子猫ちゃんの異世界珍道中

石の森は近所です

第29話、ミカちゃんとデート!

僕と、ミカちゃんは、宿屋のおばさんに、ごめんなさいをした後で、街を歩いて色々なお店を回っていました。


「こんな服が欲しかったにゃ!」


そう言って、濃い色のピンクのワンピースを胸の前に当てて見せてくれます。


うん。ミカちゃんの白い肌に良く映えて綺麗です。


「子猫ちゃんも、何か服を買うにゃ!」


僕は、生まれて一度も、服という物を着たことはありません。


僕が着ても、いい物なのでしょうか?


「これになら私とお揃いにゃ!」


そう言って、僕に見せてきたのは、ピンクに白い刺繍の入ったスカーフでした。


「この色なら、子猫ちゃんのグレーの毛にもあうにゃ!これにするにゃ!2人でおそろいにゃ~!」


凄く高いテンションです。


ミカちゃんも、久しぶりのお買い物で嬉しいみたいです。


結局、ミカちゃんは、ピンクのワンピースにグレーの帽子を、僕はピンクの生地に白い糸で花の刺繍が入っているスカーフを買ってもらいました。


買って直ぐに二人で着替えて、同じ格好で街を歩きます。


すれ違う、通行人の人達が振り返ります。


そうでしょう!


ミカちゃんが、こんなに可愛いのですから。


「買って良かったにゃ!みんな、子猫ちゃんを見ているにゃ!」


ミカちゃん、こんな小さい僕なんかを、皆が振り返って見る訳が無いじゃないですか。
本当に、自分の可愛さを分っていないのですね!


そこが、ミカちゃんの魅力でもありますが……。


前の方から、冒険者ギルドで見た事のある人が、近寄って来ました。


いったい何の用なのでしょうか?


「よぉ!新人の子猫ちゃん。俺が面倒をみてやるから、一緒にパーティーを組まないか?」


「私は子猫ちゃんじゃないですにゃ!子猫ちゃんはこの子にゃ!」


ミカちゃん。それ僕の真似ですかにゃ?


あれ?


「いやいや、そうじゃなくてよ。そこのピンクの服が可愛い君だよ!」


「子猫ちゃん、呼ばれているにゃ?この人とお知り合いなのかにゃ?」


何処までもミカちゃんは、ミカちゃんでした。


「お前、わざとやっているのか?」


「なんの事ですかにゃ?」


ミカちゃん、こんなの相手にしても、仕方ないですよ。この人達は、お婆さんの近所に住んでいた、悪ガキと同じ臭いがします。


「みゃぁ~みゃぁ~!」


「うん。そうだにゃ。子猫ちゃん」


ミカちゃん、分ったみたいです。


私はこれで、失礼しますにゃ。パーティーは子猫ちゃんがいるから間に合っていますにゃ」


そう言って、男から離れて歩き出しました。


その場に残された男は、チッ、と汚い言葉を吐いて道に唾を吐き出しました。


お兄さん、そんな下品な事では、一生かかっても、ミカちゃんの相手は出来ませんよ。ミカちゃんは、これからもっと、綺麗になるんですから。


その後も、ミカちゃんとのデートは続きます。


靴屋さんを見てから、パン屋さんを覗いて見たりしました。


パン屋さんは、出来たての匂いが美味しそうで、1つ買って二人で分けて食べました。僕は、出来たてのパンは初めて食べましたが、モチモチふっくらしていて、とても美味しかったです。


パン屋を出て、大通りから少し人通りの少ない場所に入ると――。




また、前から今度は知らない人が近寄ってきました。


またですか!


いい加減にしないと僕も怒りますよ!


そう思っていると、前から1人、後ろからも1人。


あれ?


もしかしたら――。


囲まれちゃっています?


挟み込まれる形になり、目の前まで男が近づくと、ミカちゃんが、小声で――。


「子猫ちゃん。逃げるにゃ!」


そう言いました。


僕も同感です。こんなナンパ野郎なんて、相手にしても仕方がありませんから。


ミカちゃんと、僕が走り出そうとすると、前からやって来た男から、


声を掛けられました。


「お譲ちゃん、アルセス村の、村長の娘であっているかい」

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