求夢の平凡な世界
リベンジ地蔵 その③
「あの……うちに何か御用でしょうか?」
そう声をかけてきたのは女性だ。年齢的に、おそらくはヤンキーくんの母親なのだろう。
どこかソワソワとした様子。……いや、恐怖が見え隠れしている事に求夢は気づく。
ナニカによって家を破壊され、息子を攻撃された母親。
いきなり現れた男女2人組みの高校生に声をかけることすら、本当は怖かったのだろう。
「あの、どうするんですか? 先輩」
「ん? 大丈夫だよ。こういうときのための準備は済ませてから来た」
コソコソと声のボリュームを抑えて話す。
そんな様子に不信感を募らせたのだろう。ヤンキーくんの母親は「あの!」と声を大きくした。
「僕らは手紙を持ってきました。 連絡事項とか、そういうのです」
スッと求夢は封筒を取り出した。
「あぁ、そうだったのですね。よかった」と母親は封筒を受け取る。
その時―――-
「痛っ!」
受け取った手から鮮血のしずくが落ちる。
封筒を渡す時、隠していた剃刀(カミソリ)の刃を使い、彼女の指を傷つけたのだ。
「すいませんが、できたら家の中を見せて貰ってもいいですか? いいですよね? あと事件の当日の様子を聞きたいのですが」
「どうぞ、ここは警察から出入りを禁止されているので裏からお入りください」と母親は案内をしてくれる。
「先輩、また私にはわからない何をしましたね? 超能力的なやつを」
「前にも言ったけど教えるつもりはないよ」
成美に向かって笑みを浮かべ、家の中に入りろうと――――
求夢は足を止めた。
「? どうしたんですか? 先輩? 急に足を止めて……」
「今……視線の隅で何かが動いて……いや、気のせいだろう」
不安。 不気味な不安が湧き出た。
それを押し留めて、家の内部へ。
内部はまるで破壊の権化だ。
「当日は巧だけが家にいて……私たち夫婦は外出してました」
巧というのはヤンキーくんの名前なのだろう。
「なるほど」と求夢は適当に答えながら室内を観察する。
しかし、どう見ても重量のある石の塊が暴れた跡のようにしか見えない。
破壊に破壊が繰り返され、無事なものが何一つ見当たらない。
もう、ここで新しい発見はないだろう。
何か見落としがあったとしても後ろで成美がパシャパシャと写真撮影をしている。
もう、これ以上見るものがないと判断して求夢は帰ろうとした。だが――――
ギシッ ギシッ
軋む様な音。
何の音だろうか? そんなことを暢気に考えていると、ある事に気づく。
――――否。 気づいてしまった。
封筒……手紙を利用して、カミソリで切る。
「そんな、まさか……カウントされるのか!」
それに気づいた求夢は室内から飛び出した。
「ちょっと! 先輩!」と背後で成美の声がする。
「ついてくるな。お前は、どこか安全な場所、コンビにでも行っていろ!」
外に出ても減速することなく走り続ける求夢。
チラリと背後を確認する。
「いる! 本当に追いかけてくる」
背後には地蔵がドスドスと重い音を上げながら追いかけていた。
「くそ! もう少し吟味しておくべきだったか。手紙にカミソリ……典型的なイジメ、カミソリレターじゃないか!」
そう声をかけてきたのは女性だ。年齢的に、おそらくはヤンキーくんの母親なのだろう。
どこかソワソワとした様子。……いや、恐怖が見え隠れしている事に求夢は気づく。
ナニカによって家を破壊され、息子を攻撃された母親。
いきなり現れた男女2人組みの高校生に声をかけることすら、本当は怖かったのだろう。
「あの、どうするんですか? 先輩」
「ん? 大丈夫だよ。こういうときのための準備は済ませてから来た」
コソコソと声のボリュームを抑えて話す。
そんな様子に不信感を募らせたのだろう。ヤンキーくんの母親は「あの!」と声を大きくした。
「僕らは手紙を持ってきました。 連絡事項とか、そういうのです」
スッと求夢は封筒を取り出した。
「あぁ、そうだったのですね。よかった」と母親は封筒を受け取る。
その時―――-
「痛っ!」
受け取った手から鮮血のしずくが落ちる。
封筒を渡す時、隠していた剃刀(カミソリ)の刃を使い、彼女の指を傷つけたのだ。
「すいませんが、できたら家の中を見せて貰ってもいいですか? いいですよね? あと事件の当日の様子を聞きたいのですが」
「どうぞ、ここは警察から出入りを禁止されているので裏からお入りください」と母親は案内をしてくれる。
「先輩、また私にはわからない何をしましたね? 超能力的なやつを」
「前にも言ったけど教えるつもりはないよ」
成美に向かって笑みを浮かべ、家の中に入りろうと――――
求夢は足を止めた。
「? どうしたんですか? 先輩? 急に足を止めて……」
「今……視線の隅で何かが動いて……いや、気のせいだろう」
不安。 不気味な不安が湧き出た。
それを押し留めて、家の内部へ。
内部はまるで破壊の権化だ。
「当日は巧だけが家にいて……私たち夫婦は外出してました」
巧というのはヤンキーくんの名前なのだろう。
「なるほど」と求夢は適当に答えながら室内を観察する。
しかし、どう見ても重量のある石の塊が暴れた跡のようにしか見えない。
破壊に破壊が繰り返され、無事なものが何一つ見当たらない。
もう、ここで新しい発見はないだろう。
何か見落としがあったとしても後ろで成美がパシャパシャと写真撮影をしている。
もう、これ以上見るものがないと判断して求夢は帰ろうとした。だが――――
ギシッ ギシッ
軋む様な音。
何の音だろうか? そんなことを暢気に考えていると、ある事に気づく。
――――否。 気づいてしまった。
封筒……手紙を利用して、カミソリで切る。
「そんな、まさか……カウントされるのか!」
それに気づいた求夢は室内から飛び出した。
「ちょっと! 先輩!」と背後で成美の声がする。
「ついてくるな。お前は、どこか安全な場所、コンビにでも行っていろ!」
外に出ても減速することなく走り続ける求夢。
チラリと背後を確認する。
「いる! 本当に追いかけてくる」
背後には地蔵がドスドスと重い音を上げながら追いかけていた。
「くそ! もう少し吟味しておくべきだったか。手紙にカミソリ……典型的なイジメ、カミソリレターじゃないか!」
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