異世界チートで友達づくり(仮)

川添 マカ

初クエスト③

 俺は御者のおじいさんを抱えて来た道を走って引き返していた。
 クソッッ!…ベルは恐らくあのパーティと一緒だろうけど…今はこのじいさんを最優先に考えねぇと…。
 すぐ助けてやるからな!ベル!!

 一方その頃、ベルは男達によって抱えられ森の中を進んでいた。
 ベルは男達の毒煙にやられておりまともに動ける状態ではなかった。
 朦朧もうろうとする意識のまま森を走ってしばらくするとひとつの洞穴に運び込まれた。

 ベルは意識が回復して現状を確認すると自分が吊るされているのに気がついた。
 両手は上で拘束され両足を地面に固定されていた。
 「おぉ、気がついたか〜?え〜と…ベル・アークス?ちゃん」
 大剣の男が歩いて近寄ると同時に話しかけてきた。不気味な笑みを浮かべていた。
 「あなた達……なんの…つもり…」
 毒で体力が大幅に削られ息がきれていた。
 言い終えると大剣男がさらに不気味な笑みを浮かべてベルの顎を軽く持ち上げた。世間でいういわゆる「顎クイ」というやつだ。そして顔をまじかに迫らせて口を開いた。
 「なんのつもりって?…ただ俺たちは楽しいことをしたいだけさ」
 「楽しい…こと…?」
 そして大剣男はベルの方から後ろへ振り返って両手を大きく広げて自慢するように大声で言った。
 「そーだよ!楽しい事だよ!俺らはみんなこのつまんねぇ世界が憎くてしょうがねぇんだ!殺人、誘拐、拉致!まだまだあるけど紹介しきれねぇや!」
 そう言ったあとしばらく間をおいてこっちを不気味に振り向き続けた。
 「今回は君の身体を隅から隅まで調べ上げてから殺してあげるよ」
 ベルはゾッとした。初めて受ける殺人予告を軽く受け流すことが出来なかったのだ。だが…
 「後でお前の彼氏・・も殺してやるから心配しないでくれよ?」

 ーーーーボォンッッ!!!

 「な、なんだ!?」
 男達がみんな揃って洞穴の入口に向き直り、臨戦態勢に入った。
 だが、そこには誰もいなかった…。
 「なんだったんだ…?」
 そう声にもらしてベルの方に向き直った。しかしベルを見て全員驚きを隠せなかった。
 ベルの顔が真っ赤に染まって「シュ〜〜」と音を立てて煙が上がっていた…。
 「お、おい…」
 さすがの誘拐犯も心配になって声をかけると慌てた様子でベルが応える。
 「べ、べべべ…別に!か、か、か…彼氏じゃ!な…なひでひゅ!!!」
 この時男達は意思を共有したかのように同じことを考えていた……「「「「わっかりやす〜」」」」と。

 ちょっと遡って『コルベ村』ーーー。
 俺は御者のじいさんを医者のもとに運び、村長の家へと向かった。
 「村長!!!」
 扉を勢いよく開けて村長を呼んだ。
 いつもの位置に村長は座っていたが、もう一人ソファーに座っている銀色の鎧を全身に纏った20代前半辺りの化粧をした男がいた。
 そしてその鎧のオカマが自己紹介を始めた。
 「はじめまして、あんたいい男ね〜。私の名前はーーー」
 「んなことどーでもいい!」
 自己紹介をするのが常識だろうが今は緊急事態で急いでいる。それに………あんまり関わりたくない…。
 「村長!俺の<千里眼>で見てたから分かるだろ」
 「うむ…わかっているとも」
 「じゃあ俺は報告すんだから行ってくるからな!」
 「待たんか、アオイ」
 「なんだよ」
 足を止めて村長の方を向く。そして村長が続けた。
 「お主の<千里眼>ではなくもうひとつのスキルを使いなさい。ひとつだけ増えているはずじゃよ」
 疑問に思い、ステータスを開いて確認すると確かにひとつだけスキルが増えていた。詳しく見てみると…

 スキル<感覚接続オール・リンク>…接続相手の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など様々な感覚を共有できるようになる。

 「これは…いつの間に……」
 「気づいておらんかったのか?お主がわしとベルの視界を共有した時じゃよ」
 ほんとに気づかなかった…。
 「これ使ってどーすんだよ…」
 「わしの判断材料は多い方がよいじゃろ?視界だけじゃ物足りんのじゃ」
 「お、おう。じゃあ使ってみるわ」
 そうして俺は<感覚接続>を発動させてベルを探しに森の中に入った。

 アオイがいなくなった村長の家では二人だけが残されていた。
 「どーでもいいって……」
 「まぁ気にすることなかろう」
 鎧のオカマがしゅんと落ち込んでいるのをカメルが慰めていた。
 そしてオカマが別人のような表情に変わり村長に聞いた。
 「さっきの子…ベルちゃんの…」
 「そうじゃ…過去の話をしてやれと言われての」
 オカマの表情が変わった。
 「過去の話って!?まさか封印を解くつもり!?」
 オカマとは裏腹に冷静な様子でカメルが答える。
 「さぁの〜?…ただ、若者の遊びに付き合いたくなっての」
 オカマは首を傾げて訳の分からないような表情を浮かべていたがカメルはやけに清々しい顔をしていた。

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