異世界王政〜Four piece stories〜

桜井ギル

タイムリミット(2)

あそこには…


彼らがきっと私を待っていてくれている


フランチェスカは絶対怒ってるし…


やっぱり……帰りたい


だから……私は…………



そう思った瞬間私の体にノイズが走ったような気がした。そして、私の意識が『何かに』引っ張られる心地がした。








アリスティル「…………私は」


アルベール「……何をしてるのです?早くこちらに来なさい」


アリスティル「……」



───パチンっ



部屋中に大きな音が鳴り響いた。それはアリスティルがアルベールの差し出した手を振り払う音だった



アルベール「……一体、なんのつもりですか?」


アリスティル「……私は、帰る」


アルベール「は?」



アルベールは普段は出さないような素っ頓狂な声を出して驚いていた。
その隙をついて、アリスティルはアルベールから距離をとった。



アルベール「あっ」


アリスティル「さよーなら、おにぃ様。ふふ…」


アルベール「待ちなさい!」



そうこうしている間にアリスティルは逃げていった。



アルベール(一体何が…起きてるのでしょうか……アリスティルは私のことを『おにぃ様』なんて呼ばないはずだが……)



アルベール「……まさか、あれが…………」


アルベール「まずい、このままでは…!」









アリスティル(?)「ふーんふ、ふふふーん。ふーんふ、ふふふーん♪︎」


兵士1「こちらにいらっしゃるぞ!」


兵士2「追えーーー!」


アリスティル「くすっ」



アリスティルは笑みを浮かべた。逃げる逃亡者としてでは無く、この状況を楽しむかのように


アリスティルを追う兵士に、彼女はただ堂々と立ち塞がり、そして何かを呟いた。



アリスティル「…はい、出口はどこかしら?」


兵士1「…………あちらの角を曲がってすぐです。」


アリスティル「ありがとう」


兵士2「………………いえ」



アリスティルはお礼を述べ、追ってきた兵士の横を通り過ぎて行った。



兵士2「…………は!あの方はっ?!」


兵士1「…………………………あ、取り逃しました…………」









アリスティル「………………」



アリスティルは静かに歩みを進めていると曲がり角から思わぬ人物が姿を現した。



ヴァンパイア王「……随分、派手に暴れたようだな」


アリスティル「…あら、珍しい。いつも、王座に座っているだけだから来ないと思ってたのに」


ヴァンパイア王「お前がアルベールから逃げたと聞いたからな」


アリスティル「………………情報が伝わるのが思ったより早い……」


ヴァンパイア王「………………」


アリスティル「………………」



少しの沈黙の後、ヴァンパイア王は口を開いた。



ヴァンパイア王「……今のお前は、アリスティルか?ユリウスか?…………それとも」


アリスティル「…………」



彼女はただ何も言わず、不敵に微笑むだけだった

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