小4ー2 エースの好投前半

「プレイボール！」

　暑い夏の日、審判の合図で試合が始まる。先行のリトルシャークの一番が打席に立つ、マウンドに立つのはエース球唔。

　マウンドに立つ才気の様子を見ていた捕手の美咲は安心したような顔で才気を見ていた。試合前まで緊張していた才気を見て不安だったが、マウンドに立っていた才気はまるで別人だったからだ。

「ふぅーー」

　マウンドに立ち、息を吐いた球唔はゆっくりと美咲のミットを見る。イン、ローのストレートのサインが出ていた。球唔は頷き。腕を上げ、腰を回転させる。スッテプをして思い切り投げる。

「ふ！」

　ミットの乾いた音がなる。相手は一球目を見て来たのか、振れなかったのかはわからないが。球唔が投げた球はサインどうりに投げられていた。

「ストライク！」

「ナイスピッチ！」

　球唔はストライクが入った合図と美咲の鼓舞する声が聞こえた。後ろの仲間たちの声も次第に聞こえてきた。

　球唔はプレートの位置まで戻り、美咲からボールを受け取り少し帽子を深く被り微笑んだ。表情はとても嬉しそうだった。

　球唔は顔を上げ再び美咲のサインを見る。2球目はもう一度イン、ローだった。頷き構える。

「ふ！」

　今度は相手も反応したのか振ってきた。だが空振り。ミットの乾いた音がなる。

「ストライク！」

　3球目はイン、ハイでボール一個分上にあげボールになる誘い玉を投げるサインだった。頷き構える。大きく振りかぶり、ステップを踏み投げる。

　相手は誘い玉を振って三振。

「ストライク！　ワンアウト！」

「しゃ！」

　審判の判定でバッターがアウトになった。球唔はマウンドで小さくガッツポーズをし、大きな声で吠える。その後も残りのバッターを6球で抑え。

「ストライク！　バッターアウト、チェンジ！」

「しゃぁ！」

　球唔のエース初の1回は無失点で抑えた。そのあとベンチに戻る途中に美咲から「ナイスピッチ！」　と言われ「うん、いいリードありがとう！」　と言い返したら顔を真っ赤にしていた。回は変わりリトルバードの攻撃になり一番バッターは球唔。

「お願いします」

　金属バットを持ち、ヘルメットを被った球唔は主審に挨拶をしながらバッターボックスに入る。バットの先を下に二、三回ぶらぶらとゆらした後にゆっくりっと円を描きながら構える。

　狙いは……外角高め。

　相手がサインを確認し頷いた。そして深呼吸をして一球目をを投げた。

　狙いどうり！

　球唔の狙い通り、外角高めの球だったため迷いなく初球から流した。金属の小高い音と共に鋭い打球の球は二三塁間を抜けた。球唔はそのまま一塁まで走り、余裕を持って一塁ベースを踏んだ。

　二番の一国君は外野フライでアウト。

　三番バッターは美咲。一、二球目はボール、三球目を見事に捉えセンターオーバーの打球だった。その間に俺は三塁まで進み美咲は二塁まで進んだ。ヒットで先制点を得られる。だが次は四番田中。

　どのチームの四番は特別である、リトルバードも同様。田中がバッターボックスに着き構える。前回の回で田中の事をモブといったがもう一つ特徴がある、それは。

「ホームラン！！」

　バッティングセンス、守備センスはこのチームで群を抜いている化け物だとゆう事。

「わざわざ二塁打なんて打たなくても、俺が返してやったのに」
「む、成果を残すためだよ！」
「まぁまぁ、二人とも初回で三点も入ったんだから、まずはそれを喜ぼうよ」

　二人が言い合いをし球唔がそれを止める。エース番号を背負う前はセンターで一番バッターだった球唔は、球唔が出る、美咲も出る、田中が返す、これがいつものパターンで言い合いになるのもパターンだったため、慣れたようにその場を抑える。

　その後はヒットが一回出たものの七番で打順が終わりチェンジ。監督の集合が掛かり、選手が監督の周りに集まり鼓舞される。

「この三点の差……守り切って勝つぞ！」
「「「おお！」」」

　監督の鼓舞が終わり、再び球唔がマウンドに上がる。相手は四番バッターから。

　このバッターを抑えれば少し楽に試合を運べる。頑張るぞ！

　最初のサインはアウトロー。ここは低く、低く行くようだ。頷き構える。大きく振りかぶり
ステップを踏み投げる。

　相手の読みが当たったのか球がバット真に当たった。ライトオーバーまで運ばれ、ノーアウト二塁のピンチになってしまった。

　落ち着け……今のは運が悪かった、切り替えろ。

　美咲は球唔の元に駆け寄ろうとするが、球唔と目が合い駆け寄るのをやめ座り込んだ。

　もう！　心配させないでよ！　あんな集中した目を見る限り大丈夫そうだけど。

　美咲は次のバッターを抑えるためサインを出す、外角ギリギリのボールを要求した。球唔は頷きセットアップを取り投げる。

「ふ！」

「ストライク！」」

　繊細にコントロールされたボールは美咲が要求した場所から一ミリもズレのない位置にきた。際どい球にバッターは振れずにいるが判定はストライク。

　そのままバッターを抑えアウトを取る。一つアウトを取ればペースは球唔の物になる。

「ふ！」
「ストライク、アウト！」

「ふ！」
「ストライク、アウト、チェンジ！」

「しゃらー！」

　そのまま残り二人をきっちり抑えた。

　試合は一回の三点以降点が入らず。

　試合は後半へ突入した。