ姫やエリッサちゃんが国との戦闘に参戦するのは問題があるようです。
皆がこの先どうするか話し合いをすると言うので、僕はワイバーンから魔石を取り出し爪で食べ易いように細かく砕き、おやつを食べるようにポリポリ食べます。
そんな僕の光景が、深刻な話をしている皆には可笑しかった様で――。
「にゃ、子猫ちゃん。そんなにワイバーンの魔石は美味しいのかにゃ?」
いや、いや、魔石に味なんて無いのは皆も良く知っているでしょうに。
場を和ませる為か、ミカちゃんが冗談を飛ばします。
僕が最後の欠片を食べ終わると――体が光って何か魔法を覚えました。
「また子猫ちゃんが強くなったのか!」
「何か覚えたにゃ!」
「今度はどんな魔法ですの?」
「アーン。アーン」
皆、興味は王国軍より僕の新魔法に引き寄せられた様です。
子狐さんは僕も、僕もと魔石を催促していますが……。
僕は空を飛べる魔法を期待しました。
蛇だって空を飛べるんですから!
子猫が飛べても可笑しくはないですよね?
でも僕の脳内に届いた情報は飛行魔法のそれではありません。
あれ?
これ使っていい魔法なんでしょうか?
コメント