子猫ちゃんの異世界珍道中
第99話、ガンバラ王国へ入国
盗賊を倒した僕達は前方に立ちふさがった、落石を眺めます。
「こんな大きな岩、私の魔法ではどけられないにゃ」
「妾の貫通を上掛けすれば細かくは出来るが……」
「私の魔法でもそれらしいのは……」
「僕も無理ですよ。ある事はあるけど、危険すぎて……」
皆一様に「あぁ、あれか」と言って頷いてくれます。
消滅魔法はどこまで届くのか、制御が難しいんで大空に撃つのならまだしも、この先に何があるのか分らない状態では撃てません。万一、火山なんてあったら……噴火しちゃいますね!
マグマ溜まりを直撃とかで大穴を開けた結果、都市を1つ丸ごと消滅とか、そんな魔王の如き所業になったら大変です。
結局はフローゼ姫に貫通の魔法を掛けてもらい、初歩の魔法で細々と岩を砕いていき馬車が漸く通れるスペースを確保出来たのは夕方も日が沈んでからでした。
まったくあの盗賊達、碌な事しませんね!
僕達は結局その先には進まずに、野営をする事になりました。
晩御飯はエルフの大樹で貰った、パンと魚の干したものと幾許かの野菜です。
さっぱり目の食事を終え、早々に就寝しました。女性陣3人の平均年齢は13歳なんですから遅くまで起きているのはねっ。
そうして翌日、日が昇ると同時に僕達は出発します。
午前中一杯は渓谷の間を進みますが、午後に入ると正面に大きな橋が見えてきました。昨日消滅魔法を撃たなくて良かったですね。もし放っていたら、この橋は消え失せて僕達は来た道を戻る事になっていましたよ。
橋は木々を贅沢に使ったつり橋で、魔物の革を伸ばした様なロープでしっかりと固定されているようです。馬車に乗ったまま橋の中央まで来ても揺れません。下を覗き込むと――200m下には沢が流れていました。
「これは見事な橋だな。まったく揺れないぞ」
「は、はやく渡ってしまいましょう。落ちたら大変ですわ」
「沢があんなに遠くに見えるにゃ」
人の技術とは凄い物ですね。お婆さんのいた世界はもっと凄かったですが。
橋を渡るとそこには岩をくり抜いて築いた砦があり、砦から2人の兵士と思しき人が出来てきます。
「おい、この先はガンバラ王国だ。お前達は何処からきたのだ?」
高圧的な態度で誰何だれますが、今の御者はフローゼ姫ですから心配は無さそうですね。ミカちゃんは外套を被った状態で横になっています。
「妾達はこの先にある砂漠の国からエルストラン皇国へ向かう為にやって来た。何も無いのであれば通って良いか?」
エリッサちゃんも外套を外し、姿を見せています。
兵の1人が馬車を覗き込み、横になっているミカちゃんを視界に捉えますが、人族だと思ったのでしょうか?
「一体そんな所へ何故赴いたんだか……」
そんな風に小言を漏らすとあっさり通されました。
岩肌を削り、穴を開けた砦の門が開き僕達を通してくれます。
砦の向こう側は平地になっていて、渓谷はさっきの砦までなのが分りました。
道の両端には刈り取られた麦畑が広がっていて、砂漠では味わえなかった季節感を感じます。
「ミカ殿、もう起きても大丈夫だぞ」
フローゼ姫が隠れるように横になっていたミカちゃんに、周囲を見渡してから人気が無い事を確認し教えます。
「ふわぁ~横になると馬車の振動がきついにゃ」
ここはお婆さんの世界の様に、舗装された綺麗な道ではありません。
ガタゴトと揺られる馬車で横になっていたミカちゃんから愚痴が漏れます。
「この国は獣人への差別が酷いと聞くからな。出きるだけ姿を見せない方が余計な不都合も生じなくていいのではないか?」
確かに面倒事に積極的に首を突っ込みたくは無いですね。
ミカちゃんもそれは理解した上で、困ったような面持ちを浮かべました。
何かあってもミカちゃんは、僕が守りますから大丈夫ですけどね!
砦を過ぎて日が西に大きく傾いた頃に、最初の街の街壁が見えてきます。
「うちの街よりは小さいですが、砂漠の国よりは大きいですわね」
サースドレインの街は大きな特産は無い割に、善政をしいている為に人が多く集まっていますからね。
砂漠の国は元々が同じ一族ですから比べるのは――ね。
渓谷の砦でフローゼ姫が聞いた話では、この街はスベルダンの街というらしく、途中でも道の両側に見えた麦がこの街の主な特産の様です。
石の壁で覆われた門まで来ると、ここでも砦と同じ様に誰何されましたが、ここでは入門料を1人銀貨1枚支払うだけであっさりと通されます。
いつもならミカちゃんが、冒険者として依頼を受ける事で入場料は無料になるのですが、ここは獣人差別の激しい国です。出きるだけ無理はしたくないので砂漠の国の銀貨で入る事にします。
幸いこの国の銀貨でなくとも問題は無かったので、すんなり街に入る事が出来ました。
僕達は守衛さんに教えて貰った宿屋に到着します。
この街では冒険者ギルドに立ち寄る予定はありません。
エルフ領と砂漠で時間を掛け過ぎた為に、一刻も早くアンドレア国に戻りたいからです。
「妾達が失踪して既に2週間。サースドレイン子爵領と国の対応が心配だな」
「そうですわね。お父様に心配をかけてしまいました」
お婆さんの世界では、遠く離れている人とお話をする事が出来ましたが、ここではそんな事は出来ないようです。郵便屋さんも居ないのでしょうか?
「この世界にはお手紙を運んでくれる人はいないんですか?」
僕が手紙を出しては、と提案しますが――。
「妾達の無事を知らせる手紙なら出せないぞ。他国に妾達の素性が知られたら拘束され人質の様に扱われる可能性が高いからな」
アンドレア国が持つ豊富な鉱山を巡り、周辺国に利用される可能性の高さを説明されました。
僕がミカちゃんと知り合うまでは、お金が必要だという感覚はありませんでした。サースドレインの街で入場料が必要と知った時に初めてお金が必要なのだと知ったのですから。お金が無いと何も出来ないなんて面倒ですね。
でもお婆さんが僕を拾ってくれたから、食べる物にも困らずに済んだだけで、そんな人が居なかった野良の猫は食べる物を探すのに必死だったんですね。
人と関わりを持った今だからこそお婆さんが拾ってくれた事の幸運と、感謝の気持が胸の中を駆け巡りました。
「こんな大きな岩、私の魔法ではどけられないにゃ」
「妾の貫通を上掛けすれば細かくは出来るが……」
「私の魔法でもそれらしいのは……」
「僕も無理ですよ。ある事はあるけど、危険すぎて……」
皆一様に「あぁ、あれか」と言って頷いてくれます。
消滅魔法はどこまで届くのか、制御が難しいんで大空に撃つのならまだしも、この先に何があるのか分らない状態では撃てません。万一、火山なんてあったら……噴火しちゃいますね!
マグマ溜まりを直撃とかで大穴を開けた結果、都市を1つ丸ごと消滅とか、そんな魔王の如き所業になったら大変です。
結局はフローゼ姫に貫通の魔法を掛けてもらい、初歩の魔法で細々と岩を砕いていき馬車が漸く通れるスペースを確保出来たのは夕方も日が沈んでからでした。
まったくあの盗賊達、碌な事しませんね!
僕達は結局その先には進まずに、野営をする事になりました。
晩御飯はエルフの大樹で貰った、パンと魚の干したものと幾許かの野菜です。
さっぱり目の食事を終え、早々に就寝しました。女性陣3人の平均年齢は13歳なんですから遅くまで起きているのはねっ。
そうして翌日、日が昇ると同時に僕達は出発します。
午前中一杯は渓谷の間を進みますが、午後に入ると正面に大きな橋が見えてきました。昨日消滅魔法を撃たなくて良かったですね。もし放っていたら、この橋は消え失せて僕達は来た道を戻る事になっていましたよ。
橋は木々を贅沢に使ったつり橋で、魔物の革を伸ばした様なロープでしっかりと固定されているようです。馬車に乗ったまま橋の中央まで来ても揺れません。下を覗き込むと――200m下には沢が流れていました。
「これは見事な橋だな。まったく揺れないぞ」
「は、はやく渡ってしまいましょう。落ちたら大変ですわ」
「沢があんなに遠くに見えるにゃ」
人の技術とは凄い物ですね。お婆さんのいた世界はもっと凄かったですが。
橋を渡るとそこには岩をくり抜いて築いた砦があり、砦から2人の兵士と思しき人が出来てきます。
「おい、この先はガンバラ王国だ。お前達は何処からきたのだ?」
高圧的な態度で誰何だれますが、今の御者はフローゼ姫ですから心配は無さそうですね。ミカちゃんは外套を被った状態で横になっています。
「妾達はこの先にある砂漠の国からエルストラン皇国へ向かう為にやって来た。何も無いのであれば通って良いか?」
エリッサちゃんも外套を外し、姿を見せています。
兵の1人が馬車を覗き込み、横になっているミカちゃんを視界に捉えますが、人族だと思ったのでしょうか?
「一体そんな所へ何故赴いたんだか……」
そんな風に小言を漏らすとあっさり通されました。
岩肌を削り、穴を開けた砦の門が開き僕達を通してくれます。
砦の向こう側は平地になっていて、渓谷はさっきの砦までなのが分りました。
道の両端には刈り取られた麦畑が広がっていて、砂漠では味わえなかった季節感を感じます。
「ミカ殿、もう起きても大丈夫だぞ」
フローゼ姫が隠れるように横になっていたミカちゃんに、周囲を見渡してから人気が無い事を確認し教えます。
「ふわぁ~横になると馬車の振動がきついにゃ」
ここはお婆さんの世界の様に、舗装された綺麗な道ではありません。
ガタゴトと揺られる馬車で横になっていたミカちゃんから愚痴が漏れます。
「この国は獣人への差別が酷いと聞くからな。出きるだけ姿を見せない方が余計な不都合も生じなくていいのではないか?」
確かに面倒事に積極的に首を突っ込みたくは無いですね。
ミカちゃんもそれは理解した上で、困ったような面持ちを浮かべました。
何かあってもミカちゃんは、僕が守りますから大丈夫ですけどね!
砦を過ぎて日が西に大きく傾いた頃に、最初の街の街壁が見えてきます。
「うちの街よりは小さいですが、砂漠の国よりは大きいですわね」
サースドレインの街は大きな特産は無い割に、善政をしいている為に人が多く集まっていますからね。
砂漠の国は元々が同じ一族ですから比べるのは――ね。
渓谷の砦でフローゼ姫が聞いた話では、この街はスベルダンの街というらしく、途中でも道の両側に見えた麦がこの街の主な特産の様です。
石の壁で覆われた門まで来ると、ここでも砦と同じ様に誰何されましたが、ここでは入門料を1人銀貨1枚支払うだけであっさりと通されます。
いつもならミカちゃんが、冒険者として依頼を受ける事で入場料は無料になるのですが、ここは獣人差別の激しい国です。出きるだけ無理はしたくないので砂漠の国の銀貨で入る事にします。
幸いこの国の銀貨でなくとも問題は無かったので、すんなり街に入る事が出来ました。
僕達は守衛さんに教えて貰った宿屋に到着します。
この街では冒険者ギルドに立ち寄る予定はありません。
エルフ領と砂漠で時間を掛け過ぎた為に、一刻も早くアンドレア国に戻りたいからです。
「妾達が失踪して既に2週間。サースドレイン子爵領と国の対応が心配だな」
「そうですわね。お父様に心配をかけてしまいました」
お婆さんの世界では、遠く離れている人とお話をする事が出来ましたが、ここではそんな事は出来ないようです。郵便屋さんも居ないのでしょうか?
「この世界にはお手紙を運んでくれる人はいないんですか?」
僕が手紙を出しては、と提案しますが――。
「妾達の無事を知らせる手紙なら出せないぞ。他国に妾達の素性が知られたら拘束され人質の様に扱われる可能性が高いからな」
アンドレア国が持つ豊富な鉱山を巡り、周辺国に利用される可能性の高さを説明されました。
僕がミカちゃんと知り合うまでは、お金が必要だという感覚はありませんでした。サースドレインの街で入場料が必要と知った時に初めてお金が必要なのだと知ったのですから。お金が無いと何も出来ないなんて面倒ですね。
でもお婆さんが僕を拾ってくれたから、食べる物にも困らずに済んだだけで、そんな人が居なかった野良の猫は食べる物を探すのに必死だったんですね。
人と関わりを持った今だからこそお婆さんが拾ってくれた事の幸運と、感謝の気持が胸の中を駆け巡りました。
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