無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

四章 15 『キャトル村救出戦  4』

 「さぁ!さぁ!どうだい!?いつまで避け続けられることができるかな!?」

 ネハンは7人のネハン自身を模ったような影を操りアイズを攻撃し続けた。触るだけでもどうなるかわからない影を相手にアイズはただ一定の間合いを取りながら回避行動をとるだけだった。

 隙を見て反撃しようにもネハンの周りを護衛しているかのように常に二人の影がいるので迂闊な攻撃は出来ないでいた。

 「ここまで私の攻撃を避け続けたのは君が初めてだよ!素晴らしい力だね!ますます君のことが気に入ったよ!」
 「自分は安全な場所から高見の見物か?」
 「・・・挑発のつもりかい?悪いがその手にはのらないよ。私は確実に、そして合理的に行動することにしているんだ。こうしていればいつかは君の体力が尽き影に捕まるのは間違いないからね」
 「それはどうかな?この影も魔力を注ぎ操っているのだろう?私の体力が尽きるよりもお前の魔力が尽きる方が先なのではないか?」
 「ふっ・・・それはあり得ないね。この影は常時発動型の魔法なのだよ?まあこうして実体化して相手を攻撃するのは通常より魔力を消費するが、その気になれば丸一日だって攻撃を続けられるさ!」

 ネハンは勝ち誇ったように言い放った。

 「そうか、丸一日か・・・それは面倒だな」
 「どうだい!?諦めて僕についてくる気になったのかい!?」
 「いや・・・お前にそんなに長く付き合ってやるつもりはない。出来れば話を聞くため必要最低限で無力化しようと思っていたがそれは無理なようだ。やり方を変えるとしよう・・・」

 アイズはそう言うと少し遠めに影達と距離をとり剣を構えた。

 「ふふっ、どんなやり方だろうと君の剣が私に届くことはないよ!この攻防完璧の私の力が敗れるものか!」
 「確かにこの影達は厄介だ・・・だがそれもどう動くかわかっていれば大した問題ではない。正直この力は卑怯な気がしてあまり使いたくはなかったが、お前のような外道に遠慮する必要はなさそうだ。思う存分使わせてもらうとしよう・・・『予知眼プレディクトアイ!!』」

 アイズの左の赤い瞳の瞳孔が開き輝きを放った。

 「なんだその力は・・・!?」
 「この瞳は未来を見通す力を持っている。もうお前の影の動きも私には筒抜けだ」

 そう言うとアイズはネハンの方に近づき始めた。そんなアイズにネハンの影が次々と襲い掛かるがアイズは最低限の動きで躱しネハンに近づいてくる。

 「・・・えぇい!未来が見えるからなんだというのだ!そんなものは圧倒的物量で潰してやる!地獄の業火ヘルフレイム!!」

 アイズを囲むように先程ジックを焼き殺した禍々しい黒い炎が出現しようとした。

 「その行動も私にはお見通しだ!!」

 アイズは禍々しい黒い炎が燃えさかる前に高く飛びネハンの背後に着地すると同時に剣を振った。

 「ちぃ・・・!」

 アイズのあまりの速さにネハンの周りにいた二体の影も反応できず、ネハンは反応できずにいた。

 ネハンの背後にいたと思ったアイズは次の瞬間にはまたネハンから距離とった場所に移動していた。ネハンの頬からは一筋の赤い血が流れていた。

 「これで理解したか・・・?お前の行動は全てお見通しだ。次は確実に私の剣はお前の首を捕えることが出来るぞ?それが嫌ならば諦めてここで全てを説明してもらおうか?」
 「くそがぁ!!私の顔に傷をつけやがってぇ!図に乗るのも大概にしとけよぉ!!お前は生け捕りにするために手加減してやっていたんだよ!こうなったらこちらも手加減はなしだ!ありとあらゆる苦痛をお前に与えてやる!!」

 顔に傷をつけられ激昂しているネハン。

 「・・・そう言うとわかっていたよ。聞くだけ無駄だったか。どうやらお前から情報を得るのは無理そうだ。ここでこの戦いに幕を引こうとしよう」

 アイズはゆっくり剣を構えた。

 「・・・アイズさーん!?さっきこっちに何か落ちてきたみたいだけど何があったのー?」

 そう叫びながら近づいてきていたのはローゼだった。アイズを探している様子だった。

 「・・・ローゼ?」
 「んん?あれはお前の仲間か・・・?」
 「・・・っ!?お前っ!!ローゼに・・・!!ローゼ!来るなっ!!」
 「アイズさん・・・?」

 ローゼの姿を見たネハン。それを見たアイズにはネハンがどんな行動にでるかわかってしまった。すぐにローゼに離れるように叫んだ。

 「言っただろう?私は合理的主義なのだよ。お前とまともに戦うよりもこっちのほうが楽そうだ!!」

 そう言いながらネハンは不気味な笑みを見せた。そして近づいてきたローゼに対して一気に影を向かわせた。

 「え・・・?何これ?」

 突然の出来事にローゼは状況を理解できていなかった。5人の影がローゼに対して襲い掛かった。

 「ローゼっ!!危ないっ!」
 「きゃっ・・・!」

 影に襲われそうになったローゼをアイズが間一髪のところで救出した。しかしアイズの二の腕には切り傷のようなものがあった。

 「アイズさん!?その怪我っ!私を庇って・・・!?」
 「・・・気にするな。それよりもあの影に決して触れてはだめだ」
 「ふふっ・・・・ふふふ・・・触れたね?とうとう私の影に触れたね?さあ!お楽しみの時間だよ!君が触れた影は何だったんだろうねぇ?」

 アイズが傷を負ったのを見てネハンは勝ちほかったような笑みを見せた。

 「アイズさん、一体あいつは・・・・」
 「・・・っ!?ローゼ!私から離れるんだ!」

 何かに気づいたアイズがローゼを遠ざけようと突き飛ばした。

 「くくくっ・・・どうやら大当たりのようだね?君が触れたのは『憤怒』の影だね」
 「あぁああ!!」

 突然アイズが苦痛の表情で叫び始めた。



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