子猫ちゃんの異世界珍道中

石の森は近所です

第30話、絶体絶命!

僕も、ミカちゃんも、驚きました。


こんな離れた街で、ミカちゃんを知っている人が現れたからです。


「に、にゃんの事なのかにゃ?私は旅の冒険者だにゃ」


「そいつはおかしいな、さっき冒険者の男に声をかけられていたのを見ていたが、新人の冒険者だって、言われていたじゃねぇ~か!」


「新人が、旅をしたらダメなのかにゃ?」


「いや、そうじゃねぇ。俺達は、オードレイク伯爵様の家の者だ。アルセスの村は伯爵様の持ち物だ。そこの住人に、勝手に居なくなられたら困るんだよ」


「そんな村は知らないにゃ」


あれ?


ミカちゃん、そこの村の村長さんの養子でしたよね?


何で、誤魔化しているんでしょう……。


もしかして、この人達は、悪い人でしょうか?


ミカちゃんに酷い事をする人は、僕が許しませんよ!


「みゃぁ~みゃぁ~!」


「子猫ちゃん、街中で戦ったらダメにゃ!」


「おお、そうだ。何でも伯爵様の領内で盗賊が現れて、それを退治したのが猫だって話だが、何か知らねぇか?」


「猫が、盗賊を退治するなんて、聞いた事もないにゃ」


「取り敢えず、こんな場所じゃ人目に付く。俺達に素直に付いて来てくれないかな?」


「お断りするにゃ!知らない人には、付いていったらダメにゃ!」


「みゃぁ~!」


そうですよ!それお婆さんも言っていました。


「あんまり、手荒な事はしたくは無いんだけどなぁ」


前の男は、そう言うなり、ミカちゃんの腕を掴もうと一歩踏み込んできました。


ミカちゃんは、それを見切り、横に飛びます。


僕も続いて、ミカちゃんの前に飛びました。


「ほぉ、こりゃ~驚いた。元冒険者でCランクだった、俺の踏み込みをかわすかよ!伯爵様の執事から話を聞いた時は、どんな冗談だ、と思ったが――満更、嘘でも無かったようだな」


「子猫ちゃん、逃げるにゃ!」


「みゃぁ~!」


ミカちゃんは、人が3人並んで通れる程度の路地を挟みこんでいる、壁の上に飛び移りました。僕もそれに続きます。


「逃げたって無駄だ!」


男は腰に挿していた短剣を、ミカちゃんに向かって投げつけます。


こんな攻撃、狼さんに比べたら遅いんですよ!


僕は、ミカちゃん目掛けて投げつけられた短剣を、ジャンプして空中で叩き落しました。


「こりゃ~益々すげぇ。猫の話も聞いていたが……これも本当かよ!伯爵様の下へ連れて行ったら、たんまり報酬が頂けそうだぜ!」


やっぱり悪い人だったんですね!


「子猫ちゃん、こっちにゃ!」


ミカちゃんは、壁の上を大通り目指して走り出しました。


僕も、それに続きます。


男達は、二手に分かれて追って来ます。


「まて、このやろう!」


まてと言われて待つのは、犬さんだけなのですよ!


大通りまで、もう少しと言う所で、大通りから1人の男がこちらに向かって何か丸い物を投げつけてきました。


「おせぇ~じゃねぇか!何やってた」


「わりぃ、猫の捕獲と言えばこれだろ。探すのに苦労したぜ!」


投げつけられた玉を、ミカちゃんが手で払いました。


すると――中から何かの粉が舞い散ります。


「にゃ!」


その粉を、目の前で被ったミカちゃんは、様子がおかしくなります。


目が虚ろになり、壁の上で、尻餅を付いて背中を擦りつけ出しました。


いったいどうしたんでしょう?


僕は何とも無いのに……。


「よし、今の内に娘の方を捕獲しろ!」


これはマズイです。


どうしたらいいのでしょうか?

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