マウンドで勝利を叫べ!〜勝ち続ける難しさ〜

カイリ

行ってきます…… 一章終了

 太陽の日差しで球唔は目を覚ました。そこには親がいて、泣きながら抱きついてきた。


 球唔はベットの上で親から後から話を聞いた。親の内容ではリトルフィッシュの試合は最終回で逆転されて負けたらしい。


 球唔ははその報告を聞いた瞬間、涙や鼻水がボロボロとこぼれた。


 そして今は診察室にいる。俺の隣にお父さんが座り、俺と父の正面に医者が座る。


「左目の回復は……諦めた方が」
「そう……ですか」


 医者の口から球唔が一番聞きたくなかった言葉が聞こえた。親は泣きながら医者の言葉に返答していた。だが球唔は立ち上がり医者の胸ぐらを掴んで叫んだ。


「おい! 嘘だろ? 嘘だと言え! 頼む、俺の野球は…始まった……始まったばかりなんだ! 頼む、頼むから…お願いだ……頼むから…」


 球唔は医者の胸ぐらを掴みながら怒り、悲しみの交わる感情をおもいのまま訴えた。右目には涙が浮かび上がっていた。だが左目の瞳には光がなかった。


「無理だ。あたりが悪くて…ここにきた時にはもう……手遅れだった」
「嘘だ! はぁ、はぁ、っつ! ……」


 球唔は医者の胸ぐらを掴みながら訴えたが、急に頭が痛み出し。意識が途切れ、その場でうつ伏せに倒れる。


「才気! 先生!」
「安心してください。ショック状態で倒れただけです。今すぐ安静にできる状態にしましょう」











 暗い夜の中、球唔は目がさめる。机に置いてある水の入ったコップを手に取ろうとする。だが球唔の手はコップとることができなった、見えているのは片目だけだから距離感が掴めていないのだろう。


「はは、嫌でも現実に叩きつけられた気分だ」


「クソ……クッソ…チクショウ……」


 球唔は涙が出る右目を右手で抑え啜り泣く。その悔し涙は試合、失明、仲間、の事を思っている涙に見えた。


 球唔はそのまま泣き疲れ意識を手放した。









 「才気! 才気!」


 父親の声で球唔は目を覚ます。もう、日付が変わり朝になっていた。


「なに?」


 父親は俺が起きるのを確認すると、ベットの横にある椅子に座り。俺に向かって真剣な顔つきに変わった。


「お前はまだ……野球を諦めてないな?」
「何行ってんだよお父さん。俺はもう片目が見えないんだよ? 野球なんて。いた!」


 球唔は父親の言葉に返すと、頬に痛みが走った。父親に平手打ちを食らったのだ。


「俺との約束を忘れたか! 世界一の選手になるんじゃなかったのか!」


 球唔は父親からの平手打ちを喰らい、頭に血が上り言い返す。


「だったらどうすればいいんだよ! 俺だって大好きな野球を続けたいに決まってるじゃないか!」


 父親の言葉と、球唔の言葉がぶつかり合う。父親は球唔の最後の言葉を聞いてニコッと笑った、そして。


「アメリカに行くぞ。俺の知り合いでお前と同じで失明した投手の選手がいる、メジャーで最多勝利をした選手だ。二年間そこでそいつに野球を教わるんだ……行くだろ? 才気!」


 球唔の顔から怒りの色は消え、父親に向かってこう即答した。


「ああ、行ってやる!」
「よしなら空港行くぞ!」
「はぁ? いま?」
「ああ!」


 球唔は父親の言葉に返答した。だが次の一言で一瞬で唖然とした表情に変わった。









 球唔は父親に空港まで連れられて来た、そこには知った顔が二ついた。


「才気くーーーーん」
「美咲!」
「よう、才気!」
「だれ?」
「おい!」


 美咲と田中だった。球唔の見送りに来ていたようだった。


「いってらっしゃい!」
「頑張って来いよ!」


「少し待ってくれないかな、二人に話があるんだ」
「おう、まだ時間がある。行って来い」


 二人が球唔に向かってお別れの挨拶を言う、だが球唔はそれを止めた。そして個室のある方向に二人を誘導する。


 個室に入ると球唔だ先に座りの正面に美咲と田中だ座る。


「わがままを言っていいか?」
「なんだ?」
「なに?」


「俺が帰って来るのは二年後、その時には俺たちは中学生だ」
「ああ」
「うん」


「別々の中学に進んでくれないか?」
「は?」
「……え」サーーー


 球唔の言葉に田中は意味がわからないと言わんばかりに呟き。美咲はこの世の終わりのような顔になった。


「最後まで聞いてくれ。別にお前達と野球をしたくない訳はない。俺は田中と美咲と戦って見たいんだ。三人とも県外で野球の強い中学に入って……全国で戦ってみたいんだ。」


 球唔の言葉に田中と美咲が顔を見合って笑った。そして出た答えは。


「ああ、いいぜ!」
「うん! 面白そう! でも高校は同じね、一緒に甲子園目指したいし!」キラキラ
「ありがとう」


 球唔は二人が了承して貰いホッと胸を撫で下ろした。
 そして席から立ち上がり。


「これが最後に言葉だ。『俺が俺であるために、お前達はどんな時にも野球を好きでいてくれ。俺にとって野球は、お前達が仲間として、敵としていてくれないと……ダメなんだ』」
「っち! 俺もだよ!」
「才気くん……」ポロポロ


 球唔はステキな笑顔で自分の思いを仲間にぶつけた。田中は涙目になりながら答え。美咲は涙を流していた。


「じゃ…行ってきます」


「「いってらっしゃい!」」


 球唔は最高の仲間達と言葉を交わし、満足したように、アメリカに向かった。

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