無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

四章 4 『少女の涙』

 もうすぐ日も暮れそうな夕刻。タクミ達はローゼ達と合流して確保した宿の一室に移動した。シャムミルも一緒にいる。サリスが窓際に座り、右手に持ったタバコに火をつけて窓の外に深く煙を吐き出した。

 「ふぅー・・・それでそこの付き人はまた変な輩に因縁をつけられてきたのかい?」
 「だ、誰が付き人だ!俺に変な役職をつけるんじゃねーよ!」
 「まったく・・・あんたといると退屈しないねぇ・・・」
 「まぁまぁサリス・・・タクミも好きで巻き込まれているわけじゃないんだから」

 不満げなサリスをローゼがなだめている。

 今回の件に関しては俺が巻き込まれたというよりはアイズが巻き込まれたという方が正しいと思うのだが・・・?

 「それで、その子が追われているの?」

 ローゼがアイズの方を見る。そこにはアイズの右足の太ももに抱き着くように隠れているシャムミルの姿があった。アイズの後ろに隠れるように立っていて、顔を半分だけ見せている。どうやら怯えている様子だが、アイズには心を開いているようだ。

 「そうだ・・・ほらシャムミル、この人達は私の仲間だ。そんなに怯えなくても大丈夫だよ。みんなに事情を説明してくれないか?」
 「は、はい!改めてシャムミルと言います!今回は助けてくれてありがとうございました!そしてその・・・巻き込んでしまってすいません」

 シャムミルは申し訳なさそうに頭を下げた。

 「シャムミルちゃん?そんなに謝らなくてもいいのよ!私たち別に迷惑とか思ってないから!あ、自己紹介がまだだったわね?私はローゼって言うの。よろしくねっ!」

 ローゼがシャムミルと目線を合わせるようにしゃがみ込み笑顔で言った。それを見てシャムミルの安心したように笑顔を見せた。

 「それであそこに座ってるのがサリスよ。ちょっと怖そうに見えるかもしれないけどそんなことないからね?」
 「ふぅー・・・私の名前はサリスだ。よろしくね、猫耳のお嬢ちゃん」
 「あ、は、はい!よろしくです!」

 どうやらシャムミルはサリスが苦手のようだ。ローゼの時とは違い体を緊張からか、硬直させ顔も強張っていた。

 まぁサリスの鋭い目とこんな立ち振る舞いを見れば、こんな幼い子が怯えるのも無理はないのかもしれない。

 「それでシャムミルはなんであいつ等に追われていたんだ?」
 「それは・・・これのせいなんです」

 シャムミルはそう言うと首元から一つの首飾りを皆に見えるように見せた。シャムミルが取り出した首飾りは銀のプレートに赤く光り輝く宝石の装飾がされていた。

 「その首飾りは・・・?」
 「これは私たち一族に代々伝えられている物なんです。どうやら不思議な力があるらしくって・・・」
 「その首飾りから強い魔力を感じる・・・それは魔装武具のようだね」

 サリスが興味深そうに首飾りを見ていた。

 「サリスの言うとおりだ。その首飾りにはどうやら強い魔法がかけられているようだ」
 「これは私のお母さんがいままで身に着けて守ってきていたみたいなんですけど、あいつらが急に私達の村を襲ってきて、お母さんはこれを私に託して逃がしてくれたんです・・・」

 シャムミルが首飾りを両手で祈りを捧げるように握りしめた。

 「そんな・・・っていうことはシャムミルのお母さんや、ほかの人達はどうなったの?」
 「私は逃げるのに必死で・・・それからどうなったのかはわからないんです・・・」

 シャムミルはうつむき声を震わせていた。

 「シャムミル・・・ここからシャムミルの村はどれくらいの距離なんだ?」
 「・・・え?えーと馬で行けば半日もかからないと思いますけど・・・タクミさん?」
 「そうか・・・サリス!ローゼ!悪いな、お前らが捜してくれたせっかくの宿だけど、どうやら無駄になりそうだわ!」
 「え?タクミさん?それってどういう・・・?」

 シャムミルは事態が呑み込めない様子でアタフタしている。

 「ふぅー・・・まあ普通だったらあんたを締め上げる所だけど今回は特別に許してやることにしてやるよ」
 「まっ、しょうがないわね!私もサリスと同じで今回は何の文句もないわ!えへへ・・・」

 サリスとローゼは何かを察したように笑っていた。

 「そういうことだ、アイズも準備はいいか?」
 「無論だ」

 アイズもタクミの問いに目を閉じうっすらと笑みを浮かべ頷いた。 

 シャムミルがタクミ達のやり取りを何が何だかわからない様子で聞いていた。そんなシャムミルにタクミが近づき目線を合わせるように片膝をついた。

 「シャムミル、今から俺らをシャムミルの住んでいたところまで案内してくれないか?」
 「え?え?それって・・・」
 「俺ら全員で今からあの狼人族の奴らをぶっ飛ばしてやるよ!」
 「・・・っ!本当にいいん・・です・・か?」

 タクミの言葉にシャムミルは言葉を詰まらせて涙を浮かべていた。そんなシャムミルの頭をタクミは優しく撫でた。

 「ああ!一刻も早くシャムミルの母ちゃんや村の人たちを助けなくちゃな!」



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