パラディン・フリード  この狂った世界は終わることなく回り続ける

ノベルバユーザー46822

父の謎

 僕の体は宙に舞い、背中から地面に着地した時、全身に鈍い痛みが走った。
「だっ!」
 口から空気が飛び出し、喉に何かが詰まったように呼吸ができず、息苦しくなった。
 さらに、悪魔のようなモンスターの茶色の瞳が、僕に恐怖を巻き付ける。
(怖い・・・!)
 そう思えばシンは?クラスのみんなは?無事なのか?
 無意識に生存確認を行ったが、その行為は自分をより苦しめた。
 学校は大破し、至る所に瓦礫が散乱し、そこには怪我をした生徒たちが倒れていた。
 血が至る所に飛び散り、苦痛で悲鳴を上げる人もいれば、失神して一言も喋らない人もいた。
 僕はその悲惨な光景にパニックになってしまい、目の焦点が合わず、荒い呼吸で心を落ち着かせていた。
 しかし、モンスターも生き物だ。待ってはくれない。
 モンスターは体の重心を後ろに落とし、銃弾の如き勢いで突進する。
「死んだかな・・・」
 そう吐き捨て、目を瞑った。
 そして、モンスターが、僕の体を突き飛ばーー
 ーーさなかった。
 代わりに、きりぃぃんという、大きな鈴を鳴らしたような音が聞こえた。
 僕は少し目を開き、目の前に立つ、モンスターを止める人の後ろ姿を見て、目を見開いた。
「お父さん!?」
「カゲトの父さんか・・・」
「シン!?大丈夫!?」
 シンは僕の後ろの瓦礫の山の上に、寝転がる形で寝そべっていた。
 怪我は左手をぶつけたらしく、だらんとしている。他にも体には傷があり、血でにじんでいる。
「あ~、何とか・・・」
 お父さんは僕らをちらりと見て、口を開いた。
「カゲト。お前は強い。守れ。大切な人を」
 お父さんはいつもとは、全く違う人みたいにかっこよかった。
 この時、僕はお父さんに[憧れ]を感じた。
「すまないな、カゲト。しばらくの間お前には会えないだろう。だが、強く生きろ。父さんは家族を守る。そして、いつかお前に会いに行く」
 お父さんの手には剣が握られていた。
 金属と機械のパーツのようなもので出来た、特殊な剣を。
「これをお前にやる。そのウェポンはお前を心身ともに守ってくれるだろう」
 それだけ言って、目の前に剣が現れ、眩い閃光と共に、お父さんはモンスターと一緒に消えた。
 僕は目の前に浮く、柄が漆黒で、赤いラインが生き物のように輝き、動いている黒い鞘に入っている剣を取った。
「分かったよ。お父さん」

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