子猫ちゃんの異世界珍道中
第83話、団子虫?
僕達が眠った時とはうって変わり、宿から外を眺めると油を使った明かりが煌々と夜の街を照らし出しています。
「一体何事だ!」
フローゼ姫も深夜に響き渡った轟音に、不機嫌な様子を隠せていません。
ミカちゃんと僕が窓から外を眺めて、外の様子を皆に伝えます。
「分らないにゃ。ただ街の人達が壊れた門に集まっているにゃ」
宿の2階から見える景色では、深夜なのに街の人達が大勢門に詰め掛けている事しかわかりません。
すると、ごわーん、と2度目の轟音が轟きます。
さっきは寝ていたので分りませんでしたが、音と共に地面までもが若干揺れています。
「外から何かがぶつかっているようにゃ!」
すると兵隊と思しき人達が、「近隣の住民に避難を呼びかけてくれ!」そんな指示を出している大声が聞こえてきます。
窓から外の様子を窺っていると――。
急にドアがノックされました。
ドアを開けると、
「ビックウッドローズが襲ってきた、悪いんだけれどここも避難指示区域に指定されちまった。あたしと一緒に避難場所まで移動してくれるかい?」
門の外に植え込まれた大木に、体当たりをしているようです。
僕達はまだビックウッドローズを退治するとは決めていません。
女将さんの誘導で、宿の外に出ると細い路地を抜け、街の中にある建物でも一際目立つ尖塔がある建物へと向かいます。
街中、何処もかしこも松明が焚かれ、真夜中なのにフローゼ姫とエリッサちゃんでも道が良く見えています。
教会の前には既に避難してきていた街の人も大勢詰め掛けていました。
「ここなら門から大分離れているから安心だよ」
女将さんがそう言って宥めてくれますが、住民の人々は不安そうです。
どこか門を見渡せる場所があればいいのですが……。
僕がそう思っていると、
「ここの尖塔には登れないのかにゃ?」
ミカちゃんがシスターさんに聞いています。
僕の考えが何も言わずとも伝わるのは、いいものですね。
「今は緊急時なので昇れませんよ」
シスターさんに断わられ、どこか門の方を見渡せる場所が無いか探ります。
教会の屋根なら見渡せそうです。
「みゃぁ~!」
僕はミカちゃんに教えます。
「フローゼ姫とエリッサちゃんはここで待っていて欲しいにゃ!」
急にミカちゃんに告げられた二人は、何を、と言っていますが暢気に説明している余裕はありません。
ミカちゃんは僕を腕の中に抱き締め、その体勢のまま屋根に向かって飛び上がります。
伯爵の街壁に登るよりも楽に屋根に飛び移ると、教会の入り口付近で見ていた人達からどよめきが上がります。
ちょっとそこ! 指を刺しちゃ駄目でしょ!
そんな視線に辟易しながらも、僕達は屋根の上から門の方を見つめます。
未だに衝突の轟音は響きますが、振動はありません。
すると街で一番高く、大きな建物から騎士を連れ一際立派な鎧を着た人物がラクダに乗って門の方へ駆けて行きます。
あの人がこの街で一番偉い人なんでしょうか?
僕達がその様子を窺っていると、何やら腕を門の方へ向け兵に指示を飛ばしているようです。
偉い人に遅れて、大木で出来た槍の様な物を積んだ馬車が、建物の門から出てきます。
大木は先が尖っていて、これで刺されたらここに来るまでに遭った、ビックワームでも一溜まりも無いでしょう。
何度目かの衝突音の後、ばきばきと大木が折れる音が轟き、門の前を塞いでいた大木が砕け飛びました。
僕達が耳を済ませていると、来たぞぉ! と注意を促す怒号が聞こえてきます。
大木を使った槍はまだ門に到着していません。
偉い人が騎士達と門を塞ぐように整列し抜剣します。
すると――。
壊れた門の隙間から直径2mはありそうな、巨大な団子虫が頭をさらけ出してきました。
間違いありません。
あれはお婆さん家の庭にも生息していた団子虫です。
僕が手で弄ぶと、丸まって防御に撤していたそれです。
でも大きさはそれとは比較になりません。
「凄い大きいにゃ!」
ミカちゃんは始めて見る巨大な団子虫に、薄い青の瞳を点にしています。
教会の屋根の上でその様子をジッと見つめていると、偉い人の号令で騎士達が剣を前に突き出し威嚇を始めました。
剣の先が団子虫に当りますが、外殻が余程硬いのでしょう。
剣の先が曲がるのがはっきりと分ります。
剣を失った騎士から出来た穴に、団子虫は突っ込んできます。
「あっ、まずいにゃ!」
騎士は逃げる間もなく――大口を開けた団子虫に食べられてしまいます。
騎士達が築いた壁は呆気なく破られ、団子虫の正面の騎士は口の中へ……。
中央突破された事で、両脇に出来た隙を狙い両翼の騎士が団子虫のわき腹に剣を突き刺します。
ですが、最初の騎士と同様外殻に当ると剣の方が折れてしまいます。
そこからの団子虫の動きは素早いです。
門を潜り抜けた事で、身動きが自由に取れるようになると体を左右に振り、両脇に居た騎士達を踏み潰していきます。
そこに大木で出来た槍が到着し、団子虫の頭目掛けて勢い良くぶつかります。
ドン! と言う轟音がここまで聞こえてきます。
僕もミカちゃんも団子虫の戦闘を、息を潜め見つめています。
団子虫は大木が衝突した瞬間だけ嫌そうにムオー、と声を漏らしましたが、それだけです。
殻を破る事すら出来ず、大木の槍に団子虫が乗り上げると呆気なく折れてしまいました。
槍を持った兵が一斉に突き刺しますが、剣と同様に擦過音はしますが団子虫は無傷です。
あらぶる儘に周囲にいる騎士、兵を丸呑みにして、門周辺の建物を破壊していきます。
「あっ……」
ミカちゃんが小さく声を漏らすと――。
偉そうな指揮を取っていた人の正面に団子虫が……。
背中を向け逃げ出そうとしますが、団子虫の方が俊敏です。
他の騎士と同様に丸呑みにされてしまいました。
凄いですね、全長20mはありそうです。
もはや団子虫では無く、大蛇と言っても過言ではありませんよ。
大勢の人を喰い満足したのか、団子虫は壊した門からゆっくりと出て行きました。
「一体何事だ!」
フローゼ姫も深夜に響き渡った轟音に、不機嫌な様子を隠せていません。
ミカちゃんと僕が窓から外を眺めて、外の様子を皆に伝えます。
「分らないにゃ。ただ街の人達が壊れた門に集まっているにゃ」
宿の2階から見える景色では、深夜なのに街の人達が大勢門に詰め掛けている事しかわかりません。
すると、ごわーん、と2度目の轟音が轟きます。
さっきは寝ていたので分りませんでしたが、音と共に地面までもが若干揺れています。
「外から何かがぶつかっているようにゃ!」
すると兵隊と思しき人達が、「近隣の住民に避難を呼びかけてくれ!」そんな指示を出している大声が聞こえてきます。
窓から外の様子を窺っていると――。
急にドアがノックされました。
ドアを開けると、
「ビックウッドローズが襲ってきた、悪いんだけれどここも避難指示区域に指定されちまった。あたしと一緒に避難場所まで移動してくれるかい?」
門の外に植え込まれた大木に、体当たりをしているようです。
僕達はまだビックウッドローズを退治するとは決めていません。
女将さんの誘導で、宿の外に出ると細い路地を抜け、街の中にある建物でも一際目立つ尖塔がある建物へと向かいます。
街中、何処もかしこも松明が焚かれ、真夜中なのにフローゼ姫とエリッサちゃんでも道が良く見えています。
教会の前には既に避難してきていた街の人も大勢詰め掛けていました。
「ここなら門から大分離れているから安心だよ」
女将さんがそう言って宥めてくれますが、住民の人々は不安そうです。
どこか門を見渡せる場所があればいいのですが……。
僕がそう思っていると、
「ここの尖塔には登れないのかにゃ?」
ミカちゃんがシスターさんに聞いています。
僕の考えが何も言わずとも伝わるのは、いいものですね。
「今は緊急時なので昇れませんよ」
シスターさんに断わられ、どこか門の方を見渡せる場所が無いか探ります。
教会の屋根なら見渡せそうです。
「みゃぁ~!」
僕はミカちゃんに教えます。
「フローゼ姫とエリッサちゃんはここで待っていて欲しいにゃ!」
急にミカちゃんに告げられた二人は、何を、と言っていますが暢気に説明している余裕はありません。
ミカちゃんは僕を腕の中に抱き締め、その体勢のまま屋根に向かって飛び上がります。
伯爵の街壁に登るよりも楽に屋根に飛び移ると、教会の入り口付近で見ていた人達からどよめきが上がります。
ちょっとそこ! 指を刺しちゃ駄目でしょ!
そんな視線に辟易しながらも、僕達は屋根の上から門の方を見つめます。
未だに衝突の轟音は響きますが、振動はありません。
すると街で一番高く、大きな建物から騎士を連れ一際立派な鎧を着た人物がラクダに乗って門の方へ駆けて行きます。
あの人がこの街で一番偉い人なんでしょうか?
僕達がその様子を窺っていると、何やら腕を門の方へ向け兵に指示を飛ばしているようです。
偉い人に遅れて、大木で出来た槍の様な物を積んだ馬車が、建物の門から出てきます。
大木は先が尖っていて、これで刺されたらここに来るまでに遭った、ビックワームでも一溜まりも無いでしょう。
何度目かの衝突音の後、ばきばきと大木が折れる音が轟き、門の前を塞いでいた大木が砕け飛びました。
僕達が耳を済ませていると、来たぞぉ! と注意を促す怒号が聞こえてきます。
大木を使った槍はまだ門に到着していません。
偉い人が騎士達と門を塞ぐように整列し抜剣します。
すると――。
壊れた門の隙間から直径2mはありそうな、巨大な団子虫が頭をさらけ出してきました。
間違いありません。
あれはお婆さん家の庭にも生息していた団子虫です。
僕が手で弄ぶと、丸まって防御に撤していたそれです。
でも大きさはそれとは比較になりません。
「凄い大きいにゃ!」
ミカちゃんは始めて見る巨大な団子虫に、薄い青の瞳を点にしています。
教会の屋根の上でその様子をジッと見つめていると、偉い人の号令で騎士達が剣を前に突き出し威嚇を始めました。
剣の先が団子虫に当りますが、外殻が余程硬いのでしょう。
剣の先が曲がるのがはっきりと分ります。
剣を失った騎士から出来た穴に、団子虫は突っ込んできます。
「あっ、まずいにゃ!」
騎士は逃げる間もなく――大口を開けた団子虫に食べられてしまいます。
騎士達が築いた壁は呆気なく破られ、団子虫の正面の騎士は口の中へ……。
中央突破された事で、両脇に出来た隙を狙い両翼の騎士が団子虫のわき腹に剣を突き刺します。
ですが、最初の騎士と同様外殻に当ると剣の方が折れてしまいます。
そこからの団子虫の動きは素早いです。
門を潜り抜けた事で、身動きが自由に取れるようになると体を左右に振り、両脇に居た騎士達を踏み潰していきます。
そこに大木で出来た槍が到着し、団子虫の頭目掛けて勢い良くぶつかります。
ドン! と言う轟音がここまで聞こえてきます。
僕もミカちゃんも団子虫の戦闘を、息を潜め見つめています。
団子虫は大木が衝突した瞬間だけ嫌そうにムオー、と声を漏らしましたが、それだけです。
殻を破る事すら出来ず、大木の槍に団子虫が乗り上げると呆気なく折れてしまいました。
槍を持った兵が一斉に突き刺しますが、剣と同様に擦過音はしますが団子虫は無傷です。
あらぶる儘に周囲にいる騎士、兵を丸呑みにして、門周辺の建物を破壊していきます。
「あっ……」
ミカちゃんが小さく声を漏らすと――。
偉そうな指揮を取っていた人の正面に団子虫が……。
背中を向け逃げ出そうとしますが、団子虫の方が俊敏です。
他の騎士と同様に丸呑みにされてしまいました。
凄いですね、全長20mはありそうです。
もはや団子虫では無く、大蛇と言っても過言ではありませんよ。
大勢の人を喰い満足したのか、団子虫は壊した門からゆっくりと出て行きました。
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
93
-
-
35
-
-
314
-
-
70810
-
-
969
-
-
107
-
-
221
-
-
0
-
-
157
コメント