異世界王政〜Four piece stories〜

桜井ギル

レッドキャッスルへの道のり

俺はスピアによって用意された馬車にレイと一緒に乗りこんだ。馬車とは思えないほどの豪華な装飾が施されていて、俺達は息を呑む。


あまりにも場違いすぎる感じがして、さっきから会話が成り立っていない。



「…」


「…」


「……」



というか、誰も喋らない。スピアは窓から外を見つめて、俺たちのことなんて上の空。レイはそわそわしてずっと黙り込んでいる。


この状況はまずい。
そう思った俺は何とか言葉を紡ごうとする。



「あの…スピアさん…」


「そういえば、暁人様はこの世界の住人じゃなさそうですね。」


「…どうして、そう思うのですか?」



それが推測だとすればすごい事だ。普通ならそんな推測が1番先に出てくるわけがない。出てきたとしてもただの変人…だと思う所が妥当だろう。


我ながらこの考え方はとても恥ずかしいがこの推測が1番考えやすい。



「それはですね…それは知っているからですよ。あなたがキングに呼び出され、異世界という概念すら超えてきた存在であることを。」


「えっ…?」



いきなりスピアが口を開き、その答えに俺は驚く。


同時に俺はある違和感に気づいたのだ。さっきまではあの少女の事を『主』と呼んでいたのに今は『キング』と呼んでいる。


さすがにおかしいと思った俺はその事について口を開こうとする。



『ダメ!!』



脳にこだまするようにその言葉が響き渡る。その声には覚えがあった。


次の瞬間、スピアに蹴られて馬車から俺は落ちてしまった。あまりにも急な出来事だったため脳の整理が追いつかず、爆発しそうだ。



「くくく…、こんな簡単な手口に引っかかるとは…。お前には考える力がないのか?」


「ほーんとそうだよねぇー。ねぇ、お兄ちゃん?今どんなに気分?騙されてどんな気分かな、あはっ!」


「…!?」


「スピア…?レイ…?」


「あー…そんな名を名乗った事あったね。でも本名じゃないよ。」


「私はエド。」


「僕はカイ。」



スピアと今まで名乗っていた男の本名はエドという名前で、レイと名乗り俺に優しくしてくれていた少年の本名はカイという…ああ、頭の整理が追いつかない!



「くくく…、突然の出来事で驚いてるよなぁ、人間?」


「!?」



どういうことなんだ…?


エドは俺の事を『人間』と呼ぶ。今までのは全て演技だったのだろう。人間は異世界といえど沢山いた。つまり、この場には「俺」しか人間がいないということになる。


という事は、こいつらは何者なんだ!?



「その様子だと、私達が人間ではない事が分かるんだね。さっすがぁー!」


「でも気づくのが遅すぎるんだよね。」


鼓動が早鐘をうっていたが、今の状況を冷静に分析するべく自分自身に自己暗示をかける。


冷静になって辺りを見回すとそこは深い森のような…場所だった。



「こんな状況の中なのに周辺の状況を分析するとは…。お前には恐怖感がないのか?」


「いや…、あるよ。」


「今まで信用に値した人達がいきなり俺を襲ってきたら混乱するのも無理もないさ。」


「ほう…」



エドの疑問に素直に答える。その方が、良いと思ったからだ。



「素直に答えたお前に教えてやろう。もちろん、冥土の土産にな。」



涼しい顔をして、エドは言葉を紡ぎ始める。冥土の土産という事は俺はこの後殺されるのだろうか…?




「ここはレッドキャッスルの管轄区域の中でもとても恐ろしく、誰も近づかない。いわば『忘れ去られた地』だ。」

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