無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

四章 16 『キャトル村救出戦 5』

 「アイズさん!?アイズさんっ!?大丈夫!?」

 ただならぬアイズの様子にローゼが心配して声をかける。

 「は、はやく・・・・ここから離れるんだ・・・ローゼ・・・」
 「で、でも・・・」

 苦痛の表情で途切れながらローゼに避難するようにアイズが言う。

 「おやおや、まだ正気を保っているのかい?さすがの精神力と言ったところかな?でもそれも時間の問題だね、君の中の感情を露わにするといいよっ!」
 「うあぁあああっ・・・!」

 アイズは頭を抱えながら叫んでいる。ただならぬ様子だ。

 「あなたっ!アイズさんに一体何をしたの!?」
 「くくっ・・・その女は私の影によって侵食されているのだよ。この私の操る7人の影はそれぞれ別の特性を持っているのだよ」
 「特性・・・?」
 「そうだ。それぞれ『暴食』『強欲』『怠惰』『色欲』『高慢』『嫉妬』『憤怒』・・・これら七つは人間を罪悪に導く要因として考えられる感情だ。触れた影の特性の感情を高めるのが私の力だ」
 「じゃあさっきアイズさんの怪我はその影に触れられたってことなのね・・・?」
 「その通りだ!その女が触れたのは『憤怒』の影だ!憤怒とはまさに正義と対になる感情!その正義感の塊のような女がどう変貌するのか見物だなぁ!」

 ネハンは興奮気味に叫んだ。

 「・・・元に戻す方法は?」

 アイズに突き飛ばされたローゼが立ち上がった。

 「ふんっ・・・そんなものお前に教えるわけないだろう。こんな面白い見世物は久しぶりだというのに」
 「アイズさんは見世物なんかじゃないわよっ!どうせあなたを倒せばアイズさんにかけられた魔法も消えるんでしょ!?アイズさんにこんなことして絶対に許さないんだから!覚悟しなさいよね・・・っ!?」
 「うわぁああ!!」

 アイズは叫びながらローゼの方に向けて剣を力いっぱい振り下ろした。振り下ろされた剣により生じた衝撃波がローゼの横を突き抜けて行った。

 地面には大きな地割れが出来ており剣の威力を物語っていた。

 「アイズさん!?私よ!ローゼよ!しっかりして!」
 「は・・はなれるんだ・・・感情がコントロール出来ない・・・このままではローゼにまで・・・危害を加えることになってしまう・・!」

 アイズは息を荒げ絞り出すように言葉を発していた。

 「待っててねアイズさん・・・!今あいつを倒して元に戻してあげるからっ!」
 「お前に私を倒すのは無理だよ・・・小娘が!」
 「ベルトールの名において命ずる。我が中に眠りし業炎の力よ、今その力をここに示せ!」

 ローゼの紋章術が発動した。凄まじいいくつもの火柱があがっている。

 「ほう・・・なかなかの炎だが、私の地獄の業火には勝てんよ!地獄の業火ヘルフレイム!」
 「絶対に許さないんだからっ!業炎衝波!」

 ローゼの紅い炎とネハンの禍々しい炎が轟音と共にぶつかり合う。炎の力は互角のようで互いに打ち消しあったようだった。

 「フハハっ!面白い!小娘と思っていたがなかなかの魔力だ!お前にも興味が沸いたぞ!お前はどんな本性を見せるのか楽しみだ!さあ何の影がご希望だ?」

 ネハンが7人の影を生みだした。

 「それがアイズさんを苦しめているやつね!」
 「ローゼ!アイズ!」
 「・・・サリスさん!?」

 姿を見せたのは治療にまわっていたサリスの姿だった。

 「大丈夫かいローゼ!?こっちの治療はあらかた終わったよ!って・・・アイズ?」

 アイズのただならぬ様子に気づいたサリス。

 「・・・なんだ?またお前らの仲間か?次から次へと・・・」
 「気を付けてサリス!こいつの魔法のせいでアイズが苦しんでいるの!!こいつの影に触ってはダメよ!」
 「影・・・?あの男の周りにいるのことかい?」
 「鬱陶しい奴らだ・・・まとめて私の影の餌食になるといい!」

 ネハンはサリスとローゼの方にそれぞれ影を向かわせた。

 「させないわよっ!炎上壁ファイアウォール!!」

 影を囲むようにローゼの炎の壁が出現した。

 「サリスさん!こいつらは私が引きつけます!その間にアイズさんをっ!」
 「わかった・・・!少しの間頼んだよ!」
 「くっ!鬱陶しい炎だ!私の邪魔をするなぁあ!!」

 サリスはローゼが魔法でネハンを引き付けている間にアイズの元へ近づいた。アイズは剣を持った状態でフラフラと歩いていた。

 「アイズっ!アイズ!しっかりするんだ!私がわかるかい!?」

 サリスの問いかけにアイズは反応した。しかしサリスを見るアイズの目はいつもとは違い冷たく、怒りに満ち溢れているようだった。

 「来るな・・・今は私に近づくなっ!来るなぁあああ!!」

 アイズは剣を感情に任せ振り回して拒否した。力いっぱい振り回された剣は辺りを切り裂いた。

 「フゥー・・・これはまた困ったねぇ。こんなアイズは出会った時以来か・・・しかもその目、予知眼まで使っている状態か。厄介ここに極まれりって感じだねぇ」

 アイズの様子を見てサリスは少し動揺した。そして口にくわえていたタバコを一吸いした。

 「ちょっと荒療治が必要みたいだね・・・アイズ、悪いけどすこし我慢しててくれよ」

 





 

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