異世界チートで友達づくり(仮)

川添 マカ

神と変態と謎の少女②

 一方その頃、フォックはーーー
 シスターであるマーラさんに連れられてベルとは反対側の部屋へと案内された。

 それにしても、この建物は広いな〜。
 こんな広い建物に入ったのは初めてだからもっといろいろ見てまわりたいなぁ…。
 そんな事を思っているとあっという間に部屋へと着いた。

 ベルさんが入って行った部屋の場所の反対側ではないけど神殿の造りがどんなになっているのか分からないからいいや。
 そこは白い石造りの壁の中に綺麗な木製扉があった。
 中へ入ると驚くべき光景が広がっていた。
 部屋の隅に置かれた綺麗な白のシーツが敷かれたベット。その他テーブルや机、タンスなどの家具が綺麗に並んでいた。
 だが、僕が驚いたのはそこではない。
 僕が驚いたのはところ狭しと様々なところに散りばめられたぬいぐるみの数々だ。
 ベットの枕元、タンスや机の上、ソファにクッションかのように置かれていた。

 「すみません、マーラさん?…ここは?」
 明らかに場違いすぎる空間に僕は思わずマーラさんに聞いてしまった。
 仕方ないじゃないか、本当にどうすればいいのか分からなかったんだよぉ…!
 「ここは私の部屋ですよ」
 「……え?」
 ニコニコしながら答えたマーラさんの言っている意味がいまいち理解できなかった…。
 そしてマーラさんは続けて答えてくれた。
 「ちょっとばかし緊張しているようだったので可愛らしい部屋の方がいいと思いまして、余計でしたか?」 
 そうか僕のためにわざわざ案内してくれたのか…綺麗なだけじゃなくて気遣いができてとても優しい人なんだな…。
 まさに女としての理想形だ。
 アオイさんだったら間違いなく惚れていた事だろう。

 そして勧められるがままソファに腰を下ろした。
 こんな状況じゃ緊張しないどころかさらに緊張してどうしても規則正しくしてしまう。現に今も背筋をピンと伸ばして両手を膝の上にのせている。
 「そんなに緊張しないでくださいな。気楽でいいんですよ」
 そう言ってマーラさんは二人分の紅茶を持ってきてテーブルに置いた。
 「心を落ち着かせて緊張を解す効果がある«バリュの葉»のハーブティーです」
 「あ、ありがとうございます…」
 ヤバい、緊張で気絶しそう…!震える手でカップを手に持って口もとまで運ぶ。
 飲もうとした時に紅茶の香りがダイレクトに鼻の奥へと入ってきた。
 その香りはまるで木々生い茂る森林に一人で目を閉じているような様子を連想させられるほどとても落ち着いた香りだった。
 「…いい香り……」
 思わずそんな言葉がもれた。
 そのまま紅茶を口に運ぶ。
 口にふくむと口いっぱいに森の清らかな空気のような自然イオンが広がった。
 「おいしい…」
 こんな飲み物を僕は生まれて初めて飲んだ。
 そしてそのまま一気に紅茶を飲みほした。

 「おいしいでしょ?」
 マーラさんがニコニコしながら紅茶の余韻に浸っていた僕に話しかけてきた。
 「あ、はい!もうこんなおいしい飲み物初めて飲みました!」
 あまりに衝撃的な味だったからいつもより少し興奮していた。
 「うふふふ、それは良かったです」
 マーラさんもなんだか嬉しそうだった。

 しばらくするとマーラさんは僕のすぐ隣に腰を下ろした。
 「あ、あの〜…マーラさん?こっちは狭いんですんで向かい側の方がいいんじゃないですか…?」
 ソファは四人が普通に座れる程の広さはあるがマーラさんは僕の真隣に座っていた。既に肩どうしが当たっている。
 「いいえ、こちらの方がいいんですよ。こっちの方がフォック君を堪能できますから」
 「堪能?……ふニャッ!?」
 「おぉ、これは思った以上にモフモフのふわふわですね」
 驚いて声が変になってしまった。でも仕方ないでしょ?尻尾触られなんだよ?
 獣人の尻尾や耳は人の肌と違い、長い多くの毛に覆われている分肌が弱く敏感になっているのだ。
 それを触られるというのはアレをアレするのと…いっ…しょ……。
 いってて自分が恥ずかしい!!

 「んn………や、やめ…て……」
 体をビクビクさせているけどマーラさんは喜んで尻尾や耳を触り続けた。
 「ハァハァ、もーほんとにモフモフ!もう可愛くて溶けちゃいそう…!」
 この人変態だぁぁぁぁ!
 撫でられ体が勝手に感じて身動きが思うように取れない。
 撫でられるのは好きだけどここまでわしゃわしゃされるとさすがに鬱陶しい…。

 「や、やめて…ひニャッ!…くだひゃい…」
 今のマーラさんには興奮で声が聞こえないのか全く反応がない…。
 ……こうなったら…。
 <ウルフルメイル>!
 僕は獣王フォルムになるとともにマーラさんから<音速>で抜け出しテーブルを挟んで向かい側の壁まで飛び退いた。

 スキル<音速>…音を超えるスピードをだせる。発動時間は約1秒。任意発動。

 いつの間にか目の前から消えた僕にマーラさんは気づいて驚愕した。
 「フォックさん…ですか?」
 「?…はい、そうっスけど…」
 どうしてそんな質問をするのか最初は理解できなかったけどすぐに理解できた。
 「あ、見せちゃダメでしたけ?」
 今の僕の姿は獣王フォルム、つまり全身毛に覆われたオオカミの姿になっていたのだ。

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