子猫ちゃんの異世界珍道中

石の森は近所です

第26話、ギルドでの出来事

強かったおじさんを倒した後で、ミカちゃんはおじさんの体から今まで見た中で一番大きな骨を取り出します。


「これは子猫ちゃんが食べるにゃ~!」


「みゃぁ~みゃぁ~!」


いえ、これはミカちゃんが倒したんですから、ミカちゃんが食べるべきです。


僕は否定します。


「子猫ちゃん、ダメだにゃ。子猫ちゃんにはもっと強くなって欲しいにゃ!」


そう言われると困ってしまいます。


今までは、僕がミカちゃんを助けてきたのに――。


さっきのおじさんからは逆に、僕が助けられましたから。


少し悩みましたが、次に大きな骨が出たらミカちゃんに――あげればいいと思い。


僕が食べる事にしました。


「みゃぁ~!」


「うんうん。それでいいにゃ~!」


一口では、僕の小さな口には入らないので爪で細かくします。


それを全部食べ終わると――また僕の体が光りました。


「何か覚えたみたいにゃ!」


「みゃぁ~!」


これもミカちゃんのお陰です。


僕は、ミカちゃんにお礼を言いました。


「みゃぁ~!」


ミカちゃんも、笑顔に戻ってくれます。


さっき泣いたので、少し目が充血しています。


僕は、ミカちゃんの瞼を舐めました。


すると、舐めた所は青く光って充血も治ります。


「ありがとうにゃ!」


はい。こちらこそです。


僕達は、強くなった気でいましたが、それは間違いだったみたいです。


ミカちゃんは、おじさんの頭に付いている角を切り取りました。


「何か一気に疲れたにゃ~今日はもう街に戻るにゃ!」


「みゃぁ~!」


僕も賛成です。


やっぱり強いおじさんを相手にして、疲れていたみたいです。


森から街に戻る途中で、豚さんと緑の人を見かけたので倒しました。


それにしても、この森は豚さんとゴブリンが多いですね。


結局、街に帰り着くまでに、豚さん15匹、緑の人8匹を倒しました。


僕達は、門を潜り真っ直ぐに冒険者ギルドにやってきました。


扉を開けると――。


「ようこそ、冒険者ギルドへ――」


新人さんでしょうか?


いつものお姉さんよりも、若い女性がカウンターから声を掛けて来ました。


「依頼達成してきましたにゃ」


「あっ、ごめんなさい!冒険者だったんですね!」


むっ、お姉さん。失礼にも程がありますよ!


「いっぱいあるにゃ~!」


「えっと……何がでしょうか」


「討伐証明にゃ!」


このお姉さん、頭の回転は悪そうです。


見るに見兼ねて、奥からこの前のおじさんが出てきました。


「よぉ!今日も狩りに出かけたんだって?頑張るなぁ~」


「そうですにゃ!今日も一杯あるにゃ!」


「おっと、それじゃ~今、箱を用意するからちょっと待っていてくれ」


奥に箱を取りに行ったおじさんは、昨日の箱を両手で抱えて持ってきます。


「これに入れてくれ!今日は何を狩ったんだ?」


「オークと、ゴブリンと狼と鬼だにゃ!」


「何だって!鬼?それって……オーガの事か?」


「多分そうだにゃ!」


「この付近でオーガが出たなんて話は聞いた事が無いんだが……討伐証明はあるのか?確か角だった筈だが――」


「ありますにゃ!これですにゃ!」


おじさんは、強いおじさんの頭から切り取った角を手に取りじっくり観察し始めました。


ミカちゃんはその隙に、箱に討伐証明を出していきます。


「確かに……こりゃオーガの角だ。どうやって倒した?」


「子猫ちゃんと2人で力を合わせたにゃ!」


「はは……」


おじさん、何乾いた声で笑っているんです?


僕達が倒したのを、疑っているんじゃないでしょうね?


「あぁぁ――すまんな。オーガって言うのはAランク相当の魔物だ。しかも傷を付けても直ぐに回復してしまう。それだけ厄介な相手なんだが――。冒険者が10人集まっても倒せるか微妙な程に強い。良く生きて戻ってきてくれた」


そんな大事だとは思いませんでしたよ!


「確かにオーガの角だ。認めよう。それにしても……またこんなに倒したのか。計算が厄介だな」


「すみませんにゃ……」


ミカちゃん、謝る事無いですよ!


このおじさんの仕事なんですから!


「集計が出るまで、そこの椅子に座って待っていてくれ!」


「わかりましたにゃ~!」


僕達は待合用の椅子に座って、数え終わるのを待っています。


他の冒険者の人達が、口々に『あんな小さな子がオーガを退治したんだってよ!すげーな』とか――『大方、魔物同士で殺しあった死体から取ってきたんだぜ』など……中には失礼な人もいました。


弱い犬程、良く咆えるとおばあさんは言っていましたよ!


あなた達に、ぴったりだと思います。


「おう!待たせたな……数が多くて大変だったぜ!」


「にゃは……」


「それで集計結果だが――オークの討伐を24匹。ゴブリンが8匹。ナイトウルフが24匹。ボスウルフが1匹。オーガが1体なんだが――。まずオークの依頼で銀貨10枚。追加分で19匹なんで銀貨30枚と銅貨40枚。オークの魔石が12個で銀貨24枚。ゴブリンの討伐で銀貨2枚と銅貨40枚。それの魔石が8個で銀貨8枚。ナイトウルフの討伐が24匹で1匹につき銅貨60枚だから銀貨14枚と銅貨40枚。魔石が1個銀貨2枚で14個だから銀貨28枚。ボスウルフの討伐が銀貨10枚。最後にオーガの討伐が金貨5枚だ。全て合わせると――銀貨177枚に銅貨20枚だ。銀貨は金貨に換えると金貨17枚に銀貨7枚、銅貨20枚となる。すげーな。これだけ1日で稼いだ冒険者は俺の知る限りではいねぇ~ぞ!」


「………………………………」


ミカちゃんは絶句していて言葉が出せません。


「みゃぁ~!」


僕が当然です!僕とみかちゃんですよ!


そう言いましたが……おじさんには通じませんでした。


周囲の冒険者さん達が……『すげーな。オーガだけじゃなくて数もこなしてんのかよ』『オーガの戦いに巻き込まれたオークとナイトウルフの死体で漁夫の利を得たんだぜ!そうに決ってる』『あの子と結婚したら俺働かなくても良さそうだな……』そんな事を言っています。


ちょっと!最後の人――それは僕が許しませんよ!


しばらく固まっていたミカちゃんでしたが、立ち直りました。


「金貨は預けておけるんですかにゃ?」


「ああ、大金だからな。大丈夫だ。各国にある冒険者ギルドの各支店に行ってもギルドカードを提出すれば引き出せるぞ」


「なら金貨17枚はそれでお願いするにゃ!」


「そうしとけ。金目当てに近づく輩も世の中には多いからな。気をつけな!」


そう言っておじさんは。カウンターの周囲に集まってきていた冒険者達を見渡し睨みました。


僕とミカちゃんは、お金を貰ってギルドを後にします。


今日も、ご馳走が食べられますね!

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