無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

三章 36 『アーバンカル総力戦 5』

 
 「タクミ!次はどこに向かうんだ!?」

 「決めてねーけど、この状況から今このアーバンカルに狂魔六将も全員参加してると思うんだ!そうだったんならどうしても会いたい奴がいるんだ!」

 「会いたい奴?因縁というやつか?」

 「いや、俺自身は因縁はないんだけど・・・それでも目を覚ましてやりたい奴がいるんだ!だからその時はアイズは悪いけど手は出さないでくれるか?」

 「そうか、承知した。しかしタクミの命が危なくなったら、その時は私も助太刀することになるからな?」

 「ああ!頼もしい限りだぜ!」

 アーバンカルの街中を疾走するタクミとアイズ。しばらくすると人の気配がした。


 「・・・タクミ!待て、誰かいるぞ」

 「そうみたいだな。おい!隠れてないで出て来いよ!」

 タクミが叫ぶと物陰から姿を現した者がいた。

 「噂をすればってやつかな?なあ!ラザリーよ!」

 タクミとアイズの前に姿を現したのは、ローゼの姉で狂魔六将の一人ラザリーだった。二人の前に無言で立ちはだかるラザリー。

 「この者が、さっきタクミが目を覚ましてやりたいと言っていた本人か?」

 「そうだ。悪いがアイズは下がっていてくれるか?」

 「ああ。タクミ気をつけるんだぞ。この者ただならぬ魔力を感じる。」 

 アイズが一歩身を引いた。

 「わかってるよ・・・ラザリー!お前まだこんなことやってんのかよ!?」

 「・・・・」

 タクミの問いかけにもラザリーは何も答えなかった。相変わらず魔女のような冷たい瞳がタクミを見つめている。

 「無視か・・・。言葉が通じないなら力ずくで行かせてもらうぜ!」

 「貴方は私たちの敵・・・だからここで排除する!」

 魔力を高めるタクミとラザリー。ラザリーから感じる魔力はこれまでの敵とは比べ物にならないものだった。

 「ハハッ、さすがローゼの姉ちゃんだな。だけどこんな姿見たらローゼが悲しむぞ!」

 「お前には関係のないことだ!」

 互いに魔力をぶつけ合う二人。凄まじい衝撃波が生じる。その勢いのなかアイズは少し距離をとって二人の戦いを見守っていた。

 「グッ・・!」

 ラザリーの魔力に圧されるタクミ。純粋な魔力だけならラザリーの方が勝っているようだった。

 「くそっ!ここでお前に負けるわけには行かねーんだよ!俺はお前をローゼの所に戻すって決めたんだからな!」

 「貴方には無理よ。ここで私に殺されるのだから。」

 ラザリーが右手を天に掲げる。その先に以前エスミル山で見せた巨大な隕石を造り出そうとしていた。

 「またあの魔法かよ!あんなもんここで使われたらたまったもんじゃねーよ!」

 タクミが魔法を阻止しようとラザリーに近づこうとした。それをラザリーが炎を生み出し近寄らせまいとした。

 「あちっ!どうしてもこの街ごと吹き飛ばすつもりかよ!そうはさせねーよ!ホーリーレイピア!」

 無数の光の矢がラザリーに向けられ放たれた。これにはラザリーもたまらず後ろに飛んで回避した。それでも矢が当たったみたいで二の腕のあたりからうっすらと血が滲んでいた。

 「ローゼの姉ちゃんだから出来れば傷つけたくなかったけど、さすがにそこまでの余裕はなさそうだからな。悪いな。」

 「貴方と戦うと本当に不愉快な気持ちになるわ・・・もうここで終わらせてもらうわ。」

 そういうとラザリーが左手にはめていた手袋を外した。そこにはローゼのものと同じ紋章が刻まれていた。

 「ベルトールの名において命じる!我が中に眠りし業炎の力よ、その力をここに示せ!」

 ローゼと同じ詠唱をラザリーが口にした。次の瞬間ラザリーの足元に巨大な紋章が現れる。

 「これはローゼと同じ紋章術か!でもこっちの方が見る限りヤバそうなんだが・・・」

 ラザリーの紋章術はローゼのそれとはケタが違う魔力を放っている。

 「この力こそベルトール家に伝わる紋章術の真の力よ。貴方のお節介ごとここで燃やし尽くしてあげるわ!」

 ラザリーが手をタクミに向ける。それと同時にいくつもの火柱がタクミに迫っていった。

 これをバリアを張って防ぐタクミ。しかしラザリーの炎は一向に力を弱めることなくタクミに襲いかかった。

 「ちっ!なんて威力だ!このままじゃバリアが・・・」

 次の瞬間ラザリーの炎がバリアを突き破りタクミを吹きとばした。

 「うわぁぁぁぁぁ!」

 「タクミッ!」

 その勢いで壁に叩きつけられるタクミ。アイズも心配して声をかける。

 「イテテ・・大丈夫だアイズ!」

 ゆっくり立ち上がるタクミ。そこにラザリーがその身に炎を纏いながら近づいてきた。

 「頑丈なのね・・・でもこれで終わりよ。」

 ラザリーが止めを刺そうと今度は炎でできた剣を造り出した。

 「生憎体だけは丈夫なんだよ、俺の唯一の長所だな。それにまだ終わんねーよ!」

 地面から多数の手が出現しラザリーに襲いかかった。これを炎の剣で迎撃するラザリー。

 「これは、ベルモンドから奪った魔術か・・・。この程度時間稼ぎにしかならないわ!」

 「時間さえ稼げればいいんだよ!こうするからな!」

 ラザリーが手に気を取られている間にタクミがラザリーに近づいた。

 「目を覚ましやがれ!」

 「なにっ・・!」

 タクミの光り輝く右手がラザリーの腹部に触れた。たまらずラザリーが後ろに退く。

 「くっ・・!一体何をした!?」

 「へへっ、太陽神の浄化の力で触れたんだ。お前が操られているんならこれで効果あると思ったんだが、どうやら俺の読みは当たったみたいだな!」

 タクミの浄化の力にあてられ苦しそうな様子のラザリー。片膝を地面についている。

 「・・・めろ・・・やめろ!私の邪魔をするんじゃない!!」

 苦しさを薙ぎ払う様にラザリーが頭を押さえ、魔力を高めている。ラザリーを取り巻く炎もその勢いを増している。

 「まだ完全には浄化できなかったか・・・ならもう一発だ!」

 「そうはいかない・・・もう貴方には私の体には触れさせないわ!」

 地面からいくつもの火柱が上がっている。辺り一面火の海に近い状況になっている。

 触れるだけではダメだ・・・

 タクミの頭に声がした。それは太陽を司る神ヘリオスの声だった。

 「触れるだけじゃダメって、ならどうすればいいんんだ?」

 あの女の呪縛を解くには内側にある呪縛の核に直接触れなければならないようだ。それほどにあの女の呪縛は根の深いものだ・・・

 「内側ね・・・触れるだけでも大変だったのに、それまた随分難易度の高いもんだな。こうなったらわがまま言ってないで、アイズに応援を頼むしか・・・」

 「燃え尽きなさい!ヘルフレイム!

 ラザリーの業火がタクミに襲いかかった。

 「しまった・・!間に合わねぇ!」

 次の瞬間、ラザリーの炎とは違う炎がタクミを護った。

 「え?今のは・・・?」

 突然の出来事に呆気にとられるタクミ。そして聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 「何ボケっとしてんのよ!黒焦げになりたいの!?」

 タクミをしかりつける声。そこには赤い髪に白いローブ。ローゼの姿があった。

 

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