無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

四章 1『無能な俺がまた物語を始めるようです』

 「いやーそれにしても平和な空だな・・・」

 心地よい風と共に白い雲が東から西へと流れていく。そんな空を見上げながらタクミがほのぼのとした様子で呟く。広く続く草原をグリドラに乗って移動する4人。

 「この状況が平和か・・・ずいぶんと気楽なことを言うもんだねぇ?」

 そんなタクミの背中からトゲのある声がする。サリスがタバコの煙をふかしながら眉間にしわを寄せている。どうやら何かに対してご立腹のようだ。

 「まぁまぁサリス落ち着いて、そのタクミも悪気があったわけじゃないと思うの・・・たぶん」

 そんなサリスをローゼがなだめようとした。アイズはそんなやりとりを気にしない様子でグリドラの足を進める。

 「・・・あれだ。うん、正直悪いとは思ってるぞ?反省もしている。だが後悔はしてない!」
 「ほぉ、とうとう開き直ったかこの男は・・・どれ、その腐った根性を私が治療してやろうかね?うん?」 

 サリスが口にくわえていたタバコを右手に持ちタクミの額に押し付けようと近づいていった。

 「ま、待て!落ち着けサリス!俺たちは今集団行動をしてるんだ!そういうチームワークを乱すような行為は良くないと思うぞ?」
 「チームワークねぇ?そのチームを危機的状況に陥れているのはどこのどいつだろうねぇ!?」
 「・・・俺だ」
 「はぁ・・・タクミがどこぞの盗賊のやっすい挑発にのるから大事な荷物を持って逃げられるんだよ。どーするんだい?このままじゃ今日は全員飯抜きだよ」

 アーバンカルを旅立った4人はしばらくあてもなく旅をしていた。しかし今日の朝、タクミは道中出会った盗賊らしき男たちと戦闘になってしまった。アイズやローゼ達が傍にいれば問題なかったのだろうが、あいにく女性たちは近くの川で水浴びをしていた最中の出来事だった。

 一人で荷物番をしていたタクミはまんまと盗賊の策にはまり長旅用にと用意していた食料や寝床の為のテント類をすべて盗まれてしまっていたのだった。このままだと野宿と断食という結末が待っている危機的状況に陥っていた。今はどこか補給できそうな町を探して旅をしている道中だった。

 「わ、わかってるよ!だからこうしてどこか近くの村を探してるんだろ!意地でも見つけてやるからそう怒るなって!」
 「まぁ幸いグリドラは全員分無事だったのが救いだね・・・これがなかったらタクミに3人とも抱えて移動させるしかなかったからねぇ」

 サリスが今さらっと恐ろしいことを口にした気がしたが聞こえないふりをした。

 「・・・あ、アイズ!どうだ?どこか人のいそうな場所は見つかったか!?」
 「ふむ・・・見たところ集落のようなところも見当たらないな。このあたりの地理は私もあまり詳しくないからな。まずは進むしかないだろうな」

 冷静な意見を述べるアイズ。

 「そうか・・・それにしてもあの盗賊ども、次見つけたらタダじゃ済ませねーからな!くそったれ!」
 「もう過ぎたことを悔いても仕方ないさ、私の剣やタクミの魔法騎士団の証など大事なものは無事だったのだからとりあえずは良かったよ。それにまだ昼前だ、最悪食事は狩りをして補えば何とかなるだろうし、寝床も簡易的なものなら作れるだろうさ」

 見た目の容姿とは裏腹になんともたくましいアイズだ。なんとも頼りがいのある存在だ。

 「そ、そうね!火は私が起こせるから料理もできるしね!どんな獲物でもこんがり丸焼きにして見せるわよ!」
 「そうだねぇ・・・まあ獲物が見つからなかったら一匹オスを丸焼きにしてもらおうかねぇ?」

 ローゼが人差し指に小さな火を灯して見せた。それを見たサリスが何かを思いついたように不気味な笑みを見せた。

 「お、おう・・・一応最終手段としては考えとくわ」

 何としても街を見つけなくては・・・!!このままでは俺の明日はない!!

 タクミの中で固い決意が生まれた。

 「しかし本当に広い草原だな・・・んっ?あれはなんだ?」

 街を見つけようとキョロキョロしていたタクミ。ふと遠くの方で無数の煙が上がっているのが見えてきた。草原の奥の森のさらに向こうのようで何の煙かまではわからなかったが、何かしらの手掛かりになるのは間違いないはずだ。

 「あの煙のところまで行けば何か手掛かりが見つかるはずだ!行こうぜ!」
 「ああ、そうだな。きっと誰かいるだろうな」
 「うん!そうね!」
 「ちっ・・・」

 おい、なんでこの状況で舌打ちが聞こえてくるんだよ?ねぇサリス!?

 ともあれタクミ達はひとまず手掛かりになりそうな煙の正体を確かめるためグリドラの足を速めることにした。




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